2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
提供:渋谷区
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タカハシケンジ氏(以下、タカハシ):さあ、続いて高田さんです。もうね、俺は泣きました。高田さんが何をやっていたのか、みなさんに見ていただきましょうか。会えてすごくうれしいです。
もう泣きそう……俺(笑)。
すごい! 本当にすばらしいと思います! みなさん、拍手を! もうすばらしいんですよ。
これって、まさに強いつながりの中に思いっきり真っ裸で入って行ったわけじゃないですか。真っ裸って変かなぁ。突入していったというような。今のを含めて簡単に自己紹介を(お願いします)。
高田佳岳氏(以下、高田):改めまして、高田と申します。ご紹介いただいた肩書きが内閣府のなんちゃらかんちゃらなので、ちょっと小難しくなっていますが……僕は経歴から話していくと、本当に「なんのこっちゃ」ってなるんですけど。
もともと海がすごく好きで、東京水産大学というところを出ました。そこから大学院に進んで学籍ロンダリングをかけまして(笑)、博報堂というちょっと変わった会社に入ります。
しばらく広告代理店に勤めているときに、この震災が起きました。2011年の震災があったときに、僕はクライアントのところに行くか行かないかで打ち合わせの間の時間を過ごしていたんです。
大学院のときに、もともと東京の大学院に入ったつもりだったんですが、先生から「研究室が岩手にあるから岩手に来てね」って言われて。実は東京水産大学ってすごく特殊な大学で、女性が20パーセントしかいないんですよ。
男子校を出ている僕は、大学のキラキラした生活を夢見て東京の大学に行ったのに、「合コン」という言葉もまったく出てこない不思議な環境に入りまして。海が好きだったからギリギリ平気だったんですけど。
そこまでチャラチャラしなくていいけど、大学院はせめて、もうちょっと東京の大学で楽しいキャンパスライフができるのかなと思ったら、岩手に来いと。それで岩手に行くんですけど、寒いし、その当時はぜんぜん好きだとも思えなくて。ただそのときに、お世話になった寮母さんや周りの漁師さんたちがずっといたんですね。
それが岩手県の大槌町というところで、被災があったときに「壊滅」という。(出てくる情報は)テキスト(だけ)ですよ。「大槌町、壊滅状態」、以上。それ以上、もうなんの情報も出てこないんですね。これは町長や三役のみなさんがすべて亡くなってしまって、情報を出せる機能もすべて止まってしまったから、という理由だったんですけど。
そういうことがあって、僕は当時広告代理店にいて、「寄付する」「炊き出しを手伝う」「瓦礫撤去を手伝う」という、いろんなボランティアの選択肢があったときに、それって僕よりも得意な人が世の中にはたくさんいて。「広告代理店でエンターテインメントに関わっている人間として、ここで自分が提供できることって何があるんだろう?」って悶々と考えていたんです。
結局、みんなができることは自分もできるし、やれるんだけど、僕にしかできないことってなんだろうって考えていました。その当時は毎日のように東北のテレビがやっていたと思うんですけど、わざと悲しい人ばっかり撮るんですよね。そうやって悲しい人を撮っている脇の裏で、子どもたちがめっちゃ笑って縄跳びを飛んでいる映像を見たんですね。
それを見たときに「あ、これだ!」ってひらめいて。子どもたちに笑ってもらえるもの……子どもたちが「危ないから外に出ちゃダメよ」と言われたものを外に出して、子どもたちが思いっきり楽しめる時間を少しでもいいから作りたいと。
大人はそんなことを言っている場合じゃないですよ。本当に明日どうやって生きていこうとか思ってますし、その子どもを守るのも大人の責任だったりもする。でもあの当時、子どもにそれをやれって言うのは、僕は正直酷かなと思っていました。
「この子たちに楽しんでもらえるもの」っていうふうに考え始めて探したら、たまたま東京湾の花火大会が7月開催なのに3月に中止しますっていうのをパッと言ってくれたので、「だったらこの花火は……」と、今度は広告代理店の脳みそになって。7月開催の花火大会が3ヶ月前に中止っていうことは、予算も含めて、(花火が)全部余っているんですよ。絶対に全部準備していますから。
そう考えたときに、「これ、余っていますよね?」って中央区にすぐ電話して。「余ってませんか?」「それ全部ください」「お金も花火の玉もすべてください」というようなことを言ったのが実はきっかけで。
その結果、蓋を開けたら「予算は予算で別に使うところがあるので」と断られて。花火の玉も玉で、なんだかんだ言って別に余っているものではなくて。花火ってけっこう消費期限が長かったりするんですよね。だからなにも余っていなかったんですけど、「花火!」って思いついちゃったので「じゃあ花火だ!」と言って走り始めます。
でも、そのときは大槌町の僕の付き合っていた人たちは、誰も生きているかどうかもわからない状態で。本当におっしゃったとおり、すごくローカルな小さなコミュニティで、かつみんながなんとか命からがら生き残ったっていう、最も強固な場所にあるような絆の中に突然よそ者が入っていって。瓦礫撤去の手伝いをするわけでもなく、いきなり行って「子どもたちのために夏に花火を上げませんか?」って言っていったのが最初のきっかけでした。
やっぱり初日はかなり心が折れて、「これ以上はダメなんじゃないか」と思う瞬間はやっぱりあったんですけど。(あの状況で「花火を上げませんか」なんて)言えないですよね。「不謹慎」って言われるし。僕なんか、「殴られて水をかけられて追い返されるだろうな」と思って行っているんですけど、それ以上にもっとすごい現実があそこにはあったので。
でもそうこうしてたら、「やりましょうよ」って言ってくれたおじちゃんがいて。「子どもたちのためにやるべきだ」と言う人たちがパパパッと出てきたときに、自分の気持ちが一気に強くなって、「進めていかなきゃ」っていうふうになったんですね。
そのときの自分はほぼトランス状態で、「やらなきゃ」って勝手に思っているんですよね。それをやったあとになにが起こるかとか、やることによってどうなるかなんて細かいゴールまでは考えていなくて。かつお金も1円もない中で、「お金のこと、どうするんだ?」って必ず聞かれるんですよ。「なんとかします」って。できるかどうかわからないですよ。
でも1個だけ、ちょっとまた代理店の脳みそでずるいところがあって、「花火を上げます」って言っていて、「花火大会をやる」とは言っていないんです。「花火大会」って聞くと、みなさんは1万発とか花火が上がるような感じがしません? でも「花火を上げる」って言ったら、1発でもいいわけでしょ?
(会場笑)
上がるか上がらないか。僕、最後の最後は、本当にダメだったら、「コンビニで花火を全部買い占めて、あれを全部自分で火をつけて上げよう」って、本気で思っていたんですね。実際にやっていくといい動きが始まっていって、流れができていったら、なんとか最後は成功にいくんですけど。
一番強かったのは、僕が「やりたい」っていう気持ちはもちろんあるんですけど、これって本当にきっかけで、花火で言うと導火線にパチッてやるライターなんですよね。そこに導火線があるかないかわからないところでパチパチ、パチパチやっていたら、実はすごくいっぱい導火線がそこにはあって。
地域で「やりたい」という人たちがすごくたくさんいて。それを「子どもたちのためなんだ」って理解している大人たちもいっぱいいて。結局はテレビで抜かれているのって、編集されて作られているものだったので、大人たちも子どもたちを外で思いっきり遊ばせたかった。でも、それをやる環境(を提供したい)っていうのは、今自分が言うと街の中でどうなるかわからない。要は「村八分にされるんじゃないか」とか、余計な考えが入ってくる。
でも、「よそ者が来て、勝手に『やりたい』って言っているんだよね」というように、僕のせいにできた。あれがたぶん今回花火を上げるなかで一番うまくいったきっかけなんじゃないかなと思って。
そこからぐるっと回って、今実は離島の仕事をしていて。
タカハシ:離島ですか!
高田:そうなんですよ(笑)。ずいぶん回って。2011年から花火は今も上げ続けて、まだ毎年花火大会はやっているんですけど。僕もそのあと会社を辞めたりして、自分がまさか「コンサル」と名の付く仕事に就くとは思っていなかったんですけど、コンサル業みたいな仕事が始まって。
今は日本の地域の国境にある、10年で人口が半分とかになってしまっているような島の盛り上げをしてほしいということで、国と一緒に協働してやっているアドバイザー業務というのがありまして、島に行き始めたんです。
島は震災こそないんですけど、状況としてはあまり変わらなくて。やっぱりあのときの「東北に花火を上げましょう」と言っているのと同じ感覚なんですよね。「この島を盛り上げましょう」と言って入っているので。
「『この島を盛り上げましょう』って言うけど、お前は外から来て、なんもわかんないじゃん」というようなこと(を言われること)は多々あるんですが、その中で、「地域のコミュニティというところとどうやっていけばいいのか」っていうことについて話をしていこうと思ったときに、僕が東北からずっと受け継いで、いまだに頭の中にあるのは、「僕、よそ者なんです」って思いっきり開き直る。
究極に薄っぺらいんですけど、それが彼らの一番の言い訳になるっていうのは経験していたので、「僕を使ってください。僕を言い訳に、俺のせいにして、やりたいことを全部一緒に実現しましょうよ。でも最後になにかあって困ったら、僕のせいにしていいよ、どうせよそ者だし」というような。
タカハシ:確かに、僕がすごく共感したのは、「よそ者だからできたんだろうな」っていう部分がすごく大きいなと思うんですよね。やっぱり「地域で生まれて育って」というと、どうしても親の代からのしがらみもあったりして、やっぱりやりづらいところってあると思うんですよね。地元だからっていう、いわゆる強固なコミュニティですよね。強いつながりっていうところで。
でも外からやっていくと、悪い言い方をするとそのせいにできますもんね。「だって外の人がやりたいって言っているから」って。万が一なにかあったときもね。だからそういうエネルギーってすごいなって。しかもまた離島で同じエネルギーでやっているんですもんね! ずっと交渉しながらみたいな。
いや~すばらしい。実和子さん、どうですか?
ディアス実和子氏(以下、ディアス):佐々木さんは、今3拠点で生活をされているんですよね。
佐々木俊尚氏(以下、佐々木):そうですね。東京・長野・福井の3拠点を移動しながら住んでいます。
タカハシ:アーヤさんの地元の長野のほうにも。佐々木さん、今日はどこからいらっしゃったんですか?
佐々木:今日は東京でしたけど。僕は渋谷区民です。
タカハシ:渋谷区民なんですね!
佐々木:あさってくらいには、福井に移動します。
タカハシ:そういう意味でこのお三方に共通しているのは、まさに多拠点で生活していると言っても過言ではない。
ディアス:そうなんですよ。やっぱり福井とか違うところに入って行かれるときに……。
佐々木:今高田さんがおっしゃった「よそ者の話」って、絶妙にナイーブなところがあって。例えば、僕の福井の友人で、外から福井に移住した人がいます。ずっとよそ者だっていう感じでやってきたんだけど、ある年の夏、突然地元のおじいちゃんから「お前もそろそろ夏祭りに参加せえへん?」とか言われて。
タカハシ:あ~。
佐々木:夏祭りに参加するわけですよ。そうしたら急に、完全にコミュニティの仲間にされてしまって。それ以来飲み会とかがあるごとに「お前はもう絶対に出身地に戻らないだろうな」と脅されるっていうね(笑)。
コミュニティに参加したほうがいろんなことがやりやすいし円滑に進むんだけど、入ってしまったら入ってしまったで、逆にしがらみが増えてしまって面倒くさいところもあり、その距離をどう取るかってすごく悩みのタネなんですね。
佐々木:最近多いのは、地方創生の文脈で「関係人口」というようなことが言われていて。要するに移住者じゃない、住人じゃないんだけど、かと言って観光客でもない。観光客以上移住以下というような。「たまに来る人」という感じ。
その感覚を……これは地方自治体から見ると「関係人口を増やしましょう」。要するに移住者もなかなか増えないので、だったらたまに来てくれる人を増やしたほうがいいっていうので、最近は関係人口を増やすという話になってきています。
移住する側、要するにその地域と関わりを持つ我々のような一般市民の側から見ると、それによって地域にうまく飲み込まれもせず、かと言って協力体制をちゃんと作るっていう中途半端であるがゆえのメリットが、僕はけっこうあるんじゃないかなというのはすごく思っているんですね。
「たまに来る人」っていう(意味で)、「まれびと」って自分で呼んでいるんですけどね。
タカハシ:「まれに来る人」というような。なるほど(笑)。渋谷区ではシブヤ民と言われているのかな? いわゆる本住民ではなく、在学や在勤さらには街に遊びに来る人も含めた住民というか。
佐々木:僕の友人に、もともと関東の人間なんだけど、鹿児島の限界集落に移住したヒッピーがいて。テンダーっていうんです。(アーヤ氏に向かって)知ってる? 知らないか。テンダーって(いうのは)優しい男なんだけどそれが語源というわけじゃなく、元職がバーテンダーだから。
(会場笑)
タカハシ:「バー」が抜けただけ、という(笑)。
佐々木:彼は東京にいて「鹿児島に移住したい」「限界集落に移住したい」と思っていたんですね。Webの仕事をしていて、なにかのきっかけで鹿児島のどっかの自治体の役場の人とつながりができたので、これ幸いと「引っ越したいので、ぜひ物件があったら紹介してください」って言い続けて、ようやく限界集落で家を借りれたんですよ。
でも、いきなり行ったらたぶん入れないっていうので、どうしたかと言うと、2年計画くらいで盆と正月になると、必ずそこの限界集落に行って。近所にひよこ饅頭みたいなものを配って歩く。
それを5、6回やっていると、「よくわからん人だけど、ひよこ饅頭をくれるいい人だ」っていう(印象を与えることができて)(笑)。
タカハシ:「ひよこの人」みたいな(笑)。
佐々木:それでなんとなく入れるようになったっていう。そのワンクッションってやっぱり大事なんじゃないかなって。
タカハシ:そういう意味で高田さんは、花火のときも離島のときも、ワンクッションみたいなものはあったんですか?
高田:花火のときはまったくなかったので、本当にいきなり行って。広告の仕事をしていると、前段をたくさんしゃべってなんとか理解してもらおうって、すごく前段階をがんばるんです。でも、人間ってまったく想像していなかったことをいきなりポンッと投げ込まれると、思考が止まるんだっていうことをあのときに知って。
要は、その瞬間考えることさえもできないくらい、頭のトリプルくらい上に行っちゃうと、なんかよくわからなくなって、「う、うん。そうだね」ってスルーされるっていうことは、あのときちょっと感じていて。
タカハシ:(笑)。
高田:今だからこうやって笑ってしゃべれますけど、目の前の瓦礫の山の中で明日の家もないような人たちに向かって「花火を上げましょう」と言うことは……(被災した)4ヶ月後とかに言っていますけど、ぜんぜんわけわからないと思うんですね。「そんなことを今言われてもわからない」って言う人がほとんどだった。
ただ、その次につなげるのは、あの子どもたちをもっと外で遊ばせてあげたいし、これから夏は来ると。せっかくの夏を子どもたちは絶対に楽しみにしているから、子どもたちをなんとかちょっとだけでもいいから、30秒でいいから楽しませたいんです、ということを言うことです。
急にわかるところに持ってこられると……花火を上げるということでガチャガチャするよりも、子どもたちを笑わせるということで共感ができて物事が進んだというか。僕はたまたまそこで共感できる種を、偶然作っていたんですね。
タカハシ:しかも1ヶ所じゃないんですよね。10ヶ所でしたっけ?
高田:1年目は10ヶ所ですね。
タカハシ:いわゆる三陸の湾岸、非常に長い30キロ~40キロぐらいのところに10ヶ所同時に、みんな同じ時間に花火を上げるという。
高田:そうですね。南北で300キロくらいですかね。最後は、東北の岩手から福島のいわき市というところまで、合わせて10ヶ所で同じ日・同じ時間に一斉に花火を上げて、みんなで同じ空を見上げる。花火は絶対に見上げるので「空を見上げましょう」と言って。各市町村では、当然「子どものために」ということをずっと言っていて。
ただ正直、僕はそれまで花火大会へは人生で2回くらいしか行ったことがなくて。もともと花火がそんなに好きだったわけでもなく。花火の持つ本当の力みたいなものはなにも知らない状態でその日に突入して。でも実際に花火が上がったときに、企画書上は理屈で考えるので「上を向く」とか好き勝手なことを書いているんですよ。でも上がってみたら、本当に上を向くんですよね。
あのとき不思議だったのは、20人くらい東京で仲間を集めてみんなで一緒にいろんな企画を進めていって、最後当日は全員それぞれの場所に分かれて行って。でもこの分かれて行った人間が東京にまた戻ってきて、それぞれの花火を見た感覚で会ったときに、みーんな同じ感覚だったんです。
みんなそんなに考えて花火を見たことはなかったんですけど、本当にみんな上を向くし、みんなが1つになっている瞬間。あと花火を見ているときって、あれこれ考えていなかったりするんですよね。言葉も性別も宗教も年齢もなにも、すべてを超えて関係なく、上を向いて無になっている。
その無の次に来る感情というのは、そのステージでぜんぜん違ったりはするんですけど。それを体感できたそのときのあの感じというのは、今も強く残っていますね。
タカハシ:アーヤさん、どうぞ。
アーヤ藍氏(アーヤ):私は実は『LIGHT UP NIPPON』という映画を配給している会社に昔勤めていたので、(この映画を)何度か見ているんですけど。
タカハシ:えー、つながってる!
アーヤ:映画の中で、すごく好きなナレーションの一文があって。花火を上げるかどうかって言ったときに、やっぱり「上げたい」と言う人もいれば、「いやいや、今そんな不謹慎なことを言っている場合じゃないだろう」っていう人もいて、そういう議論をしている場面があるんです。
そこに、「ぶつかるのは、それだけみんなが強い思いを持っているからだ」っていう内容のナレーションが入っていて。本当はみんな前を向いて進んで行きたかったり、この状況をどうにかしたいとか、この状況が嫌だとか、思っていることは一緒で。だけど、それにどう対処するか手段が違ってぶつかっている。だから、「根っこは一緒だよね」というところに気づけたら、いいんだろうなっていうのを、この映画を見てすごく思っていました。
さっきご紹介した「Cift」っていう渋谷の拡張家族にいたとき(に思ったのが)、みんな家族観が違うんですよね。どういう家族で育ってきたかも違うし。(家族が)仲の良い人もいれば仲が悪い人もいる。普通に話をしていると、違いのほうに目がいってしまいがちなんですけど、根っこにある共通項みたいなものも一緒にシェアできると「ああ、違うし同じだね」って、もっと受け止めやすくなるな、と感じてきましたね。
タカハシ:佐々木さん、いかがですか?
佐々木:今の話だと、我々は「絆」という言葉に囚われすぎなんじゃないかなっていう(気がします)。3.11のあとに盛んに「絆」って言われて、「これからは絆なんだ」ってみんな思っているんだけど、「絆」って言えば言うほど疲れるっていうところが、実はあるんじゃないかなって。
さっき、「家族が別れて夫婦関係が……」という話があったでしょ。(自分たちは)しょっちゅう夫婦取材されるんですよ。妻が絵描きなので、フリーランス同士だから取材に来るんですよね。だいたい(取材に来るのは)、なぜか必ず女性ライターっていう。こういう場所で話をするといきなりジェンダー的な問題がふっと現れてきますけど(笑)。
開口一番に必ず聞かれるのが、「お二人はどんなに愛し合っているんですか?」って。
(会場笑)
「別に愛し合っていません」って言うと、みんなシラーっとした顔になるんですけど、距離が近すぎると、結局疲れるんですよね。固定された関係性みたいなものが理想である。要するに、「ものすごく愛し合っているすばらしい夫婦こそが理想である」っていう理念が先行してしまうと、どんどん疲れていってしまうっていうのがあって。
夫婦にも、それぞれ個別のプライバシーがあるわけです。(それぞれに)人間関係もあるわけだから、距離はある程度取ったほうがいいよねって(思います)。アメリカのある調査分析で、「妻と夫が友人を共有している人が少ないほど、関係は長続きする」ということが実証された結果があるんですよね。だから、なるべくお互いの人間関係は大事にしましょう。
家でご飯を食べているときに妻と、「今日友人とご飯を食べたらこんな話が出た」って言うんだけど、その友人の名前は言わない。言うと必ず全部同じ人間関係になっていっちゃうからです。
佐々木:ある程度距離を置くことによって……例えば「生物学的に言うと恋愛感情は3年しか保たれないです」と言われることがよくあるじゃないですか。3年以上経つとだんだん家族的な情愛は残っていくんだけど、ときめきみたいなものはなくなるよねと。毎日会っているとそうなってしまうけど、これがそれこそ週に1回しか会えないとかね。月に1回しか会えない。織姫・彦星みたいに年に1回しか会えないってなると、軽く10年くらいは保てそうですよね。
(会場笑)
鈴木:長続きするにはマグロの漁師と付き合ったほうがいいっていう話を聞いたことがあって。今の話を聞いて、それにちょっと通じるなと思いました。
佐々木:そうですよね。そのくらいの距離感で。別にこれは夫婦に限らずいろんなところで持っていればいいんじゃないかな。僕が常に思っているのは、仕事をするときでもあまりグッと近寄りすぎない。その代わり、向き合っているときにはその人のことを一生懸命考えます。真剣に相対します。でもそれだけです。365日縛り合ってしまうと、お互いに辛くなるので。
いろんな関係性がある中で、そのときどきにちゃんと向き合うということを持続させたほうがいいんじゃないかな、というのは思う。ありとあらゆる場所がそうで、夫婦もそうだし、友人関係も仕事もそうだし、それこそ地方と都会とかね。そこの付き合い方もそうだしな、とは思いますね。
タカハシ:まさにこのあと行われる未来会議でも、そういったいわゆるコミュニティっていう話のアイデアを出していくわけですね。昔から町会だったり、商店街だったり、毎日のように会議するような「地域」ってあるじゃないですか。例えば学校だとPTAとか、よく揉めている部分というのを見かけるんですね。とくに小学校のPTAとか。
タカハシ:お三方に(聞きたいのですが)、例えばPTAという団体があります。これをもうちょっとうまく円滑にしていくには、こんなアイデアとかどうかな? というご意見はありますか?
高田:僕はたぶん一番薄っぺらいので先に(発言させていただきます)……。今お話を聞いていて、まさにそれだよなって思うんですけど。結局ベースにある考え方の部分が違うから、どうしてもずれていくんですね。
花火のことでいろんなところを回っていたときに、早稲田の哲学の先生が言った言葉があって。僕はそれが大好きで、どこへ行ってもずっと使わせてもらっているんですけど。
「正しいことよりもおもしろいことを」って、その人は言ったんです。正しいことを言い始めると喧嘩になる道しかない。戦争は正しいことで起こっていて、全員が全員言いたいことがあって、それはすべて正しくて。それがぶつかっていくことが一番よくない。
でもおもしろいことって考えたときに……もちろんそれをおもしろいと思うかどうかっていうのは人によって違うんですけど。おもしろいことを共感を持ってもらえるように伝えることとか、それを伝える努力っていうのは、たぶんそれぞれができること。そういったことをやっていけるといいよね、というふうに思っていて。
実はPTAの問題は僕にとって今けっこうホットで(笑)。うちの子どもは小学2年生で、学校の近くに秘密基地を作ったんですよ。でっかい公園があるので、その陰で作っていてくれればよかったんですけど、ちょっとドラえもんを見すぎて空き地で作っちゃったんですね。
高田:空き地って、言葉は空き地ですけど、空いている土地は誰かのものじゃないですか(笑)。(その土地の)持ち主さんがデベロッパーだったので、「まあ、子どもが遊ぶ分にはいいんじゃないですか」としれっと言ってくれたんですけど。
そのとなりの家の人が、空いているはずの場所に変な構造物ができ始めたと。しかもそれは藪みたいな枯れ草で作っているので、「火でも付けられたら大変なことになる」って言って通報しちゃったんですよ。警察が来て、僕は仕事をしていたところを呼び出されてワーキャーやっているうちに、だんだん先生とか学校とか(巻き込んで)、話がどんどん大きくなるんですね。
僕からすると、ただの小学2年生の小僧が、ちょっとした枯れ木で作ったかまくらの細かいのをやっただけで、そこまで……。しかも「火事になったらどうする」という話にまでなってしまうんだと思って。警察も、呼ばれてしまうとがんばらなきゃいけないので。そうするとデベロッパーの担当者も休みなのに出てこさせられて、「地権者としてどうですか?」というような話になって。
そうこうしていたら、それが今度はPTAの議題に上がるんですよ。空き地で秘密基地を作ったっていう。わかりましたと。じゃあPTAってなにのためにあるんでしょう? と。学校の先生は何が目的なんでしたっけ? と。子どもを預かるのが仕事なのか、子どもを教えるというか、子どもを育てるとか、いろんな言い方はあると思うんですけど、PTAってなんのためにあるんでしょう?
みんな、「こういうことが今後起こらないためにどうすればいいか?」「どうやって指導すればいいか?」「子どもたちに秘密基地を作らせないためにはどうすればいいか?」と意味のわからないことを言い出すんですね。
子どもの創造性を摘むようなことばっかり平気で言っていて。僕もそれを聞いていて、「これ、なんのためにやっているんですかね?」と。PTAって怒られないためになにをするかみたいな話に結局なっていって。「いやいや、子どものためにこの組織ってあるんじゃないでしょうか?」っていうところにもう1回戻りませんかってグーッて引きずり戻すと、「なんだったけ?」という話になって(笑)。
そんなこともあり、「良くする」と言うと今度は「正しい」という方向へいってしまうんです。会長とかは変な理念とかがすごくあるわけですよ。「こうするべきだ!」というような。「学校とはこうあるべし」と言うお父さん・お母さんもいきなり出てきて。僕はPTAへは二度と行かないって思いましたけど(笑)。
「おもしろいことを、子どもたちのためにおもしろくなるように考えましょうよ」って一応言ったんですけど、そのときは「おもしろいこと」とかじゃやっぱり共通言語が生まれなくて。もう僕は端っこに座って、最後は「うちの息子がすみません」と謝って帰りました(笑)。
タカハシ:正しいことよりも楽しいことっていうのは、僕もすごく響きましたね。でもやっぱりPTAは根深いですね。アーヤさんはPTAについて(ご意見をいただけますか)。
アーヤ:いかんせん15回とか引っ越していると、PTAも地域も、もはや地縁とかはぜんぜんないので(笑)。だからこそ無責任に言うと……今話を聞きながらふっと思ったのは、PTA同士で留学したらいいんじゃないかなっていう(笑)。
タカハシ:あ~、すごいありあり!
アーヤ:PTAも関係性が固定化するから疲れるわけじゃないですか。だからPTA同士で入れ替えをしたらいいんじゃないかなって無責任に思いました(笑)。あと、そうやってグルグルしていると、戻って来て安心すると思うんですよ。
「あ、意外とここはよかったかもしれない」って。移動してくると戻ってきたときに自分の居場所をもう一度愛せるかな、というのが無責任に思った1つ目。
もう1つは、例えば会議を青空の下でやるとか。昨日ちょうど話していたんですけど、バランスボールに乗りながらやるとか。トランポリンで跳ねながらやるとか、もはや違うかたちで会議をやったらいいんじゃないかなって(笑)。
やっぱり座って会議をしていると、会社でも意見が出てこないじゃないですか。どんどんまじめな思考になっちゃうから。トランポリンで跳ねたりバランスボールでバランスを取りながらやっていたら、おもしろいアイデアが物理的に生まれてくるんじゃないかな、というのは、無責任に思った2つでした。
タカハシ:すっげぇ。さすがですね。留学はすごいですね。あるかもしれないです! ありがとうございます。
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