2024.11.26
セキュリティ担当者への「現状把握」と「積極的諦め」のススメ “サイバーリスク=経営リスク”の時代の処方箋
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桜井陽氏(以下、桜井):日本経済新聞の桜井と申します。「NIKKEI STYLE U22」という大学生・高校生といった若者向けのメディアでデスク・編集者をやっております。今日は村上臣さんに、私から日経新聞のいろいろなニュースを示しながら、これからの大学生が知っておくべきスキルなどを深掘りしていければと思っております。
村上臣氏(以下、村上):はい。
桜井:本日はスキルの話ということで、スキルの語源は何だろうと思って。
村上:さすが記者(笑)。
桜井:一応、記者ですから(笑)。調べてみたら「切る」=「CUT」などと語源が通じているらしくて。割とフィジカルな「腕前」みたいな感じなんですよね。
村上:なるほど。
桜井:もう1つは「分ける」という意味もあるそうです。ですから「自分の腕で切り開く」「自分の腕ではっきりさせる」といったイメージみたいなんですね。あと「スカルプチャー」(彫刻)とかとも通じるんです。手仕事的な感じなんですよね。
村上:なるほど。
桜井:今の時代、ニュースなどでも「スキル、スキル」とよく言われるじゃないですか。背景には、例えばジョブ型とかいろいろな要素があると思うんですけれど、なぜ今こんなに「スキル」と言われるようになったのか? まずはそこから伺いたいと思います。
村上:まさに桜井さんがおっしゃったように、現在、日本型雇用の転換期にあることが大きいと思っています。これまで日本の雇用システムは、メンバーシップ型と呼ばれている、いわゆる終身雇用をベースにしたものでした。
これは、基本的に「一度入った会社に定年まで勤めます」という仕組みで、新卒を一括で採用して、入社時には特に技能とかは求めません。代わりに会社が人材をゼロから育成して、ローテーションと呼ばれる部署異動を経ながら、その会社の中ならどこでも通じるような人材を作ろうというものでした。
メンバーシップ型の人材育成でのゴールは、究極的にはその会社の社長であり役員であったわけです。それが、いわゆるキャリアの“上がり”だった。しかも、社長や役員になれなくても、会社には定年までずっと居続けられるので、会社のメンバー・ファミリーの一員になるという意味で、メンバーシップ型雇用と言われています。
村上:最近になってジョブ型雇用が注目されているのは、一つはアジアも含めて日本以外の国の雇用制度が基本的にジョブ型で、その波が日本にも広がってきたことが挙げられます。海外では「何かやってほしい仕事があって、そのポジションのために人を採用しよう」という考え方をします。
では「なぜ海外はジョブ型雇用が盛んなのか?」と言うと、やっぱり解雇規制の問題が大きいと思います。基本的に海外の働き方はプロジェクトベースで動いていて、あるプロジェクトが会社の中に立ち上がったら各々強みやスキルを持った人がワッと集まって、プロジェクトに貢献して、終わったら解散していくといった流れになっていることが多いんです。
プロジェクトに参加するメンバーも、みんな自分の技能を武器にしていて、それを評価してくれるプロジェクトをどんどん渡り歩いていくと。会社という枠組みを越えてどんどん移っていくので、雇用の流動性はかなり高いんです。
日本のように「一つの会社でキャリアを終える」という人はほとんどいなくて「自分の特定の技能を一定期間会社に提供して、その対価を得る」ようなイメージですね。だから、働く意識は(日本と)まったく違うと言えるかも知れません。会社と合意して、決まった期間で貢献したら、次の場で新しいキャリアを積んでいく。
桜井:そうすると、今まで僕らが持っていた仕事に対するイメージみたいなものが、ガラッと変わっていきますね。
村上:そうですね。
桜井:ひとつ、ニュースを共有させていただきます。(スライドを指して)これは日本経済新聞電子版の8月27日付の記事です。
ドイツのバーデン・ヴェルテンベルク州の金属電気産業について取り上げています。この地域は金属電気産業が盛んだと思うのですが、ここでは会社が職務ごとのスキルを明確に点数化しているんですね。「専門大学での勉強24点」とか「1年の職業訓練経験16点」とか。
つまり「ここで働きたかったら、こういう点数を積み上げてね」という条件が明示されている。まさに“ザ・ジョブ型”の世界だと思うんです。「この大学を出たら何点」とか、明確に自分の実力も分かるし、目標もはっきりします。日本も将来的にはこうなればいいんでしょうか?
村上:ドイツはまた特殊ですよね。雇用の流動性が一番激しいのはアメリカで、平均の勤続年数がだいたい4、5年ぐらいです。多くの人がそれぐらいの時間間隔で会社を変わっていくのが、一般的です。
一方でヨーロッパの場合は、少し平均勤続年数は伸びます。フランスやドイツはけっこう長くて、10年ぐらいだったと思います。その中で、ドイツは教育システムがユニークで、基本的に自分の将来の進路を10歳のうちに選ばないといけないんです。いわゆる小学校に相当するところが、Grundschuleと呼ばれていて、ここで自分は「専門職コース」か「大学進学コースか」を選択します。
10歳の時点で「自分の将来どうするんだ? どの職につくんだ?」と問われるわけですね。ドイツは職人がとても尊敬されているので、いわゆる職業訓練校みたいな教育機関も人気があります。一方で経営者などを目指すなら、大学コースを選ぶ。さらに、シュタイナー学校という小学校から大学に至るまでずっと同じ教育システムを取る教育機関もあって、ドイツはだいぶ多様性があるんです。
桜井:これはじゃあ極端なケース。
村上:極端ですね、ドイツは極めて。
桜井:なるほど。そうなると、日本におけるジョブ型はどうなっていくんですか? 日本型ジョブ型というのが、あるのかどうか。
村上:最近は、ハイブリッド型と言われていますよね。
桜井:ハイブリッド型は、本当にあり得るんですか?
村上:そうですね。ドイツの例は置いておいたとしても「自分が将来どうなりたいのか?」という点は、今後、世界のどこにいても意識する必要があると思います。
桜井:その中で、大学生はどんなスキルを身につけていけばいいんでしょうか。
村上:現状で言うと、日本の大学はアカデミックなものを重視しているので、実際に会社の中で生かせるスキルとはけっこう離れているかなとは思います。
ですから、まず「自分がどういう仕事がしたいのか?」というところを考えるところから始めるといいと思います。
一般に、3年生ぐらいから就職課に通ったりセミナーなどに参加したりして、自己分析から業界分析、志望業界みたいなのを決めていくと思うんですけれど、その時点スタートするとかなり慌てることになると思います。個人的には、なるべく早い時期からインターンやアルバイトなりをして、実際に会社の中で働く経験を積んでおいた方がいいでしょう。その過程で人脈を作って、先輩などに必要なスキルを聞くほうがいいかなと思います。
スキルには「ハードスキル」「ソフトスキル」の2種類があります。ハードスキルは「プログラミングができます」「Javaが書けます」「英語を話せます」といった感じで、勉強して習得できるものですね。一方のソフトスキルはコミュニケーションだったり、マネジメントだったりといった、勉強だけでなく体験を通して会得していきます。
このうち「学生はどちらを習得すればいいか?」と問われれば、私はハードとソフト両方を理解した上で「働く上で、どういうスキルが必要になるんだろう」という意識を持ちつつ、体験する機会を得ることが大事になると思います。
桜井:僕も日々、いろいろな取材とかで大学生に接していますけれども、1年生・2年生・3年生・4年生で、状況はぜんぜん違うじゃないですか。
今日これを聞いている学生さんの中には、1年生もいれば2年生もいれば、3年生もいれば4年生もいます。もう少し細かく「1年生だったらこう」「2年生だったらこう」と心がけておいた方がいいことはありますか?
村上:例えば今なら、スタートアップでアルバイトやインターンを募集しているケースが少なくありませんから、そこに飛び込んでみるのは一つの方法ですよね。興味がある会社があれば、まずいろいろな手を使ってアクセスしてみるのは、それだけで勉強になると思います。
行動には学年はあまり関係ないですね。1年生から動いてもいいと思います。例えば、今は新型コロナの影響でリアルイベントは減っているけれど、反対にオンラインは増えています。それこそ、リンクトインなんかを駆使して、SNSで大学の先輩をつかまえて話を聞いてみたりすることは、1年生でも2年生でもやっていいと思いますね。そうした体験も貴重だし、もし話が聞ければ、それ自体が学びになると思います。
その中で、ぜひ意識して欲しいのが「自分は何にモチベーションがあるのか?」ということです。仕事、アルバイト何でもいいんですけれど「働いていて、何が一番楽しいのか?」という点を自分自身で理解するように、早いうちから意識しておいたほうがいいと思います。
例えば、自分は人の喜ぶ顔を見ることがうれしいのか、難しい作業を黙々とやっている瞬間が楽しいのか。やりたいと思うことと、自分の適性が合っているのかを含めて、自分を突き動かす“ドライバー”(原動力)は何なのか? という点を、2年、3年生になる頃までに知っておくと、その後の会社選びが楽になると思います。
桜井:ドライバー。これ、キーワードですよね。自分の中のドライバーがどこにあるのか?シンプルだけど、すごく奥深いですね。
村上:これは大人にとっても、意外と奥深い話だと思います。
桜井:大人になって、ゴルフ場でドライバーは振れるけど“自分のドライバー”はわからないという人は、たくさんいます(笑)。臣さん自身は、ドライバーをどう見つけたんですか?
村上:私はそもそも、昔から物を作るのが好きだったんです。リアルなものであっても、バーチャルなプログラミングであっても、とにかく組み立てて動くものを作るというのが、まず大好きでした。
作品をなるべく多くの人に使ってもらって、何かメリットを得て喜んでくれている、その瞬間に触れることがすごく楽しいんですよね。それが社会の課題を解決するようなことであれば、何よりうれしい。そうした自分のドライバーがけっこう早い段階で分かっていたので、基本的にはそれが実現できる仕事を選んできました。今もそれは変わっていませんね。
桜井:臣さんの場合は、ドライバーがあって、それで初めてスキルを身につけようと思ったんですか? 学生さんとお話をしていると「今の時点で身につけておいたほうがいいものは何ですか?」と良く聞かれるんですよ。
村上:基本的には、スキルって5年で陳腐化すると言われているんですよ。そういう研究もあるほどで、残念ながら、ずっと通じるスキルというのは基本的には存在しないと思っていたほうがいいです(笑)。
ただし、ポータブルスキルといわれる「文章を書く」といったものは、どの局面においても使えますので、どこに行っても役に立つと思うんですよね。
あとは英語ですね。やっぱり世界は英語で動いているので、これはどこに行っても、通用するスキルでしょう。「一番コスパのいいスキルは何ですか?」と言われたら、僕は間髪入れずに「英語」と答えますね。
桜井:そうなんですね。
村上:僕は30歳を過ぎて、後からがんばって身につけたので。本当に若いうちからやっておけばよかったなと後悔しています。
桜井:リンクトインのグローバルの会議って……日本語のワケないですよね。
村上:もちろん英語です。日本のオフィスでも半分以上は英語ですね、特にメールは。
桜井:そうなんですか?
村上:上司がみんな英語圏の人なので。公用語が英語なので、そうなっていますね。
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