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カスタマーサクセスにおける顧客成果の在り方とは?(全2記事)

2023.07.18

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顧客にとっての最大のニーズは「顧客満足」ではない 米国SaaS業界が注目する、カスタマーサクセスの重要性

提供:Gainsight株式会社

さまざまな商品やサービスがあふれている中、ビジネスの成否を分ける「顧客との継続的なつながり」が重視されています。単なるサービスの提供ではなく、顧客が望む成功に導くための「カスタマーサクセス」の定義や最新事例について、米国カスタマーサクセス業界の大手Gainsightの日本法人代表の絹村悠氏と、sasket LLC 代表の山田ひさのり氏が対談しました。前編では、日本で「顧客の成果」が重視されにくい背景や、海外のSaaSマーケットで見られる、厳しい環境変化について解説しました。

カスタマーサクセスにおける「顧客成果」の在り方とは?

絹村悠氏(以下、絹村):それではウェビナーシリーズを開始いたします。本日は「カスタマーサクセスにおける顧客成果の在り方」と題して、日頃オフィスで開催しているウェビナーシリーズから、少しオフィスを飛び出して、スペシャルなゲストをお呼びしています。

まずはGainsight代表の私と、『カスタマーサクセス実行戦略』の著者である、元Sansanの山田さんをお招きして、一緒にお話ししていくという新しい形式で進めていければと思います。よろしくお願いいたします。

山田ひさのり氏(以下、山田):よろしくお願いします。

絹村:まず簡単に、山田さんに自己紹介を兼ねてご挨拶いただいてもよろしいですか?

山田:山田ひさのりと申します。現在は、カスタマーサクセスのコンサルティングをメインの業務としております。以前はクラウド名刺管理のSansan株式会社に所属して、カスタマーサクセスの組織構築などを行っていました。その時のノウハウをもとにして書いた『カスタマーサクセス実行戦略』は、ありがたいことに多くのCSの方に読んでいただいているんですけど。

絹村:私も読みました(笑)。

山田:(笑)。ありがとうございます。そういうご縁もあって、いろいろなところでカスタマーサクセスのお話をさせていただいております。

絹村:ありがとうございます。今日は山田さんをお招きして、あえて1つのテーマに絞ってお話をしていきたいと思っております。もともと私と山田さんは、先々週アメリカでGainsightがやっている、年次のカンファレンスPulse(パルス)に参加しまして。

Pulseで見たことや聞いたことについて、夜ご飯を食べたりしながらいろいろなお話をしていたんですが、そういった中でも大きなテーマが1つ出てきていました。それは「カスタマーサクセスにおいて、顧客成果というものをどう捉えていくか」というテーマでした。

ですので、今日はここを2人で深掘りながらお話していこうということで、型にはまったディスカッションというよりは、その中で何を感じたか、日頃からお客さまと接している中で何を感じるかということを、ざっくばらんにお話ししながら進めていければと思います。

「顧客満足」が重視される一方で見落とされていること

絹村:まず今日の課題設定をしていくために、私がなぜこのテーマをピックアップしたかというところからお話していきます。そのテーマを設定するにあたって、まず1つシンプルな方程式をご紹介します。

「Customer Success(顧客の成功)=Customer Outcome(顧客の成果)+Customer Experience(顧客の体験)」と。Gainsightのウェビナーをご存じの方は、何度か私の口からこの方程式を聞いた方もいらっしゃるかと思いますが、弊社が創業以来「カスタマーサクセスとは何ですか?」と聞かれた時に、必ずお答えしている方程式になります。

重要な要素はCX、顧客の体験と顧客の成果の2つがあって、初めてお客さまの成功が実現すると。カスタマーサクセスは、これによって成立するものだと常にお伝えしています。

私は、これはすごく本質的で正しいことだと思っているので、何度かお伝えしてるんですが、反面みなさまの腑に落ちている感じとか「これに基づいて日々の業務を見直してみました」という声を聞く機会がまだまだ少なくて。

私も少し努力不足かもしれませんが、やはり実行するにあたって何か難しさがあったり、これだけでは語れないような欠けているピースがあるんじゃないかと感じています。

そういったことを山田さんといろいろとお話したり、ご相談する中から、このテーマをもっと深掘ってお話ししようということになりました。今日は、このCS=CO+CXのCOについて、どこに難しさがあるのかといったことを少しお話ししていければと思います。

山田さんは今、いろいろな企業のコンサルテーションに入ってらっしゃる中で、この方程式の実現の難しさや、なかなか定着しなかったり、本質的なところとして捉えられないのは、どのあたりに乖離があると感じていらっしゃいますか?

山田:日本においてのお話なんですけれども、主に顧客満足ですね。Customer Satisfactionが非常に重視されているなと感じます。

絹村:そうですね。

山田:大きなところにはどこでも(カスタマー)サポートなどはあるんですけども、顧客満足は「その顧客が満足している」という状態にフォーカスするものなので、この方程式でいうとCXのほうに近いかなと感じています。

顧客満足を否定する人は、たぶんいらっしゃらないと思うんですよね。一方で、そこが重視されるあまり、お客さまに成果を与えなければいけないというところが、どうしても相対的に薄れてるんじゃないかというのが、私の見解ですね。

日本で「顧客の成果」が重視されにくい要因

絹村:なるほど。一方(顧客満足)が上がっているので、どうしても片方(成果)がなかなか上がってこないというところですよね。

山田:そうですね。

絹村:このあたりのバランスが、もともと日本企業が持っていた顧客体験や顧客満足度といった、お客さまにいい体験を提供しようというところにかなりフォーカスしている。それが背景にあることは日本企業の強さだと思うんですけども、それゆえに際立ちすぎてしまって、アウトカム(成果)の優先順位が少し下がってしまうということですよね。

山田:私にはちょっとそう見えていますね。

絹村:なんだかすごく腑に落ちる話だなと思いますし、それは決して悪い話ではなくて、CXやCustomer Satisfactionをしっかりやっていて、逆にCOのところさえしっかり持ってこられれば、すばらしいカスタマーサクセスが実現できる下地が揃っている企業が、たくさんあるということだと思います。

山田:そう思います。

絹村:あとは、具体的にどうやってそこを上げていけばいいかというところかなと思いますが、実際にお客さまとお話をしている中で、何か取り組みをやっているとか、やってみたけど難しかったという声を聞いたことはありますか?

山田:はい。私がたまに紹介しているGainsightのカスタマーサクセスのエレメンツですね。カスタマーサクセスにはどういうアクティビティがあって、こういうことをやるとお客さまにこういう影響があるというふうに、自分たちの企業にフィットしたものにトライしようとしている企業は何社か見ています。

私の本でも紹介していて、(実際に)やってみるんですけど。やはり最終的にアウトカムに結びつけなければいけないというところは、当初の私の本もそうなんですけど、Gainsightエレメンツではそこまで言及されてないんですね。

絹村:うん、うん。

山田:エレメンツをやることに終始してしまって、顧客体験は上がったけれどもアウトカムまで持っていけていない感じがしますね。

成果から逆算してプロセスを作るのが一番合理的

絹村:なるほど。ちなみに愚問かもしれませんが、今日のテーマであるこのアウトカムはやはり大事ですか?

山田:大事というか、よくよく考えると、アウトカムがないとオンボーディングプロセスも組めないなと感じますね。やはり成果から逆算して、いろいろなプロセスを作っていくのが、一番合理的な感じがしています。

もちろんそれがわからなくても、お客さまに対して一生懸命できることはあるんですよ。ただ、本当に正しいことをしようとした場合、やはり成果から逆算して業務プロセスを作っていくという発想は欠かせないと思います。

絹村:なるほど。じゃあ、アウトカムから逆算した時のオンボーディングのプロセスと、それ抜きで考えた時のオンボーディングプロセスは絶対違いが出てくる。

山田:けっこう違うんじゃないかなという見解を持っていますね。

絹村:どのあたりで違いが出てくると思いますか?

山田:カスタマーサクセスに慣れた人とか、ずっとお客さまを見ていた営業の方は、そんなに外さないオンボーディングをするんですよ。「ここが大事だよね」というところはけっこう芯を食っているんですけど、お客さまにどれくらいのビジネス成果を与えるのかというところまで想像できていないので、やはり若干ずれていたり。

お客さまにここまでは与えられるんだけど、その手前までしかいっていないものは散見されるので、自分たちでグッと解像度を高めることによって、お客さまに喜んでいただけて、ずっと継続していただけるようなオンボーディングができるんじゃないかなと思いますね。

絹村:なるほど。本当に成果につながるキーポイントをしっかり捕まえて、そこまでグリップできているか、届けられるかということを感じられるのと、そこがわからずに、なんとなくお客さまに使えるような状態まで持っていこうとするオンボーディングには、だいぶ差があるという。

山田:だいぶ差がありますね。本質的に近いところまで行っているんですけども、けっこう違いが出てくると思います。

絹村:おもしろいですね。そのあたりは、具体的に取り組まれた山田さんだから出てくる視点だと思いますし。やはりゴールから遡ってすべてをデザインしていくことが、より重要視されていくということですね。ありがとうございます。

世界最大のカスタマーサクセスカンファレンス「Pulse」に参加

絹村:このあたりがたぶん、今の日本のカスタマーサクセスによる、顧客のビジネス成果に対する認識や捉え方の現在地だと思います。反面、アメリカのマーケットにおいて、今どういうコンディションにあるかということも、少しお話ししていければと思います。

冒頭で申し上げたとおり、私と山田さんで先々週ちょうどPulseに行ってきましたので、その中で、どういったニュアンスでこの顧客成果が語られていたのか。日本よりも濃いのか薄いのかとか、何かニュアンスに違いがあるのかといったことを少し掘り下げていければと思います。

まずはじめに顧客成果の話は抜きにして、山田さん自身、Pulseにご参加いただいて、ざっくばらんにどういうふうに感じられましたか?

山田:私は4年ぶりの参加だったんですけど、前に行ったことがあったので慣れた感じで行ってみたつもりでした。でも、やはりすごく新鮮で、Gainsight社自体の規模も変わっていますし、プロダクト自体もすごく進化を感じたんですね。

今まではオンボーディングやリニューアルマネジメントといった、一つひとつのプロセスを深掘りをしている印象を受けましたが、今回はお客さまの成果が何なのか、どうやってそれを突き詰めればいいのかというところが、すごく際立ってきていると感じました。より本質的なカスタマーサクセスに近づいているというか。私が言うのも何ですけど、そういった思想を感じました。

絹村:まさに先ほどの話であった、オンボーディングだけの最適解を考えていたり、顧客成果から遡ってデザインしたオンボーディングじゃなくて、しっかりと本質論に基づいたかたちで、さまざまなことがディスカッションされていたということですね。

山田:そうですね。もちろん1個1個どう磨いていったかという話も興味深かったんですけど、すごくアメリカンな感じで適用されていました。「これでうまくいったんだよ」という事例を話している人がいるかと思えば、非常に学術的で論理立ったフレームワークを提供している方もいらっしゃいましたし、私自身はすごく刺激になりました。

プロダクトの価値よりも先に、顧客に伝えるべきこと

絹村:ありがとうございます。何か1つ、大きなハイライトや学びをピックアップするとしたら、どのあたりにありますか?

山田:私は以前Twitterでも書いたんですけど、VMwareさんが発表されていた事例ですね。VMwareさんはすごくいろいろなプロダクトを持ってらっしゃるんですけど、その中でも13個の成果を挙げていました。

おそらく営業段階から、お客さまに与える13個のビジネス成果を特定して、「あなたたちはどれが叶えたいんですか?」といったコミュニケーションが取れているんですね。

だいたいプロダクトの価値から入りがちなんですけど、ビジネス成果から入っていくことがすごく新鮮で、正直、衝撃を受けました。

絹村:ありがとうございます。右側のチャートが、確か山田さんがつぶやかれた、VMwareさんのセッションの中のチャートの1つだと思いますけど、今の話はneeds discovery(のところです)。カスタマーライフサイクルの一番最初にneeds discoveryと入っているのも初めてなんですけど。

山田:(笑)。

絹村:普通、契約やオンボーディングから入ると思うんですけど、ぜんぜん違うところから入ってきて、バリュークリエーションしていく。まず価値を一緒に作り上げていくという意味合いですよね。

山田:そうですね。自分たちのサービスが(顧客に)与える価値がよっぽどわかってないと、この会話は営業さんはできないと思うんですよね。「便利ですよ」「ここっていいですよ」ということから入りがちなんですけど、本当にここ(ビジネス成果)から入っているとしたら驚くべきことだなと思いました。

顧客にとって最大のニーズは「顧客満足」ではない

絹村:どのビジネス成果を伝えていくか、お客さまに与えられるかというところからしっかり考えていっている。それでセールスサイクルからスタートしているというところですよね。

せっかくこのスライドに来たので、私も1つおもしろかったなと思ったことを(お話ししたいと思います)。LinkdInさんのセッションの中で、このピラミッド構造が出ていました。これはカスタマーサクセスチームの中で持っている、どこまでお客さまのニーズを充足できているかを、階層構造で表しているんですけど。

Customer Satisfaction(顧客満足)が一番ボトムに来ています。その上にadoption(導入)と言われるようなものや、製品の利活用の定着などが入っています。

さらにその上にROI(投資利益率)が来ていて、最後は一番上にファイナンシャルインパクトとあります。本当にファイナンス上のビジネスインパクトを持っているかどうかが、お客さまの一番トップのニーズだと書かれていて。

今は何段階まで達成できているかということを、しっかりカスタマーサクセスチームとして理解していくし、自分たちが作っているプログラムが、どこにインパクトをもたらすかをしっかり考えながら、カスタマージャーニーをデザインしているという話もありました。ここまで考えながらやっているということは、すごくインパクトを感じた部分です。

山田:やはり米国は仕組み化というか、構造化がすごく洗練されている感じがしますよね。

絹村:うまいですね。

この2〜3年で、平均的な年間契約金額が20〜40%も下落

絹村:というところで、本当にいろいろなセッションの中で、このバリューをどう届けるかではなくて、どう認識してもらうかですよね。バリューリアライゼーション(Value Realization)という言葉がたくさん使われていたので。

「実現するか」という意味ですよね。届けるんじゃなくて、どう実現するかがすごくテーマになっていた感じがします。そこも含めてPulseでどういう話があったか、簡単にサマリーで解説します。

まず背景としては、日本にいるよりもアメリカの、特にSaaSのマーケットのコンディションが非常に厳しいという実態があると思います。

経済環境が悪化してくる中で、更新の案件の商談の相手がCFOになっていくと。必ずCFOが入ってきて値段の交渉が出てくる。これも1つ衝撃的な数値だったんですけど、この2〜3年の間に、平均的な年間の契約金額が、だいたい20パーセントから40パーセントぐらい下落しているという調査レポートも出てきていました。

普通にやってしまうと、もうNRR(売上維持率)がどんどん下がっていってしまうので、価値をどう実証するかということが最重要になりますし。その中で1年とか2年かけて価値を実証するのでは、もう下落傾向を止められない。

なので、Time to Valueはいかに最短で、3ヶ月6ヶ月の中で、お客さまに(価値を)感じていただけるようなプログラムを作っていくかが、非常に重要な要素になってきているんだなと。

あとはもう、どうしても下がってしまうACV(年間契約額)が出てくるので、GRR(総収入維持率)やNRR(売上維持率)の観点で見れば、それをリカバリーするためにも、アップセル、クロスセルをカスタマーサクセスチームがかけていく。

そして、いかにGRRを今までと同じ状態に持っていくかというところに、ミッションを広げなければいけないという、外的要因による自分たちの変化があるんじゃないかなと感じています。

カスタマーサクセスが、より付加価値を上げていくには

絹村:ただ、これを聞いていただいたらわかるとおり、ここ(ビジネス成果の実証)まで来るのがめちゃくちゃ大変ですよね。

山田:そうですね。

絹村:めちゃくちゃ複雑なプロセスに対して、今までやったことがないことにチャレンジしなきゃいけない。なので、実は今回のGainsightのPulseの大きなテーマは「デジタルCS」ということで、カスタマーサクセスにもっとデジタルを取り入れていこうという話だったんですけども。

実はこれはデジタルCSが本質的にあるのではなくて、バリューリアライゼーションや複雑なプロセスに対して、カスタマーサクセスがより付加価値を上げられるようにシフトするためにも、今まで人手をかけていたところに対して、例えばセルフで完結したりデジタルを使って無駄を削ぎ落としていく。そして、人が本質的にやらなきゃいけないところに、もっとリソースシフトしていこうよと。

それによって2番をしっかり実現していく。もしくは、この2番を実現するために守りじゃなくて、もっと攻めていく領域を増やしていこうぜということがあって、デジタルCSなんだなと。

デジタルCSは、あくまでもこの2番や攻めていくための実現手段の1つというふうに、私は捉えたんですけども。このあたりは山田さんから、何か補足などありますか。

山田:まったく同意ですね。やはりカスタマーサクセスのやるべきことが増えているのは、いろいろなカスタマーサクセス界隈の人から聞いても思うことなんですね。セミナーのお世話などをやっている方も普通にいらっしゃるので。

本当はお客さまに向き合って、実際に価値を届けなきゃいけないんですけれども、周辺業務に忙殺されてしまっているところがあるので、やはりこのトレンドをしっかり踏まえていく必要があると思っています。

絹村:ありがとうございます。そうですね。本当にやる領域がどんどん増えてきて、おそらくスキルセットとしても、ちょっと大きな変化が起きてくるんだろうなと思います。

顧客が「ビジネス成果を感じているか」を追いかける

絹村:今日はこのあと、実際にバリューをどう届けていくかというところで、もう少し具体的なHow toとして、今みなさま自身が何を準備して、変化を迎えていくにあたって取り組めばいいかについて、2人の考察を入れながらお伝えできればと思います。

まずは、先ほどVMwareでセールスプロセスとしてビジネス成果から入っているという話がありましたが、実はGainsightもまったく同じような考え方を持っていて。

そういうフレームワークを使いながら、セールスからカスタマーサクセスまでの一貫した体験を届けるためのフレームワークで、運用・オペレーションを回している部分があるので、その内容を簡単に解説させていただきながら、もし山田さんも何かご質問あれば、ぜひお願いします。

これをすべてやるのはなかなか難しいかもしれませんが、何か取り入れるところが1つでもあればということで、お伝えできればと思います。

まず、Gainsightがなぜこのアウトカム、ビジネス成果に固執しているかというと、我々社内的には「Verified Outcome」という言い方をするんですけど、これは実証されたビジネス成果ということで、お客さまが実際に「その成果が出た」と感じているかどうかですね。

山田:理論値じゃなくてということですね。

絹村:それを1つでもいいからずっと感じているか、もしくは2つ3つ感じているかといったことを、カスタマーサクセスのプロセスの中で、お客さまごとに追いかけていっています。

このグラフは「No VO」と書いてるのが、それ(ビジネス成果)が1個も実証されていないお客さまです。「1+VO」と書いてるのが、1つでもいいから実証されているお客さまなんですけど、この間には、GRRで30パーセントぐらい差が出てくることが、過去のプラクティスからもうすでにデータとして見えています。

自分たちのGRRを上げていくには、これ(ビジネス成果)を1個でも多く届けていくことが大事だという体験値に基づいて、全員が同じかたちで(お客さまに)届けていく。人によるスキルの差なく届けていくために、プログラムとして作り上げていっています。

ビジネス成果を達成するためにすべきこと

絹村:そのフレームワークは、大きくはビジネス成果と実現する業務フロー、計測指標で構成されています。ビジネス成果はたぶんお客さまによって、いろいろなものがあると思うんですけれども。

これはできるだけシンプルに、3つか4つぐらいに集約してお客さまに届ける。自分たちのサービスのビジネス成果は、集約すればこの3つか4つだというものにフォーカスします。

営業のプロセスから、まずはそのビジネス成果で、お客さまが3つ4つのうちのどれを求めているか、どういう優先順位になっているかという会話からスタートしていく。営業プロセスではここまでなんです。

でも、この取り組みの難しさは、おそらくビジネス成果が本当にお客さまの手元に届くまで、どうしても1年とか2年のタイムラグがあったり、自分たちのプロダクト・サービスが直接そこに貢献できずに、間接的(に働くよう)なケースが多いと思われることです。

サービスだけじゃなくて、動き方やカルチャーを変えるような、いろいろなことがあって初めて成果が出るケースがあるので、この直接的な関係性がない部分をどう使い込んでいくかという難しさもあると。

そこで我々は、ビジネス成果を達成するために、お客さまに変えていただきたいことや、そのソリューションを埋め込んでいただきたいビジネスフローをまず定義しておきます。ビジネスフローができた時に、例えば3ヶ月とか半年後に現れるはずの変化の先行指標もセットで定義します。

山田:それはすごいですね(笑)。

顧客に成果を届け続けるには“ガイド”が必要

絹村:そこまでセットして定義すると。営業が売上拡大というビジネス成果で握ってきたら、カスタマーサクセスはオンボーディングのプロセスの中で、「売上を拡大するために、まずはこの業務フローとこの業務とこの業務フローを、この製品で実現していただくと、こういう変化が出てくると思います。これをしっかり一緒に見て行きましょう」というかたちで握っていくような動き方をします。

これはマトリックス状に全部網羅されていて、その裏にはフローを実現するための製品の機能もできているんですが、もう1つの視点では、ビジネス成果が3つか4つのうちに集約されるとありました。これは絶対に難易度というものが出てくると思うんですね。

一番簡単に出せる成果と、より難度や複雑性が増していくもの。これがレベル別で定義されているので、最初は左端から入って行くんですけど、それができれば次は右にいきましょうというかたちで、カスタマーサービスチームはどんどんガイドしていきます。

Gainsightの10の原則にはありますけど、やはりお客さまに成果を届け続けなければ、どこかで解約されるということがあります。なので、どんどん次の目標に向けて、お客さまをガイドしていく使い方ができるようになっています。

このあたりでおもしろいなと思うのは、やはりこういうものは(こちらが)ガイドしていかないと、お客さまに聞いてもなかなか出てくるものでもないことです。そこをお客さまに対してしっかりガイドしていけるようなプロセスが決まっていると。

集約すると、営業プロセスでは成果を握って、オンボーディングとカスタマーサクセスで、それを実現するフローと指標を、ちゃんと定義されたものについて基づいてガイドしていく。エグゼクティブエンゲージメントでそれができていることを確認した上で、「更新してほしい」とか「拡大してください」ということに対して新しいご提案を持っていく。

このサイクルを営業からカスタマーサクセスまで、ずっと一貫して回していくことで、共通言語を作り上げていくことが、Gainsightにおける取り組みなんですけども。ご覧になったお客さまはたぶん、なんだかすごく難しくて「こんなこといつになったらできるんだろう」と思うこともあると思うんですけれども。いかがですか?

「お客様によるよね」という事実にどう向き合うか

山田:先ほど、ビジネス成果を2個なり3個なりにまとめるというお話があったと思うんですけど、私はそれがすごく大事だと思うんですね。やはり多くのSaaS事業者、SaaSではないところも含めて、自分たちのビジネス成果は、お客さまによって異なるので定義できないという思いがちょっと強すぎるんですね。

けれども、多くのお客さまを見ていると、だいたいこのパターンだよねというのが決まってきて、その3つか4つでだいたい8割ぐらいのお客さまをカバーできることが多いんですよね。なので、諦めずに考えていると、お客さまにしっかり価値を届けられるような、自分たちの勝ちパターンが見えてくるんですけども。

途中で諦めてしまうとか、「やはりお客さまによるよね」というふうに、ちょっと安易に結論づけてしまうところがあるんですけど、そこをしっかりやろうと。できるかできていないかに関わらず、少なくともそういうものは必要だと考えて実行されてるところは、やはり骨太さを感じます。

絹村:そうですよね。「お客さまによるよね」というのは絶対に事実なんですけど、そう言い続けている限り、いつまで経っても全部カスタマイズして、一つひとつお客さまに合わせるということで、ハイスキルな人材しか回せなくなってきます。そこはやはりある程度力を入れて、どう型に落とし込んでいくかを考えていくところから逃げちゃダメだなと。

山田:私もそう思います。

絹村:難しいテーマだと思いますけど、こういったものを社内で、全員でディスカッションしながら、自分たちが届けられるお客さまへのビジネス価値はいったい何なのかを、しっかり集約しながら届けていただくと、必ず良い成果に結びつくんじゃないかと。私は過去の自分の反省も踏まえて、すごくそう思う部分があったりしますね。

というところで、Gainsightで持っているフレームワークの話をさせていただきました。

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