読点はリズムより意味に応じて打つ

山口拓朗氏(以下、山口):では、3つ目にいきたいと思います。その3「読点(テン)を正しく打つ」。すごく大事なポイントですので、お伝えをしていきます。まず、例文です。「小林社長は日本の未来のために働く女性を応援している」。

「この文章、悪くないんじゃないの?」と思う方もいると思うんですけど、この質問はどうでしょう。「日本の未来のために何かをしているのは小林社長でしょうか? それとも働く女性でしょうか?」。ちょっと考えていただきたいんですね。

「日本の未来のために何かをしている」と考えると、意外と「あれ? 小林社長が日本の未来のために何かしているのかな」、あるいは「日本の未来のために働く女性がいるのかな?」と、ちょっとわかんなくなってくるわけですよ。読点を打っていないと、こうなるわけですね。

「日本の未来のために」何かをしているのが小林社長の場合であれば、「小林社長は日本の未来のために、働く女性を応援しています」と書くと誤読されなくなります。つまり、「働く女性」に「日本の未来のために」がかからなくなってくる。「小林社長」のほうにかかっていくので、わかりやすくなるわけですね。

逆に、「働く女性」のほうに「日本の未来のために」という言葉がかかっているのであれば、「小林社長は」で1回切って、「小林社長は、日本の未来のために働く女性を応援しています」としなくてはいけないわけです。

よく、「読点はリズム良く打とう」という指導をされる方もいます。気持ちはわかるんですが、考えなくてはいけないのは意味なんですよ。意味に応じてちゃんと読点を打つということですね。

この文章は、「日本の未来のために働く女性を、小林社長は応援しています」と、前後を入れ替えてもいいですよね。いずれにしても、誤解されないように読点を打つことを第1原則にしていただきたいです。

「リズム良く読点を打つ」だけが読点の打ち方ではありません。リズム良く打っても意味が変わって自分が伝えたい意味と違う意味で捉えられてしまう読点の打ち方はアウトです。意味をちゃんと見て読点を打ちましょう。

読点の9つの原則

これ以外にも、読点に関する大きな原則が(スライドに)9つほどあります。

(①)長い主語のあとに打ったり、(②)冒頭に来る接続詞や副詞のあとに打つ。「ところが、」とかね。

あと(③)逆説の助詞のあと。「たくさん種を蒔いたが、芽は出なかった」。この「が」が逆説の助詞ですね。このあとには打ったほうがいいということですね。

そして、(④)複数の情報を並べる時に打つ。「自信を失い、将来を嘆き、他人を責める。そんな3年間だった」などですね。

他にも、(⑤)条件や限定を示す語句のあとに打つ。「帰国していれば、会議に出席します」「台風が来たら、中止にする」。条件を伝えたら読点を打つも原則ですね。

それから、(⑥)時間や場面が変わるところに打つ。「強く主張したところ、相手の顔色が急に青ざめた」。シーンがパッと入れ替わる、移り変わるのがわかりますかね。「したところ、こうなった」とか。

(⑦)カギ括弧の代わりに打つもあります。「感情のコントロールが重要だ、と師匠は言う」。カギ括弧を使うこともあるし、使わない時はこういうふうにセリフが終わったところで読点を打って、「師匠は言う」とつなげてあげるといいわけですね。

その他には、(⑧)「おっ」などの感嘆詞のあとや「はい」などの応答のあとに打ってみるといいでしょう。

最後、(⑨)ひらがなやカタカナ、漢字が続きすぎる時。どの漢字の組み合わせかわかんない時が一瞬ありますよね。そういったところがわかりにくくならないように、読点を打ってみてください。

9個の原則をご自身の引き出しに入れておいてください。これをいつでも使えるようにしていただきたいし、その上で意味に応じて読点を打つことをやっていただきたいと思います。

その上で、最後にリズム良く読点を打つところを考える。意味が変わっちゃう読点は改悪ですので、やってはいけないんだけど、意味が変わらないんだったらリズム良く打つことも、最後に挑戦していただけるといいかなと思います。

同一の情報は揃える

では、4つ目にいきます。「同一情報はまとめて書く」というポイントです。これも例文からいきましょう。

「『ど田舎』をウリにした旅館につき、周囲にレジャー施設や観光地がありません。誇れるものと言えば、豊かな森と清流、それに、おいしい空気です。居酒屋やカフェなどの飲食店も、半径5km圏内には数件しかありません。天気のいい日の夜に見える満点の星も、一度は味わっていただきたいです」。

これは、田舎にある旅館のPR文だと思ってください。「別に意味わかるんじゃない?」「伝わっていますよ」と思う方が多いんじゃないかなと思うんですけど、もっと良くなりそうな気がしませんか? 今、オンラインで受講されている方で、「ここ、こうするといいんじゃないですか?」というアイデアがある方、ぜひチャットで教えていただけますか?

どこをどうすれば、この文章はもうちょっと良くなりそうか? 良くなるというのは、より伝わる論理的な文章になるということですね。ぜひ教えてください。(チャットを見て)「欠点と利点をまとめる」。そのとおりです。私もそうしたほうがいいと思います。

色をつけるとすごくわかりやすいです。

周囲に何もないよと。文化的な香りがするものはないよ。これが(スライドの)青い文字。赤い文字は自然です。自然を利点と表現してもいいでしょう。自然がたくさんあることが利点で、文化的な施設などがないことは欠点と捉えると、青い文字が欠点であり、赤い文字が利点です。

さっきも言いましたが、箱の中はきれいにしたほうが伝わるじゃないですか。この文章、どうですか? 青が来て赤が来て青が来て赤が来て、きれいとは言えませんよね。色をつけないと構造がそこまで見えないんですけど、色をつけると何がどうかっていうことがよくわかりますよね。これを見抜いていく力が必要なわけです。

特に自分が書いた文章で、A、B、Cと書いているのに、またAの補足情報が来て、またBの追加情報が来て、Cが出てきて、急にZになって、またAが来てとなってしまうと、グチャグチャな、汚部屋状態の箱になっちゃうわけですね。なので、同一の情報はとにかく揃える。

この文章を改善してみましょう。一例としては、こういう書き換え方ですね。先ほどチャットを入れてくれた方の言葉を使うと、欠点を最初に伝える。欠点をちゃんと書き終えてから、ど田舎のメリットに移ると、とてもわかりやすくなります。

書いたあとに「読み返す」までが文章作成

今お伝えをしているのは、同一情報を揃えましょうという話ですけど、1個だけ脱線します。「PR文章だったら、デメリットを書かなくてもいいんじゃない?」と思っている人もいると思うんですよ。

「『自然がいっぱいある場所』でいいでしょ。それだけ書けばいいんじゃないの?」と思う人もいると思うんです。なぜ書いているか。「文化的な香りがする施設等がない」と言うことによって、「だから自然がたくさんあるんだよ」という対比効果です。あえて言っているんですね。

あえて言うことによって、「あ、そうか。コンビニもないのか」みたいな。「カフェすらないのか」「居酒屋もないのか」「本当に田舎なんだよね」というところが強調されやすくなる。これも文章の書き方のテクニックとして、余談ですけど頭に入れておいてください。

こんな感じで、冒頭でど田舎のデメリットを伝えて、「一方」と接続詞だけ加えました。「一方、誇れるものといえば、豊かな森と清流、おいしい空気、満点の星」と自然をたっぷりと語る。

このほうが明らかに箱の中が整理されているので、相手に伝わりやすくなるということなんですね。同一情報、ぜひまとめてください。

これは、書いている時に気づきにくいんですよ。大事なのは読み返しです。読み返した時に「あれ? この情報とこの情報は一緒だから、一緒のところに持っていったほうがいいよね」と、あなたが判断できるかどうかですね。

今日お伝えしていることは、読み返した時に全部気づけばいいんですよ。「一文一義になっていないから直そう」「具体的な言葉になっていないから直そう」「ちょっと意味が違うから、読点の打ち方を直そう」「バラバラになっているから同一情報でまとめよう」。読み返した時にちゃんと改善できればOKです。

書いている時だけが「書く」ではなくて、書いて読み返すところまでが文章作成ですから、私も一発で良い文章なんて書く自信ないですね。読み返して、推敲して、論理的な伝わる文章に磨き上げる。そんなイメージです。ぜひ、今日のチェックポイントを実際に意識しながら読み返していただきたいと思います。

「なんか読みにくい」という印象を与える文章は読まれない

最後の5つ目です。「ストレスがかからない見た目にする」。(スライドの)AとB、読まなくていいです。パッと見た瞬間にどっちが読みやすいか。

今、チャットに打ち込める方はどっちが読みやすいかを書いてください。

(チャットを見て)Bのほうがパッと見た瞬間に読みやすい。書いてあることはまったく一緒です。他の方も続々とBとチャットに書いてくれていますね。

今の時代、見た目を馬鹿にできません。なぜかと言うと、今は超情報化社会で、読みにくい文章を読まなくなっているんですね。仕事の文章であっても読んでもらえない。なんか読みにくい。読みたくないとなると適当に読まれますから、より誤解がされやすくなるんですよ。

AとB、何が違うか。Aのような文章を出版業界・広告業界では「黒っぽい文章」と言います。Bのような文章を「白っぽい文章」と言います。今の時代は、とにかく「白くしろ、白くしろ」が合言葉です。白くないと読んでもらえないから。

ポイントをお伝えすると、まずは「早めの改行」ですね。さっきのAの文章、横に長かったじゃないですか。1行40文字以上あるところもあると思うんですけど、そうすると読みにくい。読み終えたあと、また同じ行を読み返してしまったりもあるわけです。

Bの文章は早めに改行してあります。肌感覚の目安でいうと、1行35文字以内くらい。メールであれば、それくらいを意識していただけるといいかなと思います。

もう1つ、「空白の行」を使っています。Aは空白の行がありませんでした。Bは空白の行があります。空白の行には意味があって、空白があることによって、メールで言うと「最初は挨拶だな」とか「最後は締めの言葉だな」とわかるわけですよ。

「真ん中の部分が大事だな」って、そこだけを拾い読みしやすくしている。相手が拾い読みしやすいような工夫をしている。それが空白の行です。だから空白の行を適宜設けてあげるのは、やさしい文章、読み手視点の文章ということになります。

読みやすい漢字の割合

そして最後にもう1つ、「漢字の使いすぎにも注意」です。漢字を使いすぎると黒っぽくなるからですね。漢字はどれくらいの割合がいいんだろうかと思う方は、「3対7」と覚えてください。漢字3(割)、ひらがな7(割)です。

けど、そんなの数えていられないという方は、ネット上でいろいろなサイトがあります。漢字使用率チェッカーのようなサイトですね。そこに文章を流し込んでください。漢字使用率が何パーセントと出ます。一発で漢字のパーセンテージが出ますので、それを見て「あ、私40パーセント超えている」という方は漢字を使い過ぎですね。

あまりいないですけど、20パーセント台の方はひらがなを使いすぎです。ちょっと幼稚な文章に見える。行政の文章と法律の文章は、お約束事項が多すぎるので40パーセントを超えてもOKです。

けど、一般的には30パーセントから35パーセントくらいがいいと思います。30パーセント台後半の方は、もしかしたらキーボードで難しい漢字が出てきた時に、「それ使っちゃえ」と使っているかもしれないんですけど、黒っぽくなってしまうので読みにくくなってしまいます。そこは気をつけていただきたいと思います。

というわけで、ここまで「第2講 伝わる文章の書き方5つのポイント」をお伝えしました。