必ず名前を覚えてもらえる、最高の持ちネタ

竹林一氏(以下、竹林):こんばんは、オムロンの竹林です。よろしくお願いします。

私は前職がドコモ・ヘルスケアというところで、ヘルスケア会社の社長をやっていました。だいたいヘルスケア会社の社長がプレゼンに出てきて元気がないというのは、ブランドのイメージを落とすんですね。

(会場笑)

例えば太ってるとかもそうですね。痩せてても「不健康や」って言われますから。ましてや血圧が高いとか、痛風で足が痛いなんて言ったら「まずは自分の健康なんとかせぇや」と言われるので。元気でやらせていただいています。

私はよく「しーさん」って書かれたりするんですけれども、なんで「たけばやしーさん」なのか。僕は京都出身なんですけども、大阪の人って、ちょっと視点が違うんですよね。

大阪にある会社の受付に行って、僕は名刺を出したんです。受付の女性が僕の名刺の名前を見て「すみません」って言われたんですね。なにかなと思ったら、「これ、伸ばすんですか?」って。どういうことかと思ったら、「これ、たけばやしーって読むんですか?」って言われたんです。

(会場笑)

そんな人おれへんやろって。みなさんに「話盛ってるでしょ」と言われるんですけれども、これ、本当にあった話なんです。でも、これはネタとして使えるなと。講演を受けることも多いので、この話をすると、みなさまの頭の中に「たけばやしー」がこびり付くんですね。

なにかあったときに「たけばやしー(竹林一)」って、GoogleとかFacebookで検索すると、猿にいっぱい囲まれた僕の写真が出てきます。そこでメッセージをいただいたら友だちになれるので、そこからネットワークが広がり、ビジネスにつながっていくビジネスモデルでございます。

(会場笑)

まぁそんなところから始めさせていただきたいなと思います。

覚悟がないなら、イノベーションをしてるフリだけでいい

今日は心理的安全性とイノベーションということでお話しをさせていただきます。もともと僕がなにをやってきたかと言うと、ベースはエンジニアなんですね。エンジニアとして会社に入って、その後ずっと新規事業を立ち上げてきました。

そのあと「会社の経営やれ」と言われたので、ソフトウェア会社の経営をやってきて。次は「生産会社が赤字なのでなんとかしてくれ」と言われて、生産会社を立て直しに行ったり。

立て直したら、今度は「これからはヘルスケアの時代だ!」となって、「ヘルスケアビジネスを立ち上げろ」というので、オムロンヘルスケアと一緒にドコモ・ヘルスケアという会社を立ち上げたりしてきました。

それもまた黒字で立ち上がったら、「いやいや、これからはIoTの時代だから戻ってこい!」って。もう、なんやよくわからん世界です。今はIoTのデータの流通市場を日本に仕掛けて、世界も含めて新しい市場自体を作ったれ、ということをやっています。

ここから今日のテーマのイノベーションと心理的安全性なんですけれども。そもそもイノベーションってなんなのか。これね、わかったようでわからないんです。

よく会社で「イノベーション起こせ!」と言われるんですけれども、イノベーション起こせって言われてもねぇ。あのね、ここだけの話をしときますよ。イノベーションは、起こさんほうが楽です。

(会場笑)

なぜかと言うと、今までのオペレーションをやっている人がいっぱいいるからです。イノベーションというのは、これまでのやり方などを新しく変えていくんですけど、オペレーションをやっている人に「変えるで!」と言ったらだいたい怒ります。覚悟がないんだったら、イノベーションはやっているフリをするのがいいんですね。

(会場笑)

やるんなら、覚悟を決めてイノベーションを起こさないといけないという話です。イノベーションをやろうとしたら、ハレーションが起こるんです。それをきっちりわかっておかないとダメですよね、という話です。

馬車を自動車に変えるだけがイノベーションではない

ところで、イノベーションってなんですかね? という話です。わからなかったら、いつも見ているウィキペディアで調べるんです。 

1911年にシュンペーターいう人が、初めて「イノベーション」と言ったんですね。「労働力など、それまでと異なる仕方で新結合することと定義した」ってね。定義したのはいいんですけど、それで「イノベーション起こせ」と言われても、なにしたらいいのかよくわからないんですよ。

ところが、このイノベーションというのはおもしろくて。よく読むと、新しい品質・生産、新しいプロダクトを作れと言ってるんですね。

新しい生産方式を生み出すのもイノベーションだと言ってるんです。新しい販売の仕方もイノベーション、原材料の供給源の新しい確保、これもイノベーションだと言っています。

さらに、新しい組織の実現。これもイノベーションだと。例えば、心理的に安全な組織を作ったら、それはイノベーションなんです。だから、人事であろうが技術であろうが、だれでもイノベーションは起こせるんです。

「イノベーションを起こすぞ!」と言われると、往々にして「馬車から自動車を作らないといけないのか!?」と。そんなものを作れる人はそうたくさんいないですから。ところが、今みなさまがやってるところで、新しい仕組みができて新しい価値を作ったら、それは全部イノベーションなんですよ。

オムロンで最も優れたイノベーションは、技術ではなく人事にある

オムロンにおいてはイノベーションって、ちゃんと定義されています。それはソーシャルニーズの創造、社会的課題の解決です。ところが、うちの創業者はソーシャルニーズの創造、社会的課題の解決は当然のこととして、更にシュンペーターと同様、「新しい価値、新しいものを、新しいやり方で変えたら、それは全部イノベーションだ」って。

うちは当然技術の会社なので、技術でイノベーションを起こせるんですけれども、そうではなくて「人事でも総務でもだれでもイノベーションは起こせるんや!」という話です。さっきも言いましたが、だれかが会社のなかに心理的安全性を作ったら、それはもうイノベーションなんですよね。

僕がオムロンで一番すごいなと思っているイノベーションがあるんです。世界初・日本初の技術はいっぱいあるんですけれども、僕がオムロンで一番すごいなと思っているイノベーションは「人事のイノベーション」なんです。

オムロンで管理職になってから6年目に、3ヶ月会社に来なくていいという制度があるんですね。これが一番凄いなあと思うイノベーションです。だいたい3ヶ月会社に来なくていいって言うと、みんなに羨ましいなって顔をされるんですけれども。羨ましいですか? 3ヶ月の間、給料もくれるんですね。

ところが、この3ヶ月休んでもいいっていうのは微妙なんです。だいたいマネージャーになって6年くらい経ってると、みんな部長クラスになってるんです。なにを考えるかと言うと、「俺がいなかったらこの部は回らん」とかです。あるいは「俺がいなかったらこの会社は回らないんだ!」ってね。でも、部長がいなくても回るんです。

(会場笑)

3ヶ月くらい、部長がいなくても回るんです。回ってるくらいだったらいいですけど、「部長がいなかったときに、心理的安全性が確保されました!」って言われたりね(笑)。「部長いなかったから、新しいアイデアをどんどん取り入れてくれました!」なんて、なりかねないですよね。

他にやりたいことがあれば、帰ってこなくてもいい

なんでそんな制度を作ったか。6年くらい経ったときに「ところで君、なんでオムロン来たの?」ってことを考え直してもらうためです。そもそも「なにかやりたいことがあってオムロンに入ったんでしょ?」って。みなさんもそうですよね。どこかの団体に所属されてるということは、そこでなにかやりたくて入ってるんですよね。

毎日働いてると、売上がどうの品質がどうの、生産性がどうのという話ばっかりされるんですけれども。それは一旦置いて、「なにをしたいのか?」を考えてきてくれって話ですね。やりたいことがあれば、帰ってきてね。そのための制度です。微妙でしょ?

(会場笑)

「やりたいことがあったら帰ってきて」って、つまり「やりたいことがないなら帰ってきてくれなくていい」ってことなんです。また、外にやりたいことがあれば、これも帰ってくる必要はありませんよね。僕の先輩は「この機会にモンゴルの遊牧民を見に行く」と言って、そのまま帰って来なかったんです。

(会場笑)

でも、それがその人にとって幸せなんだったら、別にいいですよね。やりたいこともないのに帰ってきて、また部長の席に座られても困りますし。たぶんその人は、部門で一番給料が多かった人ですから。

僕はちょうどその時期に新規事業立ち上げをやっていて、休めると思ってなかったんですけど、急に休みがとれることになって、しかし急だったんで何をするか決めてなかったんです。