2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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稲川貴大氏(以下、稲川):それでは、福澤さんお願いします。
福澤知浩氏(以下、福澤):SkyDriveの福澤と申します。最初にちょっと動画をご覧ください。
福澤:「100年に1度の、移動革命を。」というのが、我々のミッションです。
つい最近までやっていたNHKの朝ドラ『舞いあがれ!』の最後の2週間ぐらいで、主人公が「空飛ぶクルマを作る」と言って試作機を飛ばして、最終的には五島列島で3人乗りの機体を飛ばしたんですが、あのモデルが我々になっています。たぶん稲川さんも、その手前のところで。
稲川:はい、関わっていました(笑)。私は大学生ゾーンの技術監修をしていたので。
福澤:そうですね、その代表をやっていたと思います。あれで少しずつ知られたかなと思っていますが、今はその空飛ぶクルマを中心に開発して5年ほどになります。
空飛ぶクルマは、カテゴリとしては航空機なんですね。
なので、ヘリコプターや飛行機と同じものなんですが、やはり飛行機は空港に行くのが大変だと思っていまして、日常的な移動として空を使いたいなと思っています。それで、「空飛ぶクルマ」というニックネームで呼んでいるという感じです。
福澤:「今までの飛行機やヘリコプターと何が違うんですか?」というのが、こちらに書いてあります。例えば、電池で飛ぶのでコストが低かったり、騒音がヘリコプターの3分の1くらいだったり、CO2の排出がゼロで環境に良かったりします。
あとは、ドローンと同じく簡単に操縦できて、自動運転も簡単です。滑走路が要らずコンパクトなインフラで飛べるので、飛行機やヘリコプターと違って日常的に使えます。
東京にも、ビルの上に「H」とか「R」など、ヘリコプターが停められそうなところがいっぱいありますけど、実際に停められるところは六本木のアークヒルズだけで、他は厳しいんですね。ヘリコプターが重すぎることと、うるさ過ぎることが一番の原因です。
そういった空飛ぶクルマを、200から300の場所に停められるようになることが、日常的に飛べるという大きな点かなと思っています。
実は、空飛ぶクルマ業界も、世界には400社くらいのベンチャーがありまして、我々はようやく先頭グループに入ったくらいかなと思っているんですが、主に2パターンの種類があります。
(スライドの)上に「マルチコプター」と書いてありますが、普通のドローンみたいな感じで、プロペラがグルグル回って飛んでいくタイプです。
(スライドの)下に書いてある「固定翼」が、翼があったり、オスプレイみたいにプロペラの一部がブーッと回転して前に飛んでいくタイプになっています。
必要な開発資金もだいぶ違い、固定翼の開発費用はマルチコプターの5倍くらいです。今は、それぞれの方法で実現に向けて進んでいる感じになっています。
先ほどの下の機体が(スライドの)右にありますが、やはり日本などのアジアでは、大きな機体だとあまり停められる場所がなく、結局地方空港になってしまいます。そうすると、アメリカやヨーロッパみたいに、土地が広いところじゃないときついよねと。
なので、コンビニの駐車場やビルの上など、どこでも停められる機体がいいねということで、いかにコンパクトに作るかといった観点で進めていました。そこが強みになっています。
(動画再生)
福澤:これが、会社設立後、1年半くらい経った2020年の夏に最初にやったデモフライトです。8個のプロペラがモーターで回っていて、前後に入っている電池で最大10分弱くらい飛ぶ機体です。
ただ、この機体はドローンの部品を一部で使っているので、飛行機レベルでの安全性がありません。まさに今は、この安全性を飛行機やヘリコプターレベルまで上げ、国土交通省の認可を取って事業として開始できることを目指して開発を進めています。
それが、このSD-05と呼ばれる機体です。12個のプロペラが上についている状態で、人が前と後ろに1人ずつ乗って飛ぶタイプです。2025年の春から大阪万博がスタートしますので、ちょうどそのタイミングを契機に、この機体が飛んでいくのを目指して全員で開発を進めています。
直近、まさに2ヶ月前、大阪万博の正式な空飛ぶクルマ運航事業者に、ANAやJALと一緒にSkyDriveも選ばれました。ここで、全世界に向けて運航開始できたらなと思っています。
販売なども少しずつ進んでいて、アジアを中心にプレオーダーを百数十機いただいていて、少しずつお客さんもつき始めている状態で今に至ります。以上です。
稲川:ありがとうございます。
稲川:各社、めちゃくちゃおもしろいなと思いました。ここからはパネルディスカッションというか、いろんな議論の話題があるんですが、最初に言ったとおり、あまり文言に囚われずに、おもしろいところや苦労の話ができればいいなと思っています。
題目は「リアルテックで世界を制す。日本からテスラが生まれるには」です。テスラにひっぱられる必要はまったくないかなと思うんですが、とはいえ社会的なインパクトを生むために、リアルテックからできることはいっぱいあるよねと。
やはり、SaaS系のビジネスやITやWeb3では達成できないおもしろさがあるかなと、私自身は思っています。
変化の時代として、未来予想図をどう描いているか。それぞれのプロダクトの社会での役割を話してもらった気がします。それに追加でお話できるところがあればいいなと思っています。
最初に私たちのロケットの話をしますと、宇宙というと、最近は日本からも新しい宇宙飛行士が生まれたり、何かワクワクするけどお金にならなそうというイメージを持たれたりするわけです。繰り返しになるんですが、現状はまったく違います。
例えば、知っている人はもう知っているかもしれないんですけども、「Starlink」というサービスがあります。抱えられるくらいの大きさのアンテナを屋根の上につけておく、もしくは平地に置いておくと、衛星インターネットサービスが利用できます。
もうすでに、SpaceXの人工衛星が3,000機から4,000機くらい飛んでいるので、それらと通信することで、数十メガbpsから100メガbpsくらいのブロードバンド並みの通信ができるようになってきています。
ロシアとウクライナの戦争で、ウクライナ軍がStarlinkを使って、ロシア軍のすごい状態を撮影してネットに上げていたのが大きなニュースになったんですが、そういう状況です。
稲川:以前から通信衛星はあったわけですけれども、これまでは国家が(開発を)やってきた人工衛星が、今はどんどん民主化されてきていることによって、世界中どこでもつながるし、見える状態になりました。
それによって、金融機関の先物取引だとか、情報戦をやるようになってもいるし、当然つながるようにもなっている。これはすごく劇的な状況で、これからもっと進むと思っています。
ロケットや宇宙の使い方の中で一番おもしろいのは、通信衛星がどんどん進化することだと思っています。我々の人工衛星の計画では、モバイルからでもブロードバンドのインターネットにアクセスできます。
ここだと難しいですが、空さえ見えていれば、スマホからブロードバンドのインターネットにつながるような時代にできるんじゃないかと思っています。
当然、サービス開始までは10年くらいかかると思いますが、そういうことができるようになると、日本や世界の通信キャリアを全部ひっくり返せる。そのような大きなことができると思っていますし、地球観測という意味でも、今の国家間の競争は、いかに地図を見るか、世界の表面をどう見るかが大事なわけです。
国家の役割や大手通信キャリアの役割みたいなものはすべて、民間の技術、ロケット、人工衛星で置き換えられるんじゃないか。宇宙を使う人・ロケットや人工衛星を作っている人たちは、そういう役割があるんじゃないかという目線でやっていると思います。
稲川:というところで、「社会での役割」みたいなところを少しお話しできればと思うんですが、最初に宮澤さんお願いできますか。
宮澤順一(以下、宮澤):はい、ありがとうございます。やはり核融合は、基幹となるエネルギーを供給する役割を担おうと思っています。
例えば原子炉や大型火力ですと、普通は100万キロワットの電気を出すものを作っていくわけですが、我々はちょっと違った未来を描いています。
大規模集中型だと、送電の時にけっこうロスが発生しちゃうので、例えば10万キロワットとか数万キロワット級の小規模分散型の核融合炉ができないかなと思っています。
それから我々は、核融合で電気だけじゃなくて水素も作ろうと思っているんですね。もちろん燃料電池に変えてSkyDriveさん(の空飛ぶクルマ)を飛ばしたり、ロケットを飛ばすのに使ってもらってもいいですが(笑)。水素はすごく使い勝手がいいと思ってます。
ただ、水素はまだ供給源がない・高いということで、水素社会の到来が遅れている面がありますので、核融合が小規模分散型の水素油田として機能するような未来ができれば、車がみんな水を出して走っている状態になるんじゃないかなと、すごく想像するんですね。
私はバイク乗りなので、バスの後ろを走っている時は顔を真っ黒にして乗っているんですが、それが爽やかな水だったらぜんぜんいいよねと、いつも走りながら思っています。身近に核融合炉があるような状況を夢見ています。
宮澤:冒頭で言いましたように、人類が何万年とか何十万年とか生きていくためには、もちろん化石燃料を使っている場合じゃありません。
我々も実際に使おうと思っていますが、太陽光パネルなども併用して、根本的にはどこかからエネルギーを持ってくることが必要です。
そのためには、ありふれた水素からエネルギーを持ってくるのが一番良いかなと思っています。それを実現すれば、社会での役割は一定以上果たせるんじゃないかなと思っております(笑)。以上です。
稲川:数十万キロワットクラスだと、各地方都市の一つひとつに核融合炉があるようなイメージですか。
宮澤:おっしゃるとおりです。地方都市とかもっとローカルでよくて、例えばアルミ精錬工場など大電力のユーザーの専用電源にしたり、あるいは離れ小島や離れた集落の専用電源にすることができます。核融合でずっとついてるので、無停電電源として使ってもらえます。
あんまり(言うのは)アレですけど、この電源を大きな客船などに乗せたいと思っているんですよ。私はSkyDriveさんと同じ東海地方の岐阜県に住んでいるので、南海トラフの恐怖にいつもさらされて生きているんですね。
地震発生時には、避難用に大型客船が数十隻動くだろうと思うんですけど、その電源を1台の核融合船が全部まかなう準備というのは、あり得るかなとは思ってます。
稲川:うわ、めちゃくちゃおもしろいですね。核融合というと、そもそも石油を持っている中東と、世界の国家間の力が変わるかなと思っていたんですが、それ以上にもっとローカルな話で、人が住む地域も大きく変えそうな話を感じておもしろいなと思いました。
稲川:じゃあ福澤さん、お願いします。
福澤:やはりテクノロジーにおいては、「謎な時間」を減らしてやりたいことにフォーカスすることと、自由に何でもできることが進化なんだろうなと思っています。
例えば、渋滞や満員電車や乗り換えとか、謎な時間は移動に多いと思うんですね。あれは全部、地上の線路、もしくは道路を移動するから起きるわけであって、空を飛べばいいじゃんと思います。(どこからでも自由に飛べるようになれば)「でも空港は遠いね」というあたりが変わっていきます。
もしくは、今は空を自由に飛んでいくことができないけど、それができるようになってくる頃には、たぶん宇宙にも安くて・簡単で・自由に行けるという話になります。あとはあらゆる分野で、「謎な電力消耗をなくして、効率よく発電しよう」という話が普及しているのかなと思っています。
なので、僕らはその謎な時間をなくしたり、障害がなく自由に移動できるといったところに完全にフォーカスしています。
稲川:それで言うと、車や飛行機とかの今の移動手段を置き換える感じなのか、それとも手段を追加する感じなのか、近い未来と遠い未来で違うような気はするんですけど、どういうイメージなんですか?
福澤:どっちもだと思っています。例えば、アメリカの西海岸でスタートしたUberは、タクシーを置き換えると思ったら、タクシーに乗る人が2倍から3倍に増えたんですよね。なぜならば、めっちゃ簡単に操作できて、めっちゃ簡単に乗れるからです。
「だったら俺も移動しよう」と移動できて、ハッピーな人も増えるという感じだと思います。
福澤:そもそも、「あそこは電車で行けなかったから行かなかった」という人たちも含めると、むしろみんな「本当は行きたかったところ」にバンバン行き始めることも増えるかなと思いますね。
稲川:うわぁ、今のもおもしろいです。それも、人の住む地域が変わってくる世界ですよね。そのあたりがNHKの朝ドラ『舞いあがれ!』の最後のほうで描かれていたんですよね。
福澤:五島列島もけっこう行ったんですが、船だとめっちゃ波が(あるので揺れて)大変で、しかも1時間ぐらいかかるんですよね。やっぱり、空を飛んで行ったら俄然快適で、行く途中も楽しくなると思っています。このようなことがどんどん増えていくといいなと思いますね。
稲川:おもしろいですね。たぶんみなさんは、テクノロジーって言うとすごくハイテクなものや難しいものをイメージしたりすると思います。
私自身も宇宙をやっていて……難しいことをふだん考えているんですけど(笑)、最終的には結局「人の生活が良くなるとハッピーだな」と思ってやっています。それがローカルな世界や国家間の変化につながるという話ができたのは、すごくおもしろかったなと思います。
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