営業活動のレベルを上げる方法

マーク・ロベルジュ氏(以下、ロベルジュ):営業活動のレベルを上げる方法です。システムの基盤は、バイヤージャーニーと営業プロセスでしたね。

はじめにバイヤージャーニーの設計と展開をしましょう。まず買い手の視点を理解し、それから見込み顧客獲得のプレイブックを作成します。約束の取り方や、初めての商談でのプレゼンや、買い手の視点を理解した上で解決策を提示する方法などです。

ですが、多くの人はバイヤージャーニーの入口を気にしません。これをまとめるには正直2時間ほどかかります。

ここにフレームワークがあります。組織に組み込める便利なものです。このバイヤージャーニーは単純なもので、認知・検討・決定・成功とあります。認知段階では、買い手が課題や機会をどう考えているか理解します。買い手が製品を知る前です。

検討では、買い手の解決策の分類を探ります。人やコンサルタントを雇うのか、ソフトウェアを買うのか。決断では、買い手の決定要因を考えます。価格か、評判か、または優れた統合が実現できるものか。成功は目標達成の指標です。

バイヤーの視点を理解しない限り、最適な方法はわからない

これは本当にシンプルな例です。ベビーカーの会社が小売業者に製品を売り込もうとしています。小売業者のバイヤーの中には、客足を増やすことを一番の課題としている人がいます。品揃えを多様化したいという人も、最新のトレンドに合わせたいという人もいます。それを実現する方法として、ベビーカーへの投資を検討する人もいれば、おむつに投資したい人や、哺乳瓶への投資を考える人もいます。

私たちはベビーカーの会社ですから、問題解決にあたってベビーカーの何が有利なのか、ここに示されています。ベビーカーに目を向けてもらったら、最も画期的な新製品を求める人もいれば、昔ながらの製品や、最安値の製品を求める人もいるでしょう。

ただ、これが私たちの強みなのです。これが成功の指標です。営業会議が終わるたびに、営業担当者に質問を1つします。「買い手はジャーニーのどこにいる?」。今のトレンドに乗り続けようとしているのか、おむつに投資をするつもりなのか、足を伸ばすためにベビーカーに投資したいのか、最安値の製品がいいのか。

まず、提案と完全に合致する買い手はいません。しかし、製品は売れますし、契約は勝ち取れます。私が契約を取る方法はだいぶ違います。バイヤーの視点を理解しない限り、最適な方法はわかりません。

バイヤージャーニーを組み込み、会議後に必ず営業担当者に「ジャーニーのどこだ?」と質問します。そうすれば、営業活動において最適解へのアプローチを組み込めます。

また、これは別の例です。説明はしませんが、後でお渡しします。このバイヤージャーニーは節電装置向けで、これはカルチャーモニタリング製品、これはコラボレーション製品、これは経営コンサル向けです。業界に関わらず、これらはプロセス設定のアイデアになります。

次は商談の獲得です。これについてはSansanが役立ちます。これからある企業の例を紹介します。この企業はShopifyのコンサルです。知らない方のために説明をすると、ShopifyはEC企業の事業をサポートする製品です。

コンサル企業はShopifyの新製品「Shopify Plus」と製品説明の記事を書きました。記事の終わりにCTAをつけているのがポイントです。詳しく知りたい人に情報を提供して、見込み顧客を獲得するためです。

買い手が嫌な思いしかしない営業と、パーソナライズされた営業

ほとんどの営業担当者は見込み顧客の発掘が下手です。たいていが「ミシェルさん、ICTのドワイトです。すぐに使えるECサイトに特化しています。明日の1時にお会いできますか?」と電話をします。

次は2日後の留守電の伝言とメールです。「ミシェルさん、ICTのドワイトです。すぐに使えるECサイトに特化しています。1時にお会いできますか」。さらに2日後、「ミシェルさん、ICTのドワイトです。すぐに使えるECサイトに特化しています」。

実に下手な営業ですね。件数を稼ぎやすいので多くの人がやりますが、買い手は嫌な思いしかしません。現代の買い手は「文脈」を知りたいのです。だから、ある程度調査をして、買い手を理解します。立場や経歴も確認します。

マーケティング部門との関わりも可能なら調べましょう。どのWebページ、またはブロック記事を読んだのか。どのメールを開き、何をダウンロードしたのか。この情報は営業にとって宝物です。活用すれば、アプローチを容易にパーソナライズできます。

「ミシェルさん、ICTのライアンです。Shopifyのウェビナーに参加しましたよね。御社のECの状況を調べましたが、アドバイスできることがあります。ご興味がありましたらご連絡ください」。

2日後、「ミシェルさん、ライアンです。ご連絡いただけませんでしたが、御社の事業をさらに調べました。すると、Shopifyで成功した同業他社のケーススタディを見つけました。それを送ります。質問があれば連絡ください」。

さらに2日後は、「ミシェルさん、ICTのライアンです。ご興味がありそうなウェビナーを弊社が開催することになりました」と。これまでとまったく異なる流れでパーソナライズされています。前者の営業方法は絶滅寸前です。後者は買い手に寄り添っています。

これは最も知られている例でしょう。実証済みのデータで、アウトリーチ社のサム・ネルソン氏考案のスパルタ式シーケンスです。これはパーソナライゼーションと件数のバランスが取れる非常に優れた方法です。詳細を読めるように下にリンクを貼ったので、組織で活用したい場合はご覧ください。

優秀な営業が最初にすることは「買い手の状況を理解するだけ」

次は商談の設定です。最初の商談で何をしますか? それがこのスライドです。AIを使って数千件の電話を分析した結果です。

優秀な営業が初商談でする理想的な行動は、5分ほどの信頼関係の構築です。買い手が持つ事業の問題をたっぷり議論して、次のステップに移ります。ここでは製品のアピールはしません。買い手の状況を理解するだけです。基本的に電話で質問を展開していきます。話し手は数分ごとに交代します。約十数件の質問を投げかけます。これが理想です。

これを理解していない営業担当者をどうトレーニングするか。ディスカバリーコールガイドを作成してください。スクリプトではなく、理想的な電話の流れの解説です。

信頼関係を構築する方法に関するアドバイスを入れます。課題の設定案や、買い手からどのように話を引き出すかを助言します。尋問のようにならない方法や、質問に関係する提案をすることや、買い手の認知・検討・判断に関する知識や次への進め方も含めます。台本にはせず、あくまで「示唆」にとどめてください。

これは、買い手の役に立つ方法を、営業担当者にジャーニー全体で理解させるための虎の巻です。デスクでいつでも見られるようにするのです。このリンクからダウンロードできるので、みなさんの事業にどう使えるか見てください。

優秀な営業は、プレゼン中に受ける質問が28%多い

最後はプレゼンです。私は、営業がすばらしい仕事だと理解しています。営業担当者が成長し、優れた仕事をするようになると、プレゼンをする段階に突入します。ただ、同じプレゼンをしがちです。これは悪い癖です。

優れたプレゼンは、話すトピックそれぞれに合わせて作られたもので、最重要点に的を絞ったものです。話したいことが10個なら、買い手に最も関連する製品やサービスの1面にほとんどの時間を費やし、他はさらっと流します。信じられないかもしれませんが、優秀な営業は技術的特徴をあまり話しません。価値の話がほとんどで、デモ中に受ける質問が(優秀でない営業に比べて)28パーセント多いのです。

プレゼンは一方通行の議論ではなく、対話です。営業担当者が毎回同じプレゼンをするのをやめさせなければなりません。ニーズに合わせて調整する必要があります。プレゼンを1つにまとめるのではなく、書いて、それぞれのニーズをベースに3~4つのプレゼンを作るのです。

ニーズは営業が見つけてくるでしょう。これも新人の営業担当者をサポートする虎の巻きになります。トークよりニーズを見つけ、それに完全に合うプレゼンをします。それをすぐに理解するのは難しいですね。

そこで、ニーズを理解し、4つのプレゼンから最適なプレゼンを選ぶ工程を簡素化するのです。営業担当者は良い方向に進み、優秀な結果を残すでしょう。これが「営業プレイブック」です。

「営業プレイブック」はバイヤージャーニーの上にあり、買い手の状況を理解し、貢献できることがあるか判断します。あればプレゼンを調整し、なければ次を確認します。買い手の状況理解は正しいか。買い手の問題理解は正しいか。正しい場合、してあげられることは何もありません。不適切なら契約はもらえません。

ただ、理解が正しくないなら見直しをして、戦略がずれている可能性を話します。また、会社の製品に沿う戦略を検討します。

これが現代の営業を議論する上で、私たちがとれる最適な方法です。みなさんの営業担当者が左側でなく右側であることを望みます。優秀な営業担当者は、最初の電話で聞き手に回る人物で、下位の人のようにマシンガントークはしません。

人材の管理と教育は弾み車の一部で、最も重要な側面の1つです。営業担当者の管理が重要な仕事だと思いがちですが、実際は違います。最も重要な仕事は、採用と教育です。

データを活用した営業スキルの教育方法

では、効果的な教育を説明します。優れた教育は、正確な診断をすることで、営業担当者のひと月の成績を大きく変えた根幹となるスキルを正確に見つける技術です。一度に50も教育できません。大差を生むスキル1つを理解するのです。

優秀な管理者と優秀な営業組織は、診断とその理由が理解できるようにデータを有効的に活用します。定性評価で人を判断するだけではなく、ファネルの各段階を観察してください。

これはファネルの段階を示した例です。見込み顧客への接触から、新規開拓の電話、顧客へのデモや試用提供もあります。アディナ、フレッド、カルロスなど、担当者ごとに色分けしています。各担当者のファネルのグラフを比較すれば、どこが良くてどこがダメかがわかります。そして、スキルアップや足りないスキルの把握に使います。

私は営業組織の責任者として、組織の全員に営業担当者としての責任を持たせます。そして、どのスキルが不足しているかを書き出してもらいます。どう教育できるかを聞き、実際の成長の測定方法も書き出します。

一例です。営業担当者は、毎月初日に担当者と面談します。悪い点の指摘や改善案の提案はしません。担当者に任せます。データを見せて振り返ってもらうのです。自己評価をし、自己啓発プランを作成させるのです。責任者はあくまで補助役です。

面談で営業担当者はこう言います。「役に立ちたい」「顧客に緊急性を伝える能力を高めたい」「新規開拓の電話を3件録音するので、上司に聞いてほしい。上司と聞きたい」「緊急性を伝える方法について指摘が欲しい」。実にすばらしいですよね。毎月初日に電話の予定日を設定します。このようにコーチングの開発を積極的に進めています。

メンバーが成長しないのは、採用と教育を任された責任者の責任

これは各担当者の自己評価とコーチング計画の例です。改善がわかるように数値を入れて、責任者の活動を評価しています。理想は、責任者にチームを選ばせることです。すると、責任者はメンバーを成長させます。

これは個人の記録で、コーチングの過程です。フレッドを雇って3ヶ月間、緊急性の伝え方の教育をしています。フレッドが成長していないのは、完全に責任者の責任です。採用と教育を任されているからです。常に理解が伴っているわけではありませんが、優れた責任者であれば80~90パーセントは理解します。これは、責任を持たせるための私たちの記録です。

次のプロセスは100万ドル規模の取引に適していますが、微調整が必要です。こちらの男性はジョー・ヴァステン氏で、車両管理会社の経営者です。

取引規模は約80万ドルです。プロセスにデータがなかったので、彼はデータを追加しました。電話やデモの段階を少し調整して、商談段階をより重視しました。四半期で1人の営業担当者がする商談数は10件ほどです。最初の面談から始まって、幹部レベルの会議に至る段階や、購買やホームトライアルなどいろいろあります。それらを細分化し、自販機ごとに評価しました。

このデータドリブのアプローチ方法は、小規模取引に使えるだけでなく、大規模取引にも使えます。これは商談段階に適していて、四半期ごとがちょうどいいでしょう。同じような状況の方にとって気づきとなれたらうれしいです。これはジョーの会社ではうまく機能しました。

以上が責任者の仕事です。責任者は採用と教育を適切に行い、プロセスに対して部下に責任を与えるのです。

目標との乖離に早く気づくには「年間計画に立ち返ること」

最後に、収益計算に関して、データを使った分析の話をしましょう。どうすれば目標に向かっていることや乖離があることに、早めに気づけるのでしょうか。それは年間計画に立ち返ることです。

経営陣に「収益を倍にする計画だ」と言ったとします。昨年は500万ドルで、「次は1000万ドルを目指します」と。それはいいのですが、計画がありません。ただがんばって働くとか、人をもっと雇うとか、神頼みとか、そういう実現方法はなしです。

経営陣は四半期ごとの経営会議で追跡し、進捗を知ろうとします。ボトムアップ計画の作成と見込み客への活動の管理が必要です。この説明に数分を割きます。

やるべきことは、昨年の成績を見ることです。営業担当者は5人。各自の売上は100万ドルで、合計500万ドルでした。誰もがこの分析をします。しかし、デマンドジェネレーション分析はしません。つまり需要創出の分析です。

需要創出と500万ドルの関係を調べます。売り込みの電話をするSDR、つまりインサイドセールスは5人います。各自の平均アポイント数は240件なので、アポイント数は全部で1200件です。5パーセントが顧客になりました。60社の顧客を獲得し、各顧客から平均5万ドルを得ました。つまり、需要創出によって300万ドルの売上を得たのです。

残りの200万ドルはマーケティングです。マーケティングへの投資は100万ドルで、獲得リード数は2000件です。各リードの平均コストは500ドルでした。20パーセントがアポイントメントに結びつき、そのうちの10パーセントが顧客になりました。40社の顧客を得て、それぞれから5万ドルを得たので、マーケティングの売上は200万ドルです。

1000万ドルにするためには、次の3つのうちの1つができます。まず、5人の営業担当者に、100万ドルではなく200万ドル稼いでもらうことです。営業のトレーニングに投資し、コンバージョン率を倍にします。5パーセントから10パーセントにします。良さそうですが、成功しません。伸びはしますが、少しだけです。

需要創出に投資するという手もあります。マーケティングに100万ドルではなく200万ドル投資し、売り込み電話担当者を5人から10人にします。アポイントメント数が倍になるので、各営業担当者が200万ドル稼げます。が、これも無理です。営業担当者は週に40~50時間しか働けません。働く時間を増やさない限り、創出した需要に追いつけないのです。

収益計算上にない、考慮するべきポイント

商談を逃さないために、投資を二分します。営業組織も需要創出も倍にすると公平です。これで目標達成です。営業のキャパと需要創出を同等に保ちます。この計画のほうがいいでしょう。

営業担当者が10人になりました。昨年と同じように毎年平均1000万ドルを売り上げます。売り込みも10人です。各売り込み電話担当も昨年同様240件の新規アポを取ります。5パーセントが顧客になります。これは同じ数字です。多くの企業の計画より優れています。収益計算上、うまくいっています。

それでも問題があります。3つです。まず、雇ったばかりの営業担当者は生産的ではなく、成長期間があります。訓練する時間とパイプラインを構築する時間を盛り込む必要があります。

次に退職者が出ます。運が良くても10~20パーセントの人が辞めるかもしれません。これも考慮します。3つ目は販売サイクルです。今日のリード創出は明日の契約ではなく、3~6ヶ月後の契約です。それも加味します。

この数字を見てください。これまでの要素を含めると300万ドル下がります。計画をもっと改善しなければなりません。必要なものを測定できるモデルが必要です。毎月のアポイント数は何件か。アポイントが顧客になるコンバージョンは何か。

青い線が目標で、オレンジが実績です。私たちは競合他社のはるか先を行っています。四半期ごとの進捗確認会議まで待てません。3ヶ月ごとではなく、毎日ベースが保てているか確認します。

データが役立つ場所は、営業組織の運営の全側面にある

時間という要素に対して、私がしていることを説明しましょう。スライドはお渡しできませんが、予測モデルへの変換方法をお見せします。すべてを説明する時間はありません。言えるのは、使用できる予測モデルは3つあるということです。

1つは需要創出をベースにしています。これはExcelシートをお渡しします。毎月どれほどの需要を創出しているかがここからわかります。それが顧客に変わる様子も月を追ってわかります。数字も出ます。

2つ目のモデルは商談段階のものです。商談に入った案件が当月や翌月や翌々月にどれほど契約に至るかを示します。私の現在の商談は始まって1ヶ月になります。このコンバージョン率も予測の計算に使います。

最後のモデルはおなじみで、各営業担当者の契約成立の予想です。各担当者の成績の平均的ばらつきを調べ、それを使って数値が出せます。これで3つの予測が出ました。データとシステムを使うので、予測に人手はかかりません。これで正確に収益の予測額を算出できます。

新規顧客を獲得するシステムの全体像を説明する機会を得られて光栄でした。多くのみなさんが一定規模以上のビジネスを動かしている方々だと聞いています。内容の多くを正確に理解していただけたことでしょう。営業や市場進出がどれほど科学的なのか、知見が深まったならうれしく思います。

データが役立つ場所は、営業組織の運営の全側面にあることにも気づいていただけたでしょう。説明したのは、採用方法や課題の提供方法、方法論やコーチング方法、リードから最終的には収益という成果の測定方法などでした。

私の話は以上になります。残りのイベントもお楽しみください。ありがとうございました。