「新しい経済圏」を語る3名のゲスト

前田恵一氏(以下、前田):ちゃんとご紹介するのは今回はじめてなんですけれど、僕なりの紹介でやってみようと思います。余語さんとは、この間ゴルフで知り合いました。

(会場笑)

ゴルフをしているとすごく普通のじいさんなんですけれど、飲み会からすごくオーラを感じました。こちらのご経歴の通りですが、私もあとから知りました。カネボウの立て直しをやってらっしゃった方だったんですね。

光通信でも副社長として立て直しを図られていたり、業界では有名な方らしいです。マッキンゼーの友人たちからするとレジェンド的な扱いを受けていて、「なんで一緒にゴルフをしているんだ?」みたいなことを言われました。それはこっちが聞きたいです。

飲みながら悪ノリで、「ちょっと今度5周年があるので、よかったら来てください」と言ったら、「お、行くよ」みたいな感じになり、こんな展開になりました。それが余語さんです。

次は平尾丈くんですが、彼は学生時代からの友人です。「友情・愛情・平尾丈」みたいなことをずっと言っていて、ちょっと変わった友人でした。「カミソリ丈」とかいろんな異名があるんですけれども。彼もリクルートの最年少役員をやりながら、自分でMBOで株式を買い取って、かつ上場させていきました。

Facebookを見るたびに増収増益のフィードが流れてきて、しかも信じられない成長率をたたき出しています。それが平尾くんです。今田さんはこの前初めてお会いしました。feverという、仮想通貨をベースにした「感謝の受け取り合いをしましょう」というプラットフォームをやっていらっしゃいます。

前田塾で「前田塾コインを作ります」みたいなことを、僕が土曜日に言っていたじゃないですか。そのプラットフォーマーが今田さんのところです。出資を受けたり、いろんなトークンエコノミーの中でけっこう活躍されている方で、25歳とはまったく思えない感じのオーラを出しまくっていますね。

毎週五反田のドトールでミーティングをしていたんですけれど、直近では前田塾としてトークンエコノミーを使っていかにコミュニティを形成していくかが、私自身も課題でした。そういう観点でいろんな事例を知っていらっしゃる方なので、いろんなお話をうかがってみたいと思います。

人生100年時代に、定年後どう生きるか

前田:ということで、もはや丈くんに至っては「経済圏、俺は関係ねーよ」とさっき言っていましたけれど、第3部「新しい経済圏」というカテゴリーでご紹介したいと思います。拍手でお迎えください。

(会場拍手)

平尾丈氏(以下、平尾):もうちょっと褒めてよ。

前田:どう褒めるの!? それでは改めまして、第3部「新しい経済圏」のお話をしていきたいと思っています。みなさんのニュースや周りの環境の中でもブロックチェーンという言葉が出てきています。

インターネット技術がどんどん進歩してきていて、できなかったことがどんどんできる。世界がどんどん狭くなっていくという文脈を、もうたくさん耳にされているかと存じます。

このお三方に関しては、ブロックチェーンもそうですし、ビジネスを全然違う角度で作っていくという観点で、かなり第一線で走っていらっしゃるので、実際なにをしているのかを早速聞いてみたいと思っております。普段、どういうこと取り組んでいらっしゃっていて、どのあたりのテンションが上がっているかみたいなところです。よかったらお聞かせください。

余語邦彦氏(以下、余語):最初に言わないと、なんだか話ができそうにないな。まず、最初のセッションにぶち込まないでありがとうございます。若い人と一緒の方がやりやすい。

(会場笑)

前田:とんでもないです。

余語:私は今日の登壇者の中では一番年長じゃないかと思います。一応、大学の先生の肩書きでやっています。実は「50歳までに上場企業クラスの経営者になる」という目標を掲げていて、けっこう早くにカネボウ化粧品のCEOをやることになって、48歳で達成しちゃったんですね。

そのあとの目標がなくて、社長を1社やったあとに、実は2008年くらいからフラフラと放浪をしていました。最近は人生100年時代というのもあって、60で定年しても、次を生きていかないといけないので、なんとか若い優秀な人を捕まえて、その人に遊んでもらう仕組みを作ることを今やっています。

エンジェル投資家として若者をバックアップ

余語:大前研一が作ったビジネス・ブレイクスルー大学で、ビジネスインキュベーションセンターを作って、そこで「起業したい」という学生の相談に乗っています。

グループには、アタッカーズ・ビジネススクールというのもあるんだけれど、そういうところから優秀な人や、いいアイデアとかを選んで、エンジェルみたいにちょっと投資をして経営を手伝うということをやっています。そうすると、年を取ってもしばらく遊んでくれるんじゃないかなと思って。

最初はちょっとエンジェルで投資をして起業を手伝って、あとは手離れと思っていたんですけど。去年作ったブロックチェーンの会社が1社あります。それが1年で急成長していまして、外からお金を集めた手前もあって放っておけないので、けっこうそれに時間を使っています。そんなところです。

前田:はい、ありがとうございます。

(会場拍手)

平尾:なんだか今日はおとなしいですね。

前田:いろいろあるんですよ。

平尾:いろいろあるんですか(笑)。

前田:丈くん、もしよかったら。

平尾:もしよかったら(笑)。

前田:そういうところで取り上げなくていいから(笑)。

(会場笑)

平尾:前ちゃん……前田さんとは学生時代の同期組です。

彼はもう院(大学院)を出ていて、東京大学でピカピカの学生時代を過ごされていたと思います。僕は、湘南の藤沢の……今日(会場のみなさんの中に)いますか? 後輩とか同校生とか、 いないね。だいたい六本木に来ないですね。

(会場笑)

学生時代からのご縁で、もうかれこれ15年目くらいですか? 初めてこんな真面目な会に呼んでもらえました。

前田:そうだね。

(会場笑) 

リクルートで経験したマネジメントとバイアウト

平尾:(笑)。呼んでいただいてありがとうございます。(自分は)まったく経済圏に関係のない男です。ただ、学生時代に2回起業しています。

その事業が両方ともたまたまリクルートの競合で、リクルートの競合調査で(採用試験へ)行ったらリクルートさんから内定が出て、最後まで粘っていました。今はみなさん、マイナビとかを使っているかな? 当時はリクナビのシェアが大きかったので、「リクナビを超えるサービスをつくる!」みたいなことを22歳の時に言ってゴリゴリやっていました。

友だちをいっぱい集めようというソーシャルネットワークを作って、前ちゃんにも協力してもらっていろんなことをやっていました。ユーザーがたくさん集まったところで、「リクルートに入るの? 止めるの?」みたいなことを人事に言われて、いろいろと悩んだのですが、「入れてください」といって(笑)、入れていただきました。

学生起業家のキャリアからリクルートの社内で3年くらいやらせていただいて、その中で最年少で「子会社へ行ってこい」という命を受け、やらせていただきました。ただ、自分はサラリーマンとは相性が悪かったです。これは、もう冒頭からみなさん気付いていますよね。「サラリーマンの相性悪そうだな、この人」みたいな感じです。

なんでも言いたいことを言うし、「自分が社長だったらこうやる」というのをマネージャーに言ってしまうので、「この部下、持つの嫌です」みたいなことを、いろんな先輩方が仰っておりました。みなさん、これは笑うところです。

(会場笑)

という感じで、3年間リクルートで育てていただいて、投資先の会社をMBOさせていただきました。マネジメント・バイアウト、買収ですね。20代中盤くらいで借金を負って30歳で上場しました。

30で上場して、そこから100億円を使ってM&Aを11件(※3月8日時点では12件)やっております。ようやく今年35歳で、今36になりましたけれども、東証一部に市場変更したり常にバタバタの連続でいろいろ大変でした。

起業したからこそわかる、アントレプレナーとしての実力

平尾:もうね、すごいですね、証券会社の人って。

前田:僕はマーケット部門だから、そのへんはぜんぜんわからない。

平尾

みなさん聞いたことありますか? 世界中にはユニコーンと呼ばれる、上場していないけれど時価総額が1,000億円以上のいい会社がいっぱいありますね。

(今田氏を指して)横にもたぶん、将来のユニコーン候補が座っていますが、実はこの夏ぐらいから、次の経営や社会との関わり方についてのフィジビリティスタディみたいなかたちでそういった会社さんや将来のユニコーン企業候補の社長たちに個人で投資させていただいています。 海外ユニコーン(候補)の社長たちは優秀です。

今の自分のアントレプレナーとしての実力がそれでわかりましたし、やはりいろんなマーケットの違いとか、彼・彼女が考えていることがこれだけ違っていて、その多様性の中でどう戦っていくのかみたいなところも考えさせられました。

おそらく自分は、新しい経済圏とはちょっと一番関係ない人間で、賑やかし要員で呼んでいただいたんです。今日は8割くらいお二方に振っていただいて、ちょっと盛り上げ役でがんばりたいなと思っております。よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

前田:やりやすいのか、やりにくいのか……。

平尾:やりやすい(笑)。

前田:よかった。

コミュニティをエンパワーメントする支援サービス「fever」

今田孝哉氏(以下、今田):個人的にはやりにくい気がします(笑)。

(会場笑)

平尾さんほどの経歴がないので恐縮ですが、もともと学生時代にいくつか事業をやっている中で、失敗もたくさんしながら今まで来ました。それこそ平尾さんを見て育った世代です。

平尾:初めて聞きましたよ。サインとか書いたことありました?

(一同笑)

今田:それはないです。それこそ学生が終わるタイミングで会社に入るのか、そのまま起業するのかという選択肢の中で、平尾さんがまさにリクルートに入られていたんです。平尾さんも学生時代からビジネスをやっていたと思うので、会社に一度入って経験を積むのもいいなと思いました。

結局1回企業に入って、そのあと2年間くらい新規事業の立ち上げをいくつかやらせていただ来ました。そこでは、自分で立ち上げた事業の中でコミュニティに関するものが多くて。

特にオンラインコミュニティを運営する中で、コミュニティ運営は意外と難しいなと感じることがあり、自分の課題を解決できるようなサービスがなかったのでだったら自分で作ろうということで、今やっています。先ほどご紹介があったとおり、feverというサービスをやっていまして、世界中のコミュニティをエンパワーメントすべく、コミュニティ支援サービスを運営しています。

特徴でいうと、コミュニティに貢献すればするほどコインが溜まるといった、インセンティブのモデルを構築できるんですね。貢献を価値化することで継続的に応援してくれるファンや協力者を増やす形で、結果としてコミュニティが活性化するようなイメージです。

例えば「議論メシ」というユニークなコミュニティがありまして。あるメンバーがいて、その方が2週間だけ、日本円じゃなく「議論メシ」の中にあるギロン(GRN)というコインで生活していく企画をやったりしています。

まさに資本主義じゃなく、新しい経済圏の中で生きていくような人たちがけっこう増えている印象で。こういった小さな経済圏がもっと増えていくと、より面白い時代になると思ってます。

あと、12月に法人様を対象としたコミュニティ支援サービス「fever for business」を提供開始します。サービスのファンコミュニティってこれからどの企業も注力していく流れになると思ってまして、Appleとかspotifyとかairbnbなどの成功企業はここにかなり注力してたりします。こういった形で今後も少しづつコミュニティ支援の領域を広げていきたいと思ってます。

前田:ありがとうございます。

(会場拍手)