AI関連の専門家や起業家が最先端のトピックについて講演を行う、AI Startups Career Night。2025年1月の第8回では、「Forbes 30 Under 30 Asia 2024」に選出された株式会社Closer CEO 樋口翔太氏、株式会社Yanekara COO 吉岡大地氏、株式会社ACES CEO 田村浩一郎氏が登壇。 本記事ではパネルディスカッションより、スタートアップのような小規模組織におけるミドルマネジメント人材の育成法や、部下に業務を割り振りながら事業を成長させていく方法についてお届けします。
経営の属人化をどう脱するか
質問者2:お話ありがとうございました。いろいろ3つぐらい聞こうかなと思っていたんですけど、前の方に2つぐらい消化されちゃったので、残りシングル1でお聞きしようかなと思っているんですけど(笑)。
ちょっと程度の問題はあるかもしれないんですけど、みなさんが創業されて、自分がフルで100パーセントやらなくても、会社が回る状態に持っていくために、やったことをお聞きしたいなって思ってまして。
最初から分担されていたかもしれないですし、「俺は営業やってないよ」ということかもしれないんですけども、創業したタイミングって97〜98パーセントぐらい、自分でやらなきゃいけないことがたくさんあると思っていて。
それを徐々に比率を下げていかれたから、組織化ができているのかなとも思っていて。それってどうやったんですか? 「この2つがあります」みたいな、ポイントがあれば教えていただきたいなと思って質問させていただきました。
吉岡大地氏 (以下、吉岡):あんまり大したことを言えない私からいくんですけど、2点あって。単純に自分よりできる人を採用するのが一番早いです。もうそれに尽きますよね。そうなったらポンと渡して終わり。

それで、もう1つはゴリ押しで渡しまくる(笑)。無理やりでも権限委譲して、学んでもらう。基本的にはこの2つだと思います。
仕組みとしてやっていたかというと、優秀なメンバーが集まって自然とタスクを引き取ってくれたので。僕らとしては、1on1をかなりしっかりやってるんですけど、入ってきたメンバーが一番やりたいと言ったことを、ひたすらヒアリングして、そういった仕事があったらすぐに渡す。
そういうサイクルを細かく回すことで、優秀なメンバーが「今やりたい、こういうことを学んで成長したい」って思っていることを常に実現させてあげつつ、僕らは仕事を渡せてハッピー、みたいなのはがんばってますよね。
事業の成長が組織化のエンジンに
樋口翔太氏(以下、樋口):自分の場合、ある程度分担されてきたのは売れる製品ができた段階になってからかなと思っています。

自分はエンジニアというか技術サイドなんですけど。最初の開発のところはだんだん分担できるようになってきたんですけど、それ以外の非常に細かい作業は、自分が巻き取ってバババって全部やる感じで。
ある程度プロダクトとして出来上がってくると「製造はこれで、技術はこれで、営業はこれで」みたいな分担ができるようになるので、そのタイミングで強い人を採用して任せる感じになりました。
まだぜんぜん組織化できていないと思うんですけど、自分の時間はちょっとできてきたなというフェーズですね。以上です。
田村浩一郎 氏(以下、田村):組織規模にもよると思うんですけど、僕らの会社はまだ組織化できてないぐらいの認識ですかね。一生懸命やってますけど。創業メンバーは6人いたので割って、ひたすらやって「今月は調子が良いから売上を立てられそうだぞ、がんばれよ」って感じでしたね(笑)。
1年後ぐらいには僕はもうコードを書いてなかったですし。でも、営業は1年ぐらい前まではやってましたね。最近は、自分が営業をやらなくてもどう事業成長できるのかの仕組み化を徹底してやっていました。
仕組み化以前に必要なこと
田村:いわゆるミドルマネジメントの育て方とか、マネジメントってまず何かとか。どういうふうに情報共有していけばいいのかとか、何を任せるって権限管理を作ろうねとか、お作法があるなとも思っていて。
仕組み化って意味だと、そういうお作法にとにかく乗っていくというところですかね。自分はけっこう仕組み化が好きで……できてないのに言うのはアレですけど、得意っちゃ得意なので。
顧客の価値とKPIと、プロセスと組織のケイパビリティを設計して組み合わせて「ここは自分だったからできたんだな」みたいなところを、とにかく因数分解していくのを今やっているし、それをやってうまくいってきてるかなって感じですね。
でも初期は本当に吉岡さんがおっしゃったとおり、「とにかく採用、気合いで任せる」というのをやるしかない(笑)。
(会場笑)
田村:そんな仕組み化とかの前に、もうぶん投げる感じですかね。
AI、電力、ロボットが変える未来像
司会者:ありがとうございます。最後に一言ずつもらおうかなと思うんですけど。ちょっとすいません、最後は「ホラを吹いて締めていただく」みたいなのをやっていて(笑)。
僕は自他ともに認める孫正義さんファンでソフトバンクに入ったんですけど、孫さんがよく「何かを始める前に、まずホラだと思って言ってください」みたいな感じで、大きなホラを吹くんですよね。でもそれを必ず実現させていくんですけど。
せっかくの機会なので、あらためて「今日はこのホラ吹いてみよう」という一言で締められたらなと思うんですけど(笑)。上を向く人もいれば……あ、ぜひぜひ。
田村:自分はけっこう言ってるんですけど、「AI時代の日本一の事業投資会社になる」と掲げてまして。自分が金融・投資好きだったので。だから正直、自分ではあんまり起業家に向いてないなって思ってるんですけど(笑)。
(会場笑)
でもAIのソリューションだけじゃなくて、ファイナンスとアルゴリズムを使って、経営から変わっていかないと、人とAIが一緒に働く働き方はデザインできないなとは思っています。
地に足をつけながらも「AI時代の」が枕詞につけば、一番になれるだろうと思って狙ってますね。
(会場拍手)
吉岡:会社的なやつと個人的なやつが1個ずつあります。会社的なやつは、実は先週ちょっと合宿で「2040年にYanekaraはどんな目標でがんばるのか」みたいなのを考えたんですけど、結論から言うと「10ギガワットの仮想発電所を作る」。仮想発電所というのはさっき私が説明した、分散したちっちゃい電源をたくさん集めることです。10ギガワットがどれぐらいの電力容量かというと、九州の電力需要です。
これを40年までにやれると、例えばYanekaraのシステムが障害を起こすと電力供給が危ぶまれるみたいな存在になっていきます。だから「Yanekaraがないと社会が回らないよね」って思われるぐらいのインパクトを作りたいです。
個人的にはユニコーンとか、めちゃくちゃ成長するスタートアップを作っていきたいかというと、やはり私は環境から入ってきた人間で、持続可能性みたいなところに興味がすごくあります。ユニコーンを1社作るよりも、100年続く企業を100社作るみたいなほうが興味があります。
例えば今の日本においてはガンガン成長していく時代じゃないからこそ、安定して雇用を生み続けるような会社を100社作るほうが、実はすごく社会にとって価値のあることなんじゃないかな、と思っていて事業家としてはそういったところに、いつか取り組んでいきたいなと思っています。
(会場拍手)
樋口:自分の会社は「ロボットを当たり前の選択肢へ」を実現したいと思っています。
本当に人手不足が深刻というふうに思っても、今はそれを自動化できる選択肢がそもそも存在しない。いろいろ技術は出てきてますけど、それを地に足をつけてやっている会社は意外と限られていると思っています
食品工場って日本に20,000工場あるって言われているんですけど、その90パーセントが中小規模の工場だったりします。現状、作業工程を自動化するロボットってそういった所には到底導入できないようなものなので、そういった所にも導入できるロボットを作っていく。
やはり日本の工場って世界に比べても非常に厳しいというか、入れる水準が高いと思っているんですね。
なのでここで実績を作っていけば海外にもどんどん、そのままハードウェアを持っていって横展開できると思っているので、日本からそういった技術を作っていきたいなと思っています。以上です。
(会場拍手)
司会者:ありがとうございます。あらためて、今日登壇いただいた3名の登壇者に拍手で締められたらと思います。ありがとうございました。
(会場拍手)