2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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佐藤尚之氏(以下、佐藤):(人々のつながりは)今の人数でいうと10人から10人、15人から15人、100人とかなので、それが広がったとしても、「人数少なくない?」と思われるかもしれません。
例えば100人の方が、みなさんの式場やホテルに行ったとします。1回で急に100人じゃなくてもいいです。何ヶ月かかけて100人いるとします。Twitterのフォロワーの世界平均は130人なんですが、そうすると130人が見るわけなので100人×130人。1回、「あそこの式場よかったよ」と書いた時点で、1万3,000人が見るんです。
1万3,000人全員がリツイートすると1万3,000人×130人、すごいことになりますけど、それでみんなに通知します。3パーセントぐらいがリツイートするとしても6万3,700人。つまり、たった100人がある式場について書いたならば、またそれをリツイートして、2階層で約6万人です。Twitterでいうと、その6万人もそれぞれだいたい130人の友達を持っている。
そして、そのうちの3パーセントぐらいがリツイートすると何が起こるかというと、次は30万人くらいになるんですね。30万は、ゼクシイの推定部数と一緒くらいです。しかも、この広告はそのゼクシィなどの雑誌の中で一番になっているわけじゃなくて、一番信頼されている情報源である友人の口から伝わっていくわけです。「あそこよかったよ」と。
それは広告よりも圧倒的に信頼されます。なので、非常に影響力を与えます。しかも、人はみんな友人の役に立とうとします。そうなりたがっている。
こういう実験があるんですけど、Aさんが運動をする。健康にいいですね。そこで「運動をするとこの人にお金をあげましょう」というのと「この人が運動したならば、Aさんの友人にお金をあげましょう」という2つで実験をしたんです。
どっちのほうが運動が続いたか。わざわざこれを出すからわかると思いますけれども、「友人にお金をあげる」と言うと、4倍続くんです。自分がお金をもらうんじゃなくて。
これは「ソーシャル物理学」といって、本も出ている実験です。そのぐらい人は人の役に立ちたがっている。なので、みんなに「自分がすごくいい体験をした」と言いたいわけです。ホモフィリーですよね。機能価値より情緒価値。Through the Community。
前半で広告や記事は効かないという話をしましたが、そういうときに、価値観が近い人を通じて、Through the Communityで情緒価値が伝わっていく。それを伝えていく。今は新規のお客さんを非常に取りにくいと思いますが、そうしていくことが、実は唯一に近い解決策であると僕は思います。
これだけだと言葉としてわかりにくいかもしれませんけれど、すごく縮めて言えば、この時代、実はファンが周りに薦めてくれることほど効くことはない、という話です。
(ブライダル業界の)みなさんとこの(結婚式を挙げる)方々とは、1回しか会わないかもしれません。ですけれども、より情緒価値的に、ものすごく好きになってもらう。そういうふうにやって、この人たちが強いファンになってくると、それが非常にいい循環を生み出すと思います。
目の前のお客さまをファンにするというのは、遠回りのようでいて、実は一番近い道なんじゃないかと僕は思っています。
あと5分だけ。具体的にどういう手を打てばいいかという話ですが、とにかくファンにしていくという意味でいうと、どうすればファンになるのか。これは、ファンをよく知らないと手が打てないんです。なので、みなさまの会場、式場、ホテル、ゲストハウスなど、そこをすごく好きになってくださった方をもっと知っていく必要があると思います。
そのときに僕がお勧めするのがファンミーティングです。ファンを集めましょう。この写真は、ミスタードーナツのファンミーティングをやっているところなんですけど、みんなを集めて、もてなして、喜んでもらって「よかったね」という話じゃありません。傾聴してください。ファンをよく知ることが必要なんです。
「人を集めるのは面倒くさいから、アンケートじゃダメなの?」となりそうですが、アンケートはほぼダメです。なぜかと言うと、アンケートで「どうでしたか?」と聞いても、みんな考えながらやっているわけじゃないから、言語化できないんです。
それに、結婚式は自分のすごくいい思い出にしたいから、(本心よりも)もっと飾って答えてしまうこともあります。なので、アンケートなどではあまり出てこない。
グループインタビューで「Aさんどうでしたか?」「Bさんどうでしたか?」と聞いても、人は自分たちの本当に好きだった部分、ここらへんがこうだったから、というのは思い出せないものなんです。
アンケート自体はみんな万能というか、信用しますけれども、我々もいざ「この水のどこが大好きですか?」と言われて急に考え出しても、考えがまとまらないんですよ。
じゃあどうするかと言うと、一番いいのはファン同士を会わせることです。非常に情熱的にみなさんの会場を好きになってくださった方々同士を会わせると、その方々が自分の体験などをいろいろ話しているうちに、いろんなことを思い出します。
「ここがすごく好きだった」「あの方がいてよかった」「あの方がこういうことを言ってくれたときに涙が出た」ということをいっぱい思い出してくれるんですね。それが言語化につながって、このホテルのよさ、このホテルのよいツボなどが顕在化される。
ファン同士の会話に聞き耳を立てるのが、一番みなさんの魅力がよくわかる部分かなと思います。いろんなファンミーティングがありますが、ファンたちが集まるとものすごくしゃべります。ものすごく盛り上がります。
そこをあんまり仕切らずに、どんどん盛り上がってもらう。これがすごくいいです。つまり、傾聴のためにファンミーティングをやるんです。ファンたちをよく知りましょう、と。
そこでファンたちが喜んでくれるツボがわかったら、そこをもっともっと伸ばしていく。そうすると、これからの利用者がもっと喜びます。そして、そのことをほかの人たちに「ファンだ」とどんどん言いたくなりますから、そういう循環をつくりましょう。
本当はこれだけでいいんですけど、もう1個だけ言うとすると、Through the Communityも含めて、ファンたちが友人などに魅力を言わなきゃいけないんですね。
アンバサダープログラムのようにすると、それは周囲に魅力を伝える体制になっているのでありだと思いますが、そうじゃない場合はどうしているか。アンバサダープログラムにする場合でもすごく重要なんですけど、ファンに自信を持ってもらうことが非常に大事です。
自信を持ってもらうこと。「なんでうちの式場は、ホテルは、ゲストハウスは、あんまり口コミされないんだろう?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
口コミは大事です。そのためには友人に言ってもらわないといけない。でも、その理由の大きな部分は信頼なんです。これは日本人の特性ですが、自信がないんです。ソーシャルメディアなどはだいたいアメリカから出てきましたよね。だからみんな「口コミってするよね」と思っていますけど、ソーシャルメディアに書く人なんてめったにいないんです。
(スライドを指して)なぜかと言うと、まず日本は世界で一番悲観的な国民なんですね。インドが一番楽観的です。インドからずーっとこう来て、日本が一番悲観的であると。圧倒的に悲観的です。
(スライドを指して)あと、これは内閣府の子ども白書、つまり若い人たちですね。社会は変えられるかもしれないと思っている若者の割合が日本は世界でビリなんです。自分に満足しているのも世界で圧倒的にビリです。自分に長所があると思っている若者、世界でビリです。
そして、将来に希望がある若者、世界でビリです。40歳になったときに幸せになっているイメージを持っている若者も世界でビリなんです。
こんなふうにしたのは、僕の世代も含めて50、60、70、80代が悪いと思いますけど、もともとちょっと自己肯定感が低い。ちょっとじゃないですね、世界で一番低い。つまり、ファンなのに自信がないんです。
「このホテルのこと大好き、すごく気に入った」「いい結婚式をしてくれた」「いい宴会をしてくれた」とファンになっても、「でも、私はぜんぶのホテルを経験したわけじゃないし、ここが好きと言っていいのかしら。自信ないわ」「この式場がよかったなんて言ったらバカにされるんじゃないか」と。
いろんなことを考えちゃって、意外と言わないんですね。日本人はこういうところがある。だからいわゆるソーシャルメディアマーケティングとかで「口コミしてもらいましょう」と言いますけど、そんなに簡単じゃないんです。
でも、自信を持ったらみんな変身します。自信を持つことの1つの例として、(スライドを指して)この『レタスクラブ』という紙の雑誌がありますけど、売上げがずうーっと落ち込んでいました。でも、この松田紀子さんが編集長になってから3号続けて完売して、V字回復したんです。
なぜV字回復したかは省略しますが、編集長としては「このV字回復をしたから、『レタスクラブ』はネット上でものすごく話題になる」と思っていたんですね。
でも、ソーシャルメディアで、ネット上で誰もなにも言わない。話題にもならない。3ヶ月経っても誰もなにも言わないから、すごく落ち込んでがっくりしていたら、ある日、あるメディアが「最近の『レタスクラブ』が伸びている理由は何か?」をちょっと特集したんです。
そして、同時期にあるファンが「最近『レタスクラブ』がおもしろいね」と言った。まったく無作為なんですけど、その2つがファンたちの目に触れたとたんに、雨後の筍のように「最近『レタスクラブ』おもしろいね」「私も3号前から大好き」「昔から大ファンだった」という人たちが次々に発言をし始めたんです。
なぜか? もうわかると思いますけど、「『レタスクラブ』が好きなんて言ったらかっこ悪い」「笑われるんじゃないか」と思って、みんな発言しなかったんです。好きなのに、買っているのに言えなかった。自信がないから。でも他の人が言ったら、急に言えるようになったんです。「あ、私も言っていいんだ」みたいに。
つまり自信が作られたんですね。それには、もっとファンたちの声をちゃんと集めて、どの人がファンかをちゃんと見極めないといけません。
その方々の声をアクセスしやすい場所に、リンク元にしやすいようにして、より自信を保てるように用意して出しておく。これは、その方々たちが口コミをしやすいという意味においては非常に効く話になります。自信を持ったファンは、次々に友人や類友、似た者同士にオススメをして、それがThrough the Communityで広がっていく。
というふうなお話です。だいたい40分ほどでお話をしましたが、そういう感情をちゃんとつけておくという意味でのファンベース。その観点から今日はお話をさせていただきました。短い時間でちょっと急いでやりましたが、以上です。ありがとうございます。
(会場拍手)
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