『ゼロストレス転職』の著者・佐野創太氏が登壇

佐野創太氏(以下、佐野):はじめにこの言葉をお贈りしますね。ドラッカーの『明日を支配するもの――21世紀のマネジメント革命』からの言葉です。

今日が、このイベントに興味を持ってくださった方の「第二の人生」の始まりになれば幸いです。

さっそく本題にいきますね。最初に副業(複業)がどんな感じかを知りたい方がいらっしゃったので、目線合わせで全体像をガガッと説明していきます。

(スライドに表示したアジェンダの)「ゼロストレスで一目置かれる『強みの見つけ直し』」と、「『レベル別』副業(複業)の見つけ方5選+α」がメインです。これは、レベルや人別だったりするので、具体的な話をしようと思っています。

僕は『「会社辞めたい」ループから抜け出そう!』『ゼロストレス転職』などの著者の顔もあるので、キャリアに効く本をたくさん読んでいます。なので、今日のテーマにあったおすすめの本を持ってきました。Q&A、懇親会まで駆け足でいきますので、よろしくお願いします。

まず全体像ですね。副業の7つの報酬と聞くと、みなさんどんなイメージがありますか? すごい。今138名も見ていますが、もしイメージがあればパカパカ(チャット欄に)打ってみてください。

「人脈が広がる」。ありがとうございます。「収入アップ」「楽しい」。「ネットワークが広がる」「自分で決められる」「安心感」。いいですね、安心感。僕の考えるキャリアのキーワードは、安心感です。「スキルアップ」に「独立できる」。

やばい、僕が言おうとしたこと、だいたい全部出ております。「経営の基礎が学べる」って、これちょっといいな。これたぶんすごく深められるんですけど、深めるとえらいことになるなぁ。「本業にも集中できる」。これはすごくあるんですよ。

チャットすごく楽しいですね。「人生の選択肢が広がる」。もうずっと見ていられる。「忙しくなって余計なことを考えない」。これ、本当にそうで、(副業を)やった人はよく言います。「余計なことを考えなくなって、楽しくなった」。これ、すっごくある。ありがとうございます。すごくたくさん出てきました。

副業で得られる7つの報酬

佐野パーソル総合研究所が出している大きめなデータを一応持ってきたんですけど、(チャット欄で)出てきたやつはほとんど入っているんじゃないかな? きれいな言葉にはなっていますけれども、ほとんど一致してると思います。

ざっくり並べると、金銭報酬、人的報酬、経験報酬、スキル報酬、興味報酬、可能性報酬、夢報酬、この7つだと思っています。金銭報酬は、わかりやすく収入アップです。

1つの会社だけではなくて、複数から金銭報酬がもらえると、安心する。僕の体験では、僕のキャリア相談に来て副業を始めた方が、「ボーナスが複数あってうれしい」と言っていました。これ、確かにうれしい気がする。

人的報酬。人とつながれるのは楽しいですよね。まだまだ会社で、「お前副業してる?」とはなかなか言いづらい。その中で、外に出て、副業の人と関わっていると、いろんな経験ができまする。

経験報酬。やりたいことをやれるのは、すごくいい経験ですね。スキル報酬。「ちょっとこれできる?」と言われて、やってみたらすごく身についた。

興味報酬は、副業をやるとこの感想がすごく出てくるんですけど、新しく勉強したいことがわかったというものです。これで社会人大学院とかにもう1回学び直しにいく方もいらっしゃるぐらいです。

可能性報酬。これは、自分にこんなにやれることがあったんだ、みたいなところ。以前、53歳の、僕からしたら大先輩の方がキャリア相談に来てくださったんですよね。いや、もう別によくねえか? 大丈夫だろう、と思ったんですけど、一緒に副業を始めたら……。

「私、もう年かと思っていましたけど、ぜんぜんいける気がします」と、すごく自信を持ってくださって。「あ、副業って、そういう可能性を広げてくれる、いい報酬をもらえるな」と思いました。

あと、夢報酬。これは、後ほど具体的な見つけ方でもお話しするんですけれども、最近は自治体とか、自分の地元の企業で副業できたり。バスケットボールチームとか、自分がちょっと興味あるスポーツ。僕はサッカーをやっていたので、サッカーチームで副業をやるのが夢です。

そういう、本業でやるには「ちょっと大丈夫かな」と思ってしまうけれども、副業だったらやれるんじゃない? という夢みたいな仕事にチャレンジできるのが、たぶん副業の良さ。なので、僕は夢報酬はけっこう推したい感じですね。

人がパラレルキャリアに惹かれる理由

佐野:こういう7つの報酬がある中で、なんで今パラレルキャリアに向かうのか。なぜこんなにパラレルキャリアという言葉が私たちを魅了するのか。

(スライドの)これは、僕も、ドラッカーもよく言っているやつですね。企業の寿命が短くなっている。人の寿命が長くなり、今80歳~90歳まで生きる中で、20歳ぐらいから働き始めて60年~70年と続く会社は、ほぼない状況です。

誰もが副業だったり、転職だったり、独立だったり、それこそ私みたいに出戻りして、前の会社から勤めなおすとか。いろんな働き方をする人が増えている。人の寿命のほうが長くなってしまったから、何か考えないとねという、一番大きな流れが1つあります。

あとこれは、キャリア相談をやっていて、人の魅力とか、才能とか可能性が、1社だったり、1つの職種名の中に収まるわけがないとすごく思っています。昔の、例えば日本人ではないですけど、レオナルド・ダ・ヴィンチとか、何個仕事やってたのみたいな話ですよね。

そういう人が昔はたくさんいた中で、社名とか職種名は、後付けみたいなものかなと思います。社名、職種名の檻からちょっと出たいという、何か人間の本能があるのではないかなと思っています。

適職に出会う仕組みは、まだ実は確立されていない。これは私も、転職エージェントをやったり、今も転職エージェントの育成をやっていて、求人サイトの運営もしているんですけど。まだまだ模索状態ですよね。

なので、キャリアに迷う方は、当たり前のように出てくる。『科学的な適職』という、いい本があるんですけれども、その中にも、人間はこれまでずっと階級制だったので、農家の子どもは農家になるみたいに、仕事選びをするDNAがまだないということが書いてあったんですよね。

確かに。「僕らは適職に出会う勘所がまだないから、普通に迷うよね」みたいなことも書いてあった本もあります。

自分に合う働き方を選ぶ時の指標

佐野:(スライドの)会社員と副業者の生き方の違い! これはいろんな人を見てきたのと、あと、僕自身も今はフリーランスで、本当にパラレルキャリアでいくしかないみたいな状態です。どういう違いがあるかなと考えた時に、こんな感じでマッピングできるなと考えました。

会社員、副業、フリーランス、起業家を分けてみました。生き方の波が小さいのを横軸。不満に耐えるのか、不安に耐えるかで、かなり違うなと思っています。会社員として働くのは、生き方の波はたぶん小さいほうですよね。だからこれが、いわゆる安定と言われるやつです。

普通のまっとうな会社であれば、たぶん1年後も会社はあるはず。でも、副業とか、フリーランスとか起業家に近づいていくと、「1ヶ月後、2ヶ月後、もしかしたら仕事がなくなっているかも」という不安を感じる。自分は不満に耐えやすいのか。不安に耐えやすいのか。自分に合う働き方を選ぶ時の指標になります。

不満はわかりやすいですよね。たぶん、会社勤めをしている方だったら、よくよく感じると思うんですよね。自分がやりたいことを押し通しきれない。その不満に耐えられるのが、会社員。

起業家はある種自分で「おりゃ」とやれるので、そういったところで不満よりも不安に耐えていくところがある。自分にどのへんが向いているのかを、ちょっとこのマッピングで見てもらえるといいんですよね。僕は今この③のフリーランスですね。生き方の波は、やっぱり大きいです。

急に「はい、案件ストップ」になるかもしれないし。「本、差し止めします」とか、可能性としては常にあります。

そんなところで、生き方の波は大きくなるといった時に、今回のパラレルキャリア、いわゆる副業は、僕の中では一番可能性を秘めている。ちょうどいい生き方だなと思っているんですよね。

副業なので、もう1回専業で会社員に戻ることもできるし。独立してみてもいいかなと思ったら、フリーランスとか、起業家の道も残されている。練習ができるという意味で、僕が今、会社員だったら、この②の副業をまずやってみるんだろうなというくらい、おすすめの働き方です。

これを言葉でまとめると、会社員は不満に強く、フリーランスや起業家は、不安に強い人がけっこう向いている。

これはフリーランス仲間を見ていてもよく思うんです。たぶんフリーランスもがんばれば3年は続く。それ以降はけっこう分かれてくるんですよね。やっぱり会社に戻りたい人も増えてくる。「やっぱり耐えられない」となっていく人と、「あ、マジで楽しい」と言って、どんどんどんどん大きくしていく人もいる。そういう分水嶺があったりします。

会社員は不満に強く、フリーランス・起業家は不安に強い。「じゃあ副業は?」というと、この真ん中をいくんですよ。「中庸を生きる」は、けっこうキーワードかなと思っています。

なので、今日もどういう方が多いかわからないですけど、ちょっと迷っているとか、どっちにいこうかという過渡期にある方は、副業はとても魅力的な選択肢になるのではないかと思います。

副業を解禁する企業側の事情

佐野:個人側は確かにいいことあるなと。じゃあ企業側はどうなのという話ですね。これも、イメージしながら聞いていただければと思います。

企業側のデータを持ってきました。これは2018年からのパーソル総合研究所の比較調査、2021年に発表したデータです。さっき収入アップや金銭報酬があったみたいに、企業側の1位は従業員の収入補填です。これはちょっと切ないですよね。

1社で、いわゆる社員を……正直言うと養いきれない。日本を代表する大きな企業も、「終身雇用は無理っぽいです」とか、経済関連の大きな団体も、「現実的ではないかも」と言い始めているぐらいです。そういうお金のところで正直、企業も養いきれないのは、もう本音として出ています。

あとは確かに「禁止するべきものではないので」。なので、コンサルや顧問に入っている立場からすると、けっこう企業も、まだ二の足は踏んでいてゆっくりですが、3歩進んで2歩戻るぐらいのスピードで、前には進んでいるような肌感です。

本当に会社が従業員を養えないという意味で、金銭報酬をもっと自分から取りにいくという民主化。会社員が従業員をマネジメントできない。これは、リーマンショックとかがあった時に、本当に起きた問題です。あの時に中間層が抜けてしまったんですよね。

なので、後進を育てられる人がいない問題は、今いろんな会社で起きています。マネジメントできない。だから、1on1とかを導入するんだけれども、1on1で「何でも言っていいよ」と言って、若手の社員が「こういう不満がある」と言ったら、「もっとがんばろう」と説教されて「おい、何言ってもいいって言ったじゃないか!」みたいになる。あるあるな、マネジメントの現場です。

そういう能力の民主化も、自分でやらないといけない。会社が従業員を縛れない。人事の方、今日いらっしゃるかもしれないんですけれども、生き方が多様化しすぎているからルールで会社をまとめきれないですよね。

生き方も民主化してしまったので、今のキャリアの文脈の中だと、キャリア自律なんていう言葉が増えています。会社が「こうやったらいいよ」という枠が取っ払われてしまったので、自分でやっていきましょう、とこんな全体感ですね。

個人も企業も、今、少しずつパラレルキャリアや副業のほうにいっています。これの地下で起きている大きな問題は、「終身雇用は無理なんじゃないか」ですよね。

かといって、外資みたいに、アップオアアウトで、成果を出すか、やめるかみたいな世界にいきなり行くとは正直思わない。企業と従業員の信頼関係を前提とした終身雇用は、僕はいい制度だと思っているので。

なので、その終身雇用とアップオアアウトでの間の、自分で終身雇用を作っていく、「セルフ終身雇用」をキーワードとした働き方が主流になるだろうと思っています。そのための一歩が、副業だったりします。