種なしスイカはどうやって子孫を残す?

熟したおいしいジューシーなスイカを食べるより素敵なことは、そのスイカの種にいら立たせられることなく食べることです。種なしスイカが最高なのはそのためです。しかしおいしい矛盾がそこには存在するのです。

種は植物の繁殖でキーとなる役割を果たしています。では種を作らない植物をどうやって繁殖させるのでしょう? 遺伝子を変えた化学物質と、同時に3つの遺伝子学的に異なるスイカの苗が必要となります。同様の方法で、あらゆる種なしフルーツを生産することが可能です。

80年前、日本の科学者により誕生

5000年前、スイカの祖先は小さく、硬く、苦いアフリカのフルーツでした。数世紀に及ぶ、よりよい特徴を持ったフルーツの繁殖により、甘くてジューシーで、黒種を持つ赤いメロンが出来上がりました。約80年前、日本の科学者が種なしを作るために直接植物の遺伝子に手を入れました。

この時、突然変異育種と呼ばれるプロセスが使われました。植物をその遺伝子に変化を促す何かに晒し、科学者たちは好ましい特性を持つ植物を探します。そしてコルヒチンと呼ばれる化学物質を使い、1939年に種なしスイカを作ったのです。

このコルヒチンは、微小管を形成するタンパク質に干渉します。これは糸状構造のタンパク質で、物資の往復を助ける細胞の中にあります。炎症を鎮める効果があるので、痛風の治療に使う人もいます。しかし植物においては、細胞が分裂する際に複製されたDNAを分裂させない働きをし、倍数性の変化をもたらします。これは、細胞の中の染色体の対の数に変化をもたらすということです。

繁殖には最低3つのスイカが必要

動物があるべき数量よりも多くのDNAを持っていたなら、生き抜くことはできないでしょう。しかし植物は遺伝子の複数のコピーとも完全にうまくやっていけるのです。人間のように、スイカは2倍性、つまり細胞の中に2つの対となる染色体を持つように進化しました。

しかし1939年、京都大学の教授が染色体の数を倍にするために、スイカの一つにコルヒチンを使い、4倍体のスイカを作ったのです。そして彼は2つの植物を一緒に栽培し、生まれたのが3倍体の植物でした。3倍体のスイカは成長できる種を作り出せません。なぜなら植物の繁殖細胞を作る細胞プロセスは、揃いの染色体の対を必要とするからです。

しかし、こういった遺伝子的に変わったものを育てることはおいしくて種のないフルーツにとって最終段階ではありません。ですから、種なしスイカを手に入れるためには、2倍性の植物の雄花の花粉と3倍性の雌花を受粉させなくてはなりません。3倍性の植物は種を生み出せないので、2倍性と4倍性の植物を繁殖させ続ける必要があります。つまり毎年種なしの植物を得るために、最低でも3つのスイカが必要となるのです。

種なしフルーツは倍数性で操作される

なんだか大変に聞こえますが、実際そうなのです。しかし種なしが好きな人は多く、生産者にとっては育てる価値があります。研究者たちはプロセスをもう少し簡潔にするように努力しました。雌花を生み出さない2倍性の植物を開発し、そのおかげで生産者たちは間違って種のあるスイカを作ることがなくなりました。

倍数性の変化のおかげで楽しめているフルーツはスイカだけではありません。種のないぶどう、シトラスフルーツ、バナナは全て倍数性の操作によるものです。しかしその直感に反して、そのうちのどれも遺伝子的にかなり修正されているにも関わらず、GMOとは考えられていません。なぜなら現代の遺伝子組み換え技術によって作られた農作物のみがGMOに分類されるからです。