AI関連の専門家や起業家が最先端のトピックについて講演を行う、AI Startups Career Night。2025年1月の第8回では、「Forbes 30 Under 30 Asia 2024」に選出された株式会社Closer CEO 樋口翔太氏、株式会社Yanekara COO 吉岡大地氏、株式会社ACES CEO 田村浩一郎氏が登壇。 本記事では再生可能エネルギーの普及につながるプロダクト開発を手がける、株式会社Yanekara 吉岡氏のプレゼンをお届けします。
ミッションは「地球に住み続ける。」
司会者:次は、Yanekaraの吉岡さん、お願いします。
吉岡大地氏(以下、吉岡):みなさん、こんばんは。Yanekaraの吉岡です。今日はお集まりいただきまして、ありがとうございます。私のほうから、Yanekaraの事業の紹介をさせていただきます。

まず、会社紹介ですが、私たちは東京大学発のディープテック・スタートアップで、約4年半前に創業した会社になります。今、千葉県にある東大の柏キャンパスのすぐそばにオフィスを構えて、研究開発および事業をしています。
どんなことをやっているかというと、基本的には工事不要で設置できる電気自動車の充電器や蓄電池とか、とにかく簡単に導入できる、再生可能エネルギーの普及に必要なデバイスを作っています。
これまでに2回、資金調達はさせていただいていまして、シードラウンドからDEEPCOREさんにはご支援いただいています。主要なお客さまとしては、日本郵便さんであったり、株主にもなってくださっている三井不動産さんです。
Yanekaraという会社なんですが、「地球に住み続ける。」という、非常に大きなミッションを掲げて活動しています。今日ご来場の方の中でも非常に若い方だと20代の方もいらっしゃるんじゃないかなと思うんですが、私もまだ20代で、創業した当初は22〜23歳でした。
やはり気候変動に対してすごく課題意識を持っていて、例えばテレビCMで「地球のために脱炭素をがんばりましょう」とか、「次世代の人のために脱炭素をがんばりましょう」みたいなCMってあると思うんですが、やはり私たちのような若い世代にとっては、「いや、次世代のためじゃなくて、私たちが当事者としてこの課題の影響を受け、自分たちの生存が脅かされる」といった強い危機感を持って創業しています。
じゃあ、地球に住み続けるために何をしていきたいかというところで、我々が取り組んでいるのは再生可能エネルギーの普及なんですが、再エネって実はいろんな電源があって、洋上風力みたいなでかい風力発電もあるし、陸上風力、バイオマス、地熱、太陽光もあります。

特に日本は太陽光が多いわけですが、どうしてもですね、メガソーラーで、自然を切り拓いて、分散型と言いつつもけっこう大規模に電源を作って自然を破壊しちゃっている例もあります。
再エネが普及するほど、需給バランス調整は難しくなる
吉岡:一方で、私たちがより注力していきたいと考えているのは、まさに「Yanekara」という社名のとおり、基本、屋根の上に太陽光パネルを置く。私たちは「電、動、熱」と呼んでいるんですが、電気とモビリティ、空調などのエネルギーを自給していくような世界観を作っていきたいと思っています。
再エネがどんどん入っていくと大きな問題が起きます。一言で言うと、最悪停電してしまうと。どんな仕組みで停電するかというと、太陽光とか風力って常に発電できるわけじゃないので、天候などでいきなり発電が止まったり、発電量が変わってしまいます。
そうなると、需要量と供給量が合わなくなって、周波数がぶれて、最悪停電すると。なので再エネの比率が増えれば増えるほど、需給バランスを取るのが難しくなる。このために、業界ではこれから蓄電池とか、電力の調整ができるエネルギーストレージがたくさん必要になると言われています。
実際ですね、例えばロンドンで大きな停電が起きて、これも原因は洋上風力が落雷で止まって、一気に周波数が落ちて停電までいくみたいなことがあったりします。
分散型電源で“21世紀の黒部ダム”をつくる
吉岡:この再エネが引き起こす課題を解決するために、私たちは事業目標として、「21世紀の黒部ダムをつくる」と言っています。
ちょっとよくわからないと思うんですが(笑)、どういう意味かというと、要はエネルギーストレージを作りたいと。ダムって、実はでかいエネルギーストレージなわけですよね。水を高いところに溜めて、そこに位置エネルギーを溜めている。
20世紀の黒部ダムは、もうみなさんご存じの黒部ダムで、あれは土木建築の技術を使って難工事をして、7年もの時間をかけて作られたエネルギーストレージだったと思います。
私たちがこれから作っていきたい21世紀の黒部ダムは、ソフトウェアやIoTの技術を使って短期間で、難工事ではなく、本当にEV充電器のプラグを挿すだけで、誰でも簡単にできるかたちで、分散型で作っていくエネルギーストレージ。
実は今、いろんなところにEVや蓄電池が普及していっています。黒部ダムに比べると1個1個の電池は本当に小さいんですが、それを中央の1つのクラウドシステムから一斉に制御すれば、いろんなところにあるエネルギーストレージから一気に放電したり一気に吸い取って、巨大なバッテリーのように動かせるイメージです。我々はそういった技術に取り組んでいます。
原発1基分の電力がバルコニーから生まれる?
吉岡:先ほどから「簡単にします」というふうに申し上げているんですが、具体的にどういう手法を取ろうとしているかというと、プラグインと呼んでいるんですが、要はコンセントにカチャッと挿すだけで使える蓄電池とかEV充電器を作っています。
今、ドイツで非常におもしろい動きが出ていて、よくある壁のコンセントにガチャッと挿して、そこから電気を逆流させて家に供給するみたいな技術が規制緩和によって可能になっています。それによって、自宅で太陽光発電をやりたい人がみんな自宅のバルコニーにDIYで太陽光パネルを引っ掛けていて。

ドイツの場合は、バルコニーにこういうコンセントがあるので、ガチャッと挿せば家に電気を供給できる。日本で言うと、コーナンとかそういったホームセンターに行って、キットを買ってガチャガチャみんなでつないだらできるようなものです。
どういうことが起こっているかというと、だいたい今、毎月1ギガワット。1ギガワットというのは、原発1基分なんですが、それぐらいのスピードで分散型電源が増えていっていると。私たちもこれを日本において興していきたいと思っています。
日本の現状を見てみると、例えば蓄電池だと安くて200万円ぐらい、高いやつだと定価は300万円〜500万円する電池がほとんどです。なので基本的にはこういうのを好きな人が趣味で買うという感じになっちゃっています。
本体価格はもちろんなんですが、工事費が馬鹿にならないぐらいかかっていて、今はがんばって補助金で賄っているんですが、いつまでも補助金が出るのかというとそうでもないので。EV充電器も同じように工事費が非常に高いので、私たちはそこを解決していこうとしています。
ハードウェアとソフトウェアの双方を開発
吉岡:これまでに「YaneCube」というプラグインのEV充電器であったり、「YanePort」というプラグインの蓄電池を発売しています。

YaneCubeに関しては日本郵便さんが最初のお客さまになっていただいて、郵便局に行くと、EV充電のコンセントが100個くらいずらっと並んでいて。ただのコンセントなので、まったく制御や計測ができないと。
そこにガチャッとYaneCubeを挟むと、電気代が安くなるタイミングで充電を始めたり、施設の電気設備の容量内で充電のタイミングをうまく輪番で切り替えるといったスマートな制御ができるものになっています。
2024年、プラグインソリューションの第2弾としてYanePortというのも発売しています。これはLooopさんという新電力の会社さんと組んで、電気代が安いタイミングで充電して、高いタイミングで放電する、さっきのYaneCubeとよく似た仕組みを蓄電池でもやっているんですが、これはただの蓄電池じゃなくて。最近けっこう流行っていてみんなも買っていると思うんですが、ポータブル電源というキャンプとかで使う小さい電池があると思います。
これのいいところは、テスラさんとかの数百キログラムあるような、めちゃくちゃごつい電池じゃなくて、1個10キログラムぐらいで、ポチッとECサイトで買ってヤマト運輸で届いて、ガチャッと開けて、家電につないだらセットアップできて使い始めることができると。そういった超小型分散型電源というのを作っています。
我々、実際に何をしているかというと、ソフトウェアも書いていますし、IoTも独自のデバイスを開発しており、ハードウェアとソフトウェアの双方を、自分たちで開発して提供しているような状態です。
以上になります。ありがとうございます。
(会場拍手)
司会者:みなさん、感じていただいたとおり、吉岡さんが発電しているんじゃないかぐらいの熱量でお話しいただいて。
吉岡:(笑)。
司会者:もう本当に、吉岡さんは電気が大好きというか何でも知っているので、何でも聞いてもらえたらなと思っていますが、最後に一言ありますか?
吉岡:私の共同創業者で技術側を担当している松藤圭亮というのがいるんですが、彼がEVユーザーになろうという取り組みの中で、最近自分でEVを買って。家に太陽光パネルも置いて、まさにYanekaraのやっていきたい生活であったり、自分たちの製品を試しています。
私も本当にそういう生活をやっていきたいなと思っているんですけど、なかなか賃貸でそういったことをやらせてもらえる場所がなくて困っているので、何かいい物件があったら教えてください(笑)。
司会者:最後、物件の案内で(笑)。
吉岡:物件と人材、募集しています(笑)。
司会者:ありがとうございます。
(会場拍手)