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パナソニック人事がサイボウズと組む理由〜これからの人事に必要なものとは〜(全2記事)

2020.01.20

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4人に1人が辞める会社から“チームワークを広める会社”へ サイボウズが学んだ、組織を変える「3つの必須条件」

提供:サイボウズ株式会社

サイボウズ株式会社が開発するツールの活用事例や、チームビルディングのノウハウなどを紹介する総合イベント「Cybozu Days 2019」が、東京、大阪、名古屋の3都市で今年も開催されました。2019年のテーマは「モンスターへの挑戦状」。同社代表 青野慶久氏の近著『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。』に端を発し、会社に巣くう“思い込み”による支配への挑戦をメッセージに掲げています。この記事では11月8日に東京会場で行われたセッション「パナソニック人事がサイボウズと組む理由 〜これからの人事に必要なものとは〜」の模様をお届けします。“自分たちで自分たちを変えていける会社”を目指す、人事発の組織開発プロジェクトの成り立ちとその活動内容について紹介しました。

2005年当時、4人に1人が離職する状況だったサイボウズ

なかむらアサミ氏(以下、なかむら):みなさんこんにちは、サイボウズのなかむらと申します。今日はこのセッション、「パナソニック人事がサイボウズと組む理由」にお越しいただきまして、ありがとうございます。多くのみなさんにご興味を持っていただけたことを、本当にうれしく思っています。

本編が始まる前に少しだけ、「サイボウズ・チームワーク総研」が何をしているのかについて、ご説明をさせてください。そのあとに本編に入らせていただきたいと思います。

私の自己紹介をさせていただきますと、サイボウズに2006年に中途入社で入りまして、当時人事をしておりました。制度を作ったり研修をしたりしながら、そのあと広報とブランディングに異動しました。チームワーク総研ができたときに異動して現在に至るという流れでやっております。

サイボウズの話として、一度は聞いたことのある方もいらっしゃるかもしれないんですけれども、私たちがよくお話をしているのが、こちらのですね……まだ会社ができて10年も経っていない2005年のときに、離職率が28パーセントという時期がありました。具体的な数字で言うと、80人いる会社だったんですけども、そのうち23人が辞めた。だいたい4人に1人が辞めるという状態でした。

当時M&Aを始めておりまして、いろんな会社を買っている最中だったんですね。けれども、(スライドを指して)人はこういう(離職率が高い)感じになっていると。それで実は、この2006年に2回下方修正を出しています。その結果、買っていた会社もほぼ売り払いました。

外から見ると、人は定着はしないし、どんどん辞めていっているし。どんどん会社を買っているんだけども、翌年に下方修正2回出してるし。「この会社、大丈夫?」という状態だったんですね。

トップダウンの人事制度で離職を促進してしまっていた

なかむら:当時の私は人事として入社したんですけども、当然ながら人事部としては「この状況をなんとかしないといけない」と思いまして、いろんな施策を打っていくわけです。私たちがしたことは、一人ひとりの社員の声を聞いて、その声を実現できるかできないかを考えて、それを施策や制度にしていくことです。これは現在もやっていることです。

通常、人事で制度や施策をやるときには、人事部で考えて「じゃあ何月何日から社員のみなさんこうやりましょう」とアナウンスをするのが一般的だと思うんですよね。私自身もこれまでの人事経験から、そういうことをやりました。でもサイボウズで、「人事部で制度を作ってやりましょう」といったときに、全然うまくいかなかったんですね(笑)。失敗してしまったんです。

なので、やり方を(スライドを指して)このように(幸福度向上、チーム戦、生産性向上の順番に)変えました。最近では、この「生産性向上」ということがよく言われています。生産性向上のためにチームで仕事を効率化していく、という業務改善の流れは、この図とは逆の流れで、そのほうが一般的だと思います。しかし、私たちはこれまでの経験から、そのやり方はあんまりうまくいかないことが多いんじゃないかな、と思っています。

それはなぜかというと、個々の社員が大事にされないことが多いからです。私たちは機械ではないので、「生産性向上がんばろう」と言われて、いくら効率化していっても、「自分が大事にされていないな」と思うと、どこかにひずみが出てきますし、組織を離れていってしまう。こういうやり方がけっこう難しいんじゃないかなと思っているのは、そういう理由からです。

私たちも人事でいっせいにアナウンスをして改革しようと思ったんだけれども、失敗したので。一人ひとりの声を聞いて、そこから制度・施策に落とし込んでいって、結果として売上が上がり、離職率が下がっていった。そういうことをやってきたのが、サイボウズの人事制度の大まかな概要です。

制度・ツール・風土がうまく回らないと、どんな施策を打っても失敗する

この中から私たちが学んだことが2つあります。

1つは、会社を変えるにはこの3つが必要だということ。「制度」と「ツール」と「風土」ですね。

制度だけ作ってもダメで、ツールだけあってもダメ。やはり自分たちの組織風土に合った制度を作って、自分たちの組織風土に合ったツールを導入すること。この3つがうまく回らないと、どんな施策を打っても失敗してしまうことが、私たちが学んだことです。

もう1つは、風土改革をしていこうと、いろいろ試行錯誤していったんです。その過程で……ご存知の方もいらっしゃると思います。あとから私たちも気付いたのですが、(スライドを指して)まさにこのモデルが自分たちのやってきたことと合致しているな、と。

(会場に)人事の方が多いと思うので、ご存知の方も多いと思うんですが、『学習する組織』という本の中で書かれているダニエル・キム教授の「組織の成功循環モデル」です。

簡単に説明すると、私たちは結果を求めてしまうので、結果を出そうとするんです。その結果にこだわりすぎると、そこにいる人たちの人間関係がギスギスしていったり、疎遠になっていったりして、関係の質が下がります。すると思考の質も下がって、行動の質も落ちていくので、いい結果が出なくなります。「結果から始めるとバッドサイクルに陥りますよ」というのがこの理論なんです。

じゃあどうすればいいのか、ということで書かれているのが、結果から始めるのではなく、まず結果に関係する人たちの人間関係の質を良くしていく。仲良くする、もしくは言いにくいことも言えるような、関係の質を上げていくこと。そうすると議論が生まれてくるので、思考の質が上がってきて、行動の質も上がり、継続的な結果を出すような組織になります。

結果から始まるバッドサイクルではなく、関係の質から始まるグッドサイクルをやっていくのが大事だ、と言っているのがこの成功循環モデルなんですね。

この関係の質を上げていくにはどうすればいいか。それは、その人たちが集まる場をたくさん作り、その質を上げていくことだ、とも言われています。

4人に1人が辞めるような、先ほどの離職率28パーセントだったサイボウズが現在のように変わるまでには、十何年もかかっているんです。「せめて今いる社員が仲良くなろう、そのためにたくさん場を作っていこう」と場を作り続けて、それを継続し続けていった結果、こういうふうになったよね、と自分たちとしても思っています。

サイボウズの“関係・場作りノウハウ”を伝授、パナソニックが取り組む組織開発プロジェクト

なかむら:サイボウズ・チームワーク総研というところでは、まさに私たちがやってきた“関係や場の質の上げ方”を、ノウハウとしてさまざまな企業様に提供しています。

今回はその中でも、パナソニック様との取り組みをご紹介させていただきたいと思います。私たちも毎度、本当に楽しく学びのあるプロジェクトなんです。どういうプロジェクトかというと、「K2プロジェクト」という名称で行っている、(パナソニックの)全カンパニーを含めた人事の方たちを対象としたものです。

まずはその責任者である大西さんにご登壇いただいて、このK2プロジェクトについてお話しいただきたいと思います。大西さん、どうぞ。

(会場拍手)

大西達也氏(以下、大西):よろしくお願いします。

なかむら:どうしましょう、自己紹介します?

大西:大西と申します。よろしくお願いします。

88年に当時の松下電器に入りまして、もう30年以上勤めています。もともと私は技術者でして、携帯電話などを作ってたんですね。それを長いことやってたんですけど、組織開発という活動に鞍替えしまして、今は人事にいるという、ちょっと変な経歴を辿ってきた人間でございます。よろしくお願いします。

なかむら:ありがとうございます。よろしくお願いします。ではK2プロジェクトについて、もしよろしければご紹介をお願いします。

目標は「自分たちで自分たちを変えていける会社」にすること

大西:はい。このK2プロジェクトは、大きな目標としては「自分たちのことは自分たちで考える会社にしたい」と。それから「自分たちで自分たちを変えていける会社にしたい」ということでやっています。

「会社と社員の関係の変革」。それこそ、うちの会社も非常にでかいモンスターになっているので、そのモンスターと社員の関係を変えていきたいということと、「自分たちのあり方、やり方を考える」。

この2つは同じことを言っているんですけど、「自分たちは会社に対してどういう存在であるのか」を考えながら、自己実現と事業の成果、両方を実現していける会社・社員にしたいということです。

私は、技術から人事に入っていく前は、人事に対していろんな偏見があったり、ひずんだ考え方を持ってたんですけど(笑)。やっぱり「人事って大事だな」と思い直しまして、人事からまず(活動を)始めようと。人事からこの活動を始めて、一般社員とか経営幹部に活動を広げていこう、と思っています。その段階でサイボウズさんに助けていただきながら、進めているという状況です。

K2プロジェクトという名前の由来は、もともと“「個」を活かす「共創」”とか、あと“自分たちで「考える」「変えていける」”という日本語(の頭文字2つ)ですね。あとK2という山があるんですよ。エベレストの次に高い山なんですけども、世界で一番登頂が難しいと言われているので、そこに登ろうという意味でのK2。あと、「ケツを出す」。失敗を恐れずにオープンにいきたい、という意味で。そういう名前でやっております。

なかむら:ありがとうございます。

KPIは定めず、定性的に組織開発活動を広めていった

なかむら:パナソニックさんでは、組織開発自体はいつごろからされているんでしょう?

大西:非公式というか、一人で勝手に始めたのはもう7年ぐらい前なんですけど。本社人事に移って始めたのが2015年ですから、4年ぐらいになりますね。

なかむら:なにかKPIなどはあったりするんですか?

大西:KPIですか。なんかね、会社にいると「数値化しろ」ってすごく言われるんですけれども。「数字で表したらどうなるんだ」って言われたらだいたい、「てへっ」っていう感じで……(笑)。

(会場笑)

なかむら:なるほど(笑)。

大西:「数値で表せ」となった途端に(活動がうまく)できなくなってしまうので、あんまり言わない(笑)。それよりは定性的に「どこの事業部長が良いと言ってくれた」とか、「どこどこでこういう評判ですよ」というようなことで進めたほうが、結局前向きに進められるんじゃないかなと思ってます。

なかむら:わかりました。サイボウズと一緒にやろうと思っていただけた理由は、なにかありますか?

大西:もともと私、けっこうWebサイトとか、あと青野(慶久)さんの本を読んだりして、サイボウズの取り組みを見ていたんです。それこそ、(スライドを指して)赤で書いてあるこれ(「自分たちのことは自分たちで考える会社」)を体現してきた会社だな、とずっと思っていました。それでちょうど、さっき紹介されていました、チームワーク総研を作られたということで。

なかむら:あぁ、はいはい。

大西:「そういうことも支援してくれるのか」と思っていたときに、ひょんなことから、なかむらさんと去年出会いまして。それでぜひ一緒にやりたいなと思っていたところ、なかむらさんからもお声がけいただいて、やろうかということになった次第でございます。

なかむら:はい、ありがとうございます。このK2プロジェクトは今まで、今年に入ってから3回セッションをしてきているんですけれども。具体的にどういうことをしているのかというのを少し動画にまとめていますので、ご覧いただければなと思います。

(映像が流れる)

3回のワークショップを経て、各カンパニーの人事担当者たちに浸透

なかむら:ありがとうございます、これまで行った全3回の動画を見ていただきました。最後に「変化が起きている」と言われていましたが、ほかに大西さんが感じられる変化って、なにかありますか?

大西:今まで3回ワークショップをやったんですけど、この活動、けっこう人事たちの中では「ふつうにやっている活動」(という認識)になってきたので。「これからもまだあるよね」というかたちで話してくれる人ができました。

あとうちの会社って、カンパニー制というものを敷いているんですけど、その1つのカンパニー、オートモーティブカンパニーというところの中で、サイボウズの方に来ていただいて、人事全体のこのワークショップを独自に開催する動きも出てきたりして。

人事のトップの人が理解してくれて進めていく、という流れもできてきたりして、それこそ定性的に非常に良くなってきたなとは思っています。

なかむら:ありがとうございます。このK2プロジェクトには、先ほど動画で社長の青野も映っていたんですけれども、私たちだけではなく、パナソニックとサイボウズそれぞれの役員の方にもご参加いただいています。

このK2プロジェクトの説明は、ちょっとここまでにしておいて。今後、人事としてどういうことが私たちには必要なんだろうか、みたいなことを、お二人に出ていただいてお話をしていただきたいと思います。

パナソニックの執行役員CHROの三島茂樹さんと、サイボウズの人事執行役員の中根に出てきていただきます。よろしくお願いします。

(会場拍手)

2019年春からCHROに任命されたパナソニック執行役員が登壇

なかむら:ではこちらから、お任せしまして。

中根弓佳氏(以下、中根):はい、ありがとうございます。ただ今ご紹介にあずかりました、中根と申します。サイボウズで人事の責任者をしております。私の紹介はまぁいいかなと思っています。

ご紹介をさせてください、パナソニックグループ27万人の人事のトップをしていらっしゃいます、三島さんです。

三島茂樹氏(以下、三島):三島です、よろしくお願いします。

(会場拍手)

中根:では三島さん、簡単に自己紹介をお願いしてもよろしいですか?

三島:はい。本当に今日は多くの方にお集まりいただいて、ありがとうございます。私は1987年入社ですので、もうかれこれ30年以上パナソニックで(働いています)。

パナソニックというと、みなさんも日本を代表する大企業というイメージはお持ちだと思うんですが。その中で人事と一口で言いましても、本社とか工場とか研究所とか、いろんなところのビジネスパートナー的なことをやってまいりました。

この4月から、私は個人的にはまったく予想もしなかった……そんなに社内でキャリアも積んでいない私みたいな人間が、なぜこのパナソニックのような大きな会社の人事のリーダーに選ばれたのかというのは、毎日自問自答しながら、この4月から執行役員として人事のリーダーをさせていただいています。

今日はみなさんに、少しでも役に立てる会話ができたらと思いますので、よろしくお願いします。

中根:よろしくお願いします。

なかむら:お願いします。じゃあ、椅子に座りましょうか。

中根:はい。どうぞ三島さん、この真ん中におかけください。

「青野さんの会社が提供されることだったら、やってみたらええやん」

中根:それでは、いろいろと三島さんにうかがっていきたいと思うんですが、その前にちょっと会場のみなさんにうかがってもいいですか? この中で「人事の関係者だ」っていう方、どれぐらいいらっしゃいますか。

(会場挙手)

おっ、多い。ありがとうございます。その中で「きっとうちは大企業だ」って思われる方は、どれぐらいいらっしゃいますか?

(会場挙手)

なかむら:あっ、なるほど。

中根:ぱらぱらと。わかりました、ありがとうございます。人事のみなさまが多いということをちょっと頭に入れて、お話をさせていただきたいと思います。

まず最初に、大西さんからもありましたけど、よくパナソニックさんがサイボウズにこの研修を依頼してくださったなと。で、よくそれをご決裁されたな、って思ったんですけど(笑)。なにか三島さんとして、思われるところはあったんですか?

三島:サイボウズさんと言えばやっぱり青野さん。青野さんとはもう2年前ぐらいから、ときどきお話しさせていただいて。働き方改革とか育メンとか複業とか、先鞭をつけられることをいろいろ実践されているので。しかも、もともとパナソニックグループにおられた方ということで。

会社のビジョン、経営のアウトプットを出すために、人事の戦略を非常に柔軟に一律的ではないかたちで、社員一人ひとりに百人百様の人事をやっておられる。経営者としても非常に尊敬しているし、人事のリーダーということでも非常に尊敬している方だったので。

こういう話があったときに、「青野さんの会社が提供されることだったら、なにが出るかわからんけど、やってみたらええやん」ぐらいの感じで(笑)。

中根:なるほど。

三島:あまり中身もお聞きせずに決裁させていただきました(笑)。

中根:大西さんに任せて。なるほど、ありがとうございます。

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