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【説得力を上げる方法】できるマネジャーはここが違う(全1記事)

部下の心を動かす5つの原則 科学的に実証された説得力の磨き方 

株式会社らしさラボ 代表取締役 伊庭正康氏の『研修トレーナー伊庭正康のスキルアップチャンネル』では、業績の悩み、効率の悩み、マネジメントの悩み、コミュニケーションの悩み、モチベーションの悩みなど、仕事の悩みを解決できるビジネスメソッドを紹介しているチャンネルです。今回は、部下の心を動かす科学的アプローチをお伝えします。

三流の上司と一流の上司の違い

伊庭正康氏:今回のテーマは「三流の上司と一流の上司の違い」を紹介していきます。たった1つ違う点があるんです。それがこちら、「人を動かすことができるかどうか」。いや、もっと言いましょう。「この上司であればやってもいいかな」と思わせる力ですね。

正しいことを言って人は動くわけじゃないんですよ。正しいことを言って動けば苦労しません。「この人が言うから動く」、これですよね。じゃあその説得力って、どうすればつくんでしょう。今日はそんなお話です。

さあ、このことをきちんと伝えてくれている学者がいるんです。有名な学者なので、きっとご存知かと思います。ドン! ロバート・チャルディーニさん。……「誰やねんそれ」ですよね(笑)。大変失礼いたしました。

『影響力の武器』という名著を書かれた心理学者で、知っている人は知っているでいいと思いますけど、私も会社員の時に上司から「この本読んだほうがいいよ」と言われて読んだ本の1冊でございます。

そのロバート・チャルディーニさんは、ハーバード・ビジネス・レビューという記事にコラムを寄稿されていました。『マネジャーの教科書』。これ、すごいでしょう。つまり「マネジャーはこれをやれば説得力を持てますよ」というお話だったんですね。

今日はこのロバート・チャルディーニさんが言っている「この人のためであれば動きたい」と思わせるような説得力を持つ、科学的な根拠に基づいた原則を紹介していきます。

このチャンネルは年200回登壇する研修講師の伊庭だからこそお伝えする、本物のスキルを紹介しています。使えるスキルを紹介していきますので、ぜひこちらから登録をよろしくお願いいたします。

部下を動かしたいなら「好意を示す」

さあ、ではいきましょう。原則1から5まで紹介します。ロバート・チャルディーニさんはいくつかおっしゃっているんですけれど、そのうち5つを紹介していきます。

ではいきましょう、1つ目、ドン! 原則1「好意を示す」。部下を動かしたいのであれば、部下に対して好意をどれだけ示しているかですよね。ロバート・チャルディーニさんはこう言っています。「人は好意を示してくれた相手の説得に応じる」。

もう少し言うと、こういうことです。「何を言っているのか」よりも「誰が言っているのか」が重要ということなんですよね。ということは「この上司が言うからには」、そんなお話です。

ちなみに「タッパーウェアパーティ」の実験というロバート・チャルディーニさんの記事が紹介されていました。商品を買う時に、主催者の好感度、それとも製品の印象、どちらが購買決定要因として高いかという実験でした。

結論は、主催者への好感度のほうが2倍影響力を持つ。やはり「誰から買いたい」ってあるわけですよね。服を買う時も「この店員さんだからこそ買いたい」ってありますよね、あれと一緒です。

雑談で自分との共通点を示す

さあ、では進めていきましょう。ではマネージャーは部下に対して何をすればいいのか。ロバート・チャルディーニさんはこう言っています。「自分との共通点を示せ」「相手を心から賞賛せよ」。

自分との共通点を見出しているか、相手を心から賞賛しているか。言うは簡単ですが、やるは難しい。ですからご提案します。これでいいんじゃないかと私は思っております。

何かというと、自分との共通点を示すのであれば、雑談をしているかどうかです。相手の関心のあるテーマで雑談をしているか。ですから普通に雑談すればいいんですよね。「最近どんなことをしているの?」「最近なにかハマっているものはあるの?」、それで共通点があればOKですよね、めちゃくちゃ簡単です。

「相手を心から賞賛する」、どうしたらいいんでしょうね。毎日拍手をしているわけにはいきません。簡単です。「何々さんだからこそ聞いていい?」というふうに認めている。「あの件、ありがとう」、ちゃんと感謝している。そして「君ならきっとできると私は期待しているからね」と、期待をちゃんと言葉で伝える。これだけですよね。

新入社員に聞いた「上司に期待すること」

さあ、2つ目の原則にいきましょう、ドン! 原則2「心遣いを怠らない」。これ、めちゃくちゃ簡単です。親切な行為を受けるとそれに応えようとする。これはロバート・チャルディーニさんの有名な「返報性の法則」ですね。何かをしてもらったら、何かをしないといけない。

ロバート・チャルディーニさんの「寄付の実験」。寄付率は何で変わるのか、どれぐらい寄付してくれるのかなという実験がいくつかあるんですけれども、寄付をする前に些細な進呈品、つまりプレゼントをあげると承諾率が2倍になる。そりゃそうですよね(笑)。じゃあどうすればいいんでしょう。別に「プレゼントをしましょう」じゃないんですよ。

ロバート・チャルディーニさんはこう言っています。「自分がしてもらってうれしいことをする」。人によって違いますから、難しいですよね。

だとすればここからは私の提案なんですが、簡単です。1つは、誰もがしてほしいことは「話を聞く場を作ってほしい」ということです。

実際に調査でも出ています。リクルートマネジメントソリューションズさんの、新入社員への意識調査の結果なんですが、上司に期待することのトップに必ず入っているのが「ちゃんと話を聞いてくれること」。もう1つは、「丁寧に仕事を教えてくれること」とあります。これもしてもらったらうれしいことですよね。世代を問わないと思います。

あと差し入れや感謝のしるし、していますか? やったほうがいいと思います。「やりましょう」ではないですよ、やったほうがいいと思います。

職場にケーキを差し入れするリーダー

実はたまたまテレビで見ていた、NHKさんの『ドキュメント72時間』。長崎の大学病院さんの……医局長かな? ちょっとそこはうろ覚えなんですけれども、リーダーがクリスマスの日にケーキを買いに来て、「23個お願いします」。

ケーキ23個、何なんでしょうね。インタビュアーの方がインタビューされます。「いや、ちょうど部下の方に振る舞う時期かなと思いまして。ついて来られます?」ってインタビュアーにおっしゃるんですね。「ついて行きます」って言って、それをリーダーが部屋に持っていくんですね。

「どうぞ食べてください」と部下に言ったところ、めちゃくちゃ喜ばれるんですね。ほかの方はまだお仕事中で来ていらっしゃらなかったんですけど、お一人の方が「やったー!」と言いながら、すぐ食べたいという気持ちはあるんですけれども、やはり患者さんがいるので電話が鳴っちゃうんですよね。

電話が鳴ってまた戻っていかれるんですけれども、リーダーが「こんな感じで私たち、忙しいので食べられないんですよ」と。「みんなで食べてくださいね」と付箋に書いて、ペタッと貼って冷蔵庫に入れていらっしゃいましたね。

これを「もったいない」と思うか、自分なりに「何ができるかな」って考えるかの違いってあると思うんですよね。これってたぶん「心遣いできるかどうか問題」かと思います。

私もリーダーの時は、そんなにケーキを買って行ったことはありませんが、お菓子ぐらいは差し入れしていましたね。あと話す場なんかもよく意識的に持っていたりしましたので、これはやったほうが絶対良いと思います。

影響力のある同僚が承諾していることを示す

さあ、ではいきましょう、原則3。ドン! 「前例を示す」です。チャルディーニさんはこう言っていますね。「人は、自分と似ている近しい人の判断を参考にして決める」。

確かに寄付率の実験の結果でもおっしゃっていますね。寄付をしてくれた人のリストを見せ、リストが長いほど寄付率が上がる。かつ、その中に友人や隣人が含まれていることが重要なんだと。「あの人も寄付をしているの?」という、同調圧力と言ってもいいでしょうね。

だとすれば、部下に新しい方針を受け入れてほしいのであれば「影響力のある同僚が承諾していることを示す」ということもやればいいんですよね。

「今度拠点を2つに分けようと思っている」「ええ? 分けたら出勤する距離が長くなるじゃないですか」「だよね。実はさっきも言ったけど、お客さまの所に早く行けるように、拠点を2つに分けてお客さまの近い所にいよう、という狙いなんだよね」。

「でも……」「うん、その気持ちはわかる。2駅ぶん電車に乗らないといけないのは大変だよね。実は伊庭も同じことを最初は言ったんだよ」と。「でもこの話をしたら『確かにね』ということで、もう彼はすごく前向きに考えてくれているので、もしよかったら彼とも会話してみるといいと思うよ」。

「あとタカハシさんもオオタくんも、みんな同じような意見になっているので、そのみんなとも話してもいいかもしれないよ。また明後日ぐらいに時間をとって話をしようか」……こんな感じですよね。

アドリブでやっておりますが、私が上司であれば説得することにそんなに時間をかけずに、一度また時間を置き直して会話するかなと思います。では原則3、こんな感じで考えてみてください。

承諾率が50%→92%に上がる「言質をとる」方法

原則4、ドン! 「言質をとる」。言質をとるって怖いですけれども、言質をとってください。「人ははっきりとした約束は守る」、コミットメントを高めるという効果があるからです。

これって「一貫性の法則」というもので、ロバート・チャルディーニさんはよく言っていますね。寄付率の話もそうです。また実験は寄付率なんですね。

こんな実験だったそうです。老人、身体障害者向けのレクリエーション施設の建設の署名をとる。その後に署名をしてくれた人、OKをもらった人に対して寄付をお願いすると、承諾率がもともと半数だったものが92パーセントにまで上がる。

つまり「これに向けて賛成ですか?」「賛成です」となってから「じゃあこれやってみませんか?」「そうですね」。この流れ、一貫性がありますよね。

ですから最初にイエスを取りつけておいて、総論イエスで、各論イエスをとるというパターンですね。これが一貫性の法則です。

管理職時代にやっていた、朝礼の工夫

その時にロバート・チャルディーニさんは、「周囲にわかるように自発的に約束させる」と言っていました。例えば仕事が忙しくて、1人で仕事を抱え込んでいる人がいたとします。でもそれが良くないと本人はわかった。その場合は早めに周囲にSOSを出すと決めたとします。

これを朝礼の場で発表してもらうこともおすすめです。「じゃあ伊庭さん、今週の方針を共有してもらっていいですか」「はい。ちょっと仕事を抱えすぎていたので、これからは早めにSOSを出していいですか?」「いいよ、いいよ」「どうぞ、どうぞ」「じゃあまた今週よろしくお願いします」。

こういうふうにみんなの場で共有することがあれば、それはコミットメントになるわけですよね。ということですので、言質をとるというのは「みんな聞いていましたよ」という場を作ることです。

これってちょっと意地悪をしているように思われるかもしれないんですけれども、そうじゃないんですよ。というのは「宣言効果」というものを得られるからですね。

宣言効果というのは、「私はこれをやります」とちゃんと公表すれば、自分を正しく追い込むことができ、その結果良い状態になる。ですから本人にとっても非常に良い場ですね。

ですが、私が前職で管理職をやっていた時もそうですし、部下をやっていた時もそうでしたけれども、必ず朝礼がありました。そこでは今日何をするのか、もしくは今週は何をするのかを、全員が発表する場があったんですね。

それを周囲も聞いているので「これはやらざるを得ないな」となりました。ですから上司と部下が会話したならば、それをみんなの前で発表してもらえばいいんですよね。「言質をとる」が原則4でした。

あえて権威を示す

さあ、ここまでが原則1から4でした。では原則5つ目、まいりましょう。ドン! 「権威を示す」。うわあ、なんか嫌な感じがしますよね。でも「偉ぶる」って話じゃありません。

「人は専門家に従う」というのは先ほど言いましたよね。「何を」言うかよりも「誰が」が大事だと言いました。これはロバート・チャルディーニさんの実験です。

理学療法士の方が「リハビリを受けてください」と言った時に、最初はリハビリを受けるんだけれども、だんだん受けなくなり、まったく受けなくなることもよくあるそうです。そこで実験をされたんですね。療法室の中に壁があり、賞状や卒業証明書、資格証明書などを掲示し「この理学療法士さん、すごい人なんだ」と権威を示した。

すると、リハビリをだんだんしなくなっていくというお話をしましたけれども、その実施率が34パーセントも上がったというお話です。何から34パーセント上がったかまでは載っていなかったんですけれども、ただ権威を示すことってけっこうやりますよね。

私が行く歯医者さんも「ハーバードなんとかかんとか」って書いてあります。すごいなと思います。「ホンマか?」と思ったりしますけど、ホンマなんです、すごいなと思います。

会話の中で「自分のやってきたこと」を伝える

じゃあ、あなたはどんな専門性を持っているんでしょうね。ここなんですよ、いきましょう。チャルディーニさんはこう言っています。「自分の専門性、専門知識を周囲に示せ」。でも、これ嫌なやつじゃないですか?

こうすればいいんです。「会話の中で自分のやってきたことを伝える場を持つ」。これだけでも自然と相手は「この人はこういうことをしてきた人なんだ」とわかります。ですからあんまり自慢するという話ではないんですよね。会話の中で言えばいい。

ということは、やはりふだんから会話をしておくことが大事です。私にも経験があります。ちょっと口悪く言いますと「この部長、仕事せえへんな」と思っていた部長がいたんですね。

ところが会話をしていると「え、あれをやったの何々さんだったんですか?」「まあまあ、そうなんだけどね」「ええ!? この人なんでその片鱗を見せないんだ?」と思いながら、ちょっと私から相談する件数が増えましたね。

返ってくる言葉もそんなには以前と変わっていないんですけれども「確かに、あの経験があるからおっしゃっているのかな。ほかにもそういった経験がおありだからかな」と、こちらが解釈をしちゃうんですね。これは経験あります。会話は大事です。

ということで、原則をもう1回見てみましょう。原則1、行為を示す。原則2、心遣いを怠らない。原則3、前例を示す。原則4、言質をとる。原則5、権威を示す。全部をする必要はないとは思います。何か1つでも2つでも、自分の得意技にしておけばいいのではないでしょうか。

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