“正義”の意味は、ジャスティスではなくフェアネス
折り合わない価値観を許容し合うのが多様性の真意

トークイベント 「多様性豊かな渋谷で育つ・生まれる共同体」 #3/3

2019年1月19日、渋谷男女平等・ダイバーシティセンター <アイリス> にて「しぶやフォーラム2018『ちがいをチカラに、そしてカタチに2.0』」が開催されました。男女平等と多様性社会の実現をめざして、一人ひとりを尊重する社会作りへの思いをカタチとして表現していくこのイベント。本年度のパネルトークとして、佐々木俊尚氏、アーヤ藍氏、高田佳岳氏を招いてのトークセッションが実施されました。本記事では、トークセッション後半のパートをお送りします。

提供:渋谷区

ジャスティスが意味するのは、正義というより公正さ

佐々木俊尚氏(以下、佐々木):今の時代、PTAの問題に限らずインターネット上なんかもそうなんですけど、正義と正義のぶつかり合いが多すぎると思いますね。ここをどう回避するかっていうのは今すごく重要な、深刻な問題になってきていて。

誰が言ったかわからない有名な言葉で、「正義の反対は悪ではなく、別の正義である」っていう言葉があります。ちなみにこれについてあまり踏み込むとややこしいのですが。「正義」という言葉は英語ではジャスティスなんですが、ジャスティスは日本語で言うと「正義」じゃなくて実は「公正さ」みたいな意味なんですね。言い換えるとフェアネスみたいな。

日本語で言う「正義」って、正義の味方の「正義」なんです。正義の味方の「正義」っていうのは悪を討つ「正義」。その「正義」とアメリカとかでジョン・ロールズみたいな政治哲学の人が言っていたジャスティスの「正義」って、ぜんぜん違うものであると。

ジャスティスはあくまで「公正」であること。つまり損をする人がいないとか、みんなのほしいものがそれぞれバラバラにたくさんあるときにどうやってバランスを取るのかっていうバランスの取り方っていう考え方が「正義」であるっていう。そこからすでにずれてるわけで。

日本で「正しいこと」って言うと、すぐに「悪を討たなきゃいけないんだ!」って話になっちゃうけど、それは違う。世の中には悪なんかいないんです。お互いにそれぞれの利害関係があるだけで、そのバランスを取ることなんだよねと。

本当の多様性とは、不愉快を我慢すること

佐々木:そういうふうに考えると、いろんな意見の人がいるわけじゃないですか。いろんな意見の人がいて、それは許容しなきゃいけないけれど、けしからんとも思う。では、本来の「多様性」とは何か? 

「多様性」と言うと必ず、「LGBTの人はすばらしい」とかね。すばらしくなくていいんです。本当の「多様性」というのは不愉快を我慢することなんですよ。自分と価値観が合わない人っていうのは、たいてい不愉快なわけです。

それも我慢しなきゃいけない。「LGBTが気持ち悪い」というおじさんはいるわけです。それは別に構わない。構わないんだけど、それは我慢しなさい。人前で口に出すのはやめなさいって、ただそれだけの話なんじゃないかなと。

さっきの話にもあった「絆」ってあまり言いすぎないほうがいいよねっていう延長線で、今はなんでもすぐ「共感軸」とかをやたらと大事にしすぎていて。

同じ物語を共有しなきゃいけないという話になっちゃうんだけど、それもやりすぎると僕はすごくネガティブな影響が大きいなと思っていて。例えば「アフリカの飢えた子どもがいます。助けなきゃいけない」。これは共感しますよね。「今目の前で死んでいく子どもを助けなきゃいけない」というふうになると、その子どもだけが助かるけど、ほかに苦労している人はみんないなくなってしまう。

例えばテロリズムの文脈で言うと、しばらく前にパリでテロがありました。爆発して人がたくさん死んで、「あんな素敵な美しい都のパリの人が死ぬなんて大変だ!」ということで、世界中で「想いはパリと一緒に」というようなことを言って、フランス人に対してみんなが共感するわけです。でも、その同じ時期にシリアとかで何万人も死んでいたりするわけでしょ。それはいいのかっていう。

共感を中心にしすぎてしまうと、共感されない人が置いていかれる問題というのが必ず起きるわけです。だから、共感だけで物語を語っちゃいけないっていうね。数字とか統計とか、あるいはさっき言ったように嫌いなものでも我慢するというような、そういう別の軸をちゃんと持つことのほうが実は大事であると。

共感だけで物語を語ってはいけない

佐々木:日本人はみんなで一斉に同じ共感軸とか同じ物語に向かって「絆」で突き進まなきゃいけないんだ! PTA一丸となって戦おう! というような話になっちゃうから、おかしいんじゃないかな、と僕は思います。

タカハシケンジ氏(以下、タカハシ):なるほど。

鈴木茂義氏(以下、鈴木):耳が痛い~。聞いていて、苦しくなっちゃって。僕も共感できる人じゃないと仲良くなれないってずっと思っていたんです。共感できない人とは仲良くなれないってずっと思っていたんだけど、今の3人の話を聞いていて、それは嘘っていうか、違ったなと思っていて。共感しなくても共存できるんだなぁっていうのがようやく最近わかってきたんですよ。

それに気づいてから、教室の子どもたちに投げかける言葉もやっぱり変わってきたんですよね。必ず35人全員が理解したうえでやるんじゃなくて、違う人がいてもお互いの心地よさを担保していくことが大事よねっていうふうに感じた……(笑)。

タカハシ:シゲ先生がウルウルしている(笑)。

鈴木:アーヤさんの話を聞いて、さっきの(タカハシさんの話でも)「バンド解散」って言っていたじゃないですか。僕もいろいろなコミュニティの人と出会うことによって、自分の育ってきた家族が機能不全家族だったんだなってことに、40になってようやく気づいたんですね。

今までは家族を大事にしたいけれども、家族を大事にすればするほど自分がどんどん苦しくなっていって。家族を大事にしていないと思っている自分に対して、また嫌になってしまっていたんだけれども。

僕は僕で自分の好きなことをやろうって決めた瞬間に、家族を大事にできない後ろめたさがあったんだけど、自分が家族を大事にするっていうのを手放してから、それこそストロング・タイをゆるめてからのほうが、家族関係が良くなったっていう。バンド解散のほうが仲が良くなった、というような。

タカハシ:「離婚」よりも「バンド解散」って言ったほうがいいかもしれないですね。

鈴木:前向きな感じがちょっとしますね。

相手を理解できるなんて思わないほうがいい

佐々木:相手に期待しすぎないことが大事ですよね。期待しすぎるから辛くなるんじゃないかな。

鈴木:だからコミュニティもそうなのかなって。今聞きながら、コミュニティに期待しすぎて、「自分はこんなにやっているけど、あの人はやってくれない」というようなことにまたなるのかな、なんて。

タカハシ:最近僕も、理解したと思わないようにしたほうがいいんじゃないかなと思って。「相手を理解した」って思ったのは僕が見ている相手だけど、本当の相手はどうだかわからないし。理解したと思わないようにしたほうがすごく楽だなぁと思って。それから僕も周りの人間関係がすごく変わったなぁと。

佐々木:理解したと思うとね、「お前は本当のお前じゃない!」って腹が立つ。

(会場笑)

タカハシ:俺じゃないのに~みたいな(笑)。確かに。

ディアス実和子氏(以下、ディアス):高田さん、今うんうんと頷いておられましたけど、今は壱岐に移住されて新しいプロジェクトも始められて、なにか新しいコミュニティで感じるものとかありますか?

高田佳岳氏(以下、高田):東北のことをやってから、僕は絶対に移住はしないってずっと決めていたんです。さっきのお話で(ありましたが)、移住しちゃうと、いつかどこかで「東京から来たただの若い小僧」になるんですよ。だから「絶対に移住しない」ってずっとやってきたんです。

今回の島のことはあまりにも話が大きすぎていろんな事情が絡まって、さすがに住民票くらいは移しておかないとまずいなっていう雰囲気が出てきちゃって。

僕は神奈川生まれで東京で育っていますけど、関東で生まれ育っていると、ぶっちゃけ「住民票1枚変えるくらい、たいしたことではない」ってちょっと思いません? けっこう大事ですか? (みなさんはどうか)わからないですけど。ふるさともないので、そんなのぜんぜんなんとも思わないんですよ。

だから住民票を変えるくらい「1回やってみるか」と思ってやってみたんですよ。やってみたところ、地域の田舎のほうからしてみたら、住民票を変えるっていうことって、もうそれこそ婚姻届を届けるくらいのレベルの重さなんですよ。市長が喜ぶみたいな。

(会場笑)

タカハシ:1人増えた! みたいな(笑)。

高田:「家どこですか?」って(聞かれて)、「家ここです」(と答えたら)、それはもう、「家でみんなで集まって宴会しなきゃなりませんね」というような。(そんな)ことを市長が言ってくるんですよ。なんのことだかわからない。

地域の伝統共同体とは「線」でつきあう

高田:僕があまりにも不用意だったのは、僕は結婚して目黒区にずっと住んでいて、子どももいて、家もあるので世帯主も僕になっているんですけど、学生感覚で変えちゃったんですね。簡単に変えられると思ったんです。

そうしたら、今子ども手当とかいろんなものがあるので、1人だけパッと変えてパッと抜くわけにはぜんぜんいかなくて。それをやったら、「奥さんとお子さんの分も全部持ってきてください」ということで、すごくおおごとになって。実は妻には言わないで出すつもりだったんです。

ぜんぜんダメで完全にバレて(笑)。「なにをしているんだ」と大騒ぎになったんですけど、島では住民票を変えたことがすごい(インパクトがあって)。でも本当におっしゃるとおりで、中のしがらみに巻き込まれたら、僕のやりたいことが全部できなくなるので。そこは徹底して僕はパスを出しているというか。

「町会にも来い」「商店街のこういうのがあるから来い」と言われて行くんですけど、「住むことになりました。これから島民としてよろしくお願いします」という挨拶は絶対にしないんですよ。

「東京から来て、僕はこのプロジェクトで島をこうやっていきたいので、協力してください」という言い方しか僕は絶対にしなくて。ただ飲みに行ったり、「なにかあったら声をかけてくださいね」って(言っています)。

「東京の家族はどうするんだ?」「いつか連れてくるんだろう?」って言うから、「今その交渉中です~」という感じで(答えています)。子どものことを考えると「連れて行ったほうが楽しそうだな」とは思っているんですけど、一応そういうふうに言って、ちょっと僕は線引きというか、よそ者であり続けるっていうことを今けっこう努力しています。

佐々木:地域の伝統共同体と「面」で付き合うと辛いですよ。僕は「線」で付き合うと考えていて。この村のこの自治体のこの人とは仲良くする。芋づる式に人間関係を作っていくんだけど、町内会とかそういうのと正面切っては付き合わない、というようなね。

高田:それでいきます(笑)。

町内会に属していないとゴミ捨てもままならない

タカハシ:でも、かたや消防団とかも地域の人たちがやっていたり、地域の清掃だったりも地域の人たちがやっていたり、そういう地元の方たちが動いているっていう強いつながりとちょっと一線を画すっていうところで言うと、今のいわゆる消防団からするとフリーハンガー的なイメージがあるのかなぁと思いつつも。

僕もずっと街にいるので、消防団の取材もするし、地域の清掃のお手伝いもするし、そんなに深くは関わっていないんだけど、さっき言った「線」でつながっているようなつながりでやっているんですね。街によってもその感覚が違うのかな。

佐々木:ゴミ出し問題とかいろいろあるんですよ。僕は福井県の美浜町というところで家を借りて、月に1週間くらいは住んでいるんですけど、ゴミが出せないんです。

タカハシ:え!

高田:それ、町会に入っていないからですよね。

佐々木:そうそう、町内会に入っていないので。ゴミって清掃車が出てゴミステーションからゴミを集めていくという収集作業は行政の仕事なんですけど、ゴミステーションって……ちゃんとコンテナのところもあるんだけど、うちの近所なんて単に電柱の横にプレートが貼ってあるだけで、あれは町内会の所属なんですよね。町内会に入らないとゴミを出しちゃいけないっていう。

タカハシ:ほ~。佐々木さんは(町内会に)入らないんですか? 

佐々木:町内会には全会一致じゃないと入れてもらえないので、けっこうハードルが高いんですよ。

タカハシ:すごい。それは!(笑)。

高田:壱岐もそうですよ。

タカハシ:壱岐もですか。

高田:壱岐もそうです。ゴミは捨てられないですが、ゴミセンターがあって直接持ち込みができるので、僕は毎回直接持ち込みをしています。

佐々木:そうですよね。ゴミを車で捨てに行くんです。

タカハシ:昔の町会というシステムと、また新しく住んでくるような方たちとのつなぎって、今はものすごく過渡期というか。どうすればいいのかって……ねぇ?

仲良くしながらも全面的には踏み込まない配慮

高田:さっき佐々木さんがおっしゃったように、町内会のほかに消防団とかもあるじゃないですか。僕が今いる島は、「壱岐市」という市なんですよ。もともと大きかった4町が1つ(の市)になっていて。これ幸いなのは、この4町はいまだに仲が悪いんですよ。

だからワンアイランドにはならない。でもこの4町があるので、僕が入ったときに「どこの町に住むんだ?」ってなるんですよ。でもとりあえず1ヶ所に住むじゃないですか。そうしたら、「なんでそっちに住んだ?」て文句を言われるんですよ。

でも、こうなってくると今度は逆に楽で。「僕は全部と付き合わないと島のことができないので」と言って、全部の消防団の飲み会・全部の商店街の飲み会に出るんですよ。そんなことをやって、所属しているようでまったくしていなくて。それこそ全部「線」。「面」と付き合うと、たぶん本当に辛くなるので。

タカハシ:僕も一緒。恵比寿新聞だから、町会に入れないんですよ。入ったらいけないんです。みんな「入れ」って言うんですけど、入れないんですよ。入ったら、「あ、そっちの子なんだね」って言われて(笑)。

いやいや、そっちでもこっちでも! みたいな(笑)。

佐々木:僕の友人で小林希さんという旅行して本を書いている女性がいて、瀬戸内のある島に、その島の人とゲストハウスを作ったんです。

すっかりその島の住民みたいな雰囲気で仲良くなったら、そのあとから、彼女が瀬戸内のほかの島に行くと「なんで別の島に行くんだ」って怒られるようになったって(笑)。

タカハシ:そうですよね~。

佐々木:そこでいかにうまく距離を置くのかっていうのが本当に大きな課題になる。かと言って、あまり嫌っていてもしょうがないので、仲良くしながら、でもあまり全面的に踏み込まないっていうね。そういう間合いが今の時代ではあらゆるところで求められているなぁとすごく思います。

関係人口の増加と受け入れ側の理解

タカハシ:そうですよね。いわゆる関係人口を増やしながら、自由な生活をし始めるっていう方たちがどんどん増えていくわけですから。やっぱり受け入れる地域側も理解が必要だし。

とくに都会なんて、今渋谷は100年に1度の開発って言われているくらい、どんどん街が変わっていっているんですよね。私が住む恵比寿というのも開発が始まって、どんどん新しいタワーマンションができているんですね。

今度の3月に竣工する新しいタワーマンションは、2,000人の方たちが住む大きなマンションだそうなんですよ。人口が一気に2,000人増えるわけですね。

でも、もともとコミュニティがあるわけじゃないですか。どういうふうに接していくのかとか、そういう問題がすごくある。人口の流動が激しい街というか。そうすると、やっぱりいろんな問題が起きてくるんですね。

例えばさっき言ったゴミ捨て問題。勝手にゴミを捨てていく人たちとか。みんなコントロールしようとするんだけど、どうしてもみんな自由だから、意外とまとまりがないっていう都会ならではの悩みっていうのがあるなっていう。

なので、このあと行われる未来会議で、そのあたりの子育てとジェンダーについて(話します)。ジェンダーに関しては「男女平等の社会ってどんな世界なのか」という話だったり……実和子さん、ほかにどんなものがあるんでしたっけ?

ディアス:防災環境として、今ここで地震が起きたとして、アイリスが避難所になったらどんなふうにこの空間を使いますか? っていうのをみなさんで考えていただけたらな、というのを考えています。

タカハシ:そうですね。あと最後が。

ディアス:最後が街づくりです。楽しくなければ街ではない、ということで。渋谷にはいろんなお祭りがあるじゃないですか。楽しいんですけれども、例えば去年ハロウィンのような問題が起こってしまった。

楽しさを残しつつ暴動が起きないようにするには

タカハシ:そうです。ハロウィン。

ディアス:実際にハロウィンのお祭りに行っていたのは、もしかしたら渋谷の人たちよりも外の人たちかもしれないんですけれども。じゃあそれを受け入れるコミュニティ、渋谷区としてどんなふうに楽しさを残しつつ、車が転倒したり、暴動が起きたりしないような仕組みを作っていけるか、というのをみなさんで話し合っていただけたらなと思っています。

タカハシ:祭り、いわゆるフェスティバルというところで、人の思いが一気に一緒になるというのは、たぶん高田さんが一番知っているんじゃないかなと思いつつも、佐々木さんもフェスによく行かれるというような……。

佐々木:なんかね、最近フェス評論家みたいな。

タカハシ:そうなんですね(笑)。

佐々木:フェスに関してのインタビューをやたら受けるという(笑)。フェスって2種類あって、1つは大規模フェスですよね。いわゆるフジロック(フェスティバル)とかロック・イン・ジャパン(・フェスティバル)とか。あれは完全に巨大なイベントです。

そうじゃなくて、今注目されているのはすごく小規模フェス。人数で言うと1,000人足らずくらいが集まって、どこかのキャンプ場でみんながやるっていう。

僕はずっと仲良くさせていただいている南兵衛さんというフェスの人がいて、かれの会社のアースガーデンは毎年5月に丹沢の道志の森で「Natural High!」というフェスを開催し、最近は7月に八ヶ岳山麓の清里で「ハイライフ八ヶ岳」というフェスもやるようになりました。どちらも参加者は千人弱ぐらいですごくこじんまりしてる。

そこの運営実行委員が地元の人を集めて仲間を作ってやって。そのフェスを継続的に毎年やることによって、そこから地元の若い人たちと東京からやってくるフェスの一群とが交わったところで、新しい共同体・コミュニティみたいなものが作れないだろうかという試みが、ずっと続けられているんですよね。

無縁からスタートするコミュニティ

佐々木:実際「Natural High!」にはもう6年くらい毎年行っていて。音楽もやっているんだけど、そんなに有名ミュージシャンが毎回出るわけでもないからそれ目当てに来る人はたぶんそんなに多くない。

全体がすごく広くて一部で歌ったり踊ったりしているんだけど、それは本当に一部でしかないと。気が向いたらそこで音楽を聴きに行き、そうじゃないときはダラダラ飯を作ったりキャンプファイヤーをやったり、あるいはショップがいっぱい出るのでうろうろしたりしていて。

そこでしか会わない人っているんですよ。行くとね、「あ~ひさしぶり! 1年ぶりじゃない?」って話をして、いろいろ仲良く話すんだけど、また帰ってきたら次に会うのは1年後っていうね。

フェスっていう空間は単なるイベントなんだけど、ある意味たまにしか会わない新しい共同体感覚みたいなものができてきていて。無縁のところからスタートする新しいコミュニティって、こういうところから出てくるんじゃないかなって(思います)。

我々はコミュニティって、「血縁」「地縁」「同じ場所に住んでいる」「近所」、あるいは「家族」といったものがなければ仲間になれないと思っているんだけど、最近はシェアハウスみたいにまったく無縁の人たちが集まって一緒に……下手すると子育てまでしているというようなケースも出てきているわけで。

そういう無縁から始まる新しい共同体、しかもたまにしか会わなかったりするような、出入り自由だったり、入れ替え自由な人間関係みたいなものは、より開かれていくともっともっとおもしろい気楽な社会になるんじゃないかなって感じはしますね。

子どもの成長を喜んでくれる人がたくさんいる幸せ

アーヤ藍氏(以下、アーヤ):今の話でいくと「Cift」という40人の共同体に住んでいたときには、子どもさんがいる人や、入ってから子どもを産んだ人もいて。やっぱり1年目ってお母さんはものすごく大変そうで、腱鞘炎になるくらいあやしていたりして。

メンバーのLINEのグループがあったので、「今日これからこの時間誰か寝かしつけるのやってくれないか?」というようなヘルプがそこで流れると、フリーで仕事をしている人が多かったので、「その1時間だったら私が見れるよ」「僕が見ておくよ」っていうようなやりとりをするとことがときどきあって。

お母さん一人がずっと抱きかかえているのは大変だけど、1時間だけとかだったら、私たちからすると逆にすごく楽しくて、気分的なリフレッシュになったりもして。もちろん責任は重大なんですけど。お互いにそこはけっこうメリットになるんじゃないかと思ったりしましたね。

一方で、それも慣れてくると「助けてもらうのが当たり前」となってしまうこともあるので、どうサポートし合ったり、自分のゆとりがある範囲で提供しあう感覚でいられるかっていうのは大事なんじゃないかと思いましたね。助けることも当たり前になると、それもある種のしがらみになっていくので。

佐々木:新宿に、10人くらいで住んでいる「東京フルハウス」というシェアハウスがあって、あそこには今1歳くらいの子どもがいて、みんなで子育てをしているんですよ。

そこのお母さんが言っていたことで「なるほどな」と思ったのは、「一番うれしいのは子育てを手伝ってくれる人が複数いることじゃなくて、子どもが成長するのを喜んでくれる人がたくさんいることだ」って。いい言葉です。

村や町の外から神輿の担ぎ手を呼び、祭りを再び誇れるものに

タカハシ:さて、もう時間なんですよね。せっかくみなさんいらっしゃるので、というよう質疑応答(にしましょうか)? 

ディアス:もしご質問のある方がおられたら、ぜひいかがでしょうか? このあと未来会議があるので、今日のゲストスピーカーの方にもご興味のあるテーブルに入っていただこうかなと思っています。もしよかったら、そこでも直接お話ししていただけるかなと思います。

アーヤ:追加でもう1個言ってもいいですか?

祭りの話でいくと、今度関わるかもしれない『祭の男~MIKOSHI GUY~』という映画がありまして。今30歳ぐらいの神輿職人がいて、おじいちゃんから受け継いで神輿職人になったんですけど。

今「神輿を作る」と言っても、もう担ぎ手が減ってしまって、神輿をあげられないかもしれないという地域も多いんです。そこで彼は全国各地の祭りに行って、祭り自体を盛り上げることをやっているんですね。

そのときに彼だけが行くんじゃなくて、東京とかから神輿にハマった人たちとか、留学生とかを連れて集団になって一緒に各地域の神輿を担ぎに行く。その様子を追ったドキュメンタリーが、うまくいけば今年の春に公開になります。

地域の人たちももう地域の人だけで(神輿を)上げるのに限界を感じていたり、もはや楽しいとも思っていなかったりもする。それが東京から「神輿最高じゃん!」っていう人たちが来て一緒に担いでくれると、「お、この祭りって意味があるのかも」「この祭りって誇りを持てるものなのかも」ということで、街の人たちもどんどん変わっていくというのがけっこうおもしろくて。

神輿を担ぐことが最高級の防災訓練になる理由

タカハシ:まさに僕も10年間恵比寿の神輿の取材をずっと続けているんですけど、 あれは、最高級の防災訓練ですよ。

ディアス:どういうことですか?

タカハシ:みなさん、聞いてください。なぜなら、あんな重いものを「いっせーのーで」で持ち上げるんですよ。あれってみんなの息が合っていないとできないんですよ。あれを上げるのはけっこう苦労なんですけど、何年も続けているとやっぱりうまく上がるんですよね。

またこれが、すごく強い密接的な毎日会うつながりじゃなくて、年に1回しか会わないんですよ。だからみんな一致団結してできる。例えば家が倒壊した場合に「いっせーのーで」で上げれるという意味で、神輿が強いところは最高なんですよ。だから、僕はずっと「(神輿は)最高の防災訓練だ」っていう話をしていて。神輿の人に言わせると、「ふざけんな!」「神輿はな、もっと神聖なものなんだぞ!」って(笑)。

ディアス:でも、なかなか普通の生活であんな重いものを上げないですよね。

タカハシ:そう。でもそれをみんなできれいに運ぶわけですよ。だからやっぱりすごい防災訓練だなと思って。

ディアス:息も合っていますしね。

タカハシ:うまくいけば春には?

アーヤ:春くらいにはって感じです。

タカハシ:なんていう映画でしたっけ?

アーヤ:『祭の男~MIKOSHI GUY~』ですね。彼はここ数年、ヨーロッパにも神輿を持って行って一緒に担いでいるんですけど。「持って行くときに、果たして神様の存在はどうするのがいいのか」というようなことも彼はすごく考えながら神輿を作っているんです。

彼の答えとしては、「神輿ってみんなで協力しないと上がらないから、神様というのはみんなの気持ちを1つにして集まったものなんじゃないか」っていうもので、それもおもしろいなと思ったりしますね。

あと、私も個人的に神輿を一緒に担ぎに行かせてもらったときがあって、そのときに思ったのは、祭りの中には違う関係性というか……、会社とかの肩書きは関係なく、みんなで一緒に担ぐわけじゃないですか。

課長か部長かとかいうのは関係なく、神輿担ぎの達人が「上の人」「先輩」という感じになるっていう(笑)。普段と違う新しいピラミッドが神輿社会にあるっていうのは新鮮でしたね。

タカハシ:確かに。

アーヤ:パソコンとかいくら打てても、そこでは関係ないですからね(笑)。

タカハシ:フェスティバル、祭りというところで人がつながっていくという、こういう流れって僕はすごく信じていて。まさにこの「しぶやフォーラム」も、ある意味祭りなわけですよね。

ディアス:祭りですね。

1年に1度だけの、弱くて強いつながり

タカハシ:こうやって脈絡もなくというか、みんなが集まってこれからワークショップもあるわけですけど。佐々木さんの行っている道志村のフェスへは、実は僕も行っているんですよ。

佐々木:あーそうですか!

タカハシ:一夜にしてテントがバーッてできるんですね。あれ、村なんですよ。なにか料理を作っていると、すごく気軽に「食べます?」とか言われて、「え、いいんですか!?」というような(雰囲気です)。

「どんな仕事をされているんですか?」という話はあまりないんですよ。「今日さ~、あのあと何する?」「一緒に行きます?」とか。あまり肩書きがない世界で1つの村ができて。(開催期間は)たぶん2日くらいなんですよね。

佐々木:2日間ですね。

タカハシ:夜は静かなんですよ。みんな家族でゆっくり暮らしているような(雰囲気です)。ああいう1年限りの村ができるって、あれはあれでものすごいコミュニティだな、というような。「LIGHT UP NIPPON」もそうですよね。

高田:そうですね。僕は違いますが、ほかの担当してくれている人たちはほぼ1年に1回ですし。最初の4年目くらいまでは、それをやることで集まる理由ができていたので。散り散りバラバラになっていった人たちがそこで会う。

本当に4年目くらいまで僕が毎年驚かされていたのは、「あんた、生きていたの⁉」ってこのへんで聞こえることが。

タカハシ:あ~祭りで集まって……。

高田:「花火があるってテレビで見たから戻ってきてみたんだ」って言って、会って。「街にいないし連絡先ももうわからないから、死んでたと思った」って。1年目ならまだわかるんですけど、4年目になってもお互いそんなことを言いながらやっていたという人がまだいた。そういうのもあって、「それがあるから集まってくる理由になっている」と言ってくれて。

お盆休みの8月11日を月命日に決めていたので、お盆の前にみんなで集まってっていうのがだんだん定着していって。最初1年目にはそんなふうになると思っていませんでしたが、今は風物詩みたいになっていて。「今年の花火はいつ帰ってくるの?」というように、みなさんから普通に会話でしゃべってもらえるようになったのはよかったなと思って。

タカハシ:街の同窓会の機能も果たしているというか。

高田:そうですね。理由があったほうがわかりやすいというか。本当に偶然ですけど8月11日を「山の日」という祝日にしてくれたので(笑)。国が祝日にしてくれたので、お盆休みがなんとなく11日からにシフトするじゃないですか。

けっこうそれのおかげで、東京とかで働いている人たちが「今までは東京でラジオを聞いて、あとからニュースを見ることしかできなかったけど、現場に来れるようになりました」って言ってくれる人たちがいたりとか。そういうきっかけになるっていうことなんだなっていうのもわかったので。

フェスで1年に1回しか会わないというのも実はすごく大事で。そのときに生きているか生きていないかの生存確認がまずできて。それで理由があれば、そこからまたなにか生まれてくるだろうしっていうくらいが。今日(の話を)聞いていて、冒頭で話した「弱いつながり」がたくさんあるっていうのは本当にすごく大事だなと思えましたね。

セッションの模様はすべてグラフィックレコーディング済み

タカハシ:シゲ先生どうですか? ちょっと涙目になっているんですけど(笑)。

鈴木:大丈夫です(笑)。フォーラムの実行委員長というよりも、自分の人生を振り返っています。

今日みなさんもお気づきだと思うんですけど、話していることが見える化されているんですよね。ぜひこれをやってくださっているゲストの方をご紹介したいと思います。書きながらで(けっこうです)。これはなにをしているんでしょうか? そしてあなたはどなた様でしょうか? こんな無茶振りですみません(笑)。お願いします。

イシバシトモハル氏:グラフィックファシリテーションというかたちで、絵や文字を使ってみなさんの話を可視化するということをやっています。みなさんの理解の手助けになればなぁと思ってやっていますので、まだ完成はしていませんが、ぜひ見て、次の未来会議につなげていただければなと思います。

僕自身はイシバシトモハルと言いまして。僕も今は小学校の教員をやっております。それをやりながらNPOとかでこういうかたちでやらせてもらって、なにかしら関係性がよくなることを願いながら活動しているので、どうぞよろしくお願いします。

(会場拍手)

鈴木:トモくん、(イシバシ氏が書いたグラフィックファシリテーションを指して)これ、写真は撮っていいんですか?

イシバシ:あ、どうぞどうぞ!

鈴木:大丈夫ですか。まだまだこれが成長していくと思うので、そんなことも楽しみにしながらいきたいと思います。それではこれでパネルセッションは終了とさせていただきます。ありがとうございました。

(会場拍手)

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