勉強の本質は、理解したことを再現できること

西岡壱誠氏(以下、西岡):この並びでいくと、次は「理解定着」。理解はむずいよなあ。

片山湧斗氏(以下、片山):そうですよね。

西岡:たぶんなんだけど、ここに一番力を使ったんじゃないですか?

片山:僕自身、この本を書いた時に一番力を入れたのが、この理解定着の第3章ですね。

西岡:やっぱりそうなんですか。こんなノートがあってとか、お話をうかがってもいいですか?

片山:この第3章はすべてを推したいところではあるんですけど。みなさんが一番再現しやすいものとして、3章のトップに載せている「要約ノート」を紹介したいと思います。

みなさんもノートをとられていると思うんですけど、とって満足するってことだと、勉強にならないんですね。ノートをとって、自分の頭の中でしっかり理解して、それをまた自分で再現できる、ってなるまで勉強するのが、勉強の一番の本質になっています。そこの一助となるものが、この「要約ノート」なんですね。

簡潔に言いますとその名前のとおり、ノートの最後に、今日学んだことやノートにとったことを簡潔にまとめるっていう話なんです。

片山:西岡さん、この「要約」ってどういったイメージがありますか?

西岡:どういうイメージかあ。なんていったらいいのかな、たぶん多くの人は「要約」って聞いてあまりよくわかんないというか、「感想とどう違うの?」みたいに思われていりのかなって思ったりしますね。

東大入試からわかる「要約」の重要性

片山:西岡さんもよくご存知だと思うんですけど、東京大学の入試って要約に関する問題がたくさんありますよね。

西岡:めちゃくちゃある。英語もそうだし、それ以外の科目でも全部そうだと思いますね。

片山:そうなんですよね。東京大学の入試で出していることからわかるように、やっぱり要約は、勉強の本質だと思うんですね。

西岡:まじでそうだし、そこはみなさんドラマ『ドラゴン桜』第7話をParaviで見てください(笑)。全科目で要約の力、言い換える力が必要なんだということを、太宰府先生というよくわからないキャラの人が「国語は科学だ!」って説明していましたので。宣伝が挟まっちゃいましたけど、すいません、どうぞ続けてください。

片山:その要約なんですけど、一言で要約と言っても、簡単にできるものじゃないんですね。まず、要約する内容をきちんと自分で理解しないと、なかなか書けないんですね。

例えば、「昔話を簡潔に要約してください」って言ったら、多くの方はできると思うんですけど、それは昔話のストーリーを全部知っているからできるんですね。逆に、初めて読む本をいきなり要約しろって言われても、なかなか難しいじゃないですか。まずその読む本の内容が全部頭に入っていないと、そもそも要約ってできないですよね。

形式上では、最初と最後でちょちょっとまとめることもできるかもしれないですけど、それって本当に、本の伝えたいエッセンス、本質をまとめられている要約とは言えないですよね。まず要約を書くためには必然と、この「要約」を意識することによって、その内容を理解しようとすることができるんですね。

西岡:すごくよくわかりますね。ちゃんと理解していないと、言いまとめることってできないので、その過程で全部読み直すわけですもんね。逆にそういう目線で見てみると、ぜんぜん違ったニュアンスが文章の中に出ているように感じることも、けっこうある気がしますね。ありがとうございます。

東大生が長けている「つまりどういうことか」を捉える力

片山:この「要約ノート」で、もちろんノートにまとめることもできるんですけど、プラスアルファ日常生活でも使えるんですね。

西岡:日常生活?

片山:例えば友だちや親から話を聞いたことを、簡潔に「つまりこれはどういうことか」って、自分の中で言い換える作業ですね。先ほど西岡さんがおっしゃったとおり、その作業をすることによって、相手の言いたいことが何だったのか、本質をしっかり捉える練習になるんですね。

日常的な訓練だけではなくて、実際にノートに要約を書くことによって、自分が勉強したことをアウトプットできるわけなんですね。自分の頭で「今日の物理で学んだことは、結局こういうことだ」って考えてから自分のノートに書くことによって、「ここの範囲で一番大事なのは、こういうことだったんだな」って、思考の整理ができるんですね。

まさにこの本のタイトルにあるとおりなんですけど。東大生って、要約するのがすごく上手なんですね。

東大生のノートから学ぶ 天才の思考回路をコピーする方法

西岡:確かに。

片山:なぜかというと、「つまりどういうことか」を捉える、本質を見抜く能力が長けてるからこそだと思うんですね。その訓練になるのが、まさにこの「要約ノート」なんです。

西岡:素晴らしい。「頭のいい人たちがやってることって、みんな要約なんだぜ」ってみなさんにも理解してもらいたいと思いますね。新聞の『天声人語』を要約すると子どもの学力が上がるとか、読書感想文が近いと思うんですけど、本でも要約してみようとか。昔からそういうことって言われていると思うんですけど。

やっぱり本質は、そういうの全部ひっくるめて「要約」なんだと、理解してもらいたい。この配信を受験生の方とかが聞いていらっしゃるかもしれないから言っておきますと、英語の文章もそうだし、国語の文章もそうだし、いろんなものを要約するという勉強をしてみるのはありかなって思いますね。

東大生こそ読んでいる、社会の教科書の「要約」

西岡:ちなみに片山さん、受験の時に自分でも要約をしてたというエピソードって、なにかあったりするんですか?

片山:もちろんあります。

西岡:教えてください。

片山:僕自身、国語がすごく苦手だったんです。どうしても文章を主観的に読んじゃったりとか、大事な要素を読み落としちゃったりがよくあったんですけど。その国語の文章を、だいたい100字から120字くらいにまとめることによって、この文章の一番言いたいことを探す訓練をしたんですね。そうすることによって、一番言いたいことを抽出する能力が身についたんです。

西岡:すごいですね。やっぱり「言い換える」のは非常に必要なことなんですね。英語とかでもありなのかなって思っていて。東大の英語の入試問題の1番目が、要約の問題じゃないですか。あれは他の大学の人たちも含めて、すごく勉強になると思っているんですよね。文の構造や「本当に言いたいことが何なのか」をつかむことを含めて、英語でも要約の勉強はありかなって思います。

あと、これは地理とか日本史とか世界史とか、社会の科目の話なんすけど。社会って教科書の章扉に、なぜかちゃんと要約が書いてあるんですよ。「17世紀はこんな時代です」みたいな。用語をいっさい使わない要約が書いてあって、東大生こそ、そこを読むんですよね。

僕もそうだし、他の学力が伸び悩んでる生徒さんも、そこを見逃しているんです。「なんも情報が書いてないから。要約されているだけだから、別にいらねえや」って、年号のページとかにいって、年号とかに線引いたりするんですけど、それだと成績上がんないんですよね。

やっぱり要約から始めてみること。要約に注目して見ることって重要なのかなと、個人的にはすごく思うところですね。

社会人にも必要な「一番大事なところだけを伝える」能力

片山:この要約ノートは、僕自身、自らの塾で役立っている側面がありまして。僕の塾では、毎年保護者の方に生徒さんの報告レポートを作成しているんですね。1ヶ月間の生徒さんの成績とか、授業態度がどうだったかってまとめるんですけど、そのすべてを書ききることって、なかなか難しいんですね。

だいたいA4の紙1枚に、その生徒さんがどうだったかをまとめる必要があるんですけど、やっぱり要約の練習ができてないと、なかなかうまくまとまらないんです。なんでもかんでも起こった事実をただ羅列しているだけだと、どうしても保護者の方が読んだ時に「何を言っているのかよくわからないな」って文章になっちゃうんですね。

要約する力は、やはり社会人の方でも非常に大切なことだと思います。レポートとか、あったことを上司に報告するとか、他の方に知ってもらうためには、「一番大事なところだけを伝える」のが非常に大事だと思うんです。

西岡:確かに、そういう能力って社会人になっても必要になってきますよね。ぜんぜん関係ないですけど、最近『ドラゴン桜』のドラマの内容をツイートしなければならないって、僕がやっているわけなんですけど。そういう時に考えるわけですよね、「今の藤井遼くんのセリフをどう要約しようか」みたいな。

どうしたら多くの人に伝わるかなって考えるわけなんですけれど。やっぱりそういう訓練も、要約が基礎になっているというか、大元になっているんだろうなって、非常に強く思いますね。

「他人に説明できる」のは、しっかり理解している証拠

西岡:理解定着のノートの話で、要約の話をすごく長くしているわけでございますが、要約以外の話もうかがっていいですか?

片山:理解定着のノートでは、要約ノートが一番いいかなって思ってるんですけど、他に理解定着する時に大事なのは、やっぱり自分で理解できたと思っていても、それを他人に説明できないと意味がないですよね。

西岡:確かに、そうですね。

片山:いかに自分が理解したと思っていても、他人に説明しようと思ったら「あれ、なんかうまく言葉に表せない」ってことが出てくると思うんですね。そういう時に役立つノートで、「セルフレクチャーノート」のがあるんですね。

「セルフレクチャー」を日本語のとおりにとると、「自分で先生になったつもりで説明する」という意味。これは本質的に、自分1人だったら「セルフレクチャー」になるんですけど、友だちとか周りの人がいたら、その周りに人に説明するところにもつながってくると思うんですね。

「他人に説明できる」って、やっぱりすごく大事なことだと思うんですよ。なんで大事かといいますと、まず最初に自分がしっかり理解できてるかどうかの確認ができるんですよね。自分がよくその物事についてわかっていないと、なかなか他人に説明できないと思うんです。

例えば、西岡さんが『ドラゴン桜』を監修されてるんですけど、「『ドラゴン桜』の第3話ってどういう話でしたか?」って、自分自身が第3話についてよく理解してないと、なかなか相手に伝えられないですよね。

西岡:まさにそうですね。

片山:他人に説明をしようとした時に、「あれ、うまく言葉にできない」って感じたところが、まさに自分の理解ができてない箇所って言っても過言ではないんですね。

西岡:確かに、自分が理解できているか、できていないかを把握する手段としての説明もあるわけですね。

共通テストの問題を、記述式にしようとした意図

西岡:入試問題ってすごくうまくできてて、結局のところ、ぜんぶ説明じゃないですか。

例えば、「17世紀について答えなさい」っていうのも「説明しろ」だし、国語の問題で下線部が引いてあって「ここについてはどう思うか答えなさい」というのも説明だし、やっぱりぜんぶ「説明」を聞いてるんですよね。なんで説明を問われているのかというと、やっぱり理解が定着してるかどうかを測る手段として、一番いいのが説明だからなんじゃないかって思うんですよね。

共通テストも記述式でやろうって言っていたのも、断念されちゃいましたけど、意図としてはそこだったわけですよね。ちゃんと自分の言葉として、誰かに何かを説明するってこと自体が必要になってくる。それが理解定着とか、頭をよくするために必要になることなんだろうなと思っていたので、今の話はすごく納得感がありますね。

ちなみに、東大生って説明を高校時代にやってた人がけっこう多くないですか。

片山:それは僕もすごく感じます。

西岡:けっこう多いですよね。

片山:友人同士のグループで一緒に勉強会をすることがあって、「自分はこう思うんだけど、みなさんはどう思いますか?」ってディスカッション形式のものもあれば、難しい問題を他の人に「こういうことだよ」って、まさに先生みたいに解説するのをやっていたという話をよく聞きますね。

西岡:そうですよね、めっちゃわかるな。

東大生は「説明すること」が習慣になっている

西岡:片山さんに質問というか、みなさんにクイズなんですけど、東大の中で一番多い、他の大学と比べて異常に多いサークルって何だと思います?

片山:異常に多いサークル?

西岡:他の大学のサークルだと、そんなに数は多くないはずなんだけど、東大だけはめっちゃ多いサークルがあるんですよ。何だと思います?

片山:そうですね、僕自身東大に在籍してるんで、それが他の大学に比べて多いのかわからないんですけど(笑)。クイズサークルですかね?

西岡:これね、文系サークルなんですよ。

片山:文芸サークル。

西岡:つまり何かというと、本の感想を言い合ったり、本の紹介をしたり、冊子を作ったり、そういう団体が東大に10個以上あるんですよ。

片山:そうなんですね。

西岡:他の大学だったら、さすがにそんなにないんですよ。1個や2個、大きめの団体があるような感じなんですけど、東大はそんなにあるのかってくらいあるんですよね。ジャンルによってもいろいろ分かれているし、本当に細かく言ったら、20個くらいあると思うんだけど。

何を言いたいかというと、僕はそのエピソードを聞いて、本を説明すること自体が骨身にしみているというか、そういうことが習慣化している東大生ってけっこういるんだなって感じたので、片山さんにご共有いたしました。

片山:他人に説明することは、先ほどの要約にも通じるところがあるんですけど。やっぱり訓練しないとできるようにならないんですよね。「あの人はすごいな。頭いい人はすごいな」ってあると思うんですけど、賢い方々も実際に幼少期からそういう訓練を積んだ結果、そのような能力が得られてるわけであって。

自分の説明能力とか要約力を養うためには、自分でノートをとって、こういうふうに練習を積み重ねていくのも大事だと思うんですよね。