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不機嫌な自分をやめるために!認知行動療法の専門家 中島美鈴先生新刊『脱イライラ習慣! あなたの怒り取扱説明書』発売記念【無料オンラインイベント】(全6記事)

職場であえて「不機嫌」を出したほうがいいタイプ NOと言えない人のための人間関係をラクにするヒント

『脱イライラ習慣! あなたの怒り取扱説明書』の刊行を記念して開催された本イベント。認知行動療法を専門とする臨床心理士・公認心理師の中島美鈴氏が、「怒り」を感じにくくするための「考え方」と「しかけ」を紹介します。本記事では、職場や家庭での人間関係をラクにするヒントをお伝えします。

相手のイライラに触発されて喧嘩になるパターン

中島美鈴氏:さて、事前質問でスライドにしていたのは以上なんですが、時間の許す限りQ&Aを見ていきます。

「相手が怒っている時に、同じようにこちらもイライラしてくることがあります。そのような時の対処法はありますか?」。そう、イライラってすごく伝播しますよね。だからグワーッて喧嘩になっていくんですよね。

一緒にイライラする人と、片方がイライラすると服従ポジションに入っちゃう人と、すごく極端なんですよね。こうなると喧嘩になるし、虐待が始まっちゃうしで、どっちも見ていられないんですけれども。

イライラしてしまった後にできることってけっこう限られています。これはどの本でも言われているのと同じなんですけども、その場をとにかく去りましょう。要らない発言をしたり暴力になる前に、その場から去るのが定番です。

なぜなら、失言を防ぐだけじゃなくて、その場に居続ければ、その相手がずっと視界に入ったり、その相手からなにか重ね重ねいろんなことを言われたりすると、刺激が止まらないんですね。

新たな怒りの火種となる刺激がブワーッと注いでいる時に、クールダウンできないじゃないですか。いったん刺激のないところに行って、新たな刺激がゼロになった段階でクールダウンして戻るのが、一番冷静になれるポイントなんですね。

会議でイライラしがちな人のための策

でも、相手も自分もイライラして、「よし、去ろう」とすると、だいたい挑発してくるんですよね。「逃げるのか」とか、「あんたはそうやっていつも話し合いからいなくなる」とか、「弱虫!」とかいろいろ言うんですけれども、全部無視でとにかく逃げてください。

「会議とか退出できない時はどうするか?」ということも聞かれるんですけれども。「今日、絶対キレるわ」みたいな会議とか、「うっかり変な発言をしちゃいそう」みたいな人は、マスクをしてミンティアみたいなものを口に入れてください。

発言するまでの障害を1個2個作っておくみたいな感じですかね。障害物競走の障害を作って、物理的に少し発言しにくい状態を作っておくというのは、ちょっとやったりもしましたね。

でもやはり、イライラが伝播した後にできることってそれぐらいでめちゃくちゃ少ないので、一番の理想は予防です。日頃から「すべき、すべき」とせかせかしたような思考形態がある方は、そこをちょっと気にして修正しておく。

「すべき」じゃなくて、「したほうがいいけど、できないこともあるよね。こんな例外もあるよね」と、やわらかくしておくと、少しイライラが未然に防げるんですよね。

「子どものためを思って叱る」は一切不要

次。「育児ですぐイライラしてしまいます。なにか対策はありますか?」。日本の子育てで「これはどうか」といつも思っていたんですけど、「叱らないと子どもが学べない」とまだまだ思い込んでいる人があまりにも世間に多くて。「子どものためを思って叱っているの!」とか言うんだけど。

あれを認知行動療法という立場から考えると、子どもに効果的な行動、やってほしい行動をいかに学習させるかというのをしつけだとしたら、あそこに「叱る」とか「怒る」とか、特に怒りか、ああいう激しい感情は一切要らないんですよね。

一切なくても子どもは学べるので、「叱らなきゃ」「感情を込めなきゃ」と思っている子育てから脱却するだけでも、かなりイライラが防げると思います。

あとは、やはり子どもと親の関係が近いというのは先ほども言ったんですけど。子どもの責任を負いすぎたり、子どもがまだ自分の一部のような気がして、「子どもの人生を背負わなきゃ」と思いすぎている親が……誤解を恐れずに言うと、まだ一心同体の親が多いなと思います。

なんでそう思ったかというと、例えば子どもが小学校に忘れ物をしないようにどんなに気をつけても、やはり年間1~2回は忘れ物をしちゃいません? でも親が、それが生きるか死ぬかの一大事で、「絶対忘れ物をさせちゃいけない」「失敗経験なんかさせちゃいけない」ぐらい神経質になっていると、イライラするんだろうなと。

失敗して、「あ、このようにしたら失敗しちゃうね」というのも、子どもの間違える権利で、非常に貴重な体験なんですよね。「夏休みの宿題が間に合わない」というのも、けっこうあれは大事な経験で、大人になって同様の失敗をすると解雇されますもんね。

だから、失敗の経験、権利を奪わずに、「そうか。『最終日に泣きを見る』ってこんな感じなんだ」という一番駄目な際(きわ)と、「計画どおりいけば、こんなふうになるんだ」という大成功の際を両方体験しておく。そうすると、大人になって「どっちを選ぶ?」といった時に、子どもが一方の辛さを知っていると、別のほうを選びやすくなると思うんですよね。

なので、どこかで「子どもは別の生き物」「失敗してもけっこう糧になる」という信頼感を持っているほうが、イライラはしないかなと思います。

自己犠牲ポジションになりがちな夫婦関係

「朝忙しい時の夫の態度にイライラが爆発します。私のことを『お前』と言うタイプです。夫以外には温厚です。夜は子どもがいるので元通りになります。なにかアドバイスをいただければと思います」。

「お前、ネクタイ取ってこい」とか「カバンどこだ?」とか言うんですかね? 忙しいと、向こうも余裕をなくしちゃうということですね。かといって、「お前」は嫌ですね。「こっちだって忙しいのよ」という感じですよね。

この時も、じゃあ旦那さんが仮に「お前」と上から言う感じで、朝だけこうなっているとしたら、この質問者さんが、間違ってもここじゃ駄目なんですよね。(旦那さんが)鍵を持っていこうとするけど、「おい、鍵がない。どこだ」とか言われて、「え? どこかしらね。私がちゃんと置いていなかったから」とか、尻拭いをするような自己犠牲ポジションに入っちゃうと、「おい」がずっと続いちゃうんだけど。

「さあ。どこだろうね?」と、どこ吹く風みたいな。「あなたの準備に私は関与していませんよ」「自己責任ですよ。がんばれ」みたいな、どこか他人行儀というか、いい意味で距離感を取って「がんばれ」と言ってあげる。



夫ももっとイライラするでしょうけれども、「自分のことだしな」といつかわかってくれるといいなと思います。夫婦関係は長いので、ここであんまり責任を負いすぎず境界線を引いちゃいましょう。

仲良しグループの飲み会に参加したがる上司

次は、「十数人の部署で働いています。職場で仲良しの下っ端の平社員と、アルバイト同士数人で飲み会をしているんですけど、上司が飲み会で誘われないことに不満があるそうです。上司が来ると気まずくて嫌なのに、交ざってこようとしてイライラしてしまいます。職場で一部の仲良しグループに嫌いな人が交ざってくる時は、どうしたらよいでしょう?」。

なんで飲み会がバレちゃったんだろう? それはプライベートなのに災難ですね。でも、私は年齢的にそっちの上司側の年齢じゃないかなと、怖いなと思うんですけど。うーん……これは毎回招く予定ですか? 私なら絶対こっそりやりますけどね。

「上司には言えないこともあるんですよ」と冗談っぽく言いますか? とにかく阻止します。そんなプライベートまで呼ぶ義理はないし、お互い「何のための飲み会やら」という感じですよね。

なので、上司側の人数は、たぶん上司なりにやはり気にするんですよね。「みんなで仲良くしたい」はあるんだけど、そこまでいい人になって誘ってあげなくてもいいんじゃないかな。無理は続かないし、結局たぶんこのアルバイトさんも、飲み会に来なくなりそうだなと思って心配でした。大丈夫ですよ。そこは1回誘ったら十分優しいと思いますよ。

怒りを抑えようとして消耗してしまう

「今日の話の大筋は、怒りを大きくしすぎないように、解釈や行動を変えるという話かなと感じたんですが、一方で自分の中で怒りが大きくなってきた時にどうするかという点についての質問です。自分自身はそういう場合に、怒りを抑えるためにじっとして、時間の経過で気持ちが落ち着くのを待つというような対処をする」。すごい。

「それをすると、いろんな意味で自分が消耗して、なんか癪な気がしています」。そうですよね。実は本の中でもこういう怒りについて書いたんですけれども、この方は本当に消耗されただろうし、強い方だなと思います。怒りの炎が燃え尽きるまで、ちゃんと自分の中で燃やし切れたという人なんですね。

やはりこれを1人でやるのは消耗なさったと思うので、誰かに聞いてもらって発散する。十分わかってもらいながら、炎が燃え尽きるのを見届けてもらうと、さらに短時間で消火活動ができるのかな。そんなに消火は急がなくていいんですけど、ちゃんと食べ物の「消化」のように、噛み砕けるのかなという気もします。

あとは、私は認知行動療法が専門なので、こういった時は自分の中でどんどん熟成していく怒りに対して、怒りを超えるぐらいの大事なものを持ってくるようにしています。例えば相手と自分は同じ職場にいて、同じ仕事をしなくちゃいけない切っても切れない関係。

そういう時に、ものすごく相手に怒りを持っていたとしたら、そこでふと「待てよ? 私はこの怒りさえなければ、本当は何をしたいんだっけ? この人も含むこのメンバーで、こんな仕事を成し遂げたいんだよな。そもそも私がこの仕事を始めたのって何でだったっけ?」とか。「私が人生で成し遂げたいことって何だったっけ?」と、なかなか偉大な理想というか価値を持ってくるんです。

そうすると、怒りみたいなちっぽけなものに足を引っ張られずに、「私はこっちを叶えたい」みたいにシフトができて、けっこうこのへん(上のほう)から、わーっと俯瞰できるようになると思うんですね。

「いや、この人はもういいか。ちょっと変なことを言おうと、私の権利を侵してこようと、すごくひどいことを言おうと、私はこっちのほうが大事だし」みたいな。「こんなの宇宙のゴミだぜ」みたいな感じで大きく見られると、悟りじゃないけど、すっごく楽になります。

誰かに対する怒りや恨みって、なかなか人に話すことに抵抗や遠慮がありませんか?正直聞く側の負担はありますしね。そうした場合には、人生で本当にしたいことをいっぱい語る会を開くのはどうですか? 「私ってさ、これがやりたいんだよね」みたいな。そうすると、けっこう前向きなエネルギーで包み込めたりします。全部手放せたりするので、やってみてください。

何日経っても怒りが収まらない時は

「職場で一度怒りを感じると、90秒どころか、90分以上経っても、時には何日も収まらず、短時間その場から離れるということでも対処することが難しいんですけど、職場でできる怒りを収める対処法はありますか?」。いや、ありますよ、私も。私は根に持つタイプだから、90分、いや90日、いや1年経っても忘れない怒りだってあります。

その場合も、心の底で「こんちくしょう」と思いながらも、やること・やらないことリストで日々を乗り切りつつ、先ほどの上の方の質問でやったような、怒りに囚われずに、自分がやりたいことに夢中になってみる。というのが、一番健全で怒りにフォーカスしすぎない方法なんじゃないかなと思います。

「親子関係で多い悩みと、対処を教えていただけないでしょうか」。親子のどっちのポジションですかね? 子ども側だったとしたら、親の過干渉とかですかね? 親だったら、「子どもが心配で心配で」とかになるんでしょうかね? 

でも、親の立場から子どもを心配してという悩みは多いですよね。心配が尽きないし、子どもと一言で言っても種類が多いですもんね。ほうっておけない、ちょっと失敗のつもりが大失敗だったり、取り返しがつかない、誰か人さまに怪我を負わせてとか。それも治らないような、障害が残るような怪我だった場合とか、いろんなケースがあるから、一筋縄じゃいかないのが子育てですものね。

子育ての講演をしたり、本もいっぱい書いたりしていますので、今後は子育て講座にも力を入れていきたいと思っています。ぜひまた詳しく説明させてください。でも、子育てこそ認知行動療法を知っておいたほうが絶対うまくいきますし、つまずかない。方針が立てやすいのでいいですよ。すごくお薦めしています。

職場でいつもニコニコせず、あえて不機嫌になってみる

「美鈴先生も、イライラすることをぶつけたことはありますか?」。あります、あります。めっちゃ眉間にしわを寄せて不機嫌になっていたりとかしますね。でも、怒鳴る必要まではないんですけど、たまにはちょっと不機嫌になってみせるのも大事ですね。

いつもニコニコして、反射的に「あ、すみません」とか謝っていると、結局この人の境界線がどことか、この人は迷惑がっているとか。イエスサインなのか、ノーサインなのかが相手に伝わらないから、ずっと嫌なことをされ続けているというケースもあるんですよ。

だから、ちょっと困ってみせるとか、「弱ったな。それはわかんない」とか、「うーん。急ぎたい。早く帰ります」とか、そういうのはあえて言うようにはしています。そういう時、私も中年になったなと思いますね。

「自己肯定感をどうしても高められないです。自分がなにもできない、必要とされていないと思ってしまいます」。そうね、私もそう思うと、自己肯定感はあまり上がっていないんですけど。でも、「できる範囲の自己肯定感って何だろう?」という話を最近けっこうしています。

「自己肯定感って、具体的にどの行動がどうなったら上がりますか?」という話をしていたら、なんてことはなかったんですね。例えばこのへんにあるペットボトル。別にあんまり残量も少なくて、さっさと捨てりゃいいのにずっと置いていたものを捨てるとか。

「え? そんなので上がるの?」と言われるかもですけど、これがずーっとのさばっていたら、これを見るたびに「あー、私ってこれも捨てない、だらしない人間」と思って自己嫌悪って、こんなちっちゃなところから積み重なっていくんですよね。

となると、これも見過ごせないですよね。こういうことを、ちょっとずつちょっとずつ捨てるとか、片付けるとかしていくと、地味~に自己肯定感が上がっていきません? そういうことから始めるのでもいいんじゃないかなと思っていますが、どうでしょうか。

つい家族の機嫌を取ってしまう

「悪口を言う人がとても嫌で、それを見聞きした時に悲しさや苛立ちを覚えます。親の悪口で苦労している」。それが影響しているかもですね。悪口を言う人って、「直接相手にぶつければいいのに」と思いますよね。でも、ぶつけてもいいぐらいのかわいい悪口を、どうせなら言ってほしいですよね。

でも世間の人は意外と悪口を言ってると思いませんか。恐らく、この質問主さんがされたような親の愚痴は、小さい頃はめちゃめちゃ怖くて深刻なものに聞こえたかもしれないけど、大人になって言う陰口はそんなに深刻じゃないし、この方にとっての影響度はほぼないんですよね。

なので、「あ、あれとこれとは別なんだ」と思って聞いて、「もう愚痴りたくもなるよね」ぐらいで流しておくといいと思います。ぜんぜん別物だと区別してあげてみてください。

次の質問です。「家族が不機嫌だと、気にしないようにしてもイライラというよりは不安になったり、ドキドキソワソワして機嫌を取っちゃいます」。

本当に奥さんや子どもに悪いんですけど、「自分のご機嫌も取れないようなやつはほうっておけ」というのが私の鉄則です。多少自分に原因があったとしたら、直接「これこれこうしてほしかった」とリクエストしてくれればわかる話じゃないですか。

ただ不機嫌なのって赤ちゃんじゃないですか。なので、それはまた「請け負わないよ」みたいなのをやってもいいんじゃないですかね。と言っても気になるかと思うんですけれども、なにもかも背負い込まない。「機嫌は自分で取りなさい」を、それぞれのルールにしていくのが秘訣かなと思います。

本日はありがとうございました。

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