2024.11.28
中国や北朝鮮によるサイバー攻撃を日本が名指しで非難 脅威アクターに対する「パブリックアトリビューション」の意義
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足立光氏(以下、足立):足立です。よろしくお願いします。簡単に自己紹介をします。P&Gのマーケティング本部でキャリアを始め、その後、経営コンサルティング会社を経て、シュワルツコフヘンケルというドイツの会社とワールドという会社ではずっと経営をやっていました。ですので、実は、16年ぶりにマーケティング復帰してマクドナルドに戻ってきたというわけです。
インフルエンサーマーケティングなのですが、今日たくさんいらっしゃっているデジタルマーケティングの方たちとお話しすると、「インフルエンサーマーケティングとは、影響力のある有名人に、インスタやYouTube等のデジタルで自社ブランドや商品について発信してもらうことだ」という誤解をされている方がけっこういます。
これが誤解だという解説をする前に、これが本当にインフルエンサーマーケティングの定義であるとすれば、マクドナルドはほとんどやっていません。Instagramはもう閉じてしまいましたし、有名なYouTuberによる発信も、あまりしていません。
どこが誤解かというと、「影響力のある有名人」「InstagramやYouTube」あとは「デジタル」の3つです。何が誤解かをお話しする前に、まずマーケティングの目的について確認したいと思います。
何かコミュニケーションをしようとする時には、誰に(WHO)、どんなメッセージを(WHAT)、それからよく忘れられがちなのですが、どのくらい(HOW MUCH)、そして最後にどうやって(HOW)ということを順番で考えます。なので、今話題にしているインフルエンサーマーケティング的な、「どういう人たちにどういうメディアで発信しようか」というのは、本来マーケティング的には一番最後に考える「HOW」のことなんです。
なので、マーケティング企画会議で「インスタでインフルエンサーマーケティングをやりましょう」というのは、根本から間違っていると思っています。
また、インフルエンサーの目的は影響力を与えることなので、実は有名人でなくてもいい。デジタルでなくてもいいということをお話ししたいと思います。
足立:例えば、私が高校で生徒会長に立候補したとしましょう。私が、私のことをよく知らない生徒に対して「足立はすごくまともな人です、ぜひ選んでください」と自分で言うことは、自分で自分のことを「良い」と言っている、まさに広告です。それだけでは、まあだいたいダメです。
では何が効くかというと、生徒たちのお父さんとか、学校の先生とか、なにかしら信頼する権威のある人に「足立くんはきちんとしてる」と太鼓判を押してもらう。それから、生徒たちが共感できる先輩やお友達に「足立はちゃんとしているから、生徒会長にした方がいい」と後押ししてもらう。そして最後に、自分が出ていくと、信頼されて生徒会長に選んでもらえる確率が上がりますよね。
これは実は、信頼する人が、先ほど本田さんがおっしゃっていた事実系インフルエンサーです。共感できる先輩や友達が、共感系インフルエンサーです。
ここに大事なことが2つあって、信頼する人も、共感できる人も、私も含めて、発信しているメッセージは実はまったく一緒です。同じメッセージを違う人が言うことによって、信頼度が上がるということなんですね。
もうひとつ、大事なことがあって、まず信頼する人、次に共感できる人、最後に自分、という順番です。マーケティングコミュニケーションでいうと、最初にPR、次にソーシャル、最後に広告。この順番が重要だと思っています。その理由を今からお話しします。
先々週くらいにチキンタツタのリニューアルがありました。まずはメディア向けにプレスイベントを行って、テレビや新聞、Webニュースなどで「こんなチキンタツタが出ます!」「新しいのでおいしくなりました」「凄タツタです」という露出を獲得していきます。
それから、いろいろなソーシャルのキャンペーンが始まります。 「チキンタ◯タが出ます」(注:1月31日、日本マクドナルドの公式ツイッターは商品名を「明日なにかが起こる!? チキンタ◯タ」と伏字にした画像をアップ)。そうすると、タニタさんとかが(Twitterで)普通に反応してくれるんですね。それでみなさんが「食べてみたい」「おいしそう」とか話題にするんです。それから最後に広告を投入しています。
最後の最後、チキンタツタの発売と同時くらいに、やっとテレビを含めたマス広告が始まります。この順番の理由は、先ほど本田さんがお話ししたように、誰も知らないことは話題にしてもらえない、ということです。
だから先にPRをする、PRをしてからソーシャルに打っていく、かつあまり知られすぎてもいけない。なので我々は、発表から発売までの1週間でPRとソーシャルを全部やっています。そのくらいのスピード感です。
足立:今、ソーシャル施策の説明では、たまたまデジタルメディア(Twitter)の例を出したのですが、デジタルでなくても影響力のある有効なメディアはいっぱいあります。たとえば昔、みなさんが本を買うときに、新聞の書評はけっこう影響力のあるものだったはずです。
我々でしたら『dancyu』とか『東京カレンダー』とか『Pen』とか、(読者が)おいしいものを探して集まってくるところで、おいしいものを知っている方に、ちゃんと発信してあげることも効果的です。
我々はソーシャルで有名人が何か宣伝してもらうことをまったく狙っていません。一般のお客様に話題にして頂いていただいて拡散することを狙っています。 有名人のインフルエンサーが効果的だと思われているのですが、実は有名人のツイートとみなさんのお友達のツイートのどちらが効くかというと、たぶんお友達のほうが効きます。みなさんの信頼しているグルメの友達が「これおいしかったよー!」とツイートしたら「ふんふん、そうか」と思うじゃないですか。
有名人のほうが間違いなく拡散力はあります。ただ最近有名人に関しては、いろんな規制が入りつつあります。とくにアメリカなどはすごく厳しくなっています。
なので、そもそも有名人よりお友達や信頼している人のメッセージのほうが効くし、今後規制が厳しくなっていったら、有名人によるInstagramやYouTube(のPR)はどんどん使えなくなっていくと思いますので、中長期的にはあまり取るべき方法ではないと思っています。
足立:ご覧いただいたとおり、メディアには新聞や『danchu』や『Pen』(などの雑誌)等、いろいろなものがあります。なので実は、インフルエンサーマーケティングというのは、デジタルもあるけどデジタルだけではない。リアルも含めたいろいろなメディアを組み合わせて、インフルエンスを最大化していくのがインフルエンサーマーケティングだと思っています。
フォロワー数の多いYouTuberさんやインスタグラマーを推薦されることが多いんですけど、正直、それだけでは認知獲得にはまったく向きません。数10万のフォロワーにしか見られていないというのは、全国的な認知獲得のためには、全く不十分と思っています。
なので、すごく深いコミュニケーションをする商材、大勢の認知を獲得しなくてもいい、本当に興味がある人にだけグッと刺さればいいという商材等を除いては、インフルエンサーマーケティングだけでは期待できる効果は限定的だと思います。
インフルエンサーマーケティングはあくまでメッセージの信頼獲得の方法のひとつであり、認知獲得のためには別の手を打ったほうが絶対にいいと思います。
というわけで、インフルエンサーマーケティングとは有名人ではなくてもいい、デジタルではなくてもいい、ソーシャル、Instagram、YouTubeではなくてもいいという話を簡単にさせていただきました。
本田:ありがとうございます。インフルエンサーマーケティングというと、デジタルだったり、ソーシャルメディアだったり、ちょっと有名人というかセレブ感のある人というイメージがあったかと思います。
「そうではないよ」というのが足立さんからの一番のメッセージだったと思うのですが、足立さんはマクドナルに移られて2年くらいですか?
足立:2年半くらいです。
本田:足立さんが来られる前のマクドナルドというのは、インフルエンサーマーケティングと呼ばれるような領域ではどのようことをされていたんですか? けっこう変えられたんですか?
足立:実はInstagramもTwitterもFacebookもアカウントはあったんですけど、基本的には広告やPOPと同じ写真やコピーを一方的に流すだけで、何か話題にしてもらおうという工夫は少なかったんですね。
あともう1つ、マクドナルドは比較的マス広告を中心としたマーケティングで成功してきた会社なので、ソーシャルというのは、アカウントはあったけど、あまり積極的にやってなかったというのが現実かもしれません。そもそも広告で認知を取ってうまくいっていた時代だったので、そこ(PRやソーシャル)で信頼をあげようという考えが少なかったのかもしれません。
本田:冒頭でお話ししたのですが、インフルエンサーマーケティングという言葉はアメリカで出てきて、もう10年以上経っています。第1次初期インフルエンサーマーケティングブームは、SNSという言葉もない頃のブログメディアが出てきた頃です。
今日はいろいろな年代の方がいらっしゃるので「懐かしいな」と思う方もいらっしゃれば、デジタルネイティブ的な若いマーケターの方は「そんなの生まれたときからあるわい」と思われるかもしれませんが。
先ほどの「HOW」の話でいくと、結局インフルエンサーマーケティング、ニアリーイコール、ブロガーマーケティングだったというのは、ネット上に出てきた影響者がブロガーしかいなかったからなんです。
企業ではなく一般の方が生成するコンテンツということで、ブログの記事を書き始めた人たちがアメリカそれから日本に現れて、彼ら彼女たちをうまく使えないかというところから始まっています。そこでブロガーを使うことが、インフルエンサーマーケティングになってきたと。
何が言いたいかというと、今日にいたるまで「本当はWHOとWHAT、もっと言うと商材によるとHOW MUCHが大事なのに、HOWから入ってしまうよね」と。その後ブログブームもひと段落して、今度は2010〜2011年くらいから、今にいたるソーシャルメディアということで、FacebookとTwitterが出てきます。
Twitterにいる人はツイッタラーとか無理くり言ってました(笑)。Facebookにはそういう言葉はなかったかな? 要するに、メディアと紐づいた情報発信をする人。YouTuberもインスタグラマーもそうですね。
これ自体は別に否定するものでもないんですが、マーケティングを考えたときにおかしくなってしまうのは、「目的と手段がごっちゃになる」ということです。
足立:これには2つ問題があります。1つは売り込む側がだいたいメディアで分かれています。インスタグラマー施策はInstagramが売り込に来る。YouTuber施策はGoogleが売り込に来る、という感じです。
Googleの人が「(YouTuber施策と一緒に)Instagramもやりましょう」という提案は絶対にしてこないですよね。そうすると、Instagramをやるかやらないか、YouTuberをやるかやらないかという命題になります。 マーケティングコミュニケーションの全体像もなく、メディア包括でもなく、「HOW」のごく一部だけの話になってしまっているんです。
もう1つは、雑誌の記事などで「今はInstagramがとても有効」と出てしまうと、社内の上の人が「うちはInstagramやらないのか?」とか言い出すわけです。そうなると、Instagramをやるかやらないかという命題になってします。こちらも、マーケティングのお題としてはすごく間違ってますよね。
足立:他社で「これは効く」と聞くとやりたくなるのは気持ちとしてわからなくはないのですが、そのように「うちはInstagramやらないの?」「うちはTwitterやらないの?」「アカウントつくらないの?」という話が上から降ってくることは、現実問題としてよくあると思います。というわけで、僕はサプライヤー側とマネージメント側の両方に問題があると考えています。
本田:ただ一方で、Instagramがこれだけきていると、勝手にInstagramが盛り上がっているというよりも、特定のインスタグラマーをフォローする方が増えていることは事実だし、メディアとしてのインスタグラマーは、そこを自分たちのウリにしていくのは当然のことですよね。
そうなったときに数の話で、「フォロワーが多いからこのインスタグラマーは影響力がある」「そういうインスタグラマーがこれだけいるからInstagramというメディアは影響力がある」と。ある種このような理屈になっていくわけですけど、そこで「必ずしも数の話じゃないよ」ということが1つのポイントですかね。
足立:実際に、Instagramがどうこうという話になる理由は、「これを何人くらいにリーチしたいか」というHOW MUCHの部分が計画から抜ける場合があると思います。「こういう人たちに伝えたいから、(何人にリーチするかはともかく)Instagramを使いましょう」という感じで。
また、実はフォロワーの数はリーチの目安にはなりますが、インフルエンサーに一番大切な「信頼」とか「影響度」の指標にはなりません。今はたまたまInstagramの話でしたけど、YouTubeも一緒です。みなさん自分がInstagramやYouTubeを見ても、どんなに有名でフォロワー数の多いインスタグラマーでも、自分にはあまり影響力がない方、もいますよね?
もうひとつ、有名YouTuberがけっこう多く投稿しているけれど、結構な数は見られてはいない、という問題もあります。Facebookなどでも、皆さんのお友達が「俺がアップしたやつ見た?」と言われたけど、自分はぜんぜん見ていない、というご経験があるあると思います。これだけ(メディアが)いっぱいあると、この状況が普通なんです。
なので、認知獲得のためのリーチの絶対数では、ソーシャルはマスメディアには敵いません。ソーシャルはリーチした人に対する影響力はマスより大きいかもしれません思いますが、何しろ数で言うと数百万とかの世界じゃないですか。ちょっとあまりにも小さいわけです。
なので、インフルエンサーマーケティングは、マーケティング計画の最後の最後に、話題化・信頼獲得の目的のためだけに考えるべきです。また、話題化施策は当たることもハズレることもあるわけです。なので、「予算がないからうちはInstagramマーケティングに全額つぎこむぞ!」というのはすごくハイリスクなような気がします。
本田:予算の話じゃないってことなんですよね。ここは、マクドナルドさんみたいなBtoCで、テレビCMもあれだけやっていて、対象にしているお客さんの数が大きい企業ともう少しニッチ商材の企業では少し様子が変わってくるかもしれません。必要なリーチ数が業態によって狭くなってくると、インフルエンサーマーケティングがやりやすくなるのかどうか。そのあたりはどうですかね?
足立:リーチが多く必要ないという意味では、インフルエンサーマーケティングが効く確率が高くなってくるとは思います。ただ、興味がある人に明確にリーチしているインフルエンサー、またはインフルエンスができるようなメディアは実はあまりないんですよね。
ちなみに、BtoBのマーケティングには別の観点があって、実はインフルエンサーマーケティングは昔からあるんです。例えば、コマツさんの建機とか。
本田:建築の?
足立:建築用の機械を売るときに、まず専門家が出てきて「これはこんなに良いんですよ」と説明をするんです。まさに事実系のインフルエンサーマーケティングです。ネットがなかった時代から、(オウンドメディアのひとつである)パンフレットを見れば、専門家が「こんなに良い」と言っているんです。
本田:私もよく質問を受けるんですけど、BtoBだと華やかなYouTuberやインスタグラマーなどが遠く感じるんですけど、本質は何かというと、「自分で売り込むよりも誰かに推奨してもらったほうが良い」とか、「買ってくださる人は誰の影響を受けるのか」という話になると、BtoBにも大いに関係がありますね。
最終的に売り込みたいのは、相手企業のIT担当者の部長さんなんだけれども、その部長さんは誰の影響を受けるかという話になったときに、当然それはその企業の中の上司や社長かもしれないということがあるわけですよね。
どちらかというと、BtoBの営業戦略という話になるかもしれませんが、この人を落とすために誰から攻めたらいいのかということで、実は無意識にインフルエンサーマーケティングをやっているかもしれません。
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