2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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瀧俊雄氏(以下、瀧):みなさま、おはようございます。マネーフォワードの瀧でございます。本日最初のセッションはブロックチェーンです。非常にいまどきのテーマになりますが、内容としても、いろいろ考え始めると難しいものでもあるかもしれませんね。
今後5年、10年間という期間で、みなさまのお仕事にどのように役に立っていくのかという観点で、今日はTRENDE株式会社代表取締役の妹尾さんをお迎えしながら、まずはいろんな使い方やビジョンをお話ししていければと思っています。どうぞよろしくお願い申し上げます。
まず、当社メンバーを紹介させていただきます。私はマネーフォワードの取締役の瀧と申します。この3、4年間ぐらい、ブロックチェーンを含めてフィンテック(Fintech)と呼ばれるさまざまな金融に関連する技術が、社会のどういう役に立つのかを見てきた人間でございます。どうぞ、よろしくお願いいたします。
続きまして、マネーフォワードのグループのマネーフォワードフィナンシャル株式会社代表取締役の神田の自己紹介に入ります。
神田潤一氏(以下、神田):みなさん、おはようございます。神田と申します。私は、元々日銀に23年ほど勤めておりました。最後の2年ぐらいは金融庁に出向して、フィンテックの企画を担当しておりました。
その中で、仮想通貨ですとか、あるいはオープンAPIですとか、世界でも非常に先進的な取り組みが、日本からどんどん出てくる、というところに携わっていました。これからは民間がどんどん引っ張っていく、金融がどんどん変わっていくという流れを実感したところで、日銀も金融庁も辞めまして、去年マネーフォワードに参画して、グループ会社のマネーフォワードフィナンシャルを立ち上げて、仮想通貨交換所の開設の準備をしています。
神田:(スクリーンを指して)こちらにありますように、仮想通貨あるいはブロックチェーンにはみなさんいろいろな疑問を持っていたり、あるいはネガティブな報道が出ていたりもしていますよね。
まずはどういうものかを知っていただくために、メディア、それから仮想通貨を持っていただくための交換所、実際に仮想通貨を使っていくための決済・送金のような機能もゆくゆくは提供していきたいと思っております。
マネーフォワードグループとしても、仮想通貨を新しいアセットクラスとして管理する自動家計簿・資産管理サービス「マネーフォワード」(現:マネーフォワード ME)で資産管理のホスト・機能を提供しております。
そういうところで、仮想通貨が管理できる。あるいは、仮想通貨の売買をして出てくる税金の申告も、ビジネス向けクラウドサービス『MFクラウドシリーズ』(現:マネーフォワード クラウド)を通じて確定申告のサポートができる。
そういうかたちで、マネーフォワードグループ全体としてブロックチェーンや仮想通貨の事業をこれから展開していくための準備をしているところです。
その第1弾として、先週9月28日、ちょうど先週末ですね。「Onbit(オンビット)」という名前のメディアを開設しております。ビットコインのbitにon、そこに触って参加していくという意味で「Onbit(オンビット)」です。ぜひ、ご覧いただければと思います。
また、仮想通貨の交換所は、やはり日本では、金融庁に仮想通貨の交換業者として登録をして、その上で法定通貨・円と仮想通貨を交換していくという制度になっております。今、仮想通貨の交換所の開設に対して、システム的にも、金融庁への申請という手続き的にも、準備をしています。年明けぐらいからサービスを提供できればと考えております。
その先の話ですが、私共は「マネーフォワード」というアプリで、いろんな金融サービス、金融資産を見える化をして、一元的に管理できるようなかたちで提供しております。見える化をした先には、そういった価値をどんどん交換をしていく、あるいは「ここに貯まっている価値をこっち側に移したい」「もっと効率的に運用したい」というニーズが出てくるわけです。
そういういろんな価値をやり取りするプラットフォームとして、仮想通貨やブロックチェーンで価値の交換の機能を提供できないかと考えております。これは少し先になるかと思いますが、そういう構想を持って仮想通貨・ブロックチェーンの事業に入っていこうとしているところです。
瀧:ありがとうございます。
神田:よろしくお願いします。
瀧:はい、よろしくお願いします。妹尾さんの自己紹介の少し前に、そもそもブロックチェーンとはなにか? を5分ほどお時間をいただいてご説明できればと思っております。
ブロックチェーンとはなにかを、ざっとでも構いませんので説明できますよという方はどれぐらいいらっしゃいますか?
(会場挙手)
瀧:意外と、手を挙げる勇気のある方がいらっしゃるのですね(笑)。私は、この度のパネルをやるにあたって「教科書を何回か読み直したみたいな」というレベルだったりします。
(ブロックチェーンは)「いやいや、ちょっと難しいもの!」とか、体感的に「なんだ、これ?」とかよく言われるものでもあります。それを5分で説明するというのはなかなか難題だとは思いますが、ちょっとトライできればと思っております。
(スクリーンを指して)まず、これは理解できなくてもいいですよ、という定義が載っています。最近になって『徹底理解ブロックチェーン』という、インプレスさんの本を借りたんですよ。読み上げるのもためらわれるぐらい、しっかりした言葉で書かれています。
Peer to Peerのシステムとか、分散型の仕組みとか、アルゴリズムに暗号化のセキュリティの技術を組み合わせたものだ、とかいう……。わかる人にはわかるけれども、たぶん国民の99パーセントが置いていかれる表現があるなと感じるのが、このブロックチェーンです。
実は経済産業省さんがこの数年間、ブロックチェーンとはなにかとか、産業データの活用とかをかなりかみ砕いてしっかり説明をすることを、ずっとされてきています。
瀧:(スクリーンを指して)よく引用される絵がこれです。なにかわかるような気がしますよね。
例えば、左側には、たぶん真ん中でなにか決めている先生のような人がいます。右側は、どうも先生が真ん中にいない状態で、どちらかと言うと学級崩壊をしているような状態かもしれませんね。いろんな人たちが情報をやり取りしていて、信頼を担保している。これがよく行われる説明です。
なぜこれがブロックチェーンというものの説明なのかというと、すごくかいつまんで言うと、みんなの間で合意したことをその時点で箱に詰めていくのですね。その箱を開けることがとても難しいから、中身を改ざんすることが難しい。過去の約束を、そうやってしっかりと記録していこうというのが、主だったブロックチェーンの説明なのだと思います。
ただ、もう1個ちゃんとかみ砕くべきかなと思っていまして、私なりの定義を今日、不真面目にお持ちいたしました。(スクリーンを指して)ブロックチェーン界隈の人にこれを見せると、すごく怒られるかもしれません。
インプレスさんの本にも書いてあるのですが「猫の群れ」という表現がございます。「これ、なんだ?」という話がありますが、猫が象徴するものは、中央の権威などを必要としないことです。
飼い犬と飼い猫の違いを考えていただくと、猫は基本的に言うこときかないからかわいい、みたいなところがあるわけですよね。ただ、猫の群れが野生には存在するわけでして、例えば猫の群れからすごく逸脱してなにかをしようとしちゃう子がいると、連れ戻したりすることもあります。
そういう個別のプレーヤーさんはいろんなものを考えます。いろんな自身の都合で動いたりするけれど、全体としてはなにか秩序が保たれるような、そういうデータの仕組みをブロックチェーンと呼んでもいいのではないかなと思っています。
固い表現で言うと、中央の権威を必要とせずに相互に会話をします。その中で、本来であれば信用や権威が必要な仕組みと同じような関係性、ちょっと難しい言葉になるかもしれませんが、それを提供しているものなのだ、ということがもう1つの言い方になるのかなと思っています。
瀧:どうしてこれを使うのかというと、私もキーワードとしては2つだと思っています。信用と調整をするコストが高い時に、これは便利なんじゃないかなぁと思っています。信用ですと、よく「ブロックチェーンの使い道の最たるものは、仮想通貨だ」という表現がありますよね。仮想通貨というか、実際の法定通貨は、神田さんの前職である日本銀行などが信用をすごく守ってきているものですよね。
そういう人たちを維持するコストよりも、例えば周りでそういう信頼のネットワークを作ったほうが安いケースの場合に、ブロックチェーンが使えるのではないかな? というのが1つの説明になります。
もう1つは、いろんな人たちの間で情報とか権利の関係とかを調整しなきゃいけない、という時ですね。よく音楽の著作権で、「誰がギター弾いていたのか? その人の確認が取れないと音楽流通できないよ」みたいな話がありますが、そういう時にこういったシステムはとても便利なのだという説明がされる次第でございます。
ですが、当然万能ではございません。ブロックチェーンは、(スライドを指して)ここにもありますように、いろんな人たちが通信をする仕組みでもあるので、通信の量がかなり増えます。あと、計算力も非常に必要になりますし、プログラムも決して簡単ではありません。ビットコインの世界もそうですが、セキュリティがものすごく大事になってくるという点で、従来のソフトウェアよりも万能ではない。
ただ、今後の社会の中で、一部の運用や調整のコストが高い領域に対しては非常に便利になってくるのではないだろうかという期待値を持って話しています。なので、こういったことに使えます、という事例は本当に多様になります。ただ、少しずつ足元で稼働し始めている部分があります。
そんな中、本日トレンディの妹尾さんをお招きしたのは、まさに「そういう用途があるのではないか?」ということを体現されているためです。そのお話をきっかけに、みなさまの理解を深めていければと思っている次第でございます。
では、遅くなりましたが、妹尾さんよろしくお願いいたします。
妹尾賢俊氏(以下、妹尾):初めまして。TRENDE株式会社の妹尾と申します。電力の世界に去年からいるのですが、元々は私も金融の人間です。堅気の銀行員として、10年ぐらい真面目に仕事していましたが、嫌になって飛び出して、ソーシャルレンディングというサービスを日本で起ち上げようと思い、マネオ(maneo)という会社を2007年にスタートさせていただきました。
現金にまったく触らないサービスだったので、「もしかしたら、お金ってデジタルなものなんじゃないか」と思っていた時に、仮想通貨と出会いました。そこでブロックチェーンを開発するオーブ(Orb)という会社を創業したんです。そして、ブロックチェーンは金融の世界だけじゃないかもしれないと思って電力の世界に飛び込んだ、という経歴でございます。
(電力の世界で)1年ぐらいいたのですが、体の10分の1ぐらいがまた金融の世界に戻りました。冒頭の辻さんの挨拶でもご紹介いただきましたが、ビットフライヤー(bitFlyer)という、仮想通貨の取引所交換所の社外取締役をこの10月1日から務めさせていただいております。
TRENDEという会社ですが、なにをしようとしているかというと、最終的には再生可能エネルギーをもっと普及させるために、Peer to Peerと呼ばれる個人間での電力取引を実現することを会社のゴールに掲げていています。今それに向けて準備を進めさせていただいている、という状況です。
加盟させていただいている、Peer to Peerの電力取引というものについて端的に説明をします。個人間による電力の売買を行うことで、小売電気事業者が中間に入らない直接売買を実現し、中間マージンを取り除くことで電気を安く買ったり、高く売ったりすることができるようなプラットフォームをつくろうと思っています。
妹尾:具体的には、例えばご家庭に太陽光発電設備があって、そこで発電した電気を自分のところで使って、余ったものについては蓄電池に貯める。それでも余る分についてはお隣のご家庭に売ろうとか、隣のパン屋さんに売ろうと考える。そして発電設備のないご家庭、あるいはパン屋さんは、電力会社から買うよりも、より安い電気をお隣さんから供給していただく。
こういった仕組みを提供していきたいということで、今システムの開発を進めさせていただいております。来年には、このプラットフォームに関する実証実験をスタートできるのではないかと思っており、現在準備をさせていただいております。
(スクリーンを指して)こちらを我々はゴールとして掲げさせていただいています。一応、その手前のところで、電気を売ったり買ったりとか、あと太陽光発電設備や蓄電池という設備を世の中に普及させていく必要もございます。そういった部分を事業としてやっておりまして、今、足元では2つのサービスをリリースさせていただいております。
1つは「あしたでんき」で、これはシンプルにご家庭や中小の事業者様に電気をお届けするサービスです。非常にわかりやすい料金体系と、おそらく業界最安値に近いかたちで電気をお届けできるようになっております。
もう1つの「ほっとでんき」というのは、太陽光パネルをご家庭の屋根に載せて電気を供給させていただきます。その電気料金は、いわゆる東京電力系の規制料金より10パーセント、もしくは20パーセント安く提供させていただいております。
以上が簡単な自己紹介です。
瀧:ありがとうございます。今日のこの3名がそろった背景をお伝えすると、5月1日あたりに、神田のイカセンターで3人で飲んだ時に話が盛り上がったんですよ。ただ、少なくとも私は記憶がないのですよね(笑)。イカセンターに会場のみなさんが行ったことがあるかわからないのですが、日本酒がすごく充実していたんです。神田さんも青森出身ですし、妹尾さんはどこ出身でしたっけ?
妹尾:鹿児島ですね。
瀧:でしたね。こういうすごいメンバーに囲まれて、きっと良い話をしたのですがなにも憶えていなかったので、今回改めてお話をしたいな、と思ったことが背景にございます。その時にもたぶん話したのですが、なぜ電力業界に来たのですか? というお話を最初に教えてください。
妹尾:端的に言うと、今、金融業界はまさにパラダイムシフトが起きていますが、電力業界もこれからそういう業界になっていくのではないか、という匂いを感じたからですね。ちょっと簡単にご説明をさせていただくと、(スクリーンを指して)これ「VS(バーサス)」となっていますが、金融業界と電力業界で戦っているわけではありません。
金融業界はもともと「護送船団方式」で、強いヒエラルキーがありました。レガシーなシステムと店舗を抱えて、総括原価主義で決して損が出ないようなかたちでやっていたんです。
ただし、強力なヒエラルキーがある社会は、得てして内向きになりがちです。お客様のユーザーエクスペリエンスや、カスタマーエクスペリエンスというものは軽視されていって、お客様イコール口座みたいな感じになっていた業界なんです。
そこに今、それこそマネーフォワードさんを筆頭とするフィンテックベンチャーが、ブロックチェーン・Iot・AIといった技術を引っ提げて、UX(user experience/ユーザー体験)を重視するサービスを提供することで戦いを挑んでいる。ただそこは、戦っているばかりではなく、協調もしながらやっているという状況でございます。
妹尾:その背景としては、やっぱりバブル崩壊以降、低金利政策がずっと続けられて、金融収益の収益性が低下してきているという外部環境もあります。なので、UXを掲げているフィンテックベンチャーさんを、金融当局もサポートしようということでいろいろやってこられたのですね。
その結果、金融業界が、本当に歴史的なパラダイムシフトが起こるのではないか、というような状況になってきている。ある意味、カオスな状況になってきている。
そこで、電力業界も、実はこれからそういう業界になっていくのではないかと感じた部分がありました。ご存知のとおり電力業界というのは、例えばこのエリアだったら東京電力ですし、中部電力、関西電力といった、地域独占の大規模電力会社が牛耳っていました。
そうなってくると、どうしてもお客様というよりは電気メーターが商売相手になってしまっていて、お客様のUXは軽視されてしまう状況になっています。
ご存知のとおり、電気を託送する費用や配電する費用、それから小売りも総括原価主義です。その上にマージンを乗せてお客様から電気料金をいただくということで、同様に総括原価主義が採られている状況にあります。
その中にあって、電気の小売りが自由化されまして、新電力と言われる弊社のような会社が400社ほど登録されています。実質動いているのはその中でも100社ぐらいと言われておりますが、それでも、やっと競争が始まりました。
ただ、まだ金融業界ほどの激震は走っていません。収益性という意味で言うと、まだ電気の小売り事業はそれなりに儲かるのですよね。ただし、この収益性は必ずこれから低下していきます。
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