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UNDER30 Award受賞の注目起業家と語らう夜〜次世代リーダーの描く未来像とは〜 AI Startups Career Night #8(全6記事)

AIブームで起業するも売上げゼロ 「Forbes 30 Under 30 Asia 2024」選出の起業家が語る創業エピソード

AI関連の専門家や起業家が最先端のトピックについて講演を行う、AI Startups Career Night。2025年1月の第8回では、「Forbes 30 Under 30 Asia 2024」に選出された株式会社Closer CEO 樋口翔太氏、株式会社Yanekara COO 吉岡大地氏、株式会社ACES CEO 田村浩一郎氏が登壇。

本記事ではパネルディスカッションより、3名が起業した経緯や、「Forbes 30 Under 30 Asia 2024」を受賞した反響について語り合います。

なぜ、起業の道を選んだのか

司会者:パネルディスカッションなんですけど、どういう話からしていこうかなと思いつつ、今回がUnder 30の起業家アワードという話だったと思って。

先ほどはわりと事業の話に寄ってしまったと思うんですけども、なんとなく事業がわかった上で、あらためてみなさん、「なんで起業したのか?」みたいなところから入っていけたらと思います。大企業に入るとか研究とか、いろいろな選択肢があったと思うんですよね。これは挙手制でいけたらと思うんですけど、まずどなたから。

吉岡大地氏(以下、吉岡):Yanekaraの吉岡です。起業のきっかけですね。実は先ほど東大発のベンチャーと言ったんですけど、私は東大生じゃなくて、ドイツのフライブルク大学を出ています。ヨーロッパで再生可能エネルギーを勉強していたんですが、当時、グレタ・トゥーンベリさんら若者による気候変動のデモがかなり盛り上がっていて、

ちょうどカーボンニュートラルを2050年にやりましょうみたいな動きも全世界的に広がっていました。そのためには少なくとも2030年ぐらいには、2050年にありとあらゆるところで使われているような脱炭素に必要な技術やビジネスがレディになっていないといけないかなと考えていました。

当時は2020年であと10年でそれを実現するために、大企業さんで着実に仕事をする選択肢もあったとは思うんですが、どちらかというと、「自分たちの世代が責任を持ってできることをやっていこう」と研究開発プロジェクトを始めて、それが今の会社につながっている感じですね。

司会者:ありがとうございます。やはり、やりたいところで自分たちができることから始めたと。

吉岡:そうですね。あと、やはり一番大きかったのは、共同創業者の松藤圭亮との出会いですよね。私は起業をもともと考えていたわけではなく、純粋に「再生可能エネルギーのことで何かやりたい」という思いを持っていました。

エンジニアである彼と出会って、彼がエンジニア領域、私がそれ以外を全部やるみたいな役割分担で最初はスタートしました。私は外に出て、人としゃべったりするのが好きなんですけど、彼のためなら縁の下で支えていく存在になれるな、なりたいなと思えたことが起業のきっかけとして大きかったですね。

司会者:ありがとうございます。出会いも大きなきっかけだったんですね。

吉岡:いやぁ、大事だと思いますよ。

皿洗いのアルバイトで感じた素朴な疑問

司会者:ありがとうございます。お次はいかがでしょう。

樋口翔太氏(以下、樋口):自分は幼い頃から工作が好きで、小学生の頃からサッカーロボットのロボカップという大会にずっと出ていて、とにかくロボットが好きだったんですけど。

「そういった大会に参加するだけだと自己満足で終わるな」と思って、そこで培ったロボット技術を社会に活かしていきたいなという思いが出てきました。

起業のきっかけとしては、高専時代の研究で、トマトの自動収穫の研究をしていて、そこで農家さんにヒアリングに行ったら、平均の従事年齢はおよそ68歳だったんです。それだけ人手が集まらないんだけど、自動化するロボットとかはぜんぜんないみたいな、当たり前っちゃ当たり前なんですけど、そういった社会課題が実際に存在していることを知りました。こういうところこそ、ロボットで自動化していくべきなんじゃないかと思いました。

あとは単純に、自分自身が繰り返しの作業があんまり好きじゃないとか、こういうことこそ自動化すべきだと考えていたことも理由の一つです。

これも高専時代、出身地である新潟県のスキー場で住み込みで皿洗いのバイトをしていた際、その大変さを痛感し、「こういうのを自動化すべきだな」と感じました。それがきっかけで、繰り返しの作業や重労働を自動化するという方向でプロジェクトを始めました。

司会者:好きなことがたまたまバイトとつながって、「これ、もうちょっとうまくできたら」と考えられてたんですね。ありがとうございます。そうしたら、じゃあ最後に田村さん。

田村浩一郎氏(以下、田村):そうですね、自分はけっこうノリで始めたというのが結論なんですけど、本当に「ChatGPTのTであるTransformer(AIの深層学習モデルのアーキテクチャ)が出てきて、何かビジネスをできたらすごいよね」と。

「売上げがゼロ」暗中模索の創業時代

田村:Transformerの論文の最後のところに、「これは翻訳とか要約だけじゃなくて、いろんな可能性が存在する」と書いてあって。人工知能学会で、隣にいた今の共同創業者の與島仙太郎と「日本の漫画を翻訳して世界に届けたらおもしろくね?」と話したんです。「じゃあ、出版社に持っていこうよ」となって持っていったんですね。そうしたら「お前ら誰?」って言われて。

「確かに俺らは誰だろう?」となって、「じゃあ会社を作るので、1週間待ってください」という話をしました。いったん6人でやろうよと言って作ったのが、創業の経緯です。

ただ、本格的に開発を進めていく段階になると、そこから半年ほど「本当にこの方向性で合っているのだろうか」と自問自答する日々が続きました。共同創業者の松尾研の中川大海と議論を重ねても、明確な答えが出ないこともありました。Transformerはスクラッチで実装していましたが、「本当にこれで合っているのだろうか」と不安を抱えながら開発を進めていました。

Transformerを実装して、漫画の翻訳をするAIアプリケーションのデモとか作っていたんですけど、交渉があんまりうまくいかなくて。2018年の夏頃かな、売上がゼロで会社はただのプロジェクトを契約するための箱だったので、共同創業者の中川が、「田村、あと1ヶ月で死ぬ。銀行口座がもうやばいよ」みたいな。「あー、マジ? じゃあちゃんと今後の方向性を決めよう」と話し合ったんです。

議論の中である疑問が頭をよぎりました。「AIをちゃんと社会実装している人って、意外と少なくないか? AI、ディープラーニングがすごいとみんなPoCをやっているのはわかったけど、それをどこで使っているの?」と思ったんです。

「でも、この技術を本当に活用しなければ意味がないし、僕らならやれるよね」と、そこで初めて真面目な話し合いを行い、2018年の5月か6月に「ちゃんとやっていこう」と決めて、今に至る感じです。

司会者:社名はどうやって決めたんですか?

田村:居酒屋で「急いで決めよう。好きなのはあるか?」と言ったら、最初は『スター・ウォーズ』が好きな人とかは「『ジェダイ』とかいいんじゃないか?」とか。

「ACES」という名前は、僕がちょっとポーカーが好きで、エースが2枚って一番強い手札なんですよね。「A」から始まると、「A○○.Inc」で「AI」。「おー!」みたいな。本当にビールを飲みながらですよ? そんなノリで、「いいじゃん。『A』から始めよう」と。

それで、「Apple」の頭文字が「A」から始まって(アルファベット順の)上のほうに来る。「A、B、C……。あ、ACE、ACESだ」みたいな。盛り上がったんですけど、そうしたらABEJAさんがいたというオチがあったんですけど、本当にそんなノリでした。

司会者:本当にノリで始まり。

田村:そうですね。

司会者:先ほどすごく賢そうなプレゼンをされてましたけど(笑)。

田村:後付けで「AI-driven composable enterprises」でACESだと言っているんですけど、本当は居酒屋で決まりました。

Forbes Under 30 受賞後の変化は?

司会者:ありがとうございます。すみません、今ふと思い出して、そういえばアワードの話も聞かなきゃなと。

Under 30でどんなアワードを獲られたのかというところと、獲って変わったことと、変わらなかったこととか、そのへんのぶっちゃけたところもぜひうかがえたら。「狙って獲った」「これはうまくいった」みたいなところも含めて、いかがでしょうか?

田村:ありがとうございます。これも申し訳ない感じになっちゃうんですけど、突然メールが来て、「なんか英語の変な営業メールかな」と思ってたんですね。ただ、ちゃんと読んだら、「Forbes Under 30にノミネートするよ。早くプロフィールを送ってほしい」という内容だったんです。たぶん誰かが推薦してくださったと思うんですけど、Forbes 30 Under 30のアジアのEnterprise Technologyに選出いただいたというかたちになっています。

何か変わったことがあるか。正直、当時はあんまりそういうことに興味がなかったんですけど、会社の人がすごく喜んでくれたんですよね。こういうのはやはり大事だなというのは、それを見て思いましたし、喜んでくれる人がいたのは良かったなと思います。

あとは、シンガポールとか南アフリカとかで表彰式があるらしいんですけど、自分は全部都合がつかなくて行けてないので、あんまり実感がないです。今日呼んでいただいたのが、初めて効果を実感したところかもしれないです。

司会者:ありがとうございます。アジアのアワードを獲ったらシンガポールとか行けるかもしれないみたいな感じですね。

田村:そうですね。

司会者:ありがとうございます。

樋口:本当に自分も、今日呼んでくださったのが一番の(笑)。というぐらい、あんまり効果はないなという感じなんですけど。

(一同笑)

樋口:あと、僕は新潟出身なんですけど、地元の人が喜んでくれました。自分の場合はメールじゃなくて、LinkedInからForbesみたいなことが書いてあるスパムメールのようなものが送られてきました。「なんか怪しいな」と思って、知り合いにForbes 30 Under 30 アジアに選出されている人がいたので、その人に確認したところ「どうやら本物みたいだ」ということでした。それで返信したら、選出されていたという感じですね。

司会者:けっこうそんな、よくわかんない感じから入っていくものなんですね。

樋口:そうですね。

司会者:(笑)。ありがとうございます。ちょっと吉岡さんまで聞いてから、本当はどうだったのか、確かめられたらと思います。

あやうく受賞が取り消しに

吉岡:僕らもマジ、同じ感じっすね。最初、私たちはForbes JAPANのUnder 30に選出されて、その翌年、アジアのほうで選んでいただいたんですけど。JAPANのほうは代表の松藤に、ピロンとメールが届いたと。彼は、メールはまず見ないし、変なスパムメールはほぼ即で消しちゃうので、それで消しちゃっていたみたいで。

2ヶ月後ぐらいに、「吉岡さん、なんかメールが来ていたんですけど、これどうなんですか?」ということが起きて、私がちゃんと見たら、ちゃんとForbesからの通知で。松藤に確認したら、「ああ、スパムだと思って消したわ」と。それで、もうちょっとで取り消しになっていたかもしれないぐらいぎりぎりに返信して、選ばれたという感じですね。

選ばれて変わったことは、まずJAPANのほうはアワードの表彰式に参加させていただいて、選ばれていた同世代の人たちと仲良くなって、今でも何回か飲み会とかをしたりとか。

私がこういう業界飲みとかスタートアップ飲みばっかりやっていて、そこにForbes Under 30の仲間も呼んでいるので、今もつながりがあったり、お互いに刺激し合っていて、すごくいい関係ですね。

司会者:いいコミュニティ。

吉岡:いや、めちゃくちゃいいと思います。

司会者:一番ちゃんとされている。

吉岡:いや、それは降ってきたので、ありがとうございますということで。

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