2024.10.10
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辻庸介氏(以下、辻):はい、みなさんこんにちは。それでは第二部のパネルディスカッションをさせていただきたいと思います。このセッションは「経営を前に進める企業変革」というテーマでさせていただきます。
今日はお忙しいなか、僕が本当に尊敬するお二人の経営者の方にご登壇いただくことができました。では、簡単に自己紹介から始めたいと思います。山井さんからお願いします。
山井太氏(以下、山井):みなさん、おはようございます。スノーピークの山井と申します。
(スライドを指して)これはスノーピークのヘッドクオーターズという本社なんですけど、新潟県の燕三条の郊外の小高い丘にありまして。面積だとだいたい東京ドーム4つ分くらい、5万坪くらいの土地です。キャンプ場の中に会社があるんですね。
ここにスノーピークが引っ越したのが2011年で、ここに本社を7年くらい構えております。スノーピークはキャンプ用品を中心に作っていて、この本社に象徴されるようにコミュニティブランドでもあります。業界では「スノーピーカー」と言われているスノーピークの熱狂的なユーザーさんたちが、全国から年間で5万人くらいここにいらっしゃって、私たちと一緒にキャンプをさせていただいております。
辻:すごいですね。スノーピーカーでしたっけ、ファンの方の名前は。今日お越しの方で、スノーピーカーはいらっしゃいます? スノーピークのプロダクト持ってるよって方。
(会場挙手)
山井:けっこう多いですね、びっくりしました。
辻:けっこういらっしゃいますね、今日はよろしくお願いします。
辻:次は富山さん、お願いします。
富山浩樹氏(以下、富山):はい。よろしくお願いいたします。このようなセミナーに呼んでいただいて恐縮です。おそらく「サツドラ」と聞いても、なかなかご存知の方はいないのかなと思います。北海道でドラッグストアを経営しております。
道内に約200店舗、隅々まで展開させていただいてまして、最近はホールディングスというかたちでグループ化をさせていただきました。ドラッグストアが主軸ではあるんですけれども、それを軸にさまざまな事業展開をしています。その1つの柱として、共通ポイントカードの「EZOCA」を運営させていただいてます。
たまたま今年、ビジネス誌のForbesに特集していただきました。このカードは当然サツドラでも使えるんですけれども、地域ならではの共通のポイントカードにしようということで、サツドラ(専用のカード)ではなく、EZOCAというポイントカードを別事業として立ち上げました。おかげさまで現在は120社、約700店舗で使用でき、道民の170万人にお持ちいただいています。世帯数でいうと、道民の50パーセント以上の方に持っていただいているカードとなっております。
このカードの特徴としては、単なるポイントカードではなく、地域還元型モデルを採っているところです。(スライドを指して)これはJリーグのサッカーチームのコンサドーレさんなんですけど、買い物をすれば金額の5パーセント分がチームに還元され、年に1回贈呈させていただいています。先ほどのセッションでブロックチェーンの話が少し出てましたけれども、こういった地域の新たなプラットフォームを、私なりに作りたいなと思っております。いわば、感情が乗ったポイントカードのようなものです。
この他にも、自治体に還元したり、バスケットボールのレバンガチームに還元したりといった、いろいろなモデルがあります。将来的にはEZOCAを新たな地域マネーのように育てていきたいと考えている会社です。今日はよろしくお願いします。
辻:サツドラさんは北海道に200店舗あって、海外にも出されてますよね?
富山:そうですね、台湾にあります。日本国内では沖縄にも。あったかいところなんですけど。
辻:寒いところからあったかいところにといった感じですね(笑)。僕が富山社長にお会いしてけっこう驚いたのは、北海道でドラッグストアというリアルな店舗を展開されながら、バーチャルな事業についてもガーっと広げられているところで。そこがすごく特徴的だと思います。このEZOCAも道内共通のポイントなんですよね。
富山:そうです。北海道の共通のポイントカードとしてブランディングをしています。ふだんは小売の強豪であるスーパーマーケットさんやホームセンターさんにも加盟していただいているという感じですね。
辻:TwitterなどSNSでも、コンサドーレのファンが、サツドラさんをはじめ、EZOCAポイントに加盟している店舗で買い物したら応援になるからって買い物しているとか。
富山:そうです。5パーセントがチームに還元されるんで、熱狂的なサポーターの方が探し回って買い物をしていただいてるんですね。
辻:すごいですね。北海道が好きな人は、ドラッグストアならサツドラさんで買えば応援になるから、みたいなことになるんですよね。
富山:そうですね。やっぱりコンサドーレを応援したいというサポーターの人が来るんですけど、企業の方々も集まっていただいています。
辻:なるほど、おもしろいですね。
富山:そうなんですよ。ちょっとこの場を借りて宣伝をさせていただくと、我々は北海道にコミットしている会社ですので、応援団として「元気です北海道」というキャンペーンをスタートしています。これはSNSで有志が立ち上げたものなんですけど、あれよあれよという間に広まって、観光庁の正式なキャンペーンに採用されました。
辻:観光庁正式になったんですか(笑)。
富山:正式になったんですよ。僕もびっくりしたんですけど。まあでも、それだけの思いがみなさんあってですね。今回の北海道地震で、たしかに嫌なこともあったんですけど、それでもぜんぜん大丈夫な地域がいっぱいあるんで。風評被害じゃないですけど、やっぱりそれをみなさんにわかっていただきたくて。「がんばろう」っていうのはなんだか悲壮感があるんで、「元気です」という言葉で始めました。
辻:地震もそうですけど、電力が全部止まるのは衝撃的ですよね。
富山:そうですね、ブラックアウトは衝撃的でした。全部消えてしまいましたから。僕らも防災にはいろいろ備えてはいたつもりで、どこかがダメになったらこっちから救済しようとかあったんですけど、まさか全部とは。
辻:そうですよね。
富山:びっくりしましたね。でももう大丈夫なんで。先週GLAYさんも「元気です」ってツイートしてくれて、Twitterとかでハッシュタグ 「#元気です北海道」 で検索していただければいろいろ出てくるので。いま「北海道ふっこう割」で安いんで、ぜひ遊びに来てください。
辻:北海道ふっこう割って、何パーセントオフなんですか?
富山:50~70パーセントとすごい幅があるんですけど、人気があって1回売り切れちゃったんですが、また中旬に発売するんで。割引なくても来てくださいね(笑)。
辻:みなさん、次の旅行はぜひ北海道に。
富山:秋冬の北海道に。
辻:では本題に進んでいきたいと思います。すでに聞き及びのことかと思うんですが、山井社長と富山社長に来ていただいたのは、僕が最近、規模を追うような経済とか大量生産がもうかっこ悪いのではないか考えているところがありまして。あんまりワクワクしないと企業経営者としても感じています。
山井さんも富山さんも、コミュニティとかファンとか、そういうワクワクすることや、エモーションに頼るというと語弊がありますが、心を揺さぶるような会社を作っていらっしゃるリーディングカンパニーだなと思っております。
それで、いくつかテーマを用意しました。1つ目にお聞きしたいのが、コミュニティとしての会社の価値観をどうやって伝えているか。今後はインターネットで広がっていくコミュニティの考え方ってすごく大事になると思うんですけども、こういったことをやっているよとか、こういう考えでやってるよというのを、みなさんにシェアしていただければなと思います。富山さんはいかがでしょうか。
富山:私は最初に山井社長にお会いしたときに、十勝のグランピングっていうところに誘っていただいたんですけど。それがもう、衝撃的でですね。いろんな方々がいらっしゃったんですけど、そこには何人かお客さまもいらっしゃって。スノーピーカーの本当にコアなお客さまですね。
その方々と一緒に夜飲みに行くんですけど、山井社長との距離感の近さがもう、子ども同士だとかお隣同士だとかっていうくらいの近さでびっくりして。そこで(山井社長が)「浩樹……」、僕は浩樹っていう名前なんですけど(笑)。
辻:これからはもう浩樹呼ばわりで(笑)。
富山:そうですね(笑)。「浩樹、これからはコミュニティマーケティングなんだ」っていう話を聞いて、影響と衝撃を受けたといったところで。
山井:そうですね(笑)。スノーピークは簡単に言うとキャンパーtoキャンパーの会社なんですね。80年代の後半くらいに、オートキャンプと呼ばれるミニバンやSUVで移動してやるキャンプの世界観を作ったんです。その頃のキャンプってすごく貧しいもので。当時キャンプやってるっていうと、夏休みとかゴールデンウィークの長い休みにお金をかけずにするもので。「お金をセーブするんだよ」とか「君ちょっと貧しいな」みたいに言われてたんですよ(笑)。
2年くらい前に繊研新聞さんから特別賞をいただいたんですけど、そのとき「キャンプをおしゃれなアクティビティに変えたスノーピーク」っていうタイトルだったんですね。そもそも僕自身がキャンプ大好きで、今までにたぶん2,000泊くらいキャンプをしてます。
辻:に、2,000?
山井:はい、人生で2,000泊キャンプをやっていて。
辻:毎日やっても7年かかる(笑)。
山井:そうですね(笑)。今でもだいたい年間30〜40泊くらいキャンプをやっているんです。そんなキャンプ大好きな人間として、自分たちもちゃんと使いたくなるような、おしゃれでなおかつ機能も高くて、永久保証も付いているキャンプ用品を手がけています。それがたぶん、他の会社とぜんぜん違う製品・サービスに反映されているんですね。そこで「あ、この商品、ここわかってるな」と。
キャンプやってる人が作る商品とそうじゃない商品は、キャンプ好きにはすぐわかります。そもそも、そういう人間たちが集まっているのがスノーピークなので、ユーザーさんと我々の中っていうのはあんまり区分けがないんですよね。イベントは1998年から20年間くらいずっと主催しているんですけど、僕は一応スノーピークの社長なものの、そのユーザーさんから見ると、キャンプ友だちの先輩である「太さん」みたいなもので。
辻:はいはい、なるほど。
山井:「浩樹」「太さん」みたいな間柄なんですけれども。僕はユーザーさんとも同じ関係性にあって、あそこは物言えばちゃんと反映されるブランドですねって思われているんです。なので、イベントやSNSを通じて毎日かなりのフィードバックをいただきながら経営をしている会社です。
辻:今日おいでいただいている方々の中にも、ユーザーさんに感動してもらえるサービスやプロダクトを作ることに、日々悩まれている方は多いと思うんですけども、僕も日々悩んでまして。山井さんが今サラッとおっしゃいましたけど、ユーザーさんが「わかってるね」っ思えるプロダクトを作るって、言うは易しなんですけど、やるのはすごい大変だなと思うんです。いったいどうされているんですか?
山井:僕は「『好きなことだけ!』を仕事にする経営」という本を書きました。みなさんも各々いろんな企業さんとか組織に属していると思いますが、その中で自分が好きなことをやっていける時代になってきていると思うんですね。むしろ、その“好き”をやることによって共感を得て、そこからコミュニティができるような時代になっていると思います。
辻:ものづくりにおいて「好きなことだけをする」っていうのはどういうことですか? プロダクトを作る上で、自分が使って楽しいやつを作ろうぜって感じですか?
山井:そうですね。キャンプをおしゃれにするために、スタイル的にはドームテントをベッドルームとして、タープという幕帯を張り、その下にシステムデザインされたダイニングキッチンというスタイルを88年に打ち出したんです。
でも、当時のテントって雨漏りしたり、風が吹くと壊れたりとかしてたんですよね。当時のテクノロジーで最高のテントを作ろうと思って、僕が初めて作ったテントは16万8,000円なんです。マーケットで9,800円か19,800円の商品しかないときに、いきなり17万円みたいな。
辻:それ、社内で反対は起きますよね?(笑)。
山井:もちろん全員反対したと思う(笑)。
(一同笑)
辻:「殿ご乱心です!」みたいな感じですよね(笑)。
山井:でも、初年度で100人くらいは買ってくれたんですよ。
辻:ひゃ、100人……(笑)。
山井:まあ、たった100ではあるんですけど。でもそれは日本にハイエンドなキャンプのマーケットができた瞬間でもあって。
辻:ああ、なるほど!
山井:好きじゃないとできないことってあって。とくにブルーオーシャンにマーケットを作ろうと思ったら、そういう自分が大好きなことで、「僕と同じような人がいる」って信じてサービスを作るというアプローチをしていかないと、やっぱりできないと思うんですよ。
辻:なるほど。おもしろいですね。
山井:100張も売れたんで、つまり100人も変態がいたのかと思ったんですよね。
辻:へえー!
山井:僕と同じような変態が100人分いた! みたいな(笑)。
辻:1張で16万円って、合理的に押し切ってというより、やりたいからやるって感じですよね。
山井:そうですね。ですから、そんなことはたぶん、もう僕しかやらない。他のだれ1人そんなとこ狙ってないんで。というところでマーケットができて、コミュニティにつながっているんじゃないかなとは思いますね。今までの会社やブランドとは、あきらかに違うアプローチをしましたんで。
辻:富山さんもお話されたそうですね。
富山:ああ、いや、スノーピークさんすごいですよね、はい。
(一同笑)
富山:いや本当にすごい……。僕さっきご紹介のあった本社のヘッドクォーターにもお邪魔して、製品とかイベントの様子とかも見せていただいたりしたんです。本当に今おっしゃった距離感とか、お客さまの声を取り入れるっていうが、一緒に遊んでる中で行われてるってのをすごく感じて。あと永久保証なんですよね。
山井:そうだね。
辻:永久保証なんですか?
山井:そうなんですよ。ユーザー目線でモノを作るっていうコンセプトで出したんですけど、ユーザーにとって一番イヤなのは、機能が損なわれたり、モノが壊れたりすることなんですよね。例えばすごく気候条件が悪いときにモノが壊れたりすると、命にもかかわりますのでそれは避けたいなと。「壊れない」ってくどくど説明するのも面倒くさいし、それなら「永久保証です」って言ったほうが早いので。それで永久保証をつけました。
辻:そういう思いでプロダクトを作られて、キャンプ好きな人は「わかってるなこの会社」みたいになる。そしてだんだん会社との距離が近くなり、信頼関係が醸成されて、あのキャンプ場に行ったらみんなもう大好きになっちゃうっていう。
山井:そうですね。最初からコミュニティを作ろうと思ってやってきたわけじゃないんです。ユーザーを幸せにするためにしか存在しない会社なので、それを年々やっていたらコミュニティができてたっていう感じですかね。
辻:僕も経営者としてけっこう悩むんですけど、企業として売り上げを追いかけるとかって、結果にすぎないじゃないですか。お客さまに喜んでもらって、それが提供価値になるから売り上げが立つということですよね。
売り上げを追いはじめると企業がおかしくなる気がするんですけど、コミュニティを作ろうとかユーザーさんだけを見ようとすると、「成長ってそこまで重要なんでしたっけ?」ってなることがたまにあったりして。経営者として、そのバランスはどうしてますか?
山井:企業である以上、成長したほうがいいわけで。ただ、スノーピークの社内ではユーザーさんとすごく近いので、彼らの幸せの量のスコアが我々の売り上げだと解釈しています。
辻:なるほど、ありがとうございます。じゃあ富山さん、あ、浩樹さんはどうですか?
富山:あ、浩樹です(笑)。山井社長が言うようにコミュニティの時代になってきたなって私もひしひしと感じていて。EZOCAを作るときにも、一番大事にしたのがコミュニティなんですね。従来ポイントカードって、「お得」とか「便利」っていうベネフィットだったと思うんです。でもEZOCAでは、その上にもっと大きくかぶさるようにEZO CLUBっていう概念を作ったんです。
正式名称「EZO CLUB ポイントカード」の略でEZOCAってことにして、そこではやっぱり「楽しい」だとか「集まる」「つながる」っていうことをベネフィットにしようと。それこそが地域でやる意味だなっていう着想がありまして。なので「北海道が好きですか?」ってことが、「EZO CLUBです」とイコールっていうくらい広くなるように。別にEZOCAを持っていなくてもいいという、広い意味でEZO CLUBを作ろう、ということでスタートしています。
もちろんコンサドーレは応援してるんですけど、僕らはどちらかというと、コンサドーレを応援してる人を応援しますみたいな感じです。コンサドーレのコミュニティに徹底的に入り込んでいるんですよね。売り上げの話がありましたけど、EZO CLUBっていうコミュニティの活動ってすごく泥臭くて、正直手間もすごくかかって、我々のコミュニティリーダーが日々コミュニティの方々とやりとりをしている感じなんです。だから正直マネタイズできてるかって言われると、最近やっと企業さんとのマッチングで少しづつ収益になり始めましたというぐらいです。
5年かけて思ったのは、マネタイズという概念ではなく、ずっとコミュニティだけで、とにかくつながって広げようってやってきたんですね。結果的にEZOCAが他と違う特性になったし、他のポイントカードじゃなくてEZOCAに入りたいと企業さんに思っていただけたのがモチベーションになってるかな感じてます。
辻:なるほど。
辻:共感とおっしゃいましたけど、人間っていろんなことに軸があって、共感する軸もいろいろあると思うんです。結局、そのうちのなにか1つでもつながると、会社と人と企業を越えた価値観が共有されて、会社のやることを応援したいなとか、自分もその一部になりたいなとか、そうなっていくイメージが湧きます。ですが、先ほどおっしゃったコミュニティを作って、はじめに売り上げありきにするのって割と危なくて。それってすごくパワーかかるじゃないですか。
そこでお二方にお聞きしたいんですけど、コミュニティリーダーを作るとかの方法論は大事だと思うんですけど、もっと根本的な思想とか考え方が大事で。例えば、社長に「じゃあコミュニティ作れ」と言われたけど、どうやってやったらいいんだろうと考えているようではできないんだろうなと思ってまして。そのあたりのヒントなどを教えてもらいたいです。
富山:スノーピークさんのところもそうですけど、双方向であるところでしょうか。プッシュでこちらから押し付けてもいけないですし、お互いの共通項を探して、その距離感を共有していくっていうのはすごく重要かなと。具体的なところじゃなくて申し訳ないんですけれども、本当に常にギブするというか。
コミュニティの運営で失敗したこともあります。我々にはそのつもりがなかったとしても、異常に企業色を出しすぎたり、都合の良いお願いを先にしてしまったりとかすると、やっぱりサッと引いてしまいます。
でも、お互いにこうやって集まってなにか新しいものが生まれればっていうことで関係性を築いていければ。「EZO CLUBさんのためだったらこういうことできますよ」とか、「こういうことできませんか?」ってコミュニティのほうから言っていただけるようになるという関係性ができたので、やっぱりそれが重要なのかなって思いますね。
辻:おもしろいですね。
辻:山井さんはいかがですか?
山井:そうですね、一番コアにあるのは「楽しい」ってことだと思っていて。例えば、キャンプやってお料理作ってお酒を飲んでというのと、東京で普通に居酒屋さんで時間を過ごすというのとは、同じメンツでもたぶん、つながりの深さが変わってきたりもするので。それがキャンプの持ってる力だとも思っているんですけれど。
個人個人の人間性が回復し、友だちや家族とも仲良くなる。その「楽しい」っていう時間を共有することによって、つながりが広がってくるのが、たぶんコミュニティの一番コアにあることなんだと思います。
辻:なるほど。今お聞きしていて、最近「モノじゃなくてコトが買いたい」とか、「コト消費」なんて言われますけど、まさにキャンプってそうですね。
富山:そうですね。だからこちら側が中心になると、コミュニティってあんまり成立しないなと思ってて。たぶんスノーピークさんって、キャンプが好きな人がもう勝手に集まったりするじゃないですか。当たり前ですけど、スノーピークさんの波は、会社の人がいなくても勝手に集まったりする状態とかにあると思うんですけど。
どうやってそういう状態を作るか。これは他のサービスなんかでもそうだと思うんですけど、今はオンラインサロンだとかいろいろなコミュニティがありますよね。
こういうカンファレンスもそうですけど、ネットワークが生まれたときに、主催者側がプッシュしなくても、つながった人がまた集まってくるとか。これも1つのコミュニテイだと思うんですけども、そうやって動き始めると本当にコミュニティが動いているなと実感しますね。
辻:ちょっと話がずれるかもしれないんですけど、僕もキャンプ初心者で。最近3度くらいキャンプをやったんですけど、完全にデジタル社会に生きてるので、常にスマホがないと病気みたいな感じで落ち着かないんです。キャンプに行くと、今のケータイ社会で病んでる部分が人間らしくある、みたいな。なんかそういうのありますよね。
山井:そうですね。キャンプのマーケットって、そもそも先進国にしかないんですよね。意外にキャンプのマーケットがある国数って少なくて、たぶん50〜60ヶ国くらいにしかマーケットはないと思うんです。IT業界の割合が大きいところにはキャンプのマーケットがあるんですね。そういう意味では社会問題を解決するビジネスだと思っています。
世界にはまだ、地球のサステイナブルなリズムで生きている人も多いと思うけど、先進国はそこからちょこちょこ超えてしまっていて、住んでるだけでストレスが溜まったりとか。スノーピークもそうはいいながら、会社の中で仕事をすることも多くて、ストレスが相応にある会社なんですけれども。キャンプで補完できて、バランスがとれてるっていうところがあると思いますね。
辻:なるほど。今日会場来られている方で、キャンプに1回でもやったことあるって方どのぐらいいらっしゃいますか? よかったら挙手いただいていいですか?
(会場挙手)
富山:これ、すごく多いですね。
山井:多いですね。実は今、日本のキャンプ人口って、人口比で7パーセントしかいないんですよ。850万人くらいしかいないので。会場には50パーセントくらいいましたね。なのでたぶんバランス感覚が非常にいい方々なんだと思います。
富山:え、7パーセントしかいないんですか?
山井:そうなんです、7パーセントしかいないですよ。
辻:キャンプって、けっこう知り合いがやってないと行けないですね。自分で行こうと思って「行くぞ」って言うと、「なにパパどうしたの?」みたいなことを言われて困ると。知り合いとつながっているとか、コミュニティとかがないと難しいですね。
山井:そうですね。
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