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GO技術書執筆者が考えた「2064年もITで仕事をし続ける」ためのキャリアプラン(全3記事)

2064年もエンジニアで稼ぎ続けるには Python歴20年のベテランが語る、生成AI時代のキャリア戦略

フューチャー株式会社(フューチャーアーキテクト株式会社)の講演では、シニアアーキテクト渋川氏と若手コンサルタント大岩氏が、IT業界の現状と未来について語りました。Python歴20年の渋川氏は、生成AIの台頭や若手エンジニアの活躍を踏まえながら、2064年までITで仕事を続けるためのキャリアプランを提示。特にドメイン知識とプログラミング知識という2つの観点から、今後のIT技術者に求められるスキルと生存戦略について具体的に解説しました。

Python歴20年のシニアアーキテクトと若手コンサルタント

渋川よしき氏(以下、渋川):はい。それでは始めたいと思います。私からは「2064年もITで仕事をし続けるためのキャリアプラン」というタイトルで発表します。私はフューチャーの渋川と申します。

まず、お前誰よということですけれども。現在、社会人歴20年ぐらいですかね。大学は電気電子の専門だったんですけど、ずっとIT系で仕事をしています。1社目は自動車の会社です。ホンダ(本田技術研究所)にいて、次はディー・エヌ・エーで、3社目がフューチャーで、フューチャーに入ってからかれこれ7年が経ちます。

今はいろいろと本を書いたりもしています。好きな言語はPythonで、大学からやっていて、もう20年ぐらい。GOとか、TypeScriptで仕事をしたりもしています。プログラミング以外はインラインスケート。これも大学から20年ぐらいやってきました。そんな感じです。

「本をいっぱい書いています」ということなんですけども。ちょうど4月なので、もうすぐ『Real World HTTP』の第3版が出ます。ちょうど先週、原稿を書き上げたところです。絶賛修正中というか、このプレゼンの10分前に自分の原稿の修正が終わって、もう1冊出る予定です。

※「絶賛修正中」と記載の本は2024年6月に出版済み。『[入門]Webフロントエンド E2E テスト――PlaywrightによるWebアプリの自動テストから良いテストの書き方まで』(技術評論社)

僕がどういう人かを知ってもらうにはどうすればいいかなと大岩さんと相談した時に、「今までにバズったツイートを出せばいいんじゃないんですか?」みたいに言われたので、ちょっと書いてみました。基本あれですね。あまり真面目なツイートよりも、ちょっと不真面目なツイートをがんばっているみたいな感じでやっています。

じゃあ次は大岩さん、お願いします。

大岩潤矢氏(以下、大岩):はい。みなさま初めまして。フューチャーのコンサルタント、大岩潤矢と申します。本日は渋川さんのアシスタントとして、みなさんと一緒に講演を盛り上げていければと思います。どうぞ、よろしくお願いします。

簡単に私の自己紹介をしますと、私は2022年7月に新卒でフューチャーに入社して、今2年目の駆け出しコンサルです。フロントエンド、バックエンド、インフラ、幅広い領域のシステム開発に携わっていたり、はたまた最近ではビジネス領域。例えば、お客さまと話して物事を決めていくことにもチャレンジしています。

実は私は今から4年前、2020年の技育祭でフューチャーを知り、そのまま入社を決めた人です。本日の講演の後半には「フューチャーとは、どんな会社なのか」「ITコンサルって、どんな職なのか」の紹介もありますので、ぜひ今日はたくさんのことを知って、学んでいってほしいなと思います。

みなさんからいただいた質問やつぶやきについては大岩がキャッチして、このあとの質疑応答タイムでまとめてお出しできればと思いますので、チャットに書き込む内容は何でも、いつでもOKです。自分もチャットに張り付くので一緒にワイワイしましょう。よろしくお願いします。

渋川:はい。ありがとうございます。僕が学生だったのはもう20年前なので、新鮮なネタは大岩さんが回答してくれるはずです。大岩さん向けの質問も、ぜひお寄せいただければと思います。

大岩:がんばります!

生成AIと2064年のIT業界の展望

渋川:さっそく本題に入っていきます。今回の技育祭のほとんどの発表が、きっと生成AIの話を最初に出すんだろうなという気はしています。2023年からちょくちょく出てくるようになった話題としては、「生成AIがすごいよ」と。そうすると「プログラマーは、いらなくなるんじゃないか」みたいな話も出ています。

生成AIの影響を受ける職業としてプログラマーがあげられることもあります。実際にこれとは直接関連していないと思うんですけれども、アメリカのプログラマーの人材募集がだいぶ減ってきていますよというのも聞きますね。単純に不景気という話だと思いますけど、そういう話も出てきています。

実際に今日聞いている学生の方も、きっと将来IT業界で身を立てたいなという方がいっぱい参加されていると思うので、ちょっと不安に思っている方もいるのかなと思います。

一方で、今回のタイトルに「2064年」みたいなことを入れたんですけれども。だいたい技育祭に参加されている方というと、学部2年生とか3年生が多いと聞いています。今は20歳ぐらいだとすると、定年まで働くと、きっと2064年ぐらいだろうということでタイトルに入れました。

実際には「人生100年時代」とかを言い出していて、年金が出るかわからないのでずっと働けるうちは働かなきゃみたいな話も出ています。僕は今もう43歳ですけれども、僕自身もたぶん2064年はまだ働いているんだろうなというところで考えています。

僕自身もずっとITで仕事をしていて、今後もしていきたいなと思っているので。みなさんと一緒にこの不安な時代をどうやって生きていこうかなというところです。自分のキャリアをどういうふうに考えているかを、みなさんにお伝えできたらなと思っています。

IT業界の変遷「低賃金から人気職種へ」

渋川:まず、私が学生の頃はどんな時代だったかというと、プログラマーは給料が安い仕事と言われていました。それがSEになると給料がちょっと高いみたいな感じ。直前のセッションでパーソルキャリアの岡本(邦宏)さんの話も最後だけ聞いていたんですけど、「昔はブラックな職場も多かった」みたいなことを言われていましたね。残業も多いし「デスマーチ」という言葉もあるらしいと。

僕が高校生の時に読んでおもしろいなと思ったのは、この『闘うプログラマー』という、Windows NT 3.5という、けっこう前のOSの開発物語です。その本では、怒りっぽい上司がいて、怒って椅子を投げたりする描写もあった。(それが)情熱的でおもしろそうだなと思って、この業界に来たという感じですね。

プログラミングは中学からずっとやっていて。プログラミングが好きだったので、遊びでやっていたんですが「遊びのまま、お給料をもらえたらお得じゃん」みたいな。別に給料が低くてもいいかなと思って、プログラマーを目指しました。

大学の時に、アジャイルソフトウェア開発が日本に上陸してきて。プログラマー中心の文化で、自分がプログラマーで社会人になった時に、これが普及していたらきっともっと楽しくなるなと思いました。それで、日本XPユーザーグループの運営委員をやって勉強会を社会人向けに開催したり、社会人の人と一緒に活動したりというのをやって、学生時代にも本の執筆とか翻訳とかを行っていました。

時は流れ、いつの間にかITが超人気職種みたいになっていて。そうすると、優秀な方がIT業界を目指してきてくれる。当社の新卒で入ってくる若者たちがすごい優秀だなというのを最近感じてますね。

実際、僕はキャリア採用の面接官とかもやっているんですけれども、ITの世界は世間よりも給料が高い。平均よりもだいぶ高いというイメージが、世間的にも広まっているなと感じています。基本的には、ここ2年、3年ぐらいとかだと本当に人材不足で、募集している会社も増えていて、転職によっていいオファーが出やすいみたいな状況もあって、2年、3年で次の会社みたいな人も増えている感じはしています。

最初の冒頭で、AIの話をしたんですけれども。AIより前に脅威はなかったのかというと、実際に僕はすごく脅威を感じていて。というか、今日来てくださっているみなさんが脅威というか(笑)。自分が20歳の時よりも、みなさんのほうが圧倒的に優秀だなぁと。

なんでかというと、僕は大学生になって初めてインターネットを触って、中学でC言語とかの本を買って勉強してもぜんぜんわからないし、教えてくれる人もいなくて。5年間かけてもオブジェクト指向はよくわからないみたいな感じで、スローな感じで勉強していたんです。

最近の学生のみなさんを見ていると、もうそのへんは当たり前で、もうWebのサービスとかもどんどん作っちゃうしみたいな。競技プログラミングとかもランクがすごく高いしみたいな。

あとは最近一緒に仕事をしている2年目の若者。大岩さんと同じ年に入った若手のメンバーなんですが、すごくて。僕は社会人歴が20年なんですけど、僕よりもその若者が作った資料のほうがきれいで、お客さまも感動していることにも出くわしています。

そんな感じで、若者はすごいと非常に感じています。なので僕自身もAIが話題になる前から、もうプログラミング力だけで勝負していたら、きっとそのうち勝てなくなって給料が下がることが目に見えていたので、自分の生存戦略はずっと前から考えていました。なので僕にとっては、若者の脅威が生成AIに変わっただけで、そんなに変わっていません。

おそらくここにいるみなさんも我々30代、40代よりはずっと優秀なんですけど、きっとみなさんも同じ気持ちを今は味わっているんだろうなと思っています。

その話につながるのが、2023年ぐらいにすごく話題になった情報Ⅰというやつですよね。これがなんか、触れている内容がすごく実践的な内容で。高度な内容なので、これを学んできて、しかも大学にそのあとに入って、さらに知識を深めた学生さんとかが社会に出てきたら、きっとすごいことになるんだろうなと。きっとみなさんもドキドキしていることだと思います。

僕自身も知り合いが、ここの『仕事に役立つ新・必修科目 情報Ⅰ』という本を書いていて、そのレビューとかに参加して、いろいろコメントしつつ、読ませてもらったんですけど、きっと僕自身の未来はともかくとして、日本のIT業界は明るいなというのは、すごく感じています。

ソフトウェア開発に必要な「ドメイン」と「プログラミング」

渋川:このような時代で、優秀な大学生もいっぱいいて、情報Ⅰ・Ⅱを学ぶ高校生も、これから来て、さらに生成AIも来て。こんな中でもITの仕事をし続けるために今僕が考えていることを説明します。

まずIT技術者というのは、ソフトウェアを作る仕事です。ソフトウェアって何だろうかというところを立ち返って考えてみると、ソフトウェアを作るには2つの知識が必要になります。1つは作りたい対象の知識ですね。「ドメイン」と言ったりもします。もう1つがプログラミングの知識です。

例えば「銀行のシステムを作りたいです」というとプログラミングの知識だけではダメで、金融の知識とか、もちろん金融にまつわる法律の知識とか、さまざまな知識が必要になります。お店をやりたいので、小売りのシステムを作りたいですというと、もちろんモノを売るためのモノを運んでこないといけないので、その流通の仕組みも必要だし、実際に持ってきた商品を売るための小売りの知識も必要になります。

偶然それが一致しているシステム開発というのも世の中にはあって、ソフトウェア開発ツールとか、ミドルウェア開発みたいなお仕事も世の中にはあったりするんですけれども、残念ながらそんなにパイは大きくありません。ここに入る人は、きっとコンピュータサイエンスとかをすごくがんばって成果を出している方とかだったら、選べるかなという感じですが、ここにいる、今日来てくださっている学生さん全員がそこに行けるかというと難しいなというぐらいではあります。

この2つの知識の比較をすると、ドメイン知識はオープンかというと、基本は会社のノウハウなので、あまり出てきません。出したところで、会社固有だったり一般性が低くて、あまりほかの人が重要だと感じない。公開されたのを見たところで、自分の仕事には役に立たないみたいなところもあったりもします。

加えて競争力の源泉だったりするので、オープンにされることはあまりなくて、会社の中にずっと留まっているという特性があります。

一方、プログラミングの知識というのは、オープンです。最近はオープンソースとかでもどんどん外に出していく文化が育っている気がします。実際に社内フレームワークとかはあったりはするんですけれども、やっぱりオープンソースのものの上に作られていることも多いので、外で公開されている情報とそこまで差がないというか。

一般的なプログラミング、Webサービスの開発の仕方とかを知っていれば、別に社内のフレームワークもすぐに使えるし。社内のフレームワークで仕事をしていたら一般的なプログラミングの知識も得られるみたいな感じで、そんなに差はなくて。ちょっとプログラミングを楽にするものが集まっているぐらいだったりします。

特にオープンソースを出すことは、会社の技術力のブランディングにつながったりするので。むしろ、どんどん積極的に出していく会社も増えていて、フューチャーもそのへんのいろいろなツールとかライブラリをとかを出していたりもします。

ドメイン知識、プログラミング知識を持つことは競争力にどう影響するか考えてみます。

ドメイン知識というのは基本、公開されていない情報なので、その仕事で取り組んでいくことによってしか得られない。ここで得た知識というのは自分の血肉になっていくのかなと思います。

一方で、プログラミング知識はオープンで普及度が高い。若い人が集中的に勉強するとキャッチアップできるので、歳をとってからここで勝負していくのはけっこう厳しいのかなと感じています。生成AIでもPythonコードを書いてもらうとすごく質の高いコードを出してきますよね。生成AIとかはこのへんもすごく得意です。

ただ、生成AIも万能かというと、ぜんぜんそんなことはなくて。世の中に情報が少ないものって、なかなか書いてくれないんですよね。僕も少し前に「Excel」のマクロの仕事があり、VBAで凝ったことをする必要が出てきて聞いたけど、ぜんぜん正しい答えを教えてくれなかったりとか。あとは僕の知り合いで関数型言語が好きな人が「Common Lispをぜんぜん役に立つコードを書いてくれないよ」と言っていたりとかするので、やはり普及度が高いものはいっぱい書いてくれるけど、そうでないものは、そこそこという感じですね。

業界のドメインは、いわばソフトウェアにおいて、プログラミングが筋肉であれば、神経のようなものかなと思います。実際にビジネスをしてお金を稼ぐには……。ちょっとこれは神経と筋肉の説明が逆になっちゃっていますけども。物理世界とか、別の会社のシステムに作用して、モノとかお金を動かすことによって初めてお金になる。そのお金がみなさんのお給料になっていくところがあります。

世の中でたまに完全にソフトウェアだけで完結する世界みたいなものもあったりはします。ビットコインの金融取引所みたいなやつですかね。ただ、ほとんどの世の中の90パーセント、95パーセントは物理世界に関与しているものが多いかなと思います。


(次回につづく)

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