
2025.03.07
メール対応担当の8割以上が「カスハラ被害」に クレームのハード化・長期化を防ぐ4つの対策
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安藤健氏(以下、安藤):信頼関係構築と情報収集のポイントは4つあります。1つは、相手を解像度高く知ることが大事です。そのために、まずはあなたの自己開示からしましょう。自己開示する内容は順番を意識して、相手との共通点も積極的に探そうということでした。
南賢将氏(以下、南):ここはメモポイントかもしれないですね。
安藤:じゃあ、残り時間も残り30分。ここまでで信頼関係構築、情報収集のところが終わりました。最後は「熱く口説く」です。最終ゴールは、相手が重視する情報を提供しながら、意思決定を促していくというフェーズですよね。つまり、フォロートークということです。
よく語られるフォロートークは、大きく分けると3つに分かれます。それは何かというと、「○○さんは、なんでこの会社に入ったんですか?」と聞かれることがありますよね。
それから、「御社はどんな事業をしている会社?」。例えばこちらからダイレクトリクルーティングで声をかけていたりすると、普通に聞いてきたり、それっぽいニュアンスの話を聞かれます。こっちは説明しないといけないし、事業説明とかで聞かれなくても説明するタイミングはありますよね。
あとは組織風土について、「御社はどんな雰囲気の会社ですか?」は、だいたい聞かれますよね。
南:聞かれない時はないですね。
安藤:これを聞かれない時はないというぐらい、職場型のモチベーションリソースを持っている人が多いんだと思うんですよ。
南:なるほど。
安藤:そうそう。会社の雰囲気とか文化って、結局はそこで働いている人たちの集合体じゃないですか。だから、そうだと思いますね。
安藤:ということで、この3つに対してみなさんだったら、自分の今の会社のフォロートークをなんて繰り出しますか? 一つひとつTipsを見ていきたいと思います。
入社動機なんですが、よくあるのが「What」しか話していないこと。「なんで私がこの会社に入ったかというとね」というのは小っ恥ずかしさというか、ちょっと恥ずかしさもあるのかもしれないですね「いや、人が良くてさ」「事業が魅力的で良かったんだよね」というふうにとどめてしまうというか。
現場社員の方も含めて、入社動機を語るタイミングってみんな多いですが、一般的に誰でも言える内容になっちゃいます。厳しい言葉を言うと、それではあなたが語る意味がない。
なので、オリジナルの入社動機は「ドラマチックに」ということなんです。「人が良かったから」でも、「事業が魅力的だから入った」でもいいんです。ただ、他の誰でもないあなたが、「人が良い」と思ってこの会社に決めた、その歴史は何ですか? 一般的な理由ではなくて、その人自身の歴史や価値観に基づいたエピソードで話すと、これは必ずオリジナルです。
学生や候補者からすると、転職や就活をしている中で、「なんでみなさんはこの会社に入ったんですか?」というのはいろんな会社で聞いています。やはり印象に残るし、そこで響くことが入社の決め手になることはけっこうありますよね。
僕もプロジェクトで、内定承諾者や辞退者に対して「なんであなたはこの会社を承諾したんですか?」「辞退したんですか?」という調査を、振り返りの支援でよくやっているんですね。毎年100人ぐらいの内定者の学生たちに聞いたりしているんですが、やはり一定数は「入社動機が刺さったから」というのはあって、そういう学生さんはけっこういます。
安藤:次が「魅力ある仕事の説明を」ということです。事業説明や、「御社はどういう仕事内容がありますか?」「御社はどういう事業をやっていますか?」ということに対してお話しをする時に、「うちのビジネスモデルはね」と、どうやってお金を儲けているのかとか、ビジネスの流れ、他社に勝っているのかという競争優位性を説明されても、あんまり響かないというか。
それを聞きたいわけではなくて、むしろその質問の背景には、どちらかというと「この仕事、あなたがおもしろいところって何ですか?」「あなたが感じている、あなたの今の仕事の事業の社会的意義って何でしょう?」という(意図がある)。
例えば僕が学生だとして、南さんに「南さんのいる会社は何をしている会社なんですか?」と聞いた時に、字義どおり取って「うちはこういう事業をやって、ITを使って、ナントカカントカ」みたいな話をされるよりは、南さんが感じていることを南さんの言葉で聞きたいということなんですね。
「知的好奇心」や「知的魅力」と言いますが、どういうことがその仕事のおもしろいところなのか、成長できるのか、どういうふうにできるのか、なんで成長できるのか。
社会的意義というのは、その事業や仕事があることによって社会に何を提供しているのか。これはホームページに書いてあることではなく、あなたが思う、あなたの言葉で語ってあげるということですね。これが事業説明の話です。
組織文化の話なんですが、「うちの会社は風通しがいいです。アットホームな雰囲気です」というふうに書いていないホームページを見たことがないんですが(笑)。
南:この手のアンチパターンを説明される時に、この言い方はめちゃめちゃ出てきますから。
安藤:そう。絶対に言われます。
南:笑っていただけるぐらい、あるある。「アットホーム」にだいたいバツが付きがちみたいな。
安藤:ですよね。使っちゃいました。そうではなくて、特徴的な事実とか、つまり具体的な事実や社内でよく使われる言葉がポイントなんですよね。
南:社内用語ってやつですかね。
安藤:そう、社内用語。これを専門的に言うと、文化人類学で「ジャーゴン」という言葉があります。
安藤:ジャーゴンというのは、例えば未開のジャングルに住んでいる民族のところに、文化人類学者が1人でフィールドワークに行くわけですよね。その集団の中でしか交わされていない単語とか、仲間うちでしかわからない言葉のことを「ジャーゴン」と言うんですが、そういうジャーゴンが会社にもあったりするんですよ。
南:あれですか。「よもやま」とか「面着」とかですか?
安藤:あるんですよ(笑)。
南:リクルートやトヨタさんみたいにね。
安藤:ちなみに僕が入っていた会社では、会議のことを全部「よもやま」と言っていました。だから会議のGoogleカレンダーを見ると、「よもやま」「よもやま」「よもやま」ってめっちゃ入っていて、何の会議なのかぜんぜんわからないっていう。
南:ちょっと大きくくくりすぎていると。
安藤:ただ、上司とのミーティングも役員とのミーティングも「よもやま」と書いてあるところから、会社の意図・作りたい文化として、あるいはすでにそうである文化として、よもやまは「とりとめのない話でもいいくらい、何でも話していい」というオープンなマインドが組織文化として感じられますよね。
こういうものがみなさんの会社にもないか?ということを、ぜひ探してほしいんですね。それで語るとすごく印象に残るし、イメージが湧く。
南:ともすると、そういう社内用語って避けたほうがいいんじゃないかと思いがちですが、言ってしまうと使いようというか。あえてその言葉を使うことによって、説明のみずみずしさを上げるということなんですかね?
安藤:そうですね。これは仲間うちだけで話すので、口説きで候補者がいる目の前で他の担当者と「いや、この間のよもやまさぁ」とか言っても、あんまり良くない。
南:それはそうですよね。
安藤:でも、「『よもやま』っていうのがうちにはあってね、どういう意味で使われているかというと」みたいな話をする。レベルを上げると、僕が話したような「よもやま」という言葉を話すだけで、「オープンな文化があるんだよ」とまでは言っちゃいけないんですね。
本にも書いたんですが、伝えたい本音というか、伝えたい真意は感じ取らせるのがけっこうポイントだったりして、めちゃくちゃ難しいテクニックです。
南:高等テクニック。
安藤:高等テクニックなんです。
安藤:「こういう事実がある」「ああいう事実がある」「こういう事実がある」ということを並べるだけで、相手からすると「じゃあ、この会社はこういう雰囲気なのかな?」というふうに感じ取れるような情報提供だけする。そのほうが、説得力が増すという効果があるんですね。
南:なるほど。逆説的ですが、具体的に説明しようとすればするほど、ある種わからなくなるというか、腹落ちしないみたいな側面がある。
安藤:嘘くさくなるんです。
南:なるほど。
安藤:例えば営業シーンで、「うちの製品を使ったらこうなりますよ」って言われるよりも、事例で示されたほうが、「じゃあ、この製品はこういう効果があるんだろうな」という説得力がなんとなくあります。ゴリ押しされることに対して、人間は引くっていうことです。例えば「●●セレクション受賞」というのは、説得力を増すためにやっているみたいなものですね。
南:権威性みたいなもの。
安藤:社会的証明というものなんですが、「我が社の商品は、シュークリームがめちゃくちゃおいしいです」と言われるよりも、「(第三者に)おいしいって言われている」という。
南:権威のある感じっていう。
安藤:こういうのも同じシーンで、当事者がゴリ押しするよりも、象徴的な事実で感じ取ってもらったり、「社会的な権威のある、みんながいいと思っているものに私たちは入っています」ということを示すことで、間接的なんですがそっちのほうが説得力は増す。そういう、ちょっと高等な話なんです。
南:非常に高度なテクニックのように思えつつ、出発点としては、自社で使われているキーワードや用語を例に出すことによって相手にわからせるというか。そういう技術も、ちょっと意識するだけで武器として使えそうではありますよね。
安藤:そうですね。ということで、ここめっちゃ話しちゃいました。
安藤:これからみなさんには、ワークというかゲームをやっていただきます。「熱烈口説きゲーム」です。また2人1組のペアになってください。候補者役と面接官役に分かれて、面接官役はあなたの会社の魅力が十分に伝わるようなフォロートークを繰り出してください。
これがポイントですが、これまでの会話で聞けたお相手の志向や特性も踏まえながら、入社動機、事業説明、組織風土を語ってください。フォロートークを受けた候補者役は「ここが響いた」「もっとこうしたらいいかも」とフィードバックしてもらうワークです。
シンキングタイムを5分取りますので、まずは個人で考えます。を配布している資料を元に、あなたの会社の魅力が伝わるフォロートーク考えていってください。これは「一般的に」というよりかは、これからみなさんが口説く相手の想定をして考えてください。じゃあ、5分間よろしくお願いします。
【ワークが始まる】
安藤:はい。ということで、お疲れさまでした。今日のワークはこれですべて終了です。最後にラップアップに入っていきたいと思います。いかがでしたか? 今回のワークを通して、ご自身のトークにさらに磨きをかける気づきを得られていればうれしいです。ふだんの面接や面談でもぜひ活かしてみてください。
最後に2枚だけスライドをお話ししますが、フォロートークの時の注意点が2つあります。1つは、ヒアリングの時に話の腰を折らないとか、議論に勝っても相手は変わらないとよく言われます。議論や意見をしないということですね。候補者が思っていることが誤解や事実でなかったとしても、そう思っているという心理的現実を受け止めることが非常にポイントです。
2つ目。自社に愛を感じるのはいいことなんですが、愛を感じすぎてしまって、誰かを蹴落として自社の株を上げようとするのはかなりマイナスに働きます。
自社と競合を比較検討するのではなくて、競合同士を比較検討する中で、自社の候補者の選社軸を整理してあげる。キャリアコンサルティングに近いようなかたちですね。そういったサポートをしてあげる姿勢が求められるということでございます。
ということで、今日は2時間みっちりお付き合いいただきありがとうございました。
南:ありがとうございました。
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