レイアウトとは「配形」と「配置」の組み合わせ

新垣才氏(以下、新垣):ここからの後半はもうちょっと具体的に「レイアウトの7原則」の話をします。さっき「人の視覚を通じた認知・感じ方」を3つ紹介したんですけど、これを応用したのが「レイアウトの原則」と呼ばれるものです。

同じように、「レイアウト」を辞書で調べてみると、これも2つの意味があります。「配置」と形を考えること。つまり、これはさっきのスライドデザインの全体像で言った、配形と配置の組み合わせが「レイアウト」ということですね。

「レイアウト」を学ぶというのは、さっきの全体像の、配形と配置を学んでいると思ってもらえば大丈夫です。「レイアウトの7原則」を僕が提唱しているんですけど、これは一般的には、だいたい「レイアウトの4原則」「デザインの4原則」(と言われていて)、「近接」「整列」「対比」「反復」の4つですね。

さっきちょっと出てきた「ゲシュタルト原則」と同じような名前も入ってますね。「近接の法則」とか「整列の原則」というふうにGoogle Chromeなどで検索してみると出てきます。

「レイアウトの7原則」では、ここにあと3つだけ追加します。「余白」をどうするかや、画面の「分割」をどうするか。3等分にして画面で見せるのか、2等分にして見せるのかみたいな分割の話と、視線の「誘導」。代表的なものだと「Fの法則」とか「Zの法則」があります。この7つを使うのが配形と配置を合わせたものです。

ここの7つの原則に従ってスライドを作ると、基本的にうまくいきます。逆に言えば、最低限まずここに沿おうねというのが、「レイアウトの7原則」です。今日はさすがに全部を1つずつお話ししていくと時間が足りないので、これができてないスライドにありがちなところをピックアップしています。「整列」「対比」「余白」の3つを紹介したいと思います。

まず「整列」ですね。「整列」は要素同士の位置を、見えない線や見えない四角まで含めて揃えることを指します。整列が意識されていないと、ゴチャついた印象になってしまいます。例えば起業家さんが投資家のみなさんにスライドを見せる時も「なんかちょっと雑だな」「見づらいな」「わかりづらいな」となってしまうので、基本的には揃えていくのが非常に大事。最低限の礼儀とも言えるかもしれないですね。

整列を意識すると「洗練された感」が出る

効果としてどういうものがあるかというと、大きくこの3つですね。純粋に文章が読みやすくなることと、「美しさ」や「洗練された感」を読み手に与えることができます。このあと説明する、「見えない線・見えない四角」というのは、人がパッと見で認識したり言語化できないものなので、美しさを超えた“スゴみ”みたいなのを与えることもできます。

見えない線・見えない四角とは何かというと、例えばこういう整列です。この薄い赤の線が見えますかね。この矢印と2個目の(文章の)1行目を揃えるとか、あとは左の図の上下の線とこの右側の3つの文章の余白を揃えてあげるとか。

見えない四角はこれですね。3つの文章を四角で囲ってきれいにしてあげて、それをこの上下の見えない線の、ちょうど真ん中に持ってきてあげるとか。こういうパッと見えないところまで揃えて整列すると、(四角は)見えないんだけど、すごく整っているように作ることができます。

よくあるNGとしては、例えば「要素同士」。この「余白」の中にある図形同士が揃ってなかったりとか、四角の中は揃ってるんだけど、もうちょっと大きな「7つの原則」のグループが揃ってないとか。ここらへんまではけっこうみなさんも認識できるんですけど、スライドに対して揃っていなくて、ちょっと左寄せになっているものとか。

あと実は1番多いのは、スライドの間が揃ってないこと。左側のスライドが、さっきよりちょっとずれて上に見えます。一瞬のズレでもけっこう見てる側にはわかってしまって「違うものが映ったのかな」と思ってしまうんですね。

そうすると左側に気を取られて、本来見せたかった右側のものを見てもらえないとか、「ちょっと汚いな」「美しくないな」「ずれてるな」って思わせてしまう。ですからスライドの間まで「整列」の概念を考えていくといいです。

「左揃え」「中央揃え」「右揃え」の使い分け

「整列のコツ」としては、よくある「左揃え」「中央揃え」「右揃え」という3つの揃え方があるんですけど、この特徴を理解して使いこなしていくといいかなと思います。左揃えが一番使う場面が多いですね。左に揃えてあげると文章の頭が固定されて読みやすく、右側に空白を作りやすいので、他の図も置きやすいです。

あとは左側に揃っていると、基本的に本も全部そうなんですけど、文章量が多い時に一番読みやすいですね。「中央揃え」は例えばタイトルを作る時にシンプルでスッキリした印象を与えやすいです。

ただ長文になるとだんだん行の頭が揃わなくなって読みづらくなってしまうので、基本的には2行ぐらいまでにとどめられるものがいいです。タイトルのように大きくドンと見せたい時は、「中央揃え」を使うといいかなと思います。

「右揃え」はほとんど使わないんですけど、逆に言うと目立つので、ちょっとレイアウトを崩したい時には受け手に「おっ」と注目してもらえるような見せ方ができます。ただ基本的には長文には向かないので、コピーライトとか注釈とか、小さなものに使われる傾向があります。

基本的には「左揃え」を使いつつ、目立たせたいところや訴えたいスライドの文章がある時は「中央揃え」を使います。そしてコピーライトか、逆に見せたくないけど書いとかなきゃいけないものを、小さく右下に揃えておくとか、そういう使い分けをしていくのが基本になります。

今度は「対比」ですね。「要素の間に意図的に差をつけて比べること」と定義されます。要素のどういう「対比」があるかというと、形の対比ですね。さっき「視覚属性」でもお話ししましたが、形を他とずらして意図的に差をつけて目立たせるとか。

よくある「対比」のNGパターン

あとは文字ですね。これは「ジャンプ率」と言うんですけど、文字の大きさを対比させるとか。あと「位置」や「色」ですね。意図的に差をつけるとか、色に意図的に差をつける。こういうことをしてあげると、パッと見で目立つようになるので、情報の重要度がわかりやすくなりますね。

「どこを見せたいんだっけ?」「今後どこに着目してほしいんだっけ?」というところがわかりやすくなるし、プレゼンを受ける側としても、どこに着目すればいいかわかりやすくなります。

司会者:新垣さん。前の説明をもう少し詳しくしてほしいということだったんですけど、今のところのご説明が終わったら、2つ前に戻っていただいてもよろしいでしょうか?

新垣:はい。もちろんです。あとでお話ししますね。対比の他の効果としては、読み手の注意を引くことができるとか、情報の関係性を想像させることができます。さっき言ったように、どこが重要なのかがわかるし、例えば「ここの人って他の2人より立場的に上なのかな」という関係性も想像させることができるようになります。

よくあるNGで言うと、例えば「対比」がまったくなくてメリハリがないから、プレゼンがスライドの後半になって飽きられてしまうパターン。もっと多いのが「対比」があり過ぎるパターンですね。「ここも、ここも目立たせたい」とすべてが目立つようにしてしまったがゆえに、要点がわからず、結果何も目立ってない状態もよくあります。

これは実はさっきの「整列」とつながっていて、差をつけるためには揃えないといけないんですよね。さっき8つの「視覚属性」を出しましたけど、これも他の17個の赤い四角が整列しているからこそ、1個が違った時に差がついて、そこがめちゃくちゃ目立つんですね。

これがもし、18個すべてが長さや向きや大きさ、色とか位置も全部バラバラでランダムな図形が散りばめられたものになったら、結局どこを目立たせたいか、どこに着目していいかわからなくなりますよね。

なので、この「レイアウトの原則」の「対比」と「整列」は表裏一体、いえ、どちらかというと前提ですね。対比させたかったら整列させなきゃいけない。整列が成り立って、ようやく初めて対比ができる。なのでその分やはり「整列」が重要だよねということです。

一番伝えたい部分の「ジャンプ率」を上げる

もうちょっといきましょうか。これが終わったら(先ほどの質問に)戻りますね。さっきお話にあげた「ジャンプ率」は大きさの比率のことなんですけど、例えばこういうものですね。ジャンプ率が低い(パターン)。この「伝わるプレゼン」「デザイン編」「2020.08.12」すべて同じ16ポイントっていうフォントのサイズでやっているのでジャンプ率100パーセント。16分の16なので100パーセントです。

そうすると結局対比がないので、どこを1番目立たせたいか、どこに着目してほしいのか、メリハリがなくなってしまっている状態です。例えばこういうふうにジャンプ率を変えると、ジャンプ率が200パーセントになります。

1番小さいものが12ポイントのフォントサイズで、1番大きいのは24ポイント。つまり12分の24で2、かける100で200パーセントですね。2倍のジャンプ率があります。こうするとパッと見て「デザイン編が2020年の8月12日にやるんだな」と相手に伝わります。

「伝わるプレゼン」ってサービス名ですから、ここの場合は、あくまで「『デザイン編』がこの日にやるよ」というのを目立たせたいので、それを大きくして他の要素をあえて小さくする。取捨選択して「対比」「ジャンプ率」を上げてあげると、メリハリがあるデザインになります。なので、こういう「ジャンプ率」を意図的につけてあげるのも、「対比」のコツの1つになります。

じゃあスライドの統一感の悪い例に戻りますね。これが1個前のスライド、これがもう1個のスライド。ここで左側の要素が下から上に上がっているのがわかりますか? これよくあるんですよ。スライドを作っている時に何かの拍子に意図せず一瞬触ってしまって、それに気づかずに次のスライドを編集すると、基本こうなります。

右側の「グループ同士が揃ってない」という説明をしたいのに、次のスライドに移動させた時に左側が上にずれると、人ってどうしても動いているモノに目が行っちゃうので、左側が目立ってしまうんですね。

細かなニュアンスまで変わる「余白」の力

あともう1ついきましょうか。レイアウトの「余白」で、これもよくありますね。余白って要素を置かない空間で、それ自体を設計することで余白もデザインできます。

さっきの「ゲシュタルト原則」の「図」と「地」と同じで、要素と背景の背景側をどう設計するかというお話です。この「ゲシュタルト原則」は図と地のさっきの壺の話ですね。この壺を見てもらったらわかるんですけど、何もないものをコントロールするのは、結局何かがあるのをコントロールするのと同じなんですよね。

裏側をコントロールしてあげると、表側でどれを目立たせたいかを選べるんです。この場合は読みやすさを上げられます。また、ゆったり感とか、けっこうびっしり文字が埋まっていてかっちりしている雰囲気だとか、そういったニュアンスもデザインできますよっていうお話です。

よくあるスライドのNGとしては、「大きいほど見やすい」っていうのが基本的な思想になっちゃうこと。そうすると逆に見づらくなってしまうんですよね。例えば行間がすごく狭いとか。あとは四角形の上に白い文字をのせる時に、この黒い四角にぜんぜん余白がないと、けっこうギューギューな印象になってしまうんですけど、実はちょっとフォントのサイズを下げて行間を空けてあげるとか。

黒塗りの四角の上に、余白をつけて白い文字を載せてあげると、右側の方が読みやすくなりますよね。大きければ何でもいいというものじゃなくて、ある程度余白をつけてあげないと、人は逆に見にくくなってしまうんですね。

あとは、「スライドに対しても余白が小さい」というのがありますね。白いスライドの上にビッチリと情報を入れすぎちゃって、(文字が)でかくなってしまう。スライドの端っこに対してもある程度の余白を取ってあげると、揃って見えるようになります。

「見えない四角」に対してデザインする

これも「整列」と同じで、結局見えない四角を意識して、上下の余白を整えましょうというもので、例えばこういう2行の文章にも、必ずこういうふうに外側の四角で囲ってあげると、見えない四角が必ず生まれます。それぞれの四角同士の間の余白をちゃんと取ってあげる。

この見えない四角を組み合わせても、この3つの四角の外側を囲む見えない四角がありますし、ヘッダーの左上の余白を残すとか、右側右下にある「MOVED」ってロゴにもこの内側を囲む見えない四角が存在している。

その見えない四角に対して余白を十分にとってあげましょう。その四角を例えば上下中心に置いてもいいですし、それぞれある程度の余白をとって見えない四角に対してもデザインしてあげるのが重要になります。

ということで、「レイアウトの原則」でした。各原則を調べてみたり意識してみると、より見やすい、わかりやすい、良いスライドになるかなと思います。