2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
Why Herpes Is the Most Talented Virus Ever (全1記事)
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ハンク・グリーン氏:病気になるのは、決して気持ちのよいことではありませんが、ほとんどのウィルス性の感染症は、一度かかれば一生かかりません。麻疹ウィルスに対する免疫が、生涯続く免疫の代表例であることは、以前、別の動画でお話ししましたね。
人体の免疫システムは、麻疹ウィルスを一度認識すると生涯忘れず、再び現れた日にはすぐさま放り出します。
一方で、生涯続く感染症の代表例もあります。ヘルペスウィルスです。
ヘルペスウィルスは、人体の免疫システムを巧みにすり抜け、細胞内に身を潜めます。ひとたび人体に侵入したヘルペスウィルスは、生涯感染を続けるのです。
ヘルペスウィルスには、巧みな不法占拠者たらしめるユニークな特徴があります。人体の免疫システムからすれば、不名誉きわまりない事態ではありますが、どうやら人間は、ヘルペスウィルスと共存するべく進化してきたようなのです。
人間に感染し続けてきたヘルペスウィルスは、8種あります。そのうち単純ヘルペスウイルス1型と2型は、それぞれ口唇ヘルペスと性器ヘルペスを発症させます。水ぼうそうや帯状疱疹を発症するウィルスも、ヘルペスウィルスの仲間です。伝染性単核球症を発症させるウィルスもほとんどがヘルペスウィルスの仲間ですが、すべての伝染性単核球症の原因がそうとは限りません。
ヘルペスウィルスは、ごく一般的なウィルスです。地球上では、単純ヘルペスウイルス1型に感染していない人の方が少ないと言われています。ヘルペスウイルスは、ウィルスとしては大きく、複雑な構造をしていることで知られています。そのゲノムも大きく、多様な遺伝子を抱えており、何十、何百ものたんぱく質を生成することができます。例えば、たった12種類のたんぱく質しか生成できないインフルエンザウィルスの遺伝子などに比較しても、これは遥かに多いと言えます。
これらのたんぱく質がヘルペスウイルスに、宿主に生涯にわたって感染できるツールを提供します。ウィルスは人体が仕掛けてくるトラップや防御を、映画に出てくる盗賊団のごとく、一つ一つ巧みに潜り抜けます。
ウィルスはまず、人体が新しい未知の侵入者を撃退する「自然免疫」システムを、それと気づかれずに通過しなければなりません。このような隠密行動を「免疫回避」と言います。
新手の脅威に対する人体の「自然免疫」の防衛最前線は、細胞を”用心棒モード”に突入させるたんぱく質を生成することから始まります。ウィルスに、人体の細胞を増殖の宿主として利用される結末を防ぐべく、一連のシグナルを放出するのです。
ところが、ヘルペスウィルスは、細胞の”用心棒”たんぱく質の生成を抑制し、防衛最前線の働きを抑えてしまいます。
細胞側にも、このルートをかいくぐってしまうウィルスを迎撃できるバックアップの防御がちゃんとあるのですが、ヘルペスウィルスの方にも、さらなる対処法があります。ヘルペスウィルスは、宿主のDNAの中に潜入してしまうのです。そのため、宿主のゲノムは損傷を受けます。
細胞は、通常であればDNAのダメージに対して厳重に警戒をしています。しかしヘルペスウィルスは、細胞にそのダメージを気づかせません。例えば、単純ヘルペスウイルス1型であれば、ダメージに対する細胞の警報・修復機能を妨害し、乗っ取ることができるのです。
免疫システムが仕掛ける次の罠は、到底逃れることができそうにありません。他の防御機能がすべて陥落した時、細胞はウィルスを食い止める最後の手段として自死するのです。しかしみなさんには、もう予想がついていますね。ヘルペスウィルスは、細胞の自死を促すシグナルを乗っ取るたんぱく質を生成するのです
こうして、まんまと自然免疫システムを通過したヘルペスウィルスは、宿主に寄生する拠点を設ける間、邪魔されない時間を稼ぐ必要があります。この段階は、ウイルス学者が言うところの増殖期です。ウィルスは活発に増殖し、新しくできたウィルスを放出します。
この段階は、抗原のウィルスと結合して抗体を生成する働きをする「適応免疫」システムにとっては、ウィルス粒子を認識できる格好のチャンスです。ところが、ヘルペスウィルスはこのプロセスにもブレーキをかけてしまいます。
通常であれば、ウィルス抗原を捉えて免疫システムに提示する働きに特化した、密告屋のような細胞が機能するはずです。しかし、ヘルペスウィルスは、免疫システムが認識できる位置に抗原を移動させる仕組みそのものを止めてしまうのです。
とはいえ宿主である人体は、最終的には抗体を生成します。しかし、相手がヘルペスウィルスの場合は、時すでに遅しなのです。ヘルペスウィルスは、宿主細胞の内部に潜入しているため、感染は排除できません。この段階を、潜伏期と言います。ヘルペスウィルスは、自らのゲノムを小さな円形にまとめ、発現され続けるのはそのごく一部にすぎません。
ヘルペスウィルスのこの作戦の成功には、ヘルペスウィルスが秘密の隠れ家として利用している細胞に、長い間生きていてもらう必要があります。そのためターゲットとなるのは、通常であれば長期間生きていて生命維持に不可欠な機能を担う、神経細胞や免疫細胞です。単にウィルスを殺すためだけに、人体がこれらの細胞を自死させることは、まず無いためです。
このようにして、ヘルペスウィルスは生涯寄生し続けるのです。安全なタイミングを見計らって、ウィルスが再び増殖期に入り、増殖を始めてしまうことがあります。おめでとうございます。これが「単純疱疹」の発症です。
一方で多くの人にとっては、ヘルペスは全面的な敵ではなく、味方でもあることがわかってきています。
当然のことながら、ヘルペスウィルスは困った症状を引き起こします。免疫不全症の人は重症化しやすく、世界では失明の主な原因となっています。さらには、ガンの原因にもなります。しかしほとんどの場合は、宿主を元気なまま生かしておきます。これは、他の人間と接触させることにより、新たな宿主に感染を広げていくためです。
水ぼうそうや単純疱疹などの例外はありますが、多くの場合、ヘルペスウィルス感染による症状は、軽症もしくは完全に無症状です。
一例としては、ほとんどの人が35歳くらいまでに、ヘルペスウィルスの一種であるエプスタイン・バール・ウイルス(EBV)に感染しますが、多くの感染者は無自覚です。EBVは、主な伝染性単核症の原因ウィルスですが、ほとんどの感染者には、あのひどい喉の痛みや疲労感が発症しません。僕としては、うらやましい限りです。
さらに不思議なことに、ヘルペスウィルスが潜伏していると、どうやら免疫システムには有利に働くようなのです。このことに関しては、別の動画をご視聴ください。
小さいころに水ぼうそうにかかった経験のあるみなさん。みなさんは世にも稀な、優秀なウィルスに寄生された栄誉に恵まれているのですよ。
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