2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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足立光氏(以下、足立):インフルエンサーマーケティング自体は昔からあって、メディアの種類が増えただけというのが正しい理解だと思います。時々この例を出すんですけど、1つの事実をBtoBにもBtoCにもインフルエンサーとして使っている古い事例があります。
例えば、虎屋のようかんは天皇家に入れていること(皇室御用達)によって、御進物にもすごく使ってもらえるし、個人でも買いに行くわけです。その事実がすごく効いているから。あれはまさに事実系のインフルエンサーだと思います。
本田哲也氏(以下、本田):お墨付き。
足立:お墨付き、というインフルエンサーマーケティングというのは、実は江戸時代から、もしかしてもっと前からあるんですよね。
本田:そうですね。今日の1つのポイントになると思うんですけど、あまりデジタルだ、Instagramだ、YouTubeだ、ということに惑わされないで、基本はB to BもB to Cも同じですというところですね。
リーチや(対象の)広さについてどう考えればという話から、深さの話にいきたいと思うんですけど、さきほどの生徒会長の選挙のたとえ話は、リーチの話というよりかは、どれだけ信頼感や深さをもってメッセージが伝わるかという話だと思います。
インフルエンサーマーケティングは、ともするとYouTuberやインスタグラマーを使って、広告費を使わずたくさんの人にリーチしようと思ってしまう側面もありますけど、そうではなくて深さが大事ですよね。
足立:先ほども言いましたけど、言っているメッセージは全部同じで、違う人が言うことによって信頼度が変わると。その違う人がどのメディアで言うかに関しては、実はあまり重要ではないと思います。
医薬業界がわかりやすいんですけど、コンタクトレンズを売ろうをすると、眼科医の推奨をみんなが取りにいくわけです。「この眼科医が推奨しています。だから使ってくださいね」という典型的なB to Bインフルエンサーマーケティングです。 これをいろんな(オウンド)メディアで展開する。
実はこのWHOとWHATをちゃんと定義してあげると、そこにリーチしているメディアは何、そこに信頼がある人や組織は何、という順番で考えるので、Instagramなどの個別メディアの選択の話は、やっぱり最後の最後なんですよね。
本田:そうですね。今出ている、WHO、WHAT、HOW MUCH、HOWですけど、もう少し身近で考えて、日々マーケティングの仕事をされているときに、ことインフルエンサーマーケティングになるとこのHOWから始まっている話が多いと思います。
インスタグラマーを使うことがありきで、どこに発注したらいいんだろうとか。でも決めるべきことというのは、このWHOやWHATが最初にあって、「ターゲットはこうです。伝えたいことはこれです」と。
本田:インフルエンサーが必要なのは、みなさんが自分で言うよりも説得力が増すとか、みなさんが自分で言うよりも共感していただけるとか、みなさんが出ていけないようなメディアの中で代わりに言っていただけるとか。つまり、自分でできないことが何かということが非常に重要なので、全部自分でできるならいらないわけです。
足立:まさにおっしゃるとおりです。インフルエンサーというのは、自分で言うよりも圧倒的に信頼が高いわけです。自分で言っても信頼があるなら、余計な手間をかける必要はないです。
本田:あまり言えないかもしれないですけど、マクドナルドさんの中ではそのような取り組みをやるときの会議の進め方で言うと、どうですか?
足立:昔は普通の商品マーケティングだったので、例えば「なんとかバーガー」という商品を先に作って、どうやってマーケティングしようかと考えて、コミュニケーションを作っていくという流れでした。
一昨年くらいから、この順番を逆転させて、まずはどんなキャンペーンで話題を作りたいか、ネット上でどんなことを言って欲しいかを先に決めて、それに合う商品を開発するという順番にしています。そこがけっこう変わったことだと思います。
本田:私もよくPRのプランニングなどでお話しするんですけど、結局「HOWは最後だよ」と言いながらも、HOWでインフルエンサーが必要なのであれば、それは逆算して、WHATを決めるところに逆に効いてくるということがあります。
どういうことかというと、最終的には自分たちだけで言っても説得力がないから、HOWでインフルエンサーを使おうと言っていても、その前に投げようとしているメッセージがめちゃめちゃ独りよがりのものだったらインフルエンサーが巻き込めません。インフルエンサーは広告ではありませんから、お金で買うものではないんです。
もちろんインフルエンサーのサービスを利用するときに、事業者にお金を払うというのはあります。ステマの問題もありますから、関係性の明示は必要なんですけれども、基本的にはお金で買い叩くのではなくて、インフルエンサーが伝えたくなるような話とか、インフルエンサーが推奨したくなるような状態を作ることもみなさんの仕事です。WHATが重要ということですよね。
足立:WHAT自体は「これはおいしい」とか、「これは優れている」とか、どの会社でもそんなに変わらないと思うんですけど、それを「どういう(響く)メッセージにするか」だけだと思っています。ご自分がどういうときにSNSでシェアするかを考えたらすぐわかると思うんですけど、極論すると、人がシェアするときは2パターンしかありません。
1つは「みんなが知らないかもしれないけど、自分は知っているから、これをシェアしてあげたい」。もう1つは「自分の感動や笑いを分けてあげたい」。このどちらかじゃないと、基本的にはシェアされません。
なので、普通の広告メッセージで「チキンタツタ出ます」というのは、プレスリリースの初日だったら「みんな知らないかも」ということでワーっと拡散しますけど、数日するとまったく拡散されなくなりますます。なぜなら、もうみんな知っているから。
感動や笑いはなかなか難しくて、やたら感動的なビデオを作るんですけど、「(ユーザーが)何と言って共有するの?」というあたりの仮説が弱かったりするんですよね。何と言って共有してほしいかを決めてると、その先にどんなコンテンツを作るかがだいたい決まってくると思います。
本田:私もPRの仕事をしていて思うんですけど、日本企業はBtoBもBtoCも広告でダイレクトに伝えようと考えがちなので、間に第三者が入ってくることにまだまだ慣れていないというのがあります。
インフルエンサーが間に入ることで効果を上げようとしても、通り一遍の商品メッセージや企業メッセージだとクチコミする理由がないんですよね。
シェアしたり広げる理由がないとなると、「なんでそれを広げないといけないのか」とか、「単なるお涙頂戴で本当にシェアしてくれるのか」とか。ここにすごく知恵を使わないといけないわけですよね。
足立:まったくそうだと思います。みなさんによく言っていることがもう1個あるんですけど、いまだにインフルエンサーも含めて、ネット系の話をしようとしたときに、実は意外とお金がかからないのに、(大きな投資が必要な)広告をやる場合とほぼ同じ承認プロセスだったりするんです。
なので僕がいつもお薦めしているのが、もしもYouTuberを使って何かしたいというレベルのやつだったら、勝手にやっちゃえばいい。たぶんみなさんの承認権限の予算範囲内に収まるくらいの値段でできちゃうんですよ。こういうインフルエンサー系のいいところというのは、失敗したらまったく話題になりません。だから社内で誰も気が付かない(笑)。
(会場笑)
足立:本当に誰も気が付かないから大丈夫です。いっぱい失敗しましたよ。でも、その失敗を闇に葬るのは簡単です(笑)。ただ、成功すると目にとまるんですよ。そうやってだんだん知見や蓄積ができていくので。かかる予算はマス広告と比べたらぜんぜん少ないじゃないですか。
もう1つ最後に、マス広告もそうですけど、上の方々は比較的ネットをやっていない人が多いんですよ。「インフルエンサーマーケティングやInstagramをやれ」と言ってくるような人に共通なんですけど、自分でがやっていないんです。なので、そういう人たちから、無理に何か理解とか承認を得ようとしないことだと思います。
会社で「戦略PRしましょう」と宣言してしまうと、すごい抵抗にあいますが、戦略PRの内容を「普通のPRです」と言って勝手にやってしまうと誰にも抵抗されません。なのでいちいち、「インフルエンサーマーケティングをやります」と宣言せずに、勝手にやってしまうと、どんどん先に進んでいきます。これはお薦めです。
本田:インフルエンサーマーケティングは勝手にやろう、と(笑)。
足立:インフルエンサーマーケティングと言ってしまうと、言葉が新しくてみんな理解しないし、期待値が上がってしまうので、言わない。そうすると比較的やりやすいと思います。
本田:今ちょうどお金の話も出ましたが、一般的にインフルエンサーマーケティングは広告とかプロモーションよりも費用がかからないと認識されていますね。これもまた、企業によって違うと思うんですけど。
例えば、足立さんの中で、マス広告に使うバジェットとインフルエンサーマーケティングに投下するバジェットの考え方とかどうですか?「いくらですか?」とはさすがに聞けませんけど。
足立:商材やカテゴリーによってぜんぜん違うと思っています。マクドナルドはけっこう特殊だと思っていて、日本の人口の約6割〜7割が過去6ヶ月以内に1回は来店されています。そうすると、基本的に既存ユーザーしかいないので、どこかにターゲットを絞りすぎると、ビジネス全体への影響が少なくなってしまうんです。
なので、マス(広告)は絶対に必要だと思っています。アメリカや中国と違って、日本はまだまだマス(広告)の効率がすごく高いです。リーチ・パー・コストで、実はまだマスに敵うものはありません。
また、日本の人口の半分以上がシニアという、デジタル業界の方々にとっては「不都合な真実」があります(笑)。シニアには、デジタルではまったくリーチしません。ターゲットが若い人だけだったらいいですけど、そうでない場合、デジタルですべての認知を獲得しようとするのは、かなり無理があると思います。
自分のおじいちゃんがスマホでFacebookやInstagramをやっていますかというと、まずやっていないわけですよね?そうすると、マスとデジタルのどちらかを使うという話ではなくて、両方をバランスよく使っていくという話だと思っています。
本田:本当はインフルエンサー周りに投下するバジェット予算とマスプロモーション的に投下するところの比率というか、自社内での黄金比率が見出せていくと、費用対効果が全体として高くなってくると思います。
足立:我々としては、(お客様に)毎月・毎週いらしていただくのが仕事なので、マス(広告)は必須なんですけど、車みたいに数年に1回しか買わない商材とかだと、比較的ディープにターゲットを絞れるかもしれませんね。
HOW MUCHを考えたとき、リーチしたいターゲットが日本で数万人しかいないとしたら、マスはありえないです。昔、紙おむつのパンパースを担当していたことがあるんですけど、実は紙おむつが必要な子どもを持つお母さんってすごく少ないんです。
本田:おむつなんかだと、300万人くらいですよね。
足立:「そのためにマス広告をやる意味があるのか」と延々と討議しましたが、その時はメディアがマスしかなかったから、仕方なくマスを使ってました。でも、今はネットがあるんですよね。
本田:そうですよね。インフルエンサーマーケティングとPRの組み合わせで、リーチも深さも担保できるケースがあると。最後のトピックになりますけど、(インフルエンサーマーケティングは)コントロールできないという問題がありますよね。広告のように完全にコントロールできないですよね。
足立:完全にコントロールはできませんが、だいたい「何をどのように言ってほしいか」はこちらから想定・シミュレーションして打ち出していくので、それとすごく違ったことで炎上することは少ないです。話題は「なる」ものではなくて「起こす」もんだと。
本田:名言が出ました(笑)。ありがとうございました。話し足りないですが、時間がきてしまいました。
本田:マーケティングテクノロジーフェアの「インフルエンサーマーケティング2.0」という題目で、最新のYouTuberやインスタグラマーをどう活用できるかという、わりとHOWな話だと思って来られて「あれっ、ちょっと違ったな」という方には申し訳ないんですけど。
これはHOWの話より絶対に重要だと思っていまして、どれだけメディアが進化しようが、次のインフルエンサーグループが出てこようが、今日の話を理解していなかったらインフルエンサーマーケティングの成功はないと思っています。
そのような意味合いでセッションが持てたと思うんですけど、足立さんから最後にどうでしょう? これからのインフルエンサーマーケティングの展望について。
足立:2つしかなくて、インフルエンサーマーケティングは江戸時代からあるわけです。ただし、信頼を得ることのできる適切なメディアと適切な人(スピーカー)は、時代によって移り変わっていきます。
ついこの間まで、mixiが全盛の時代がありましたよね?メディアと人(スピーカー)はどんどん変わっていくんですけど、インフルエンサーマーケティングという手法は、比較的不変のものだと思っていますということが1つ。
もう1つは、勝手にやってくださいと。承認を取ろうと思うといろいろな苦労をすると思うし、モノによってはそんなにお金がかからないはずです。
なので、みなさんのご自分の承認権限を最大に活用して、成功例をどんどん作ってください。成功例が出てくると、どんどんまわっていきます。多分、ソーシャルとかネットは、わからない人に説明しようと思っても無理……すごいシーンとしてきましたけど(笑)。
本田:(笑)。最後のオチが「勝手にやってください」というセッションはこの2日間でここぐらいかもしれませんけれど、まあ逆に言うと、いろいろやりようがありますし、みなさんチャレンジのしがいもあるかと思います。長い時間でしたけれども、インフルエンサーマーケティングの話にお付き合いいただきまして、どうもありがとうございました。
足立:ありがとうございました。
(会場拍手)
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