成熟市場におけるV字回復と急成長の本質

高橋勇人氏(以下、高橋):それでは、これからパネルディスカッションを始めたいと思います。まず私から、ディスカッションの進め方をご説明いたします。

国内産業が成熟する中で、今回ご登壇いただく2社は過去数年で、絵に描いたようなV字回復や新規事業の立ち上げを成功させた企業様になります。企業の躍進に対して、先ほど基調講演をいただきました野中先生から、イノベーション論と失敗の本質という2つの視点からコメントをいただこうと思っております。

まずはティップネス様ですけれども、2013年に「FASTGYM24」というアルバイトを中心に店舗を運営する24時間型のジムを、わずか6年で100店舗を超えるところまで成長させました。他の総合ジムを抱える競合他社と比べても圧倒的なペースになりまして、この大差がついた理由について、ディスカッションで迫っていきたいと考えております。

2社目は北関東を中心に居酒屋「忍家」を展開しております、ホリイフード様です。一時期営業利益が10分の1まで落ち込んでいたのですけれども、わずか2年で奇跡的なV字回復を遂げられました。

ご存知のとおり、地方の居酒屋業態は市場規模が縮小しており課題が多くなっておりますが、V字回復の秘訣は、本日ご来場の多くのみなさまが経営を考えるうえでのヒントになるのではないかなと思っております。

ディスカッションの進め方ですけれども、私のほうでこの2社のフェーズを、立ち上げをする前の戦略転換期をフェーズ1、店のアクティビティが始まった変革着手期をフェーズ2、飛躍的成長期をフェーズ3として、3つに分けさせていただきました。

それぞれに対して事業面と組織面と、そしてClipLineをどのように活用したかということで、全部で8問ご用意させていただきました。

最初に自己紹介をしていただき、このセッションからご登壇いただく御二方にお話をいただきますので、それぞれ非常に短いですけれども、2分くらいでご回答をいただきたいなと思っております。

それぞれのフェーズごとに野中先生からご講評をいただくというかたちで、本来であれば今日の基調講演とこの2社のお話は、1トピックに1時間以上かけて聞いてもおもしろい、非常に勉強になるセッションではございますけれども。

可能な限り、短い時間に内容を詰め込みたいと思います。みなさんお忙しいので、時間の効率良く、機動的なセミナーにしたいということで、このようなかたちで進めていきたいと思っております。

シリアルイントレプレナーの小宮克巳氏

高橋:それでは、さっそくパネルディスカッションに入っていきたいと思います。まずは小宮様から自己紹介をお願いいたします。

小宮克巳氏(以下、小宮):株式会社ティップネスの小宮でございます。

ClipLineのセミナーの第1回にも登壇させていただきました。また、本日もこのような場にお招きいただいてありがとうございます。自己紹介はパンフレットにも出ていますので、あまり書いていないことを言いますね。

ティップネスには17年前に入社したんですけれども、そもそも新規事業をやる気はまったくございませんでした。

もともとマーケティングが専門なものですから、既存事業の店舗開発や業績改革などをメインにやっていたんですが。どういうわけか社歴の後半は新規事業の立ち上げをしたり、最近は業界外から講演を依頼されることもたくさんあります。

業界外の方からは「あなたのやっていることはイントレプレナーだね」と。「ましてやこれだけ連続しているなら、あなたはシリアルイントレプレナーだ」と言っていただいて。ふと自分の立場に気づきまして、最近は偉そうに自らシリアルイントレプレナーと言っております。

新規事業を5つ立ち上げているんですけれども、売上の構成でいくと、今は2割強くらいになりました。利益はというと……利益構成比は広報から言っちゃダメと言われているので、具体的な数字じゃないんですが、もちろん2割以上ございまして。ちょっとこの場で言うと、会場がどよめくぐらいの構成比を叩き出しているということでございます。

これも妻からは「今日は絶対言わないほうがいい」と口止めされてきたんですけど、一応言います(笑)。先ほどもマッスルインテリジェンスですとか、最後のページにも出ていましたが。僕は実はボディビルをやっておりまして、1996年に日本一になりました。日本代表でアジア大会に行ったりもしておりまして、知的かどうかはなんとも言えませんが、体育会系であることは間違いございません。

今日の表題は、リーダーシップの文脈ということになっておりましたが、新規事業はリーダーシップというよりも、野中先生もおっしゃるようにコミュニティシップが大事かなと思います。いかにコミュニティシップを発揮して事業を展開したかというお話ができればいいなと思っています。本日はよろしくお願いいたします。

(会場拍手)

投資先とのご縁から飲食チェーンの会長職に就いた水谷謙作氏

高橋:小宮様、ありがとうございます。では続きまして水谷様、よろしくお願いいたします。

水谷謙作氏(以下、水谷):ホリイフードサービスの代表取締役を務めております、水谷と申します。よろしくお願いいたします。今日は貴重な機会にお招きいただきましてありがとうございます。

私自身はちょっとキャリアが変わっておりまして、飲食を始めたのは実は一昨年で、今年で3年目になるというところなんですね。今の主業務は投資業務を行っております。もともとキャリアは商社からスタートし、続いてM&Aの世界に入りましてアドバイザーをやっておりました。

そのあと今の投資会社を立ち上げて、その投資をいくつか……ここにちょっと書いてあるんですけれども、経験をしてきました。投資を行って、その会社様をいい会社にしようと。従業員、経営陣が生き生きと働けるような会社になってもらいたいという熱い想いを持って、投資活動を行っております。

今まで私は11社を担当してきたんですが、そのうちの1つにTBIホールディングスという居酒屋のチェーンの会社がございました。このTBIという会社からホリイフードに投資を行いまして、それからいろいろとご縁があり、今ホリイフードの代表取締役会長を務めさせていただいております。

「忍家」というお店に行かれたことのある方はいらっしゃいます?

(会場挙手)

めちゃくちゃ少ないですねぇ。

(会場笑い)

一応北関東を中心に80店舗ほど展開しております。あんまり都心にないだけで東京にもありますし、ぜひ忍家で今すぐググっていただいて、お近くに足を運んでいただきたいと思っているんですけれども。極めておいしいです。居酒屋のチェーンの中では、たぶんトップクラスのおいしさかなと。

忍家だけではなくて、「もんどころ」という、これは茨城の地産地消を中心とした店舗展開もしております。あと「赤から」という、名古屋にある赤から鍋ですね。この鍋のフランチャイジングをして、10店舗ほど展開しております。合計103店舗を展開しております。

私は食べることがものすごく好きで、いろんなところを食べ歩くんですね。それもあって、会社に入らせてもらってからすごく楽しくて。メニュー開発を率先して一緒にやったりして、ワイワイやっているところです。天職だなと思いながら楽しくやっています。

楽しくやってきた中で、先ほど高橋さんがおっしゃったようなV字の回復を実現しました。その流れをClipLineさんにもお手伝いいただきながら実践していったわけですけれども、そのあたりを今日はご説明できればなと思います。よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

フィットネスクラブは100人中97人が買わない商品

高橋:水谷さんありがとうございます。それではさっそくディスカッションに入っていきたいと思います。

まずは戦略転換のきっかけについて、当時の事業の状況を教えていただけますでしょうか? 小宮さんからよろしくお願いいたします。

小宮:ティップネスは、フィットネスクラブを経営している企業でございます。水谷さんもアンケートを取られていましたので、僕もちょっとやってみようかなと思いますが。会場の中で、今リアルにスポーツクラブにお金を払って通われている方、もちろんティップネスじゃなくてもけっこうです。どのくらいいらっしゃるか、もし会場にいらっしゃったら挙手を。

(会場挙手)

ありがとうございます。けっこういらっしゃいますね! 僕のストーリーとちょっと違いました(笑)。ありがとうございます。

日本のフィットネスクラブの参加率というのは、ここ20年変わらず3パーセントと言われておりました。100人中97人は買わない商品だということであります。ただここ数年、外資系もしくはフィットネスクラブの業界外、異業種からの参入で、これまでフィットネスクラブには通ったことがない、いわゆる非消費者を取り込む業態が非常にたくさん出てまいりました。

よく比較するのは、流通小売りの業界と似ているなと思うんですけれども。我々が展開している基幹業務は、プールを内包する1,000坪規模の大型の総合スポーツクラブなんですね。これは流通業で言いますと、たぶん百貨店だと思うんですけれども。

流通小売業界から量販店やコンビニエンスストアという、さまざまな業態がたくさん出てまいりまして。百貨店業界の方がいらっしゃったら申し訳ないんですけれども、今は非常に百貨店自体が厳しくなっている状況ですね。フィットネスクラブも総合型クラブは厳しい状態でございます。

そんな中で、ぜひティップネスにこれまで振り向いていただけなかった非消費者の受け皿になるような業態をいち早く作りたいなという思いから始めました。

僕には大きな反省点がありまして。みなさんよくご存知の、いわゆる女性向けの30分フィットネス「Curves(カーブス)」という業態がございます。実はカーブスさんが日本に入ってくる前から、私はずっと研究をしておりました。

これが15年前のことなんですけども、そのときに僕はカーブスをどう評価したかと言うと、「あれはフィットネスじゃない」、「誰でもできる」と甘くみて、企画書まで作ったのに出しませんでした。

結果的にカーブスは14年くらいで80万人の会員様を獲得していると。我々は今年32年目になりますけれども、会員は25万人ということで、どちらが日本のフィットネスクラブ参加率を押し上げたかと言うと、歴然としているわけですね。

15年前に自らおかした失敗を、このタイミングで二度失敗することは絶対避けたいというところがありました。なんとかこの24時間ジム……まあ、コピーキャット戦略ではあるんですけれども、これをいち早く展開したいと、当然ながら思いました。

業態転換が早まる時代の事業継承

高橋:ありがとうございます。では続きまして、戦略転換のきっかけの事業面ということで、水谷さんよろしくお願いします。

水谷:そもそものきっかけからなんですが、ホリイフードサービスという会社は堀井さんという方がオーナーで、上場企業だったんですね。私はその堀井さんと長年ゴルフ友達だったんです。ゴルフ会員権を共有する方で、よくプライベートでゴルフのお付き合いをしていました。

ところがあるとき、堀井さんから事業承継を考えているというご相談がありました。じゃあちょっと内容を見てみましょう、というところで始まったんですね。それが2016年なんですが、よく見てみると2013年くらいにけっこう急速な出店を行なって、人手不足も相まって、かつお酒離れという時代の流れもありました。

それから、業態転換が非常に早まってきた時代でもありました。そんなことが相まって、店舗当たりの売上が昨対をずっと割り続けていたという状況でございました。

堀井さんからの相談は、プロの目から見ると、どうすれば立て直すことができるのかといったことですね。そんなご相談を受けながら事業承継を行って、戦略的なパートナーとしてお選びいただいたという次第です。

そんな中で、自分の後釜をやってくれないかというご相談もありました。私は経験がなかったんですけれども、代表取締役会長に就かせていただいたという経緯です。そんな局面を迎えておりました。