パリコレでタブー視されていた「黒」

西田貴紀氏(以下、西田):はい、DSOCの西田と申します。DSOCはSansanのデータ統括部門で、そこの研究員をやっています。見た目でわかると思うんですけれど、今ご紹介にあったとおり、めちゃくちゃファッションが好きなので、今日はファッションを通じて「Think Differentとは何か?」という問いに対して答えを出したいなと思っています。

石川善樹氏(以下、石川):今日の服は全身、入れ墨みたいですね(笑)。

西田:そうですね。レギンスとカットソーがあるんですけれど、会社に着ていった時はもう、「西田さんが入れ墨を入れた!」みたいに言われました(笑)。

石川:「入れ墨を入れたんですか!?」って言われる、肌着のような服ですね(笑)。

西田:はい。肌着のようなものです。僕がファッション界で「最もThink Differentしたな」と思っているブランドがあります。それが今日も着ている、コムデギャルソンというブランドです。コムデギャルソンは何がThink Differentで、すごかったのかというと、後に「黒の衝撃」と言われる、1982年のパリコレクションです。それが最もすごくて、僕が「最もThink Differentしたな」と思っているコレクションです。

石川:ファッションというのは白かったんですね。黒を扱うのはもってのほか。

西田:そうですね。その当時のパリコレクションでは、黒はタブー視されていたんですが、そこで初めて黒を使ったのがコムデギャルソンです。

石川:クラッシュしたんですね。

西田:そうですね。それがコムデギャルソンの「黒の衝撃」というコレクションです。「黒の衝撃」というのを先ほどの2軸を使って説明してみます。(スライドを指しながら)一般的な服がここにあるとすると、縦軸にアップグレード、(つまり)質の高さを取ると、当時のパリコレでは黒は使わず、エレガントというのが「質の高いもの」だとみなされました。それが1つの基準だったんです。

横軸にアップデートという軸を取ります。コムデギャルソンが何をしたかというと、黒を使うのが1つと、もう1つがボロルックです。ほつれ、かぎ裂き、穴開き。今日、僕が着ているこのパンツです。これがまさにかぎ裂きになっています。

Think Differentには自由と反逆精神が必要

石川:さっきの俳諧みたいなものですね。下品なものをあえて使うという。

西田:そうですね。この貧乏っぽいのを見せてしまうところであり、下品だということです。それに当時のエレガントさを踏まえてデザインを整えたことで、「黒の衝撃」が生まれた。この例をとっても、(先の松尾芭蕉の話のように)まずアップデートしてからアップグレードすればいいんじゃないかな、と僕も考えています。

石川:コムデギャルソンは日本のブランドですよね?

西田:そうですね。日本のブランドで、川久保玲さんというデザイナーが設立しました。

石川:松尾芭蕉的なことをしたということですね。

西田:そうですね。僕の人生のテーマでもあるんですけれど、「どうしたら『黒の衝撃』のようなThink Differentができるのか?」ということですね。

(コムデギャルソンが)パリコレで初めて黒を使って、その後、当たり前のように黒がパリコレで使われる時代が来るのですが、どうしたらそういったすごいイノベーションを起こせるのかと考えていく中で、今日の答えを出していこうと思います。まず、「服の中にそもそもヒントがあるんじゃないかな」と思い、服を見てみたんです。

(スライドを指しながら)これは僕が着ているTシャツなんですけれど、「メッセージT」と言われているTシャツです。これに書いてある言葉にヒントがあるんじゃないかなと思いました。「My energy comes from freedom and a rebellious spirit.」とあって、訳しますと「自由と反逆精神が私のエネルギー源です」という意味です。

石川:ちなみにこれも、コムデギャルソン?

西田:コムデギャルソンです。川久保玲のインタビューを読んでみると、「強い信念を持っている人が好きです」と回答していて、「反逆精神があって、独立心みたいなものを持つのが『Think Different』するには必要なマインドセットなんじゃないかな」と思いました。(それで)「そんな研究はあるのかな?」と思っていろいろ調べていたんです。

石川:独立心の?

独立心とクリエイティビティには関連性がある

西田:そうですね。独立心とクリエイティビティについての研究がなんと、ジョンズ・ホプキンズ大学で行われていました。ある実験で、「地球外生命体を描きなさい」というタスクをもとにクリエイティビティを評価するということで、(被験者に)そのタスクを与えました。その時に、2つのグループを用意したんです。

1つは「グループで作業するように」という集団A。もう1つの集団Bが、「グループからあなたは拒否されたので、一人で取り組んでください」という、すごくかわいそうな感じの集団です。

石川:非常にかわいそうですよね(笑)。わざわざ「拒否された」と言うんですね。

西田:わざわざ「拒否されていますよ」ということを明確にしたグループを用意したんです。そこで絵を描いてもらったところ、集団Bで「一人で描いてください」と言われた人たちの方が、クリエイティブな地球外生命体を描いたという研究があったんです。

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