2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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――水谷さまの著書『急成長企業を襲う7つの罠』について、刊行されてから少し時間が経っていますが、今でも共通している問題点が多いと感じています。この本を書いたきっかけを教えていただけますか?
水谷健彦氏(以下、水谷):もともと僕は28歳から40歳の12年間、リンクアンドモチベーションという会社で働いていました。そこではさまざまなお客さまの組織コンサルティングをしていたんです。
いわゆる一般のメンバークラスから入って、マネージャーになって、事業部長になって、取締役になるというステップアップを経験しました。僕が在籍した12年間で、会社も20名から1,200名まで大きくなりました。いわゆる急成長企業です。
そこで「急成長企業ってこういうことが起きるんだな」を、身をもって体験しました。さらにリンクアンドモチベーションでは大手企業はもちろんベンチャー企業の組織のコンサルもしていましたので、それらを合わせるとさまざまな共通項が見えてきたんです。
人間が生まれてから年齢を重ねるように、企業も設立されてから年数を重ねるので、アーリーなステージはどの会社でも存在します。その段階の課題に対して「こういうのがあるから注意しましょうね」と注意できれば、予防がしやすい。
もう課題が出てきていたとしても「これはあるあるだよ」と対策がわかっていれば前進できるだろうと思いました。悩めるベンチャー企業の経営者や人事の方々の支えになればなと思い、書いた本です。
『急成長企業を襲う7つの罠 』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
――その「共通項」について、今日は詳しくお伺いいしていきたいと思います。
ーーまず個人の問題として、大企業からベンチャー企業への転職がうまくいく人・失敗する人それぞれの共通項を教えてください。
水谷:JAMではベンチャー企業の定義を「スピードが速い」「変化の振れ幅が大きい」「構成員が比較的若い」としています。大手企業から、僕らの言うベンチャー企業に転職する場合、まさしくこの3つがキーポイントになります。
「スピードが速い」というのは、今いる大きな会社では半年から1年かけて検討するようなことが、もしかすると(ベンチャー企業では)3日で検討して決まったりするじゃないですか。
――ベンチャーではそういうことが多いですね。
水谷:それから、組織の規模が大きければ大きいほど、1回決めたことに取り組んで、結果はどうなのかを検証する期間が長いですよね。「2〜3年やってみましょう」という世界もあると思うんです。
一方、ベンチャーだとやってみて「これ、ダメだな」と思ったら、すぐ方針転換するじゃないですか。トライアンドエラーが多いという表現もできると思いますし、ネガティブに言うと「朝令暮改」のようなイメージになるわけですよね。
ただ、「変化の振れ幅が大きい」というのは、チャレンジしているベンチャーでは必要なことです。トライアンドエラーが少ない会社はうまくいかないと思います。必要な意思決定を柔軟に変えられないのも、ベンチャーとしてはダメですよね。
水谷:あとは「構成員が比較的若い」。比較的という言葉を付けていますから、会社によるとは思いますが、「比較的若い=仕事の経験年数も比較的少ない」ということです。
例えば部長や課長という役職も、どれくらいの経験を積んだ人がやるのかは、ベンチャーと大企業では違いがあると思います。年数だけで測れるわけではないですが、基本的に年数が短いというのは、未熟な中、なんとかその役割を担おうとがんばっている状態ですから、質的なところでミスが起きたり、十分じゃなかったりすると思います。
何らかのトラブルが発生しやすい。それをカバーするために経験豊富な人でポジションを埋めようとしても、そんな人はいない。「鶏が先か、卵が先か」という状態になっていくわけですね。
構成員が比較的若い中でがんばっていく。これもベンチャーの1つの特徴だと思います。(ベンチャー企業への転職を考えている)35歳以上の方は、これまでの経験から作られている「課長ってこういうレベルの人たちだよね」というのと、実際に自分がベンチャーに飛び込んだ時の課長レベルの人たちに違いがあるわけです。
その時に、「何でこんなにできないんだろう」と考えてしまうとうまくいきません。この構造で、この若いメンバーがやっているんだから、「逆にこれだけできていてすごいじゃん。この部分は自分が支援しよう」というマインドセットに立てる方が、ベンチャーでもうまくいく人です。
水谷:スピードのところも、半年から1年間ぐらいで進めるものが、本当に2週間とか1ヶ月で決まっちゃうことがあるわけです。そのスピード感についていくこともそうですし、逆に言うと、ある程度の年齢、例えば35歳以上の方であれば、そのスピードで意思決定をする立場になる可能性が高いじゃないですか。
――確かにそうですね。
水谷:そうすると、意外と本当の意味では意思決定に慣れていないと気づくんです。これまで意思決定をしてきたと思っているかもしれませんが、大企業では実は自分の上司が本当の意思決定をしているようなことがすごく多いんです。
ベンチャーだと本当に自分が最後の砦として、意思決定しなきゃいけない立場になります。その時に本当に意思決定できるかどうかは、実はわからないところだったりします。
変化の振れ幅についても、「一度始めたことはある程度やるべきだ」という感覚が身についています。よく「スモールスタート、フェイルファースト(Small Start, Fail First)」、小さく始めて失敗から学ぼうという話がありますが、失敗を踏まえて方針をブラッシュアップしていこうという動きをなかなか受け入れられず、結果的にうまくいかなくなります。
今「スピードが速い」「変化の振れ幅が大きい」「構成員が比較的若い」という3つに分けて話をしましたが、ここが一番気を付けておくべきことだと思いますね。
――前の職場で身についた「大企業の価値観」を、1回壊さないと難しいんだなと感じました。
水谷:そうですね。僕は別に、これまでの常識とか価値観がダメというわけではないと思うんですよね。基本的に「マッチするのかどうか」という話です。
ベンチャーならベンチャーでこういうスタイルだから、そこに合わせなきゃいけない。どっちが良い悪いではなく、会社の事業の年数や規模に応じて、相応しいスタイルは違うからこそ、個人が適応しなければいけません。
――今、個人についてお話を伺ったんですが、採用はお互いの相性だと思うので、採用する企業側についてもお聞きしたいです。採用で失敗するベンチャー企業の共通項があれば、ぜひ教えてください。
水谷:「機能調達」という表現もしますが、やはり「スキルを重視し過ぎる採用」だと、うまくいかないケースが多いですね。
――大企業出身者という肩書きとか、今までやってきた経験とかスキルがあるからこそ、転職してチャレンジしようと思う方も多いと思うんですが、そこを重視し過ぎてはいけないということですね。
水谷:そうですね。会社側からすると、すごく嬉しいはずなんです。同じ業界の経験者が応募してくるというケースは、会社ができてすぐだとほぼありえないじゃないですか。
事業がある程度うまくいったり、会社が大きくなってくると、どこかのタイミングで「あれ? この業界の大手の人が応募してきた」となる。これはもう応募された時点でハッピーニュースですよね。
――そうですね(笑)。
水谷:その瞬間から、いろんな妄想が始まってしまうんです。「この人、すごい仕事できると思う。経験もぴったりだ」「この人が入ってきてくれたら、翌日からリーダーシップを発揮してくれて、ガラッと変えてくれるんじゃないか」と。僕は妄想だと思っているんですけど、そう思っちゃう気持ちはわからなくないです。
ただ、それを思った上で面接がスタートすると、ものすごく「合格圧力」が掛かっているんですよね。面接が何回かあると思うんですけど、面接官全員がそうなっている時は、「とにかくこの人は採りたい」となっちゃうわけです。
水谷:本来はしっかり面接をして、スキルとか経験の内容を精査すべきです。業界が同じでも、自社とのフィット感は違います。実は30パーセントぐらいのフィット感の方もいれば、もうほぼ100パーセントフィットしている方もいるじゃないですか。そのフィットの程度を見極めないといけない。
加えて、経験と同時にその方のポテンシャルとか能力を測らなきゃいけない。それが盲目的に「この人が入社したら大丈夫だ」という気持ちで面接=“下駄を履いた状態”で選考してしまい、結果合格する。
そういう方が入ってきた時に、期待どおり活躍してくれるパターンも当然あるんですが、僕は「期待どおりじゃなかったな」という結論に陥ってしまうことのほうが多いと経験的に感じています。5人採用して1人期待どおりであれば良いんじゃないかというくらい、成功率は低いと思っていますね。
――つまり採用する側が、本人の能力以上に期待値を高くしてしまっているんですね。
水谷:あると思います。経験者でその業界にいるということになると、勝手に「できるんじゃないか」と思ってしまう。そして大抵の場合、給料の条件をけっこう高く設定してしまうので、ますます難しい状態になりますね。
――上げてしまった条件はなかなか落とせないですよね。
ーー実際に失敗したケースはありますか?
水谷:当社は経験者の採用を積極的にしているわけではないので、あまり事例はないのですが、クライアントさんとか知人友人の経営者の中では、正直たくさん経験されていますよね。よく「パラシュート人事」とか言うじゃないですか。
――上から突然降ってくるパラシュートのように、中途社員として採用した人をいきなり要職に起用することですね。
水谷:それで「トライしてみたけど、うまくいかなかった」という事例は多いです。決して100パーセント失敗しますと言っているわけではないです。感覚としては、成功するのは5人に1人とかなんですよね。
採用する側も「5人に1人うまくいけばいいや」という期待値でやれるんだったら良いと思いますけど、たいてい95パーセント成功すると思っているんで、これはギャップが大きいですね。
――書籍の中でも「盲目採用」という言葉を使われていましたね。水谷さんは大企業出身者の方が応募してきてくれた時に、面接の中でどんなところを見ているのか、具体的に教えていただいてもいいですか。
水谷:3つに分けて見ています。経験者の場合はまず「テクニカルスキル」と言われる、この領域における経験がどれくらいのものなのかを、かなりつぶさに聞いていきますね。
我々で言ったら人材の育成や組織コンサルティングになるわけですが、組織のコンサルティングと言っても人事制度関連とか、ビジョンとかミッション関連とか、さまざまな領域に渡ります。どの領域のプロジェクト経験が多いのか。
またプロジェクトにどう関与していたのか。そのプロジェクトのリーダーとして、目的やコンセプト、方針などを定めて、実際にリードしてきた立場なのか。それとも誰かが決めた方針の中でワークしていた方なのか。
本当にどういう仕事をしてきたのか、何を判断できて何を実行できる人なのか。これをつぶさに聞いていきますね。
そうすると“下駄を履かない”クリアなスキルや実力を見極めていけると思っています。具体的な仕事の経験を「テクニカルスキル」と表現していますが、そこを確認するのが1つです。
2つ目は「コンセプチュアルスキル」と呼んでいますが、役職に就けば就くほど一定の思考能力が必要だと思っています。会社の営業戦略を立てるとか、商品開発の戦略を立てるといった、戦略立案や問題解決のスキルはどの業界でも必要だと思うんです。このコンセプチュアルスキルがどうなのかということも、質問を中心に測っていきます。
最後に「ヒューマンスキル」ということで、人への影響力です。頭脳明晰で出てくる戦略は素晴らしいんだけれども、コミュニケーションに難があって伝えられない、というようなことです。
大袈裟かもしれませんが、伝えられなくてケンカになってしまうなどあるとような話になる当然うまくいかないじゃないですか。ヒューマンスキルはどうなんだろうかということも、かなりつぶさに見ていきます。経験者の場合はこの3つを「測るべき指標」として置いています。
――逆に経験が少ない方を採用する場合は、3番目の「ヒューマンスキル」が中心になるようなイメージですか?
水谷:そうですね。新卒・第2新卒と呼ばれるような経験が少ない方は、今言った3つよりも、僕は「ポテンシャル」と表現しているんですが、もっと根底の潜在能力を見極めることを大事にしています。
あとは「スタンス」と呼ばれるような、仕事に向き合う姿勢の部分ですね。例えば成長意欲が高いとか、責任感が強いとか、倫理観がしっかりしているとか。
テクニカルスキルは当然働いていないので乏しいですし、コンセプチュアルスキルとヒューマンスキルも、ポテンシャルとスタンスが正しければ、入社後すぐ鍛えていけると思っています。なので、新卒及び第2新卒はこの2つを重視しています。
ーー先ほど「合格圧力」という言葉がありましたが、今の話のようなスキルを見極めるための視点や意識を、面接官一人ひとりが理解しておく必要があると思っています。その上でここだけは押さえておいたほうがいいポイントについて、何かあれば教えていただきたいです。
水谷:ベンチャー企業における採用面接官は、人事のメンバーだけで完結しないことも多いと思うんですよ。
現場の社員に面接をお願いすることが多いと思うので、面接のスキルを面接官全員が高めていくのは、正直なかなか難しいことじゃないかなと思っています。なので、面接のステップごとに何を見極めるのか分けるのが良いと思っています。
例えば若手の採用で、僕が最終面接をするのであれば、ポテンシャルを見極める役割になるわけですね。その前の段階の面接官たちはスタンスを見極めてほしいとか、当社にカルチャーフィットするのかを見極めてほしいとか、そのへんのオーダーが中心になるわけです。
そうすると、「その(スタンスやカルチャーフィットの)視点で言うと、合格だと思います」という形になります。当然合格の方が次に進むわけなんですけど、ポテンシャルがあるかどうかは、(誰も見ていないから)正直わからない。なので、私の面接でも一定比率は落ちるわけです。
そういうふうに分けて対応していくのが、最終的に質の高い採用プロセスを構築することに繋がると思っています。
――なるほど。見る視点で分けると、1回の面接でもかなり深掘りできますよね。
水谷:そうですね。私は1回の面接で、大質問はせいぜい3つくらいしかしません。見たいスキルによって異なりますが、例えばテクニカルスキルを把握するには、たくさんのことを聞くよりは、少ない話題をちゃんと深掘って聞くほうが良いと思っています。
――確かにそうですね。ふだん人事の仕事をしていない社員が採用面接官をするとなると、どこを見るべきか迷ってしまって難しいかもしれません。どういう視点で見ればいいのか先に決めておくと、やりやすそうですね。
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