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顧客集客とコンバージョンで成果をあげるチャットボット事例 -サーバーレスで実現する O2O 基盤ー(全2記事)

2018.06.21

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登場人物と会話できる仕掛けが異例のヒット 映画『名探偵コナン』のO2O施策の舞台裏

提供:アイレット株式会社

2018年5月30日~6月1日の3日間にわたり、日本最大級のクラウドコンピューティングカンファレンス「AWS Summit Tokyo 2018」が開催されました。本セッションでは、『顧客集客とコンバージョンで成果をあげるチャットボット事例 -サーバーレスで実現する O2O 基盤ー』と題し、「人をたくさん集める」「来場者のアクションを誘発する」といった、マーケティングのニーズを実現する方法と成果を紹介。本パートでは、記録的ヒットを出した『名探偵コナン』シリーズの映画のチャットボット事例について語りました。

オープニング:アイレットの後藤和貴が登壇

後藤和貴(以下、後藤):みなさん、こんにちは。私はアイレット株式会社で、これまではエバンジェリストの肩書きで話をする機会が多かったのですが、最近は事業戦略本部の本部長もやっています。何百人を前にしてプレゼンをするのは久しぶりです。どうぞよろしくお願いします。

今回はタイトルとして『顧客集客とコンバージョンで成果をあげるチャットボット事例』、サブタイトルとして『サーバーレスで実現するO2O基盤』ということで、技術的な話が少なめで、マーケティング寄りの話が中心です。

最初にちょっとみなさんにアンケートを取りたいんですけれども、「職種がエンジニアである」という方は、どのぐらいいらっしゃいますか?

(会場挙手)

……半分はいないですね。

今回の内容は、マーケティング寄りなので、「活用したらこうなるよ」とか、「AWSの各々のサービスをこう使うとこんなふうに役立つよ」という事例として捉えていただけると非常にありがたいです。

最初にちょっとだけ自己紹介いたします。

略歴はいろいろあります。エンジニア出身で、デザインの会社にいたりしながら、実は8年前ぐらいにクラウド、AWSに出会いました。そこからAWSを好きになって「cloudpack(クラウドパック)」という事業の立ち上げで、アイレットにジョインをしています。

初期メンバーということで、JAWS-UGにも多く参加していた時期もあります。あとは『AWS Samurai』に2年連続で選ばれたりもしました。

AWSの代理店として「cloudpack」を提供

本題に入る前に、今日に至る背景と、そして我々は何が提供できるかというところのおさらいを少しだけさせていただきます。

アイレットという会社は、2003年に千葉県野田市で創業をしています。それこそJavaが出始め、さらにインターネットが盛り上がった時代で、Web系のシステムを受託で開発する非常に小さな会社でした。

ところが、2009年〜2010年あたりにAWSの可能性に気づいた我々は、いち早く取り組んだおかげで、その事業が非常に大きくなります。

実は最初はあまり事業シナジーがないと思っていたというか、勘が悪かったせいもあって、あえてcloudpackというブランドで臨んでしまって、開発会社としてのアイレットよりも、AWS事業のcloudpackの方が目立って大きく成長してきています。

さまざまなお客様との出会いで、必要なものがわかってきました。例えばゲーム業界に対するアプローチとして、サーバーが非常に上がったり下がったりとか、増えたり減ったりするようなピーク性の問題であるとか。もしくはスマホが流行ったおかげで、フロントエンドとサーバーサイドが分かれていって、サーバーサイドの負荷に対する考え方が変わってきたりしています。

最近になると、UI/UXの重要性が認知されてきたのもあって、我々の会社の中にデザインのファンクションを作りました。実は、ゲームの開発チームや運用チームも社内に存在しています。

デザインチームについては、グラフィックとかWebだけではなくて、モバイル向けも含めて組織化しています。直近だとVoice UIといったものに対応できるチームがあります。

AWS周辺のビジネスが一周して、最近の流行りの開発手法をはじめ、開発案件の需要が高まってきています。

そのおかげで今、いろんな場所で人を採用したり拡大したりしてきています。従業員数が300人を超えたりしながら、お客様システムの運用とか開発とかいろんなことをやらせていただいております。

「モノの消費」から「コトの消費」の時代

みなさんが日常的に体験しているような消費行動、最近は『モノの消費』と言われますが、購買行動って本当に簡単にできるようになっていて、たくさんのモノや情報が存在しているので、好きなものを簡単に手に入る時代になってきています。

一方で、『コトの消費』とも言われていて、「体験のほうが重要である」ということが言われるようになってきています。

モノは、ほかの人でも同じモノが購入できたり、購入しただけで価値が下がってしまうものがあります。一方でコトと呼ばれる体験の価値は非常に大きい。思い出として残ったり、記憶されたりして、コトは時間が経過しても「金額的な価値は下がらない」と言われています。

要は、今までのモノを買うことだけでしか体験できなかったことよりも、実際に行動すること、例えば自分で食べるとか、体験することのほうが重要であるという時代になってきています。

その一例をちょっとご紹介すると、みなさんもしかしたら知っているかもしれませんが、バルミューダ社のトースターです。持っていらっしゃる方っていますか?

(会場挙手)

おっおっ、1人、2人、3人(笑)。

こちらは、もともとデザインが素晴らしいとか、いろいろと評価されています。スペックとか価格にも特長があって、普通にカタログ上に書かれている部分だけでも高く評価されています。

けれども、このトースターのもっとスゴイところは、普通のパンを普通に焼くだけでおいしく焼けると。キモは水を差し込むところがあって、水蒸気のコントロールがうまいとか、そういう話だったと思うんですけれども。

要は、パンを焼いたときの体験が今までと違う。普通に食べていたパンがぜんぜん違う味になるとか、そのテクノロジーをちょっと聞いただけで少し感動しちゃうようなエピソードとか。あとは、バルミューダ社そのものが、社長がバンドをやめて作った会社であるとか、モノの周りにさまざまなストーリーがあって、みなさんが共感できる状態になっています。

その共感した内容を語りたがる人たちが、例えばソーシャルネットを通じたり、コミュニケーションツールを通じて、いろんなところで共有されていきます。これは企業側が狙っていなくても、勝手に拡がっていきます。

つまり、SNSによる拡散が非常に重要視される時代になってきています。

1つは、やはり優れたところを拡散してもらってブランディング(をすること)。商品の価値だけではなくて、なぜそれが良いかとか、企業が好かれるとか、そういった意味を含めたブランディングと。

あとはファンの醸成と書いてありますけれども、そもそも今までソーシャルネットがない時代は、ファンの顕在化すらできませんでした。ところが、それ(SNS)を見た人たちがよりファンになるとか、新しいファンが増えることも含めて、ファンの醸成ができるようになってきています。少しここにフォーカスを当てたお話をしたいと思っています。

これまで話されているO2Oの施策は、ちょっとこのあとのストーリーにつながるので、本当にざっくりお話ししますけれども。多くの場合は、オンラインで販売促進の活動をしよう、認知活動をしようとか。

そして、来店誘導、集客をするわけですね。どういう人たちに来店してほしいとか、もしくはマスを使ってもっと広げようという方法です。オンラインだと、今までよりは簡単にできたり、楽にできたり、いろんな方にリーチできるという施策があります。

さらにいうと、来店したお店の中でもっと回遊してもらったり、リピーターになって再来店してもらうアクションが存在しています。まず前半は、この左側のオンラインでの活動を中心にした事例をまずご紹介したいと思います。

映画『名探偵コナン ゼロの執行人』のO2O施策

1つ目は小学館様の事例になります。みなさん見たらわかると思いますけれども、(名探偵)コナンくんの、現在公開中の『ゼロの執行人』という映画があります。観たという方いらっしゃいますか? 

(会場挙手)

数名いらっしゃいますね、ありがとうございます。

この映画作品はもちろん面白いのもありますが、毎年この時期に新作が公開されて、本当に人気を博しています。この映画名探偵コナンに関連して、今年取ったアクションということで、まずは我々のお手伝いした事例をご紹介したいと思います。

映画の登場人物と話せるチャットボットが人気

映画の公開に合わせて、今回の作品の主人公になっている『安室透』さんのファン向けに、チャットボットを使ったプロモーションを展開したというものです。下にちょっと書いてありますけれども、一番右下のキャプチャー画面が一番わかりやすいですね。

書店ノベルティとして配布されたキャラクター名刺の裏に印刷されたQRコードを読み取って、LINEの友だち登録をすると、その主人公である安室透さんとLINEでお話ができるようになっています。これがものすごい人気を博しています。ちなみにキャラクター人気は、コナンくんを抜いて一位みたいです。(笑)。

「安室透さん」という名前は、実は声優さん由来だという話って、ご存知だったりしますか? ガンダム世代の方はいらっしゃいますか?

(会場挙手)

おお。ガンダムの主人公『アムロ・レイ』の声優さんが、安室透の声をあてているところから来ています。これ以上はネットで調べてください。何が大人気の理由かと言えば、実は友だち登録をしていただいたあと、ファンの方が喜ぶような返し方をしてくれたりとか、コンテンツの充実ぶりが肝になっています。

実際の作り方は、我々がこれまで何回か経験しているチャットボットの作り方、とくにLINEに特化したチャットボットの作り方をパッケージ化し、安価に早く作れるような仕掛けを提供して、公開日に合わせてコンテンツを投入しています。

映画の公開日(4月13日)から稼働を開始して、あっという間にTwitterなどで拡散されていきました。

「安室さんがこんなことを言ってくれた!」みたいなリアクションが、非常に多く存在しています。乗り遅れたファンが、「どうやって安室さんと友だちになれたか」みたいな手続きなども含めて、情報がまとめられたりとかもあります。実際に友だちになった方は、先週のデータでもうすでに12万人を突破しているそうです。

チャットボットを作るだけでなく育成することが重要

実際にこれをどうやって作っているかを、少しお見せしたいと思います。こちらは技術的な解説になります。

cloudpackの事例のページで、似たようなチャットボットとか他にも紹介していますけど、キモになるのは、真ん中の図にあるようなAWS Lambdaを使ったものであるとか、Amazon API Gatewayとかですね。データの補完や分析のためのサービスも使われています。

重要なのは、左側の『ボット用のCMS』ってありますけれども、何をしゃべらせるのかとか、こういう言葉にはこう返すのかという、基礎的なコンテンツを作るために、当然ながら管理画面が必要です。

右側に『統計データの可視化』とありますけれども、実際にマッチした答えを返しているかとか、どんな言葉に答えられなかったのかとか、実際ユーザーがどのぐらいアクセスしに来たのか、といったことも含めて見える化するための仕掛けも当然ながら必要になります。

すぐに使えるようにサイボウズ社のkintoneで管理画面を作ったりしていますけれども、大事なのはこういうツールとキャラクタの仕込みで。実際に「チャットボットを作ってみた」みたいなブログは多いんですけど、そんな生易しい話では絶対に終わらなくてですね。実はチャットボットは『育成』が重要なのです。

こんな風にPDCAを回すようなやり方でどんどん期待されるチャットボットに育てあげていくことが必要になってきています。

例えばPLANというところでは、ボットのキャラ設定みたいなもの。要は、安室透さんが絶対言わないようなこととか、変なリアクションがあってはいけないとか、トーン&マナーを決める必要があって、キャラに沿った言葉づかいや返答を用意する必要があります。それらを準備した上で、専用のCMSでコンテンツの投入を行い、答えなどの準備をしておきます。

スタートしたあとは、日々、解析データの可視化とか非認識コメントの洗い出しみたいな作業を行います。非認識コメントの洗い出しは、けっこう重要です。答えられなかったものを次のサイクルで答えられるようにするか、もしくは無視するとか。判断材料になるデータは、抽出できるようにしておきます。

回答を間違えないチャットボットを育てる

その後、さらにもう1周させてボットを育てます。返答内容は適切かどうかとか、今回の例でいうと『より安室さんらしい返答とは?』。もしくは、もしかしたら『今回のプロモーションに最適な答えは何なのか?』とか。ボットのキャラ設定に準じたデータを投入していくことが必要になってきます。

これを日々繰り返すことによって、用途に応じたよいチャットボットに育てていくことができます。チャットボットを販売促進に使ってみたりとか。あとは、FAQのような内容ですね。答えられなかった場合になにを返すのかとか。イベントの集客に使ってみたり、ファンの醸成なども可能になります。

きょうはAWS Summitでもあるので、これらを支える技術も紹介しておきますが、サーバーレスアーキテクチャを活用しています。我々としては最新のアーキテクチャを採用したいというのもありますが、1台1台サーバーを準備してやっていく手間とか、リレーショナルデータベースを使うという話よりも、よりよいアーキテクチャーとして、最初からAWS Lambdaを活用しています。

Lambdaはマネージドサービスなので、アクセス負荷に連動してスケールしてくれる環境であることや、サーバーレスの文字通り下回りにサーバーが見えなかったり、ミドルウェアが存在しないので、我々がメンテナンスをする範囲が限定的になります。

課金体系がちょっとほかのサービスと比べて難しいというか、起動される回数や使われるメモリサイズといったところが課金対象になるので計算が難しいんですけど、非常にリーズナブルにできるようになってきています。

あと、注意点が必要なのは、Lambdaを使っていて、障害が起こったときやアクセスが多くなったときに発生する問題を、どこまで事前に対処できるようなかたちにしておくか。

もしくは、こういうサーバーレスアーキテクチャで作られたシステムをどう監視すればいいか、みたいなノウハウを蓄積していくのもけっこう重要です。そういったことをしたクリア上で、我々はチャットボットの仕組みを安心して提供できるようになりました。

キャラクターの友だちがLINEで12万人超え

それでは、実際に今回のプロモーションを担当していただいた小学館の戸板麻子さんをお招きしましょう。これまでの背景や狙い、やってみてどうだったかを話していただきたいと思います。拍手をお願いします。

(会場拍手)

戸板麻子氏(以下、戸板):原作の『名探偵コナン』を出版しております、小学館のマーケティング局コミックSP室の宣伝グループに所属する、戸板麻子と申します。よろしくお願いいたします。

一番大きく描かれている色黒の男性キャラクターが、安室透と言います。実は今、この安室透というキャラクターは、テレビでもかなり取り上げられるようになって、最近は認知されているキャラクターではあるんですけれども。

原作での登場はけっこう遅かったりとか、複数の顔を使い分けるトリプルフェイスのキャラクターとして描かれていたり、映画での登場も今回がまだ2回目なんです。20代30代女性のコアなファンはついていたものの、映画公開前はライトなコナンファンに「この人誰だろう?」みたいにあまり認知されていない状況でした。

そこでSNSで話題になる施策を、原作側からも何かやりたいなと思いまして、「LINEのチャットボットの仕組みでプロモーションができないか」とご相談させていただいた次第になっております。

実際の反響なんですけれども、正直こちらの想像以上に反響がありまして。友だちの数も12万人を突破しております。小学館としましては、今回コミックスの売り上げにつなげるために書店ノベルティとして安室透の名刺を作り、その裏にあるQRコードを読ませると友だちになれる、というかたちの施策としてやらせていただきました。

それで、映画公開に合わせた原作のコミックスフェアの売上としましては、おかげさまで過去最大の数字を叩き出しておりまして、非常に嬉しい反響をいただいております。

興行収入は歴代1位を更新、SNSでも女性ファンに大人気

また、安室透の返答の内容も、長年コナンを担当してくれているライターさんがいまして、その方に原作に寄った返答を凝って作っていただいたりしています。

あとは私の周りに女性のコナンファンがすごく多いので「安室さんにどんなこと言われたいですか?」みたいなアンケートを取って、女子が言われて嬉しい言葉を登録したところ、これがすごく評判がよくてですね…。

SNSでも「安室さんにこんなこと言われて嬉しい!」とか「安室さんに褒められた!」といった点が非常に話題になっておりまして、本当に大成功だったかなと思っております。

社内・社外を問わず、大変人気がある今回の企画になりました。聞くところによると、音声で返信できたりもできるというお話を伺って、またグレードアップさせて次の企画につなげていければなと思っております。本当にありがとうございました。

後藤:いや、こちらこそ。先週のデータでも(興行収入で)75億円とか80億円目指せるような。

戸板:そうですね。映画自体は、実際それぐらいの数字に。(名探偵コナンシリーズの)1位の数字をもうすでに更新しているような状態でございまして。

後藤:あとはLINEの機能も発展していくでしょうし、見た目の部分がどんどんバリエーションが増えてきているので、またさらに違うコミュニケーションを取れるような時代が来るんじゃないかなと思っています。

戸板:そうですね。このチャットボットも週刊サンデーで連載中の『名探偵コナン』のストーリー展開に合わせて、新たなワードに反応するように、チャットボットを進化させていますので、引き続きお楽しみいただければと思っております。

後藤:ありがとうございました。それでは、戸板さんに拍手をお願いします。

戸板:ありがとうございます。

(会場拍手)

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