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リアルテックで世界を制す。日本からテスラが生まれるには(全3記事)

“大企業のイケてる人”をいかにベンチャーに誘い込むか 世界進出を狙う、日本のリアルテック企業3社の展望

スタートアップ産業を加速させる出会いの場として開催された「Climbers Startup JAPAN EXPO 2023」。今回は、日本の「空飛ぶクルマ」「核融合」「ロケット」の各分野を牽引する3名が、日本のテックベンチャーが世界を制するために必要な事業戦略や、求められる人材について議論しました。本記事では、日本のリアルテック企業が世界進出するうえでの課題や、これからの展望などを語ります。

まだまだ数は少ない、民間企業でのロケット開発

稲川貴大(以下、稲川):意外と時間が短いので(笑)。サクサクと進めたいと思います。ここからは、事業戦略や戦術、特に資金調達の大変さをお話できればいいかなと思っています。

ロケットの話を少しすると、(開発に)すごくお金がかかります。ロケットは難しいので、世界中でもまだそんなに会社が出てきていません。

日本国内で資金調達をしっかりしているのは2社、広く見ても5社から6社程度です。世界で見ると、その10倍以上の100社ないぐらいです。

我々は、累積でだいたい60億ぐらい調達しています。ほかの会社だともっと多額の調達をしていて、我々の今の直接のライバルでも200億とか500億ぐらい調達しているし、SpaceXはもっと調達しています。

ただ、これは政府がすごく大事です。ロケットのベンチャー企業は「ニュースペース」という言い方をされますが、アメリカではNASAの政策によってニュースペースがたくさん出てきています。

アメリカの場合は、スペースシャトルという羽つきのロケットがすごく有名ですけど、ロケット業界の人間からすると、異論もあるんですが、実は世紀の大失敗プロジェクトだと言われています。

あれは4兆円ぐらいかけた企画なんですが、高コストで機会も少なくて、事故で宇宙飛行士を2回死なせてしまいました。

そんなことがあって、NASAが「もう自分たちでロケットをやるのはダメだ、ナンセンスだ」ということで、1990年代から民間に任せようという流れがありました。

技術面では負けていないが、資金調達が難航

稲川:アメリカの場合は、具体的な法律や予算がつき始めたのが1980年代末から1990年で、本格的にお金がつき始めたのが2000年ぐらいからです。

NASAが自分たちでやるんじゃなくて、民間に主体的に任せようとし始めて、20年ぐらい経って花開きました。これが、アメリカのロケットがうまくいったところです。

日本は良くも悪くもJAXAが非常に優秀で、その仕事を受けていた……例えば三菱重工やIHIというロケットの会社もすごく優秀なために、国でやるというモデルがうまくいったんですよね。

アメリカみたいにスペースシャトルでグダグダにならなかったので、日本は国でやるのがいいんじゃないか? という議論があったんです。

ようやく最近になって、やはり我々みたいな民間企業に政府が発注しながら育てていくのがいいんじゃないかと、よりお金が回ってくるようになり始めているところです。

我々は技術的にはぜんぜん負けていないんですが、資金調達の面で見ると海外の企業より少なかったので、戦略としては、ようやく政府の力でレバレッジをかけて巻き返していこうということをやり始めています。ここらへんの戦略もぜひ教えていただければと思います。

ここ数年で増加した、核融合ベンチャー企業

宮澤順一(以下、宮澤):今、聞いていて、核融合も宇宙とすごく似ているなと思いました。似てるというよりも、たぶん核融合は宇宙の成功体験を活かして後を追っているなって感じがしました。

もともと20世紀の核融合戦略は、世界のみんなで協力してITER(国際熱核融合実験炉)を作って、その経験を基に各国で原型炉を作ろうというものだったんですね。その中で、ITERがなかなかうまくいかないとか、お金がすごくかかる状況があって。

最近のアメリカはどう動いてるかというと、「もう民間に任せよう」となっているんですね。

この数年で核融合ベンチャーがたくさん立ち上がってきているのを見たこともあるんですが、去年の秋頃に、アメリカのエネルギー省(DOE)がちょっと大きなレースを企画したんですよ。

5年でどの方式がいいかを決めて、優勝したチームの方式をアメリカがお金をかけて作るという、設計レースみたいなものを始めました。

我々はちょっと乗り遅れている感じがあるんですが、5年も続く中で、たぶん入れ替え戦みたいなのもあると思っています。

我々は日本の企業ですけど、アメリカのレースに参戦して、優勝とは言わないまでも準優勝でもすれば、存在価値を示せて、ほかから大きな投資が得られるという戦略も持っております。

日本で戦い続けるのか、アメリカで勝負するのか

宮澤:アメリカばっかり先を行ってるのもちょっと悔しいことではあるんですけど、正直なところ、日本よりも投資金額が10倍、100倍大きいというのは、我々にとっては非常に魅力ですよね。

法規制はたぶん同じぐらい難しいんですけど、同じ難しさでチャレンジするなら、見返りが10倍、100倍大きいアメリカで勝負したいなとは思いますね。自動車もそうなんじゃないですか?

福澤知浩(以下、福澤):そこはどうなんですか? アメリカで勝負したいと思いつつ、日本でやるっていう感じですか。

宮澤:今は両にらみです。幸い、最近のアメリカの動きを見て、内閣府でも高市(早苗)さんが旗を振って、核融合を盛り立てようという動きになってきています。

そんな状況になっているのに無下に出ていくわけにもいかないしな……みたいな感じで、今はすごく「揺れる乙女心」という感じになっております(笑)。

稲川:グローバル企業になるか、純日本企業としてがんばるかを迷っている感じですよね。

宮澤:両方やればいいかな、と思っていますけどね。

稲川:宇宙もけっこう悩ましいところで、やはりロケットはミサイル技術と兄弟みたいなところがあって、外為法という規制があったりするので、外に行ってもなかなか難しいし、日本で始めたからには日本でやるべきっていうところもあります。

月面なんかはあんまりそういうところがないので、月着陸企業は日本から始まっているけどグローバル企業になって、他国から人材なども調達しながらやっていくモデルになっています。宇宙(ビジネスの中で)もけっこうバラバラなんですよね。

福澤:おもしろいですね。宇宙に出るまでは若干ナショナリズムで、出てしまえばわりと。

稲川:そうです、そのあとは、もう別に国境とか関係ないよねっていう世界ですよね。

“大企業のイケてる人”はあまりベンチャーに来ない

宮澤:核融合も、ITERは「研究者に国境は関係ないよ」という精神なので、中国もロシアも入っています。でも、国に帰ってくるとナショナリズムが発生するじゃないですか。

でも、別に誰かが占有すべきものじゃないと思っているので、いつかは国のボーダーを越えて、みなさんが核融合炉を使えるようになればいいなとは思っていますね。

だから、あんまり日本がどうのこうのって囚われているのは、ちょっと違和感を覚える議論ではあるんですよ。

稲川:なるほど、おもしろいですね。じゃあ福澤さん、空飛ぶクルマ系はありますか?

福澤:やはり、お金と人と制度かなという感じがしています。でも、最近はグローバルになってきているので、特にこういった領域だったら、良い作戦と良いチームがあればお金は集まると思うんですね。

海外から集まらないのは、正直「まだ世界一の作戦じゃないから」だと感じているので、そこを作りつつ進んでいるといった感じです。

人に関しては、日本は大企業のイケてる人たちが、なかなかベンチャーに来ないことがすごく大きいなと思っています。一方で、世界にはいっぱいいらっしゃるので、世界で活躍されている方々に来てもらうと、開発や事業がけっこう進むことがあります。

僕たちは、それで何回かグッと伸びてきたなと思っているので、もうシンプルに、海外のトップメーカーに勝つ戦略をきちんと作っていくことを順次進めている状態ですね。

空飛ぶクルマの開発で世界を目指す

福澤:制度に関しては、やはり日本だとやりにくいのはあります。社内でも、「どこまでは日本でやるんだっけ」「どこで見切りをつけるんだっけ」といったことは整理しています。幸いなことに、航空はこの1年で相当変わってきていて、だいぶ後押しされて良くなっています。

稲川:なるほど、おもしろいですね。カンペにはもうそろそろだと出てきているので(笑)、スライドはいっぱいあるんですが、各社のアピールポイント、もしくは言い足りないところを言ってもらうとだいたい終わりかなと思います。

ヒト・モノ・カネ・情報、いろんな観点のスライドはあるんですが、その中で最後に伝えておきたいことがあれば。じゃあちょっと順番を変えて、福澤さんから。最後に、この場で言っておきたいこと、もしまだ伝えていなかったことがあれば。

福澤:僕たちは、6月の半ばぐらいに戦略を少し変えるという発表しようと思っています。そこで、「本格的に世界を取りにいくぞ」と言えたらと思っています。そこまでいくのにだいぶ時間がかかっていますが、少しずつでもやればできるなと思っています。

野球とかスポーツみたいに、最初に活躍する人が出てきて次が続くことが絶対にできると思うので、それが3名でできればなと思ってます。引き続き、よろしくお願いします。ありがとうございます。

稲川:ありがとうございます、おもしろいですね。

核融合の実現に向け、絶賛メンバー募集中

稲川:じゃあ、宮澤さんお願いします。

宮澤:Helical Fusionはまだ2年目で、人材をこれから募集していこうという段階です。ですから、今日の放送をご覧になって興味を持った方は、ホームページのコンタクトから「興味あるよ」とメールをいただければ、詳しいお話をさせていただきます。

どんな人材が欲しいかというと、第一条件は核融合に対して夢を持っている人です。その条件を満たしているなと思う方は、ホームページ経由でご連絡いただければと思います。最初のメンバーはすごく大事だと思いますし、今年はガッと増やしていきますので、ぜひお願いします。

稲川:ありがとうございます。人材という観点でいくと、我々も10年前はまだそんなに(大企業から)ベンチャーへ転職する流れがなかったというところはあるんですが、やはり最初の頃は募集をかけてもなかなか集まりませんでした。

最近だと、大手の自動車や飛行機、重工など、いろんな企業から転職する人が増えています。日本国内の情勢も、ようやくここ数年で変わってきたなという感じです。我々も進化しているし、周りの情勢も変わってきたなと。

アメリカの成功例を「良い意味で後追い」する

稲川:最近の日本は、いわゆるスタートアップと呼ばれる、うちみたいな企業がどんどん回ってきやすい状況にはなってきているかなとは思います。

日本政府としても、去年(2022年)「スタートアップ元年」と言っていましたが、それに呼応するように、我々も政府からの支援を受け始めているところです。

アメリカの成功例を、良い意味で後追いして真似できるのが日本だと思うので、我々もしっかりと世界を取れるようなロケット、そして人工衛星を目指します。ですので、人材という面でも来ていただきたいです。

我々はエクイティ調達をすると同時に、北海道大樹町にふるさと納税するとロケットの発射場のお金になったり、開発資金として入ったりする地方創生プログラムも併せてやっています。なんとかお金を回して、いろんな意味でうまく循環させていこうとしています。

我々インターステラテクノロジズの事業に、いろんな意味で興味を持っていただき、ご期待ください。この会もそろそろだということなので、これで終わりたいと思います。それでは、ありがとうございました。

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