工場の名前が世に出ることの是非

高橋遼氏(以下、高橋):先ほどステークホルダーの中でもとくに大切にされているものが2つあるという話がありました。工場の方とお客さまの2つですね。それについて2つ聞いていきたいなと思っています。

失礼ながら、僕は「ここがファクトリエさんの本質だな」とすごく感じたところがあって。以前『カンブリア宮殿』というTV番組に出演されていたじゃないですか。そのときに、工場で働かれている方のインタビューの中で、ご自身の工場の名前がブランドとして世の中に出ていくことについて、「ブランドが前に出ていくことの責任を感じます」ということをおっしゃっていました。

作り手がお店に納品したら終わりだという考え方って、もう終わっていると思っていて。最終消費者まで想像していくということが求められている中で、「希望小売価格」ではなく「希望工場価格」ということで工場の方に価格を決めていただくという仕組みになっているというお話でした。

それって工場の方にとってはすごくチャンスでありながら、一方ですごく責任感を負わされるというか、よりしっかりとしたものを作らなきゃいけないと感じるところがあるかなと思いました。

工場の方に対して売り手を想像させる狙いみたいなものって、どこまで考えられていたのかなぁというところが質問です。

山田敏夫氏(以下、山田):ありがとうございます。さっきお伝えしたように、下請けとして、ただ「ものを作る」というのは……日本のものづくりのほとんどが「海外実習生を呼んで安い賃金で作ろう」という、作業ベースのものが多いんですね。

ものづくりの本質って、考えることを楽しんで、相手のことを考えて付加価値を付けてやっていくところがすごく重要だと思っています。

縫製工場って、まだまだ最低時給のところが多いんですね。ブランドが、中国やバングラデシュやミャンマーやベトナムと同じコストで作らせようとしてきたからなんです。それをやめようよと。最低賃金が750円だから760円に上がったらどうしよう、と考えるんじゃなくて。

コスト削減型から価値型への転換

山田:地方創生の鍵は、もっとぼったくることだと思っているんですね。「ぼったくる」って言葉が悪いんですけど、きちんとお金をもらうということです。フランスにはパリの北東にシャンパーニュという地方があります。

シャンパーニュ地方の平均所得って、パリより高いですからね。フランスで一番平均所得が高いのはシャンパーニュ地方なんです。彼らがなにをやっているかと言うと、シャンパンを作っています。それも2~3人の家族でやっているんですね。

だから自分たちが、「熊本だから東京より安くニンジンを売らなきゃいけない」という考え方をやめようと。東京では200円なのに、なんで熊本で100円で売らなきゃいけないのか。そうじゃなくて、熊本で500円、1,000円で売ろうよと。その分価値を付けたものを売ろうよ。ということです。

僕はコスト削減型から価値型に変えたいんです。なので僕は、消費者を意識することもそうだし、工場側が価値をどう作っていくのかということを一緒に考えているんですね。

最初はできないですよ。下請けに慣れていて、材料も届いて、デザインもパターンも全部依頼が来たものをそのまま受けて縫うだけの工場だったので。生地の会社も紹介しますし、デザイナーも紹介しますし、パタンナーも紹介します。ものづくり以外は僕らが全部やります。売ることも全部やるし。最初は彼らもできないのでちょっとずつですね。

でも、僕らが6年やってきて、最初の工場なんてもう自分たちのブランドの売上比率が3割超えてきたので、めちゃくちゃ安定して売上がいいんですね。そうすると、若手が「自分たちのブランドで服を作っているんだ」「しかも海外でも売れている」となるから、そりゃあやりたいわけですよね。しかも最低時給でもないし。

日本のものづくりは価値型に切り替えていかないとAIに負けるし、海外の安い労働力に負けるって思っているんですよ。だから根本はそっちです。価値を創っていくために考え方を変えるっていう。

「作り手の想いで買う」がメジャーになればそれでいい

高橋:自分たちで決めていくことによって、やらなきゃいけない仕事がやりたい仕事になっていくということですね。消費者の声を生産者や工場の方々にフィードバックする仕組みみたいなものは、あったりするんですか?

山田:そうですね。僕らって工場のファンでもあるので、工場ツアーに参加して直接言っていますね。「ここがもっとこうなったらいいんですけど」とか。

あと、僕らに届く話は全部工場にも伝えますし、「工場サミット」は全工場に横のつながりがあるので、情報交換してもらっています。そこにお客さまも一部いらっしゃるので、そこからもフィードバックがいきます。

僕らの場合、ファクトリエとして有名になりたいわけでは一切なくて。「作り手の想いで買う」という概念がメジャーになればそれでいいんですね。「ファクトリエが世界ブランドに」って思いがちですけど、そうではなくて。「ファクトリエで売っている工場名で買う」っていう時代を作るためなので、僕らは黒子です。

例えるなら、「伊勢丹で買ったら安心だよね」というようなものだと思っていて。だからそこにあるブランドこそが重要で、僕らは最初はそこの目利きをやるけれど、最終的に僕らから離れて飛び立っていく工場がいたとしても、僕は大歓迎だし。

工場名を出しているので、別にファクトリエじゃないところで自分たちで売っていってもいい。僕らは本当に黒子だと思っているので、この概念を世の中に広げたい。

自分たちが熱狂していれば、その余熱が人に伝わる

高橋:先ほど熱狂的なファンという言葉も出てきたんですけれども、このセッションのために山田さんは「熱狂! 熱狂!」っておっしゃっているわけではなくて(笑)。僕らが言う前からずっと、山田さんは熱狂的なファンという言葉を使われていたと思います。

ファクトリエさんの顧客に対する向き合い方として、どんなことをされているのか。先ほど「仲間」というお話もありましたけれども、おうかがいできたらと思います。

山田:ありがとうございます。まず、熱狂の「熱」って伝導すると思っているんですね。僕らが思いっきり熱狂して楽しんでいる余熱がお客さまに伝わると思っているんです。

なので、お客さまとのコミュニケーションについて「こうやればブランドになれる」「こうやれば熱狂的なファンが作れる」と僕は思っていないんです。重要なのは、僕らがどれだけ熱狂しているかなんですね。ファクトリエのお客さまから僕らの仲間になるっていうケースはすごく多いですし。

まず僕らが楽しいし、僕らが何着でもほしいと思える商品以外は作らないです。僕らが最高だと思えるもの以外は作らない。去年流行ったり、ほかのブランドで売れているとしても、どうでもいいです。大事なのは僕らが最高と思えるかっていうことだけで。

だから、うちの会社ってたくさん失敗もしているんです。横浜のお店は去年撤退しましたし、海外でも、この間300万円の詐欺に遭ったり、いろいろな失敗があったんです。

自分の仕事が“私事”になる人以外、採用しない

僕たちは「成長シート」というものをやっているんですね。成長シートとはなにかと言うと……自分の夢に向かってこの1年間どういうふうにしなきゃいけないかというのを、僕と3ヶ月に1回面談するんですね。

要は、自分の夢と会社の夢が一緒で、なおかつ会社にどういうことをやってもらえたら最高かっていうのを3ヶ月に1回話し合うんです。うちのメンバーがファクトリエという会社に思うことは……この会社は自分の夢に対して応援してくれるかという、言わば器なんですね。

僕らはチーム作りをすごく大切にしていて、採用のときから、自分たちの仕事が私事(わたくしごと)になる人以外は採用しないんです。仕事が「わたくしごと」のほうの私事になる。だから、夢と僕らの数字がつながっていない人は採用しません。

採用するなかで、社員全員へのプレゼンというのが必ず1つ入っていて。must、can、willという順で言うんですね。入ることによって、自分はこの会社にとってどんな課題解決ができるか、自分はどういう価値を発揮できるか。その次がcanで、自分はそれに対してなにができるか。willは、自分は将来なにをやりたいか。それをプレゼンしてもらいます。

最終面接は僕なんですけど、僕との話は基本、その人にとっての仕事が「事に仕える」じゃなくて「わたくしごと」のほうの私事になっているかという確認です。そのために3ヶ月に1回、僕と成長シートというのを見つめ合って、何が毎日やるべきルーティーンかとか、どうなっていかなきゃいけないかというのを話し合います。

自分たちがいまやっている筋トレが単なる筋トレなのか、未来のインターハイ優勝に向けての筋トレなのかによって、同じ筋トレでも意味合いがかなり変わるんですね。

こんなことをやっているので、うちのメンバーが一番熱狂しています。お客さまからカスタマーサポートに電話があっても、お店に来ていただいても、ECで買うときの問い合わせにしても、僕らが熱狂しているので、その余熱が伝わっていっているという状況ですかね。