キャンプ場のなかに会社を置くスノーピーク

辻庸介氏(以下、辻):はい、みなさんこんにちは。それでは第二部のパネルディスカッションをさせていただきたいと思います。このセッションは「経営を前に進める企業変革」というテーマでさせていただきます。

今日はお忙しいなか、僕が本当に尊敬するお二人の経営者の方にご登壇いただくことができました。では、簡単に自己紹介から始めたいと思います。山井さんからお願いします。

山井太氏(以下、山井):みなさん、おはようございます。スノーピークの山井と申します。

(スライドを指して)これはスノーピークのヘッドクオーターズという本社なんですけど、新潟県の燕三条の郊外の小高い丘にありまして。面積だとだいたい東京ドーム4つ分くらい、5万坪くらいの土地です。キャンプ場の中に会社があるんですね。

ここにスノーピークが引っ越したのが2011年で、ここに本社を7年くらい構えております。スノーピークはキャンプ用品を中心に作っていて、この本社に象徴されるようにコミュニティブランドでもあります。業界では「スノーピーカー」と言われているスノーピークの熱狂的なユーザーさんたちが、全国から年間で5万人くらいここにいらっしゃって、私たちと一緒にキャンプをさせていただいております。

:すごいですね。スノーピーカーでしたっけ、ファンの方の名前は。今日お越しの方で、スノーピーカーはいらっしゃいます? スノーピークのプロダクト持ってるよって方。

(会場挙手)

山井:けっこう多いですね、びっくりしました。

:けっこういらっしゃいますね、今日はよろしくお願いします。

ドラッグストアを軸に横展開で事業を広げるサツドラ

:次は富山さん、お願いします。

富山浩樹氏(以下、富山):はい。よろしくお願いいたします。このようなセミナーに呼んでいただいて恐縮です。おそらく「サツドラ」と聞いても、なかなかご存知の方はいないのかなと思います。北海道でドラッグストアを経営しております。

道内に約200店舗、隅々まで展開させていただいてまして、最近はホールディングスというかたちでグループ化をさせていただきました。ドラッグストアが主軸ではあるんですけれども、それを軸にさまざまな事業展開をしています。その1つの柱として、共通ポイントカードの「EZOCA」を運営させていただいてます。

たまたま今年、ビジネス誌のForbesに特集していただきました。このカードは当然サツドラでも使えるんですけれども、地域ならではの共通のポイントカードにしようということで、サツドラ(専用のカード)ではなく、EZOCAというポイントカードを別事業として立ち上げました。おかげさまで現在は120社、約700店舗で使用でき、道民の170万人にお持ちいただいています。世帯数でいうと、道民の50パーセント以上の方に持っていただいているカードとなっております。

このカードの特徴としては、単なるポイントカードではなく、地域還元型モデルを採っているところです。(スライドを指して)これはJリーグのサッカーチームのコンサドーレさんなんですけど、買い物をすれば金額の5パーセント分がチームに還元され、年に1回贈呈させていただいています。先ほどのセッションでブロックチェーンの話が少し出てましたけれども、こういった地域の新たなプラットフォームを、私なりに作りたいなと思っております。いわば、感情が乗ったポイントカードのようなものです。

この他にも、自治体に還元したり、バスケットボールのレバンガチームに還元したりといった、いろいろなモデルがあります。将来的にはEZOCAを新たな地域マネーのように育てていきたいと考えている会社です。今日はよろしくお願いします。

観光庁から正式に取り上げられた「元気です北海道」キャンペーン

:サツドラさんは北海道に200店舗あって、海外にも出されてますよね?

富山:そうですね、台湾にあります。日本国内では沖縄にも。あったかいところなんですけど。

:寒いところからあったかいところにといった感じですね(笑)。僕が富山社長にお会いしてけっこう驚いたのは、北海道でドラッグストアというリアルな店舗を展開されながら、バーチャルな事業についてもガーっと広げられているところで。そこがすごく特徴的だと思います。このEZOCAも道内共通のポイントなんですよね。

富山:そうです。北海道の共通のポイントカードとしてブランディングをしています。ふだんは小売の強豪であるスーパーマーケットさんやホームセンターさんにも加盟していただいているという感じですね。

:TwitterなどSNSでも、コンサドーレのファンが、サツドラさんをはじめ、EZOCAポイントに加盟している店舗で買い物したら応援になるからって買い物しているとか。

富山:そうです。5パーセントがチームに還元されるんで、熱狂的なサポーターの方が探し回って買い物をしていただいてるんですね。

:すごいですね。北海道が好きな人は、ドラッグストアならサツドラさんで買えば応援になるから、みたいなことになるんですよね。

富山:そうですね。やっぱりコンサドーレを応援したいというサポーターの人が来るんですけど、企業の方々も集まっていただいています。

:なるほど、おもしろいですね。

富山:そうなんですよ。ちょっとこの場を借りて宣伝をさせていただくと、我々は北海道にコミットしている会社ですので、応援団として「元気です北海道」というキャンペーンをスタートしています。これはSNSで有志が立ち上げたものなんですけど、あれよあれよという間に広まって、観光庁の正式なキャンペーンに採用されました。

:観光庁正式になったんですか(笑)。

富山:正式になったんですよ。僕もびっくりしたんですけど。まあでも、それだけの思いがみなさんあってですね。今回の北海道地震で、たしかに嫌なこともあったんですけど、それでもぜんぜん大丈夫な地域がいっぱいあるんで。風評被害じゃないですけど、やっぱりそれをみなさんにわかっていただきたくて。「がんばろう」っていうのはなんだか悲壮感があるんで、「元気です」という言葉で始めました。

:地震もそうですけど、電力が全部止まるのは衝撃的ですよね。

富山:そうですね、ブラックアウトは衝撃的でした。全部消えてしまいましたから。僕らも防災にはいろいろ備えてはいたつもりで、どこかがダメになったらこっちから救済しようとかあったんですけど、まさか全部とは。

:そうですよね。

富山:びっくりしましたね。でももう大丈夫なんで。先週GLAYさんも「元気です」ってツイートしてくれて、Twitterとかでハッシュタグ 「#元気です北海道」 で検索していただければいろいろ出てくるので。いま「北海道ふっこう割」で安いんで、ぜひ遊びに来てください。

:北海道ふっこう割って、何パーセントオフなんですか?

富山:50~70パーセントとすごい幅があるんですけど、人気があって1回売り切れちゃったんですが、また中旬に発売するんで。割引なくても来てくださいね(笑)。

:みなさん、次の旅行はぜひ北海道に。

富山:秋冬の北海道に。

コミュニティとしての会社の価値観をどう伝えていくか

:では本題に進んでいきたいと思います。すでに聞き及びのことかと思うんですが、山井社長と富山社長に来ていただいたのは、僕が最近、規模を追うような経済とか大量生産がもうかっこ悪いのではないか考えているところがありまして。あんまりワクワクしないと企業経営者としても感じています。

山井さんも富山さんも、コミュニティとかファンとか、そういうワクワクすることや、エモーションに頼るというと語弊がありますが、心を揺さぶるような会社を作っていらっしゃるリーディングカンパニーだなと思っております。

それで、いくつかテーマを用意しました。1つ目にお聞きしたいのが、コミュニティとしての会社の価値観をどうやって伝えているか。今後はインターネットで広がっていくコミュニティの考え方ってすごく大事になると思うんですけども、こういったことをやっているよとか、こういう考えでやってるよというのを、みなさんにシェアしていただければなと思います。富山さんはいかがでしょうか。

富山:私は最初に山井社長にお会いしたときに、十勝のグランピングっていうところに誘っていただいたんですけど。それがもう、衝撃的でですね。いろんな方々がいらっしゃったんですけど、そこには何人かお客さまもいらっしゃって。スノーピーカーの本当にコアなお客さまですね。

その方々と一緒に夜飲みに行くんですけど、山井社長との距離感の近さがもう、子ども同士だとかお隣同士だとかっていうくらいの近さでびっくりして。そこで(山井社長が)「浩樹……」、僕は浩樹っていう名前なんですけど(笑)。

:これからはもう浩樹呼ばわりで(笑)。

富山:そうですね(笑)。「浩樹、これからはコミュニティマーケティングなんだ」っていう話を聞いて、影響と衝撃を受けたといったところで。

スノーピーカーからすると、社長はキャンプ友だちのようなもの

山井:そうですね(笑)。スノーピークは簡単に言うとキャンパーtoキャンパーの会社なんですね。80年代の後半くらいに、オートキャンプと呼ばれるミニバンやSUVで移動してやるキャンプの世界観を作ったんです。その頃のキャンプってすごく貧しいもので。当時キャンプやってるっていうと、夏休みとかゴールデンウィークの長い休みにお金をかけずにするもので。「お金をセーブするんだよ」とか「君ちょっと貧しいな」みたいに言われてたんですよ(笑)。

2年くらい前に繊研新聞さんから特別賞をいただいたんですけど、そのとき「キャンプをおしゃれなアクティビティに変えたスノーピーク」っていうタイトルだったんですね。そもそも僕自身がキャンプ大好きで、今までにたぶん2,000泊くらいキャンプをしてます。

:に、2,000?

山井:はい、人生で2,000泊キャンプをやっていて。

:毎日やっても7年かかる(笑)。

山井:そうですね(笑)。今でもだいたい年間30〜40泊くらいキャンプをやっているんです。そんなキャンプ大好きな人間として、自分たちもちゃんと使いたくなるような、おしゃれでなおかつ機能も高くて、永久保証も付いているキャンプ用品を手がけています。それがたぶん、他の会社とぜんぜん違う製品・サービスに反映されているんですね。そこで「あ、この商品、ここわかってるな」と。

キャンプやってる人が作る商品とそうじゃない商品は、キャンプ好きにはすぐわかります。そもそも、そういう人間たちが集まっているのがスノーピークなので、ユーザーさんと我々の中っていうのはあんまり区分けがないんですよね。イベントは1998年から20年間くらいずっと主催しているんですけど、僕は一応スノーピークの社長なものの、そのユーザーさんから見ると、キャンプ友だちの先輩である「太さん」みたいなもので。

:はいはい、なるほど。

山井:「浩樹」「太さん」みたいな間柄なんですけれども。僕はユーザーさんとも同じ関係性にあって、あそこは物言えばちゃんと反映されるブランドですねって思われているんです。なので、イベントやSNSを通じて毎日かなりのフィードバックをいただきながら経営をしている会社です。