ライブエンターテインメント市場の年間損失は6,900億円

舛田淳氏(以下、舛田):みなさん、こんにちは。CSMOの舛田です。本日「New Normal×Entertainment」をテーマに、私からお話しさせていただきます。

LINE DAY 2020は、初めてのオンラインカンファレンスになりますが、いかがでしょうか。これが最後のセッションとなります。どうぞ最後の最後までお付き合いください。そして最後には“あの方”が登場します。

さて、ここまで各セッションで繰り返し、繰り返し、新型コロナの社会へのインパクトについてお話しさせていただきました。エンターテインメントでも同様です。外出自粛やイベントの自粛によって、ドームツアーをやるアーティストから、ライブハウスやストリートでがんばるアーティスト、映画館・演劇など、エンターテインメント全体が活動中止となり、業界全体が今もなお悲鳴を上げています。

アーティストとファンとの当たり前だった距離が、ソーシャルディスタンスによって離れてしまいました。経済面でも、ライブエンターテインメント市場の年間損失は8割弱減。6,900億円を失うという、恐ろしい試算すら出ています。そしてそれが現実味を帯びています。

では私たちは「いつか元に戻るよ」と、このままなにもせず、変わらず待っていればいいのでしょうか。そんなことはありません。エンターテインメントの根幹は好奇心やチャレンジ精神、そしてある種の反骨精神から、創造・イノベーションが生まれてきました。こんな時だからこそ、私たちは創造していかなければいけません。次の時代の当たり前となる仕組みや環境を創造していかなければいけません。

LINEが推進する「エンターテインメントのDX」

舛田:混沌の中には、冒頭、出澤(剛氏)が申し上げたように、必ず光明もあります。このように10年後振り返った時に、この2020年が、日本、そして世界のエンターテインメントのターニングポイントだったと言われる年になるはずです。これまでの「ノーマル」、当たり前が切り替わる年。「ニューノーマル」へのパラダイムシフトが起こった年だった、となるはずです。

そのキーになるのが、エンターテインメントのDX。今回のLINE DAYでも繰り返し、各セッションで出てきているこの「DX」という考え方が、エンターテインメントにとっても不可欠な変化と言えます。

まずはコンテンツのDXから見ていきましょう。コンテンツのDXを簡単にご説明すると、例えばオフラインのコンテンツをデジタルフォーマットにし、それによってコンテンツの流通をオンライン化し、利用するユーザーの行動データ・購買データを分析して、ユーザー体験の向上に活かしていくような変化のことです。

すでにこの変化を実現しているコンテンツやサービスは、このコロナ禍でも成長することができています。例えば漫画や音楽、ドラマや映画などのパッケージ化されたコンテンツです。LINEのデジタルコンテンツサービスであるスタンプでも、このコロナ禍でも送信数が121パーセント伸びましたし、同じようにLINE MUSICでも再生回数が135パーセント伸びました。また、当社以外のサービスになりますが、NetflixやHuluなど、みなさんがご存じのVODサービスの爆発的な成長も、記憶にあるかと思います。

そしてこの「コンテンツのDX」という流れの中で、デジタル化されたコンテンツの成長を上回る勢いで成長しているものがあります。今回のコロナ禍でも、それを追い風としているコンテンツがあります。それは個人のクリエイターたちが作る、ボーンデジタルコンテンツです。日本語で言うと「デジタル生まれのコンテンツ」ということですね。みなさんもご存知のYouTuberやInstagramer、そしてTikTokerなどと呼ばれる方々のコンテンツが、その代表となります。

音楽業界でのLINEのチャレンジ「SOUNDALLY」

舛田:ここで1つ宣言したいと思います。LINEは今後、クリエイターコンテンツプラットフォームとしての役割を強化してまいります。まずは私から最初の発表となりますが、音楽においての新たなチャレンジを。音楽でのクリエイターコンテンツを加速させるための新たな取り組みとして、音楽ディストリビューションサービス「SOUNDALLY」を開始いたします。

LINEが、あなたの歌を世界中へ届けます。国内最大規模の音楽配信サービスであるLINE MUSICの再生回数の推移をご覧ください。現在、個人・インディーズの再生回数は2019年の1月に比べ、なんと530パーセントという成長を続けています。まだまだ上がっています。これは、これまでの「メジャー」と「インディーズ」という、長年続いてきた構図に影響を与えるほどの勢いです。

こちらのチャートもあわせてご覧ください。LINE MUSICの月間ランキングですが、最新のチャートにも例えば、今年、流行りましたね。瑛人さんの『香水』をはじめ、数多くのメジャーレーベル所属ではないアーティストたちが、このようにチャートインしていることがわかります。

これは一昔前の……と言ってもそんなに昔ではなくてですね。例えば1年前の音楽チャートを見ていただいても、こういう状況ではなかったんですね。まさにこの半年、3ヶ月あたりでグググッと、インディーズのアーティストのみなさんの活躍が盛り上がってきております。

彼らはみなメジャーレーベルとは契約せずに、YouTubeやInstagram、TikTokで楽曲を発表して、それがSNS中で話題になり、ファンの方にコピーされて、それがまた拡散して話題になり。それがぐるぐる回っていくと、若者の利用者が圧倒的に多いLINE MUSICのチャートにいち早く入ってくる、という関係がもうすでにできあがっています。

LINEは、もっとこのようなアーティストが、そしてクリエイターが、そして音楽が、世界中にあふれる世界になってほしいと思っています。まだ一歩を踏み出せていない人の背中を、少しだけ押す手伝いをしたいと思っています。それができるように、LINEは新たに、日本のアーティスト・クリエイターの歌を世界中に届ける音楽ディストリビューションサービス「SOUNDALLY」を開始いたします。

少しご説明すると、このサービスに登録いただくだけで誰でも簡単に、LINE MUSICだけではなく世界の音楽配信サービスでご自身の楽曲が配信可能となります。

例えば今までであれば、メジャーレーベルに所属することによって、そういったディストリビューション、流通のサポートを受けられたりしたんですが。最近ですと、こういった専門のデジタルディストリビューションサービスが世界中で出始めています。まさにそれを、LINEがみなさまに向けて開始したいというものでございます。

サービスの詳細や機能については、またサービスのリリース時にお知らせさせていただきますが、先出しでこのサービスの特徴を1つ。「SOUNDALLY」はほかのディストリビューションサービスとは異なり、何曲でも登録無料。再生に対する売上も、全額還元いたします。この費用面のハードルを下げることで、まずは多くのアーティストにご利用いただきたいと考えております。

音楽ディストリビューションサービス「SOUNDALLY」を、みなさまご期待ください。

世界中のクリエイターのための「TIMELINE 2.0」

舛田:さらにLINEは、クリエイターコンテンツプラットフォームとしての役割を強化してまいります。

「LINEタイムライン」はみなさまご存知だと思いますが、LINEのアプリ内のメインタブサービスの1つとしてあるものです。トークやニュース、そしてウォレットなどと並ぶようなサービスとなっております。

現在国内MAU、月間利用者数で6,800万人を超える巨大SNSでございます。この6,800万人のプラットフォームを、クリエイターのために開放したいと思います。「TIMELINE 2.0」。LINEタイムラインを、その根本から刷新してまいります。

今までの友人同士、LINE友だち同士のソーシャルグラフ、関係性ですね。つながりをベースとした場から、コンテンツをフォローするプラットフォームへとチェンジしたいと思います。

この取り組みは、すでに段階的に始まっております。今、LINEを見ていただいてもいいと思うんですが、みなさまのLINEアプリのタイムラインでは、まさにLINE友だちの登録とは関係なく、みなさま自身の志向性に合わせたコンテンツを表示する「ディスカバー」というタブが登場しているかと思います。その奥に進むと、さらに「おすすめ動画」という動画コンテンツだけのフィード、タイムラインが作られています。

これまでも、クリエイターでも普通のユーザーでも誰でも、タイムラインへ投稿すること自体はできましたが、LINEという友だち同士のリアルな関係性をベースとしていた場所ですので「拡散」ということはなかなか起こりづらい構造になっておりました。

そしてその性質の違いから、再生数やlike数など、ユーザーのアクションがほかのSNSよりも少ないんじゃないかという声もいただいておりました。今回のLINEタイムラインのコンテンツフォローモデルへのシフト、そしてディスカバーの登場は、その課題を真っ正面から解決するためのものです。

さらにタイムライン上で活動するクリエイターのために、3つの新しい機能をリリースいたします。「分析機能」「収益化機能」そして「セルフプロモート機能」の3つです。

まずは分析機能から。これまでタイムラインでは、クリエイター向けのものではございませんでしたので、例えば「どれだけ見られたか」とか「どれだけクリックされたか」とか「どれだけlikeがついたのか」とか。そういうことを簡単に見ることはできませんでした。今回、分析機能を入れることでこの問題を解決し、クリエイターをサポートしてまいります。

次に収益化機能です。今、こちらに金額がもう出てますけれども、これが今回最も大きな変化だと言えるでしょう。クリエイターがきちんと収益を得られるようにするための機能をリリースいたします。

収益化の仕組みは、動画再生時に再生途中から挿入される動画の再生ですね。動画が流れていると、その間に広告が挿入されるインストリーム広告と、動画再生時に画面の下の部分になりますが、ここにバナー広告が表示される2種類のタイプを用意したいと思っております。この動画広告の売上が、クリエイターへ収益として分配されていきます。

最後に、収益化されていくためには、当たり前ですが、多くの方にそのコンテンツを見ていただく必要があります。これまで、クリエイター自身がLINEの中で露出を強化する方法はありませんでした。例えばTwitter、Facebook、Instagram、そこからLINEのURLを貼って、そして宣伝することぐらいしかできませんでした。

今回、クリエイターご自身でセルフプロモートを行うことができる機能をご用意いたしました。クリエイター自身が広告出稿することで、アカウントへの集客や流入数を増やすことが可能になります。性別・年齢・地域・興味に基づいて、プロモートしたい対象を設定して、コンテンツを見てほしい人へ無駄打ちなく、的確に届けることができます。

公式アカウントに実装される「マルチアカウント機能」

舛田:「for Creators」。クリエイターのために、LINEの公式アカウントも変わります。クリエイターのみなさんに、LINEでもっと自由に、LINEのタイムラインでもっと自由に活動していただけるよう、マルチアカウント機能をリリースいたします。

マルチアカウント機能はその名のとおり、公式アカウントを無料で複数アカウント作成できる機能です。1つのクリエイターがこのようにアカウントを使い分け、グルメに関する投稿をしたり、トレーニングに関する投稿をしたり、ジャンルに合わせて複数のアカウントをタイムライン上で自由に使えるようになります。

今までは「自分のプライベートなアカウント」「クリエイターのアカウント」。こういったこともなかなか難しかったです。今回はさらにそこに「私はグルメの時にはこういう見せ方をしたい」「美容の時にはこういう見せ方をしたい」「鉄道に関してはこういう名前にしたい」……こういったことを使い分けられるようになります。

ここまで見ていただいたように、LINEはクリエイターコンテンツプラットフォームという側面を強化いたします。今回のアップデートにより、クリエイターやアーティストは公式アカウントやタイムラインを中心に、LINE MUSICやLINE LIVE、LINEマンガ、LINEニュース、LINEブログなどのサービスと連携し、ご自身のコンテンツへの集客や収益化の機会を最大化させることが可能となります。

また個人のクリエイターだけではなく、先日発表させていただいたUUUM社との提携をはじめとして、MCNやプロダクション、メディア、さまざまなみなさまとのパートナーシップを強化してまいります。

今、世界で求められるのは「体験のDX」

舛田:ここまでがエンターテインメントのDXにおける、コンテンツの変化についてのお話でした。ここからがある種の本題になりますが、次はエンターテインメントのDXにおける最も重要な部分のお話に移りたいと思います。

今まさに求められているもの。「体験」のDXです。冒頭でお話しさせていただいたように今、新型コロナ・ソーシャルディスタンスによって、ライブエンターテインメントは大きな打撃を受けています。この状況を打開・解決するには、前に進めていくためには、今こそライブエンターテインメントのDX「体験のDX」が必要となります。

だからこそ私たちは新たに、有料チケット型のオンラインライブプラットフォーム「LINE LIVE-VIEWING」を開始いたしました。そして開始早々、早くも矢沢永吉さんやMISIAさん、[Alexandros]さん、サカナクションさん、Creepy Nutsさんなど、数多くのオンラインライブがすでに開催されております。

そして先日の8月22日には、私どもLINEとの共同企画として、長渕剛さんの初となる有料オンラインライブ公演を開催し、このような数多くのファンの方にご覧いただくことができました。

これは360度LEDの画面が出て、そこにリアルタイムで300名のファンの方々とつないで、そして一人ひとりに長渕さんが話しかけ、みんなで一緒に歌うという「生」だからこその価値・体験を持ったライブでした。

今後、LINE LIVE-VIEWINGのラインナップとしては、SKE48さんなど人気のアーティストたちの公演が決まっております。お楽しみにお待ちください。

LINEが目指す、5つのフェーズ

舛田:体験のDX、ライブエンターテインメントのDXは、試行錯誤を繰り返しながらフェーズが進んでいくものだと思います。フェーズ1から順に書いておりますが、フェーズ1は収録ライブの無料公演。これが最初、コロナ禍においてたくさん行われたものです。「まずなんとかしなければ」ということで公演が行われました。

ただしこれではアーティストのみなさん、そして関連するスタッフのみなさんには、まったく収益がありません。コロナがすぐに終わるんだったらいいですが、私たちは新型コロナとしばらく、当面付き合っていかなければいけません。その中で無料というのは、サスティナブルではありませんよね。

ですのでフェーズ2として、収録ライブの有料公演というのが次に出てきました。こちらが今多くやられているものになります。そしてフェーズ3は、完全生の有料ライブ。フェーズ2とフェーズ3の違いは、先ほど長渕剛さんのライブの部分でも申し上げたように、生だからこそのファンとのコミュニケーションやインタラクションが組み込まれた、オフライン体験のオンラインでの再現性を求めたものです。

そしてフェーズ4では、さらにそこにARやVR、またはアーティスト自体をアバター化させる、すでにこういうことも出てきてますね。アバター化させるような、演出にテクノロジーを掛け合わせたライブ体験も進んできております。

そして最後にフェーズ5。これまで例えば「ライブに行こう」「コンサートに行こう」と思ったとしても、それは実は「コンサートだけを体験したい」わけではないですよね。そこにはパフォーマンスを見ることだけではなくて、さまざまなものがありました。こういったすべてを含めたものが、ライブエンターテインメントの体験と言えるでしょう。

握手会のオンライン化、デジタル化

舛田:このすべてもオンライン化していく。こういったことまでのステップ・フェーズを進めていくことが今、求められています。私たちLINEもこの考えから、新たな取り組みを準備しております。

まずは握手会のオンライン化、デジタル化です。ここ数年でエンターテインメントビジネスに欠かすことができないこととなった、握手会だったりハイタッチイベント、ファンミーティング、ミート&グリート。たくさんありますけれども「CDの販売に握手券がついてくる」なんてことは、もう当たり前になってきております。

これらのオンライン化として、オンライン握手会サービス「LINE Face2Face」を準備しております。

(映像再生)

「LINE Face2Face」はこのように、握手会やトークイベントでのリアルな体験をそのままオンライン上で再現した、1対1のライブ配信です。実際これは開発中ですが、私も体験させていただきました。かなりすごいインパクトです。もしかすると握手会を超える体験かもしれません(笑)。こちらはすでにHKT48さん、NGT48さんなどの握手会への導入も発表されております。この秋から本格的に展開してまいります。

物販をデジタル化させる、ライブコマース「LIVEBUY」

舛田:そして次は、ライブエンターテインメントにとって不可欠な「物販」です。実際、私どもがLINE LIVE-VIEWINGの構想を発表した際に、最も多かったご質問は「物販はどうなんだ?」というものでした。

確かにコンサートの売上、ビジネスを考えていくと、チケットの収益も非常に大事なんですが、そこで行われる物販というのもやはり非常に大事なものになっています。ファンにとっても同じです。そのコンサートのオリジナルグッズ、Tシャツやタオルなどは非常にメモリアルなものです。その体験もオンライン化・デジタル化させます。

ライブコマース「LIVEBUY」です。

(映像再生)

通常、物販を直接アーティストがやることというのはなかなか難しいですが、このようにLIVEBUYを使えば、直接ファンとコミュニケーションを取りながらオリジナル商品を販売することができます。こちらもまだ開発中という段階ですが、リリースまで少しお待ちください。

このように、LINEが考えるライブエンターテインメントのDXは、LIVE-VIEWINGが中心になり、これまでのオフラインでのライブ体験自体を、周辺の体験も含めて丸ごとオンライン化・デジタル化させていくことです。そして、その実現をサポートしていくことです。

LINE×松竹×Sproot

舛田:日本のエンターテインメント産業のDX推進は、私どもだけでは、もちろん成しえません。さまざまなパートナーのみなさまとご一緒に進めていかなければ、実現することはできません。ここで本日、新たなパートナーシップの発表をさせていただきたいと思います。

新たなパートナーは、松竹株式会社様です。日本のエンターテインメントの雄である松竹様のDXを推進するため、松竹様とLINEとの新たなプロジェクトを立ち上げます。それが「松竹DXコンソーシアム」です。松竹グループのDXを推進していくため、松竹様、LINE、そしてSproot社の3社でのコンソーシアムを立ち上げることとなりました。

本コンソーシアムは、次の課題を検討してまいります。1つ目は、松竹様が持つ映画館や劇場などの施設のスマート化、そして専用のオンライン劇場からの映画や演劇・お笑いコンテンツなどの配信。2つ目は、松竹グループ内にあるIDやデータベースの統合。そして1つ目・2つ目が進んだ前提ですが、3つ目はお客様の行動データ・消費データを活かしたマーケティングの高度化、そしてお客様体験の高度化。以上の3つの推進に向け、検討を進めてまいります。

本日はコンソーシアムパートナーである松竹株式会社様より、取締役の井上貴弘様をお呼びしております。井上さん、どうぞお越しください。

井上貴弘氏(以下、井上):よろしくお願いします。

舛田:3社でやっていくことになりましたけれども、井上様から今回のパートナーシップへの狙いや背景、そして期待することについてお話しいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

井上:松竹の井上でございます。次に出られる方をみなさんも心待ちにされているんじゃないかなと思いますので、少しだけお時間をいただいて、みなさんに今回の取り組みのご説明をさせていただきたいと思います。

我々の会社は125年前に歌舞伎の興行を始めました。そして100年前に、映画の制作を始めました。そしてまた今年、みなさんにとってはオリンピックという非常に大きな行事があって象徴的な年になるはずだったと思いますが、我々にとっては非常に大きな意味を持つ年でもありました。

歌舞伎にとっては市川團十郎白猿襲名興行、そして松竹キネマ100周年。これは映画を作り始めて100年というような、記念すべき年になる予定だったんですけれども、このコロナ禍において関連する興行であったりイベントというものが、ほとんど中止になってしまいました。

我々の事業は、みなさんに歌舞伎座などの劇場に来ていただく、映画館に来ていただく、寄席に来ていただく。それらによってみなさんに楽しんでいただくことなんですけれども、できなくなったと。これはかなり我々にとっては、危機的な状況ではあります。

おかげさまで6月から映画館にはお客さまを迎えることができましたし、8月からは歌舞伎座でもお客さまを迎えることができました。コロナ禍は創業125年で我々が迎えた最も大きな危機の1つかなとも考えていますが、逆にこれはチャンスだとも捉えています。

我々の仕事のやり方、ものの作り方や見せ方といったものをすべて変えていくと。そして、お客さまに対して新しい価値の体験を提供できるチャンスじゃないかなと思っています。それがまさしく先ほどから舛田さんがお話しをされている、DXじゃないかと思っています。

今回、スマート化……これは劇場や映画館のスマート化であったり、我々のお客さまの情報の集約・統合、そして我々のマーケティングの高度化。これによって何を一番実現したいかといいますと、やはり新しい価値の高い体験を、エンターテインメントの体験をみなさんに提供できると考えています。

ただ、我々だけではできません。我々も125年やってきましたので、我々なりにやってこれたことがある。ただし我々が苦手なところ、技術的なところ、また世の中の新しい動きを取り入れていく、ここをLINEさんおよびSproot(注:2020年に新設された、HKT48及びNGT48の持株会社)さんに支援していただきたいと考えています。

我々は創業以来125年、そしてLINEさんは創業10年、スプルートさんに至っては今年に会社ができたということで。我々のようにまったく異質な会社が1つになることによって、新しいものが生まれるんじゃないかというふうに、大きく期待をしています。

このような機会を与えていただいた舛田さんに、そしてまたLINEのスタッフのみなさまに感謝をするとともに、Sproot代表取締役の渡邊洋行さんに感謝を申し上げたいと考えております。我々もLINEさんと手を携えて、みなさまに新しいエンターテインメントの体験をご提供させていただきたいと思っておりますので、ご期待ください。

舛田:取締役、ありがとうございます。ご一緒にがんばってまいりましょう。よろしくお願いします。

井上:がんばりましょう。よろしくお願いします。

舛田:本日はありがとうございました。

LINEは今回の松竹様とのパートナーシップと同様に、今後、エンターテインメントDXをさまざまなパートナーのお取り組みの中で推進・支援してまいりたいと考えております。