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井上氏登壇!“小さくはじめる”越境学習 ~越境し、自律する従業員を増やすためには?~(全3記事)

「越境」を経験した社員は、逆に会社への愛着が増す “学びたい人”を送り出すための組織・経営者側のスタンス

株式会社エンファクトリーが運営するフリーランス・パラレルワーカーのためのチーム支援プラットホーム「Teamalncer(チームランサー)」主催のセミナーの模様をお届けします。ゲストに『CROSS-BORDER キャリアも働き方も「跳び越えれば」うまくいく 越境思考』著者の井上功氏が登壇。近年注目を集める「越境学習」について、自社で越境をどう小さく挑戦するか、具体的な方法が語られました。

組織側は、越境を認める「余裕」を持つ

司会者:せっかくなので、今来ているご質問に、井上さんからも回答をいただきたいなと思うんですけれども、質問を読みながらお伝えできればと思います。

井上功氏(以下、井上):お願いします。

司会者:「社内で越境を人事制度に採り入れたとして、越境を成果につなげられるような人は、越境が人事制度になくても勝手に越境して学ぶし、そうじゃない人は越境が人事制度に採り入れられても、うまく学べないんじゃないかという反論があるのですが、何かご示唆はございますでしょうか」と。

井上:おっしゃることはその通りなんですけど、「衛生要因(注:仕事の不満足に関わる要因)をちゃんと固めるべし」みたいな感じだと思います。

社外の送出を認めていることは何のためにやっているかというテーマで言うと、「多様な働き方ニーズへの対応」や、「最低限こういうことは、うちの会社の中では制度として用意していますよ」という組織側の余裕などは前提として示すべきことの1つ目ですね。

司会者:組織側の余裕。

井上:はい。「越境のえの字も認めていない」みたいな話だったら、今時の若者も中堅も、「うちの会社はなんかおかしいんじゃないの」という話に当然なります。組織側としては最低限、最小限は越境的なことを認めてあげるべきというのがまず1つです。

ご質問いただいた、「いや、別に制度がなくても越境するんじゃないの?」ということは、少なくとも社員とは労働契約を結んでいて、例えば越境を認めていない会社も世の中にたくさんありますので、それは勝手にできないから契約違反になります。

そういう意味で言うと、副業・兼業の話は、勝手にやる人は当然いないんだなと思うんですが、自分でそういうことをやろうと思った人は自分で行動していくことを、もうぜんぜん止められる時代ではありません。自分で動く人はどんどん認めてあげてください。

なおかつ、業績とか成果に無理やりつなげようとしても、非常に難しいので、そのあたりはあまり成果を期待しないで、おおらかに見てあげたほうがいいと思います。

越境経験をした人が、自分の言葉で意味・価値を語る機会を

司会者:ありがとうございます。ちょうど次の質問がまさに「越境を学びに、成果につなげていくためのポイント、注意点をもう少し聞きたい」ということだったんですけれども。

井上:どうなんだろう。

司会者:そこに関しては、「おおらかに長い目で見て」みたいなところなんですか?

井上:そうなんですけど、リクルートマネジメントソリューションズは研修サービスも行っています。研修は越境経験ですね。昔から言われているのが「研修をやって何かいいことあるの?」なんですが、これは「越境させていいことあるの?」にニアリーイコールですよね。

「研修をやっていいことあるの?」って、「いや、研修の効果測定をちゃんとしたまえ」と言う経営者はたくさんいるんですけど、あるとするならば、越境経験をしたこと自体を越境した人本人が、自分の言葉で意味・価値を経営者に話をさせる機会を作るべきかなと思います。

そうすると、越境経験した人の言葉の端々に、経営者からすると「あ、この人はこういうことを感じたんだな」ということがたぶんつかめると思います。3年とか5年経った時に、「ああ、なるほどね」といった話が「あの研修、あの越境経験が良かったんじゃないかな」と思っていただけるんじゃないかなという(笑)。

もう1個あるとするならば、経営者自体も越境をしないといけないと思います。

司会者:わかりやすい成果や何か数値化することは、もちろんできたら望ましいんだけれども、そうではなくて、実際に経験した人が語ることを、機会をきちんと作っている。

井上:そうですね。

司会者:それがまずできているかは、確かに問いかけてみるのもいいのかなと思いましたね。

越境は会社にとって「相対化と相対化返し」

井上:それからあとは、定量的な調査で言うと、越境したら愛着的態度と変革的態度が増したことって、「普通は辞めちゃうよね」みたいな話なんですけど、実はその逆なんです。

僕は「相対化と相対化返し」と言っています。越境経験は自分や自分の会社、自分の仕事と他の人たちと比べることになるので、相対化が起きるんですね。ですが、「待てよ? うちの会社もけっこういいじゃん」みたいなことを、僕は「相対化返し」と呼んでいます。

これは、意図的に起こせると思いますし、そういう意味で言うと、僕は越境経験の定量化の効果測定がとても難しいとは思います。でも、このデータが示しているインパクトはものすごく大きいのかなと思います。

司会者:そうですね。まさにぼんやり今の場所に居続けるよりも、「今なぜここにいるか」と考えることができるのも、越境の相対化だと思います。

井上:そうですね。

司会者:そこで考えて、「だから自分はここにいるんだ」と意識づけられると、それはきっと会社の愛着にもつながるし、より活躍していくきっかけにもなるのかなとおうかがいしながら思いました。ありがとうございます。

職種間越境は事前に準備を

司会者:最後にこちらの回答をお願いできればと思います。「職種間越境について。これは会社のローテーションのような感じでよろしいのですか?」とチャットに書いていただいています。

井上:ぜんぜんいいと思います。

司会者:ただ、自分のキャリアとの兼ね合いはどう考えればいいか。ジョブローテはある意味自分の意思とは違って、組織の都合で決まることをたぶん懸念されていると思うんですけれども、このあたりはいかがでしょうか?

井上:どうでしょうね。人事異動って自分でコントロールできないので。そういう意味で言うと、ジョン・D・クランボルツの計画的偶発性あたりはちゃんと踏まえて、事前に「何が来ても困らないぜ」と準備をしておくべきだなとは思いますけど。

司会者:そういう意味ですと、そのあたりのインプットを事前にしておくのは、実は後から意味づけするためにも有用だと考えられるんですかね。

井上:そうですね。

司会者:確かに。ありがとうございます。確かに、知らないとそういうふうに思えないという意味だと、適切なインプットはやはり大事だなと思います。

井上:大事だと思います。

司会者:ありがとうございます。まだまだ井上さんにお話をおうかがいしたんですけれども、ここからは、弊社にバトンタッチして、ご案内できればと思います。あらためて井上さん、お話しいただきありがとうございました。

井上:ありがとうございました。

司会者:はい。ぜひみなさん、『越境思考』をまだ読んでなかったら読んでみてください。ありがとうございます。

『CROSS-BORDER キャリアも働き方も「跳び越えれば」うまくいく 越境思考』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

個人の越境を組織に波及させていく

司会者:ここから残りの時間を使って、弊社(エンファクトリー)からご案内、ご紹介をさせていただきます。あらためて、今日お話しいただいた「越境」というワードで、「越境学習」と人材育成のところで言うと、約8割の企業が「重要だ」「やや重要だ」と答えているので、今後ますます注目が集まるのではないかと考えております。

ただ、なかなか成長する機会や、こういう越境学習を提供する機会は減ってきていると思っておりまして、エンファクトリーとしても、井上さんのあの分類を使わせていただくと、1から6飛んで9までは、越境学習の機会を提供しております。

サービスラインナップとしては、一番左の「複業留学」。これは3ヶ月間でベンチャー企業に行っていただく。週1でベンチャー企業の課題解決に取り組むもの。あとは「越境サーキット」ですね。3〜5名の異なる会社の方とチームを組んで、ベンチャー企業の課題解決に取り組んでいただくもの。「越境コンソーシアム」。これは企業間で課題を出し合って、そのプロジェクトに参画して課題解決、課題抽出に取り組んでいただくものになっております。

それらの越境の機会を、幅広くご用意しておりますので、今日お話を聞いていただいた企業さんの中でご興味がありましたら、ぜひお話しさせていただければと思っております。企業間、職種間、業種間、労使間での越境を提供できるかなと思っております。

併せて、私たちとしては、この越境機会を組織に波及するようにということで、ピア・ラーニングの考え方を大事にしておりまして、そうした取り組みも今拡充しておりますので、1人の越境に留まらず、みんなの越境へつなげるということでサービスを提供していければと思っております。

井上さんの、私は個人の越境の考え方も非常に好きで、まずは個人の越境を今日から始めてみて、会社としても組織としても越境していくようなことが、じわじわと広げていけるといいなと思っております。

最後に、お知らせ的なところで言うと、そもそも越境する前のところでのマインドセットのワークショップも、弊社はご提供しておりまして、直近3月24日の13時~16時に実施予定です。

ふだんは越境学習を導入いただかないと試せないワークショップなんですけれども、今回はこのワークショップ単体でお試しいただける機会なので、もしご興味がありましたらご参加いただければと思います。

ではここまで、ご案内が続いたんですけれども、あらためてアンケートのご案内をこちらに提示させていただきながら、井上さん、最後に一言頂いて終わりにできればと思います。

越境、リカレント教育は日本固有の悩みかもしれない

井上:ありがとうございます。昨日たまたま、デンマークのピーター・ピーダーセンさんと、昨日久方ぶりに対面で大手町で話をしました。テーマは越境です。

ピーターさんから言われたのは、「いや、井上功さん。この本、読みました。とてもおもしろかったです」と言った後で、「デンマークでは絶対に売れないと思います」と言われたんです(笑)。

「え、デンマークで売れませんかね」と言ったら、「いや、別にもう何十年も前から、例えば仕事をいったん終わって大学に戻って、ぜんぜん違う資格を取ってみたいなことを普通にやっているので、デンマークじゃ売れません」という回答でした。リカレント教育ですね。

だから、日本固有の悩みなのかもしれないなと思いました。でも、越境はどんどんしていきたいなと、僕も含めて思います。

司会者:ありがとうございます。先ほどのパスポートの取得率ともなんか重なり、ドキッとするお話ですね。

井上:そうですね。

司会者:ありがとうございます。それでは、本日のウェビナーは以上とさせていただきます。みなさま、ご参加いただきありがとうございました。

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