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PAL辻有吾氏(全2記事)

物流業界への偏見は変えられる? 労働集約からの脱却を図るPALの秘策 

物流オペレーション事業、通販ソリューション事業、物流ロボティクス支援事業を展開する、株式会社PAL・辻有吾氏のインタビュー。辻氏は、同社のビジョンのもととなる労働集約型の物流業界への問題意識を語りました。※このログは(アマテラスの起業家対談)を転載したものに、ログミー編集部で見出し等を追加して作成しています。

労働集約型の物流業界を変えたい

──PAL様は今後どのように物流の世界を変えていくのでしょうか? ビジョンについて聞かせてください。

辻有吾氏(以下、辻):ビジョンのもとになっているものは、物流業界の仕事であるブルーワーカーに対する問題意識です。

物流業界の仕事は人海戦術、つまり労働集約なんです。今までの世の中があったのはこの労働集約があってこそで、そのような労働者も多かったのですが、労働を嫌がる若者が増えてきて、世の中の風潮として卑下されているなと感じます。

物流業界側にも責任があると思っていて、労働集約の世界を変えてこなかったという事実もあるんですよ。

正社員とアルバイトとパートと変わらないような仕事もたくさんあって、これは僕らが物流業界を変えていかなくては、若い人たちにとって魅力的な仕事になるように変えていかなくてはと思います。

そうしたときに、高齢者や女性のような力のない方でも働ける、非常にクリーンで環境のいい職場をどうやって作るかを考えています。

僕がマシナリーやロボティクスの話をしたのは、そのような職場を作るためで、人の手作業でやるものがそこにとって変わっていけば、それ以外の仕事は力もいらず簡単になります。

つまり、労働集約ではなくてつなぎの業務になるので、目が見えさえすれば誰でもできる仕事になっていきます。そういう環境作りをやっていかなければという使命感はあります。

おそらく現在の物流業界は高齢化がどんどん進んでいて、柔軟性や順応性が低く、IT化が最も遅れている業界です。

世の中の流れと物流業界の流れのギャップが生まれていて、そのギャップを埋めるものはたくさんあるのですが、とくにロボティクスの分野は僕らだからこそわかる設計運用があるのでそこで勝負していきたいと思っていますね。そうすることで、生産性が飛躍的にあがると思います。

だから今、安倍政権のメッセージにもある”生産性”を飛躍的に向上させないと経済が持たないと言っていることと一緒で、これもまさにその通りだと思います。

手作業では限界があり、手作業を越えていく世界を持ち込まなくてはいけないと、そういう意味でオートメーション化を物流倉庫内に構築していくことが僕らにとって一番やらなくてはいけないことです。

──これまで人手でやってきた物流作業をロボット、コンピューターに置き換えて1人あたりの生産性を高める、ということですね。一方でそれによって雇用はどう変わっていくのでしょうか?

:少人数でやり、なおかつ賃金をあげていくべきであると僕は思います。今の頭数で勝負していく世界を10年後も続けていたら、生産性があがらないので、うちに関わる人たちの賃金を上げられないと思います。

僕たちが働く人たちの賃金をあげていくことで、世の中の賃金があがっていくので、世の中と歩調を合わせることになります。これは事業として絶対にやらなくてはいけないことで、うちで働いて、「ほかの企業より給料安いよね」と言われたらまずいと思うんですよ。

生産を引き上げて雇用を減らし社会的使命が薄れていく会社ではなく、しっかり業績成長させることで全体の雇用人数を増やしつつも会社としての利益生産性を高めて賃金もあげていくことは、やらなくてはいけないと思っています。

上場を目標に見据えた経営課題

──PAL様の経営課題について教えてください。

:直近でいうと、中長期的ビジョンを一緒に取り組んでくれる人間が必要です。

その中でも例えばマシナリーの部分でいくとメーカー交渉とファイナンシャルの部分、リース会社との折衝、事業設計を今やっていますけれど、その事業の設計に携われるような人材。事業構築を一緒にやっていけるような人ですかね。

今経営企画室には経営企画室長と僕がいますけど、内的なことに専業で向き合ってくれる人がいないんですよ。もう少し内向きのところにもパワーを入れたいです。その人たちが今、外向きに手をとられているので。

:中長期的な課題については、我々は最短で2018年で上場を掲げているので、中長期的に管理能力の強化が必要です。

営業内部の管理機能の強化を徹底してやっていかないといけない。事業のところでは、機械を売るというよりは機械を貸すビジネス、つまり弊社のオペレーション的なシステムをそのままレンタルするようなビジネスをしていこうと考えています。

基本的にはお客さんが倉庫を借りている年次に合わせた契約に合わせてあげたいです。縛りの薄いサブリース契約にできるような仕組みを構築すれば、マシナリーをガンガン売り込んでいけるので、1つの物流センターの生産性があがっていき、物流業界全体、日本全体の生産性があがっていくことになります。

あとは、世界中を飛び回ってくれるような人材が必要です。世界中のマシナリーやロボティクスマーケットを見続けてほしく、そういう人が必要です。

そのようなタイムリーな発見なしでは日本で独占販売することが難しいので、マシナリーの開拓者、つまり営業開拓をやってくれるような人は必要です。

できればヨーロッパとアメリカに1人ずつ住んでもらって、日本に情報を送り続ける作業をしてもらい、将来的にはマシーンの輸出入に携わってもらいたいです。

今、物流業界に必要な人材

──PAL様が求める人物像を教えてください。

:僕は人格最重視だと思っていて、とにかく明るく元気で朗らかであることが基本です。あと1日の始まりをとにかく笑顔で始めることですね。明るく笑い飛ばせる人はいいと思います。

スキル面では、ポジティブシンカーでないといけません。基本的に相手のことを思いやることのできる人ですね。また、コミュニケーション能力の高い人が良いと思います。

あとは"言う"より"動く"人です。行動力ありきです。自分のイメージしたものを現実化するためには行動力しかないんです。この単純な原理原則がわかっている人は僕と仕事していて合うと思います。

行動は自由であるべきだと思っています。しかし、自由であることには責任が伴っていて、そのことを理解する必要があります。

そういう人であれば一緒に仕事をしても細かいことは僕は関与しません、たまに会えば会うほどその人の顔を見れば一生懸命生きているかどうかすぐわかるので。ただ必要なのは行動あるのみ、を実践できる人は僕自身も会社としても求めています。

──物流業界の経験は必要ですか。

:そこに対して僕はあまり壁を持っていなくて、あろうがなかろうがあまり問題ではないと思います。

例え物流業界経験があっても口癖のように「いうても物流業界なんて」という既存の考えから脱却できない人は合わないかもしれません。

どちらかと言えば、そういう業界だから僕らがやることで何か影響を与えたいと思っている人のほうがいいかもしれません。

現にうちには業界経験者は1人もいません。グループ子会社合わせて100名いますけど、全員未経験者です。未経験のほうが一生懸命センター長をやったりしていますね。

難しい話ではなくて当たり前のことを当たり前にやれるかどうかだけなんです。物流業界はなにげなく店に入った人がほしいものを簡単に発見できる環境をつくることが仕事ですから、何でもないものを平和に動かせるかどうかなんです。

物流業界の中のルールとか現場の方々に対する特有の考え方や接し方はありますが、それは入社したら教えます。何かを変えたいときは当たり前ではないことを考え抜かなければいけないので行動力が伴ってきます。

なので提言力、発言力、発信力は常に大事ですね。

失敗を許容するPALの文化

──PAL様で働く魅力を教えてください。

:人のことをストレートに見る目を持っている会社であると思います。学歴、社歴、経験にあまりこだわらず、まず人物ありき人格ありきで、それにスキルや経験です。

逆に言うと、向こうから自己推薦でやりたいことを言ってきたら、どうぞって渡す会社ですね。手掛けた人に必ずチャンスを与えることに関しては社風かもしれないです。

やれると言ってる人にやらせてみようよ、それで成功するためのサポートをしようよという会社なので、そういう人の足を引っ張ることもないと思いますし、基本的には自由で手がけたチャンスがちゃんとキャッチアップできるということですね。

ダメだったらダメで失敗を許容する文化は大きいと思います。失敗を許容する文化はうちの会社のいいことだと、社員が言っていました。僕は失敗の先にしか成功はなく、失敗を恐れずやれる人はいずれちゃんと身をたてると思っています。

企業としての夢と個人の夢

──最後に辻さんの夢を聞かせてもらえますか。

:一番身近な夢は、うちで働く人が家族も含めて幸せになってもらうことですね。それは真剣にそう思います。これはできるだけ早く成し遂げたいです。

あとは企業として会社をしっかり成長させていくことですね。業界が世の中の動きとギャップが生まれたときにそれを埋め続けることができる企業でありたいと思っているので、今、IT、ロボティクス、マシナリーの業界とのギャップを埋めにいこうとしています。

僕個人のことで言うと、40代をしっかりとそれに費やしたいなと思います。40代後半では50代の準備をしたいので。

50のときに自分自身の暮らし方とか自分の夢がいろいろと物事を成し得て得たものを何に使うかも50代までには決めておきたいと思っています。

得ただけの人生ではおもしろくないので。実際に50になったときにはその活動を始めたいと思っていますし、60代はできれば半分くらい田舎で暮らしたいと思っていますね。

大阪にも戻りたいですね。今ちょうど奈良に300年くらいの古民家を探していまして、それを少しずつリノベーションして住みたいなと思っています。ついでに山1つくらいは周辺を買わせていただけたらなと思っています。

それ以外は先ほど言った海外展開でも、50代は時間かけてやっていると思います。その時は日本もだいぶ変わっていて、僕が持つ使命感も増えているはずなので、そこにしっかりと向き合うことのできる余裕を持っておきたいです。

いずれにしても慈善活動はやると思います。起業家として社会的に恵まれた人生を送らせていただいたと思うので、いただくばかりでは帳尻があいませんので、どこで吐き出すかですね。

──独立したばかりの辻さんに3,000万円を出してくれた方のようになるのでしょうか?

:そうですね。どういうかたちで社会に出すかはわからないかもしれませんけど、何らか自分自身が得てきたものを経験値も含めてもどうやって返すかについては50代60代で答えを持っていると思うので、それに対して一球入魂しながら向き合っているんじゃないかと思いますね。

──貴重なお話ありがとうございました。

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