CLOSE

チームビルディングの新常識:コーチングで生まれる一体感と成果(全3記事)

ファミリー企業の「事業承継」が難しい理由 実は一般企業よりも対立が生まれやすい組織構造とは?

社会全体のウェルビーイング向上に貢献することを目指したサービスを提供する株式会社メタメンターのセミナーに、同社代表の小泉領雄南氏が登壇。経営者と後継者との間に生じる「認識のズレ」や、ファミリービジネスを継続するために必要なことを解説しました。

コーチングと出会い、起業を決意

小泉領雄南氏:「チームビルディングの新常識:コーチングで生まれる一体感と成果」というテーマでお話しします。

私はもともと、GMOフィナンシャルゲートという決済系の会社で営業や営業企画を担当していました。その後、自分自身の体験を通じて、コーチングという対話の手法に出会いました。価値観が変わったり、人生観や人間関係、仕事の進め方にまで影響を与えるこのコーチングに救われたと感じ、起業を決意しました。

現在はプロコーチとして活動し、今日ご紹介するようなチームコーチングや1on1のコーチングをメインに提供しています。

今回のイベント開催の背景には、私が在学していた早稲田大学のMBAが関係しています。2年ほど前、早稲田のMBAに在学していた際、事業承継を予定している後継者の方が多く同期にいました。彼らは、「自分が戻って会社を継ぎ、大きくしていくんだ」と非常に高いモチベーションを持っていました。

卒業後に彼らと会う機会があり、話を聞くと、「自分の力を発揮できていない」「壁にぶつかっている」といった悩みを抱えている人が多いことに気づきました。現経営者の方からすると、そうした状況を意図しているわけではないかもしれませんが、後継者の方々が孤軍奮闘しているような印象を受けました。

一方で、現経営者の方とお話しすると、後継者との思いのすれ違いというか、価値観や考え方のギャップを感じることがあります。根本的な部分ではつながっているのに、それがギャップとして現れてしまう。そういう状況ですね。これは、私が同期と話をする中でも強く感じたことです。

実際に、そうした後継者の方にコーチングを行うと、関係性が大きく改善する実感があります。こうした事業承継の場面において、私が提供するコーチングやチームコーチングが有効なのではないかと考え、今日はそのエッセンスをみなさんに共有できればと思います。

経営者と後継者との間に生じる「認識のズレ」

まず、現経営者や後継者のみなさんに問いかけたいのですが、「周囲の理解が得られず、結局は自分ひとりで切り開いていくしかない」と感じたことはありませんか? 私自身も、多くの方の話を聞く中で、そうした感覚を持っている人が少なくないと感じています。

ここで、書籍からの引用になりますが、「認識ギャップ」についての興味深い例をご紹介します。

親から子へのアドバイスとしては、「最良の教育を修めなさい」「一族の外で経験を積みなさい」「一族の事業では下積みから始めなさい」といった、教育や学びに焦点を当てたものが多いです。

一方で、子から親へのアドバイスとしては、「代替わりの計画を早く立てなさい」「セカンドライフの目的を見つけなさい」「未解決の問題を解決しなさい」「株を早く贈与しなさい」といった内容が挙げられています。ここにも、大きなすれ違いがあることが分かります。

パフォーマンス向上の鍵は「ファミリーガバナンス」

今日お話しするのは、創業からの事業承継についてです。創業者が立ち上げた事業には、その思いが代々受け継がれていると思います。これをチームとしてどうつないでいくか、その手法や方法についてお伝えできればと思います。

ここで対象としている「チーム」とは、ファミリー、つまり親子や次世代の経営チーム、あるいは後継者と現場のチームのことを指します。親子間でギャップが生じやすいファミリービジネスの構造的要因について、まずは定義の部分からお話しします。

アカデミックな定義では、「ファミリーが所有と経営に関わることで、事業をコントロールしている企業」とされています。また、実務家による定義では、「2人以上のファミリーメンバーが所有者であり、企業の存続にコミットし、数世代にわたって存続可能なように統治・経営されている企業」とされています。

ファミリービジネスの特徴として、結論から言うと、パフォーマンスにばらつきがあるというデータがあります。

では、なぜパフォーマンスにばらつきが生じるのか。そこには、プラスに働く特徴とマイナスに働く特徴があるからです。

プラスの特徴を活かし、マイナスの特徴を抑えることが重要になります。これを別の言葉で表すと、「ファミリーガバナンス」とも言われます。

ファミリービジネスは、所有と経営が一致しているため、意思決定が速く、大胆な行動がとれるのがプラスの特徴です。一方で、これが逆に作用すると、暴走につながるリスクもあります。このように、プラスとマイナスの特徴が影響し合うことで、パフォーマンスにばらつきが生じるのです。

代を継ぐごとに難易度が上がるファミリービジネス

さて、日本はファミリービジネス大国です。日経BPのデータによると、世界で最も100年企業が多いのは日本で、その数は3万7,000社にも及びます。また、日本のファミリービジネスの多くは、10億円以下の規模が最も多いという特徴があります。これは国によって多少の違いがありますが、日本におけるファミリービジネスの主要な姿です。

そして、みなさんも実感されているかもしれませんが、ファミリービジネスは代を継ぐごとに難易度が上がっていきます。

実際のデータでも、第1世代から第2世代、第3世代へとバトンタッチが進むにつれ、企業の存続率は低下していくことが明らかになっています。

ファミリービジネスを継続するために必要なこと

では、ファミリービジネスを存続させるために、どのような点に留意する必要があるのでしょうか。

まず、外部要因としては、コロナによる生活環境の変化や、AIの発展によるテクノロジーの進化などがあります。こうした外部環境へのキャッチアップも重要ですが、今日焦点を当てたいのは、むしろ内部要因のほうです。

ファミリービジネスには、資産の分配や株の承継、創業理念や家族の絆といった要素があります。しかし、時代とともにそれらが希薄化し、求心力を失い、逆に遠心力が強まるケースが少なくありません。重要であると理解しながらも、なかなか適切な対策を打てていない……こうした課題が、内部要因に関連しています。

ファミリービジネスが一般企業よりまとまりにくい理由

では、なぜこの内部要因への対応が必要なのでしょうか。先ほど「所有と経営」という観点について触れましたが、一般的な企業は「所有(株主)」と「経営(経営者)」の2つの役割で構成されています。しかし、ファミリービジネスでは、そこに「ファミリー」という要素が加わるため、「株主」「経営者」「ファミリー」の3つの視点が絡み合います。

この3つの視点によって、それぞれ異なる特徴が生まれます。たとえば、株主であり、経営者であり、ファミリーでもある人は、企業へのコミットメントが高いため、配当よりも再投資を重視する傾向があります。

一方で、事業に関与していないが株を保有している人、つまり「株主ではあるが経営には関わらない立場」の人は、再投資よりも配当を重視する傾向が強くなります。これは、株のルールなどの影響で、広く多くの人が株を持つ状況が生じている企業に見られるケースです。

ここでお伝えしたいのは、単純に「どの立場が正しいか」という話ではなく、ファミリービジネスには非常に多様な役割と視点があるということです。そのため、一般的な企業と比べて「1枚岩」になりにくい要素があるのではないかと考えています。

主催:株式会社メタメンター

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • 45年かかったザ・プレミアム・モルツの黒字化 新規事業における「撤退基準」は必要か? 

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!