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パネルディスカッション「地域企業と外部デジタル人材との協働によるDX推進とまなび」(全2記事)

2023.03.28

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リアル対面なし、オンラインで「初めまして」のメンバーのまとめ方 外部人材がリモートで参加した地域企業のDX支援で得たもの

提供:株式会社パソナJOB HUB

地域企業の生産性の向上や付加価値の創出のために、デジタル技術を活用した業務・ビジネスモデルの変革(DX)が求められる中、今年度、経済産業省・四国経済産業局管内で行われた、地域企業と外部人材による2ヶ月間のDX推進の取り組みの成果報告会が開催されました。 本記事では、地域企業である琴平バスの代表・楠木泰二朗氏、DX支援を担当した外部人材の藤田貴大氏、そして地域コーディネーターの近江淳氏のパネルディスカッションの模様をお届けします。地域コーディネーターが事前に期待した2つの効果や、地域企業が得た灯台下暗し的な気づきなどが語られました。

コロナで傷んだ「観光の町・琴平」の再生

司会者:ここからはパネルディスカッションを進めてまいります。楠木社長、藤田さんに加えて、地域コーディネーターの近江社長、そしてモデレーターとしてパソナJOB HUB・加藤さんにも入っていただきます。

トークテーマとして、この2ヶ月間の「現場研修プログラム」の参加前と参加中、そして参加後の今後の動きの3つに大別して、深堀りをしていければと思います。では加藤さん、よろしくお願いします。

加藤遼氏(以下、加藤):みなさんこんにちは、パソナJOB HUBの加藤と申します。どうぞよろしくお願いします。こちらのパネルディスカッション、「地域企業と外部デジタル人材との協働によるDX推進とまなび」の進行をさせていただきます。

パネルディスカッションのメンバーは、先ほど案内があったとおり、楠木さんと藤田さんに加えて、地域コーディネーターとしてパソナJOB HUBとともにこのプログラムの運営を支援してきた、地方創生の近江さんにも参加いただいています。

近江さん、簡単に自己紹介とごあいさつをお願いします。

近江淳氏(以下、近江):ありがとうございます、地方創生の近江でございます。本社は東京ですが、香川県の琴平に「琴平文具店」という拠点を設けています。

シャッター商店街になりました、新町商店街という商店街の活性化を目指して、文具店を起点にいろいろな産学連携や、香川ワーケーション協議会というものを立ち上げたり、地域の事業者の方々とも連携しています。その中にはコトバスの楠木さんもいらっしゃいますが、コロナで傷んだ「観光の町・琴平」の再生に取り組んでいるところです。

加藤:ありがとうございます。今回のような現場研修プログラムを実現し、そして続けていくために、実際に地域側で準備をして運営を支える、地域コーディネーターの役割は非常に大きいと思います。

外部人材のプログラム参加の動機

加藤:ここからは近江さんにもコメントをいただきながら、藤田さんと楠木さんに深掘りをさせていただきたいと思います。まず藤田さん、この事業に参加されたきっかけをお聞かせください。

藤田貴大氏(以下、藤田):もともとデータ活用やAIに興味を持って、3年ほど独学で勉強してきたというのがあります。実際こちらのプログラムに参加する前も、2ヶ月弱ほどAIの模擬体験プログラムに参加しました。

そういった中で「マナビDX」という、企業さまの課題と向き合う経験が積める企業協働プログラムを知り、「ぜひ経験してみたい」と思って参加させていただきました。

加藤:ありがとうございます。(模擬体験プログラムは)オンラインでのケーススタディの学びが中心だったと思いますが、現場研修プログラムはリアルな地域の企業の経営者や経営課題と向き合うことが1つの特徴だったと思います。藤田さんも、その点に関心を持たれたのでしょうか。

藤田:そうですね。「リアルな企業にはそんなにデータが揃っていない」「そもそも課題も漠然としているし、『課題って何だろう?』から始まるよ」と聞いていましたが、実際に体験してみなければわからないと思っていました。

加藤:「体験してみなければわからない」は、非常に良いコメントだなと思いました(笑)。

プログラム参加前に地域企業が抱いた不安

加藤:続いて楠木さんにも参加のきっかけをお聞きしたいと思います。

楠木泰二朗氏(以下、楠木):先ほどお話があったとおり、琴平で一緒に地域を盛り上げようと活動している仲の近江さんからお勧めいただいたことが、きっかけの1つです。

もう1つは、弊社はもともと正社員中心で事業を行ってきた会社ですが、ここ2~3年で働き方がどんどん自由になり、働く場所や事業、会社との関わり方など、いろんなかたちが生まれたと実感しています。

琴平バスが掲げるコアバリューの1つに、時代の要請に応え続け、常に変化を恐れずチャレンジしていく、という「Something New」があります。

正社員のメンバーも新しいことにどんどんチャレンジする気質の人が多いのですが、一方でこれからの時代は、もっと外部からの人材を受け入れる体制を作って、社内にはない視点やものの見方を取り入れていくことが、会社の成長につながるという思いがあり、良い機会だと思って参加させていただきました。

加藤:今回の現場研修プログラムは世の中にない取り組みで、ご不安もあったのではないかと思いますが、事前に「プログラムに参加したら、ここがおもしろいかもしれない」と予想された部分があれば、お聞きできればと思います。

楠木:初めてのことだったので、最初は「DXかぁ……」みたいな感じでした(笑)。DXというテーマの中で、自分たちで「これが課題だ」と明確になっていたら、そんなに苦労はしていないんだろうなと思いつつ、なかなかない機会なので参加させていただいた感じです。

「一生に一度」ではなく、何度も来たい町にする

加藤:続いて、琴平地域全体として考えた時に、プログラムの参加でどんな効果や影響がありそうかについて、事前にイメージされたことがあればお聞きしたいと思います。こちらは、楠木さんからお願いします。

楠木:先ほど近江社長が言ったように、琴平は観光地ということもあって、この2~3年はコロナの影響を受けましたが、逆にそれが良いきっかけになって今は地域を盛り上げていこうという状況になっています。

琴平は「こんぴらさん(金刀比羅宮)」がある町です。江戸時代中期から「一生に一度はこんぴらさん」とこんぴら参りがブームになって、門前町が広がりました。今の時代だと「一生に一度」ではなく、一生のうちに何度も来たい町にしないといけないということで、いろんな取り組みをやっています。

まずはこの地域に興味を持ってもらわないといけないという点で言うと、先ほども「僕よりうまいこと琴平や琴平mobi(定額乗り放題の相乗り移動サービス)の事業の説明をするなぁ」と思いながら、ふーじー(藤田)さんのプレゼンを聞いていました(笑)。

(プログラムの参加で)それぐらい地域のことを知ろうという努力をしてくださった。そういう機会になって良かったなと思っていますし、そういう機会になればという思いで参加させていただきました。

加藤:ありがとうございます。確かにさっきの藤田さんのプレゼンは、地域の人みたいな感じでプレゼンされていましたね(笑)。

楠木:たぶんもう僕より上手にしゃべっている(笑)。

藤田:そんなことはないと思いますが(笑)、琴平町のことを思って一生懸命考えた2ヶ月でした。

地域コーディネーターが事前に期待した2つの効果

加藤:後ほどそこらへんも深堀っていければと思います。「こういったことが地域に起こるといいな」と想像された部分について、近江さんはいかがでしょうか。

近江:2つあります。1つは地域の事業者さんの立場でいくと、どこの地方にもあることだと思いますが、やはり人材不足・人手不足といった経営者の方々の課題にどうデジタルを活かすのか。

仮にそれをやる時に、できる人たちが近くにいるのか。いない時にどんな手立てがあるのかなどを、今回のプログラム(に参加すること)で見出せるのではないかと考えました。

もう1つは楠木さんがおっしゃったように、いつの間にかふーじーさんが琴平のことに詳しくなっていたようなところです。関わりを持った方々が、プログラムのあともさらに琴平を深掘りする。お越しになっていただくだけではない、もっと深いつながりを持てるのではないか。それが地域課題の1つの解消につながるのではないかと。

この2つをプログラムへの参加で実証できたらと思っていましたね。

加藤:ありがとうございます。地域の事業者のためにというところと、地域自体の関係人口やファンを作っていくところが期待としてあったということですね。

今日セミナーを聞いてくださっている方には、地域の事業者の方もいらっしゃるので、受け入れの1つの参考にしていただければと思います。また企業さんにおすすめする側の自治体や支援機関の方も参加されていますが、今の楠木さんと近江さんの話は参考になるのではないでしょうか。

灯台下暗し的な気づき

加藤:それでは、プログラム実施中の話に移りたいと思います。キックオフや現場研修、成果発表など2ヶ月間でいろいろありましたが、「こういう成果が出た」や「こういう学びがあった」、逆に「これはちょっと失敗したな」「これは課題だったな」というところがありましたら、赤裸々にお話しいただければと思います。

世の中に存在しない現場研修プログラムだったので、失敗もぜんぜんあってもいいと思います。それを糧に次のプログラムをより良くしていきますし、プログラムへの参加を検討される企業さんにとっても、おすすめする支援機関にとっても大きな学びになると思います。では、楠木さんからお願いします。

楠木:先ほども言ったとおり、最初はどういう方たちとマッチングするかも見えない中で、プロフィールだけを見て「このチームと」と選んで、チームビルディングする感じでした。結果的に、アンサンブルさんと出会えてよかったなと思っていますが、最初は不安でしたね。

DXと言っても、自分たちの課題が浅すぎても申し訳ないし、どんなものかなと思いながらスタートしたことを覚えています。実際に始めると、リーダーのふーじーさん含めチームのメンバーのみなさんは本当に熱心に関わってくださって、何も不安に感じることなくやらせていただきました。

僕らもふだんの取り組みの中で、そんなにデジタルに疎いとは思っていなかったんですけど、なかなか灯台下暗し的に気づけていないことがいっぱいあるなと感じました。

具体的に言うと、今回LINEを使った取り組みをやりましたが、実はmobiと違う高速バスの部署ではLINEを使ったCRM(顧客管理)を運用していて、「そういう手段もあるんだ」と気づかされました。

打ち合わせの際に、うちが(LINEを使って)やっている取り組みを紹介した記事を持ってきてくれて「あ、そういえばこんなのをやっていたんだっけ」みたいになって(笑)。恥ずかしながら、そんな感じでした。

もともと観光ガイドをアプリでやろうという発想はありましたが、実現可能性の高さや、運用のしやすさからLINEを提案いただいた。ぜんぜんイメージとして持っていなかったので、すごく良かったと思います。

加藤:LINEのツールやプラットフォームを使った別の取り組みはすでにされていて、今回の目的で「LINEが使えるんだ」という、灯台下暗し的な気づきがあったと。

また実現可能性については、研修の1つの肝だと思っています。企画は良いけど実現が難しいとなると、研修を受けられる企業さんも「発表は良かったけど、結局使えないな」となるし、研修する側も「せっかく提案したのに、なかなか実現されないと寂しいな」となる。

そこがちょうど良く着地できたことは、非常に(重要な)ポイントかなと個人的に思っています。

外部人材がDX支援の経験以外に得たもの

加藤:藤田さんからもざっくばらんに共有いただければと思います。

藤田:時系列で言うと、私も参加する・しないとなった時に、迷わず「参加します!」となったわけではありませんでした。やはり楠木社長と同じく、若干の不安を感じていました。本業でDXに取り組んだことがないというレベルで企業さまと向き合っていいんだろうか、といったところから始まりました。

でも「ここは企業さまも受講生側も、学び合いの場だよ」と。別にお金をいただくわけでもないので企業さまの懐が痛むわけでもなく、「あくまで学び合いの場だよ」「経験したもの勝ちだよね」といった以前の参加者の言葉が参加の後押しになりました。

実際にキックオフでお話を聞いて、内心「どうしようかな」と思った部分もありました(笑)。楠木さんもおっしゃっていましたが、背景などは聞けても、DXで何をやっていくかという部分はふわっとされているというのが実情でした。

最初の2~3回は、「さて次にどう動こうか」といった状態でミーティングが終わりました(笑)。とはいえ、1月末までという期限が決まっている。1月末に何をゴールに設定して取り組んでいくか。リーダーとしての責任をそこで感じることになります。

具体的に行った工夫としては、毎週ミーティングを開く中で「毎回スライドを1つ用意してお話しする」ことを意識しました。要は毎回なにかしらのアウトプットを用意するということですね。それをもとにディスカッションすることで、次へ進めるのではないかと考えました。

苦労話としては、チーム・アンサンブルは最初からアンサンブル、要はハーモニーが奏でられていたわけではありません。3ヶ月ぐらい前に「初めまして」と会ったメンバーで、バックグラウンドも異なります。当初はなかなかお互いの考え方がわからず、揃わなかったところがありました。

しかも本業とは別の時間帯でやらなければいけないため、メンバーの都合上朝5時半にミーティングを設定した。そのため頻繁なミーティングは避け、私の頭の中には週1回ミーティングをして、あとはチャットアプリ上でやりとりをすれば、なんとかチームとしてまとまるのではないかという考えがありました。

しかし、なかなかチャットではメンバーの意見が出ないという現状にぶつかりました。リーダーとして「チームとしてまとまっていないな」と感じる状態が12月27日(プログラム折り返しのミーティング日)まで続きました(笑)。

1月からはチームミーティングを増やして、声でコミュニケーションをとり始めたことで、うまく軌道に乗り始めたと思います。ミーティングを重ねて、1月末に向けて急ピッチで進めました。

今後、オンラインでチームとして活動する機会が増えると思いますが、このプログラムでリーダーができたことは、DXの経験以外にも私にとって大きな経験だったと思います。

満足できる資料の完成につながった朝5時半からのミーティング

加藤:めちゃくちゃ良い話でしたね。1週間に1回ミーティングがある中で、毎回アウトプットを持っていき、共通認識を作って次に進めるところもすごいスキルだと思います。

初めましてのメンバーをチームとしてまとめるところでとても苦労されたと思いますが、年明けからのチームビルディングはすばらしかったと思います。早朝5時半というのもかなり衝撃でした(笑)。

藤田:(笑)。

加藤:ほかにも「これはちょっと苦労したな」「これはおもしろかったな」「いい経験だったな」というお話はありますか?

藤田:「苦労したな」というところでは、やはり早朝5時半のミーティングを増やしたのは大変でした(笑)。成果報告に向けてのラストスパートは、アンサンブルのチームメンバーみんなががんばったところだと思います。

週4回くらい、朝5時半からミーティングをやっていましたから。内容は成果報告で出すプレゼン資料の品質にどこまでこだわるか。「こんなんじゃぜんぜんダメだよ」「とはいえ時間に限りがあるし」みたいなところですね(笑)。

ただせっかく集まったメンバーなので、5人の思いをそれぞれ汲み取りながら、最後は妥協せず、みんなが満足できる品質の資料を作り上げることができました。あの時のがんばりは思い出深いです。

加藤:ありがとうございます。チーム・アンサンブルのチーム名どおりにメンバーのみなさんの協働で実現された。藤田さんのリーダーシップのすばらしさをすごく感じました。ありがとうございます。

楠木さん、藤田さんもしくはアンサンブルのメンバーの裏側の努力をお聞きしていかがですか。

楠木:朝5時半から集まっているという話は最後のほうで聞き、すごく頭が下がる思いでした。それ以外にもチームのメンバーの方が、琴平を訪ねられたりしていたんですよね。それをすごくうれしく思ったし、その中でいろいろと派生する話もあったりして、本当に気合いの入った提案をいただいたなと思います。

チームの関係性を構築するための工夫

楠木:あとふーじーさんがチームや僕らをうまく導いてくれたなと。定例のミーティング以外にも、オンラインで飲み会を……2回ぐらいですかね?

藤田:2回ですね。

楠木:そういうのを挟んで、本題以外にもお互いを理解する場を設けてくれたことも、うまくことが進んだ理由の1つではないかと感じています。

加藤:オンライン飲み会で関係性の質を高めるというのはすばらしいアイデアだと思いますが、どなたが出されたのでしょうか?

藤田:アンサンブルのサブリーダーを務めたマッくんという人が、「オンライン飲み会やりましょう」と言ってくれて、「いいですね」という感じです。

加藤:(笑)。すばらしいアイデアですね。なかなかリアルでお会いできない中で、関係性を構築する工夫が自発的に生まれたというのは本当にすばらしいと思います。また、あとで深掘りしようと思いますが、実際に琴平に行った人もいるのは、すばらしいなと思いました。

近江さん、実際にオンライン研修の前と中を伴走いただいた立場として、ここまで聞いていただいたことについてコメントをいただけますか。

近江:当初はリアルでコミュニケーションをとる機会がないことに難しさがありそうだと思っていました。

しかし、そこをふーじーさんはじめアンサンブルのみなさんたちのアイデアであったり、最後はもう「やるぞ!」という気合いと根性みたいなところも含めて、オンラインの制限を凌駕する熱い絆みたいなものができたのかなと。そういう意味では、DXがコミュニケーションにおいてもうまく使われたのかなという気がします。距離を縮める可能性を感じられたなと。

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