本格的オープンワールドの世界観

元木一喜氏(以下、元木):さっそくプレゼンターの発表に移っていきたいと思います。最初のプレゼンターは、LITALICOワンダー渋谷所属、クリエイターネーム「mugipi」に発表していただこうと思います。

それでは、mugipiの発表です。みなさん、拍手で迎えていただきたいと思います。

(会場拍手)

mugipi氏(以下、mugipi):では、僕のプレゼンテーションを始めます。僕はLITALICOワンダーに入ったばかりの頃は、みなさんと同じくScratchで作品を作っていたんですが、最近はUnityというゲームエンジンでゲームを開発するようになってきました。このあと質疑応答もあるそうなので、ぜひ質問などが思いつけばよろしくお願いします。でも、気軽に見ていただければ幸いです。

では、まず去年の作品からご覧ください。

(動画再生)

mugipi:こちらの動画が去年の作品「Bilo City Rebellion」でした。そして、次に今回の僕のプレゼンの目玉とも言える、制作中の作品のPVをご覧ください。

(動画再生)

これが今回の作品です。では、ここからはゲームの制作過程について、いくつか説明していきたいと思います。現在制作中の「ロストロ・ラエス」は、前回のフェス後から制作を始めました。4ヶ月かけて、まだ広大なステージの半分ほどまでしか作れていません。今回は初のオープンワールドに挑戦したので、はじめの構想がとても大変でした。

デッサン、バグ修正などもこだわる

まず最初に、「どんな景色があったらおもしろいか?」ということを考えて、構想を始めました。ひらめいたアイデアを片っ端から描いていき、その後、ステージにどのように配置するかを考えました。まず、自分がやりたいことをアイデアとして出して、技術面は後回しにしていきました。基本的な世界観は、この時点で決定してしまいます。

頭で考え終わっても、モノがなければ始まりませんので、ここから先は、うって変わって技術面の勝負です。ここで最初の構想にどれだけ近づけるかが、作品のクオリティに直結します。

前回の作品では3Dモデリングしかできませんでしたが、今回は新しい技術が増えました。3Dソフト「Blender」を使って、テクスチャの作成もできるようになりました。

この調子でいけば、次回にはモーションも作れるようになっているかもしれません。

次に、システム的な作業です。「ゲーム(作り)の中で一番多くする作業」とも言えます。ステージがだいたい完成して、いざゲームを開始しても、ここで感動していてはいけません。ここでプレイしてみると、バグがあったり、なにか足りないものに気付いたりします。現在流れている映像にも、ゲームとして足りないものがあります。それはこの映像を見ていればわかります。

あんなに高所から落ちてもかすり傷1つ負わない主人公……緊迫感なんてあったもんじゃありません(笑)。これは、いろいろ改善していく必要がありますね。ここからが、ゲーム制作のミソの部分です。

こちらはテスト用に作成したものです。画面中央の赤文字がHPを表しています。主人公くんがエレベーターで上に上がっていますが、ここからHPの数値にご注目ください。いま、主人公くんが落下した際に9のダメージが入りました。

そして次に、先ほどより低い位置から落下すると、今度はHPが3しか減りませんでした。このように、落下する高さによってダメージが変化するというものを開発しました。最後に、先ほどよりもっと低い位置から落下すると、今度はダメージを受けませんでした。次は、これを作品につなげていく作業になります。

今回のスクリプトはネットから得た情報で、すべてが自分のものではありません。しかし、この自分のゲームとネットの情報をつなげていく作業を繰り返していくことで、知識は増えていきます。

などと言っている間に、結合が完了しました。システム状態は良好です。これにいろいろと手直しを加えていきます。そうすると、右上の部分にHPが出現しました。しっかりとダメージを受けるようになっていますので、これでこのシステムは完成です。

この作業は制作のほんの一部ですが、誰もが通る道だと思います。このように大変な作業を繰り返して、ゲームを作っていきます。さすがに今回のフェスまでには完成しませんでしたが、楽しみに待っていてください。これでプレゼンテーションを終わります。ご清聴ありがとうございました。

(会場拍手)

会場からは「ナイステクニック」

元木:発表ありがとうございました。それでは、観客フィードバックからいきたいと思いますので、ぜひみなさん、手元のカード(から感想)を選んでください。悩むかもしれませんが、1個選んでいただきたいなと思います。

はい、選びましたかね。では、観客フィードバックです。お願いしまーす! ドン! どれが多いですか?

mugipi:「ナイステクニック」が多いですね。うれしいです(笑)。

元木:「ストーリー」や「デザイン」もありますね。ありがとうございます。

(会場拍手)

元木:コードはあまり出てないけど、伝わりますね、お客さんに。では、もんりぃ先生からもエンジニアとして、質問や感想などをぜひお願いします。

森哲哉氏(以下、森):発表ありがとうござました。僕からは「デザイン」であえて上げさせていただいたんですけれども、「全部すごいな」と感じています。その前のお話として、LITALICOワンダーは何年目になりますか?

mugipi:今年の4月で5年目です。

:おお、なるほど。かなり続いていますね。Unity歴は?

mugipi:Unity歴は1年半ぐらいです。

:1年半でこんだけ……マジか!

(会場笑)

:僕、5年やってるんですけどね……。あそこまでいけるかな(笑)。では、作品とはちょっとズレるところになるんですけど、プレゼンの動画は自作ですか?

mugipi:自作です。

:マジか!

(会場笑)

:むっちゃ万能ですね。だって、途中でデッサンも出てきましたよね。

mugipi:あれは、構想図です。

:あれも当然、ご自身で?

mugipi:自分で描いたものです。

:マジかー!

(会場笑)

:たぶん今日は、こうやってずっと打ちのめされるんでしょうね。

(会場笑)

まるで『攻殻機動隊』

:途中、途中の部分でいろいろと「すごいな」と思ったところがありました。全体的に光に対して、けっこうモヤがかかっていたり、ちょっと揺れているような表現みたいなものがあったかと思うんですけど、あれは何を使われているんですか?

mugipi:Unityの既存のカメラのイメージエフェクトを使って、自分で少しずつ調節して、全体的にいい光表現になるようにがんばっています。

:ちゃんとあれを使われていて、すごいですね。「そういうのがあるよ」というのはどこで情報を(得たんですか)?

mugipi:LITALICOのなかで勉強したものもあるんですけど、ネットで調べて、自分で探したものも多いです。

:なるほど、すごいですねえ。いや、本当に。ネオンの光とかが、わりとリアルな感じに見えるので、「本当にそういう世界がありそうだな」というのをすごく(感じました)。

古いかもしれないですけど、『攻殻機動隊』というアニメの世界がサイネージで。話すとちょっと長くなるので言わないですけど(笑)。

(会場笑)

「すごく近いな」と感じましたね。あとは、プログラムとはあんまり関わらない部分なんですけど、実際に「この世界でいこう!」「よし、これでいくぞ! 作り始めるぞ!」って決めるときの基準は、なにかありますか?

mugipi:決めるときの基準は、まず、もしそのときに自分が影響されている映画や漫画があるんだったら、そこから構想を持ってくるのでもいいですし、逆に「これ、もうずっとやってるな」と思ったら、もう別のものに一気に切り替えてから、構想を考えていきます。

:なるほど。言葉にするのは難しいと思いますけど、「よし、このへんまで決めたら、これから作り始められるぞ」みたいななんらかの基準はありますか?

mugipi:そのあたりは、ちょっとずつ作り始めて、「あ、やっぱ違うな」と思うこともあるんですけど、もしそうなったら、自分の気持ちに正直になって、一新してしまったりします。

:なるほど。そういうときって、バージョン管理とかを使ったりしていますか?

mugipi:バージョン管理も使っています。

:おお、すごいな。本当にプロですね(笑)。いや、すごい。あと、ちょっと細かい話なんですけど、C#のスクリプトは、どのくらいの数ありますか?

mugipi:たぶん、自作のものが30種類ぐらいあって、またその中でいくつかわかれているので、全部ではわからないですけど、けっこうあると思います。

:すごい。さっきから「すごい」しか言ってないんですけど。

(会場笑)

:だいぶ語彙が少ない感じになっちゃっているんですけど、本当にすごいです。

元木:では、そろそろですかね。

:ありがとうございます。

元木:ありがとうございました。mugipiの発表でした。

(会場拍手)

元木:ここ(ステージ脇)にいる次のプレゼンターの方々からも、「おお、すげー!」みたいな声が出ていたのがすごく印象的でした。では続いて、どんどんプレゼンを進めたいと思います。