深層学習が実世界においてどう応用されていくのか

西川徹氏(以下、西川):ただいまご紹介いただきました、Preferred Networksの西川です。

私たちの会社では深層学習(ディープラーニング)と呼ばれる技術を実世界の問題に応用していくこと、例えば自動運転やロボティクス、工作機械の高度化にライフサイエンスなど、さまざまな分野に応用していく活動を行っています。

本日の私の講演では、その応用を支える基盤となっている技術と、いかにして研究開発のスピードを高めているのかといった点にフォーカスし、お話をさせていただきたいと思います。

初めに、深層学習が実世界においてどう活用されていくのか、どう役に立つのかといった点について、3つほど事例を交えてご紹介させていただきたいと思います。

一般家庭の部屋をロボット仕様に作り変えることの難しさ

最初の事例はロボットの事例になります。私たちは3年ほど前にファナックさまと協業を始めて以来、ロボットの魅力というのにとりつかれまして、現在ではロボットの事業にかなりの部分を注力しております。今年10月のCEATECというイベントにおきましては、パーソナルロボットへの参入も表明させていただきました。

その時に出展させていただきましたのが「全自動お片付けロボットシステム」です。読んで字のごとく、物が散らかった部屋を外出中に片付けるといったロボットです。こういったロボットを実現する上で、課題になってくることをこれから申し上げたいと思います。

産業用ロボットやサービスロボットなどは、ある程度は環境をロボットに合わせることができます。一方で、家庭内にロボットを普及させていこうと思うと、家庭をロボット仕様に作りかえるというのは難しく、導入のハードルを高くしてしまいます。

いろんな環境が存在する家庭において、そのさまざまな環境へロバストに対応していくといったことが、極めて重要なポイントになってきます。そのために、私たちはたくさんのデータを学習させることによって、ロバストさを生み出そうとしています。

問題解決のカギは、深層学習による高精度な物体認識

(スライドを指して)ここに掲げておりますように、条件をいろいろ変えてみたり、部屋のいろんな場所で物体がいろんな置かれ方をするといったデータをたくさん集めまして、それを深層学習で学習することによって、いろんな環境へロバストに対応できるようにしています。

では結果どうなったのかというのを、動画でご覧いただきたいと思います。

(動画が流れる)

最初は早送りの動画になります。(動画を指して)このようにロボットが外出中に片付けをしてくれるんです。ここでキーになっておりますのは、先ほども申し上げました深層学習を利用した高精度な物体認識です。

それが可能になることによって、物体の位置や形などを正確に認識することができ、それによってしっかりと物体をつかむことができるようになります。しっかりとつかんだ物体を落とさないように運んで、所定の場所にしまう。そういったことを実現しております。

今回私たちは、家庭のなかのロボットとして役に立つ、さまざまな機能を実装しています。

たとえばスリッパ。ばらばらに放り投げられると困ってしまいますので、しっかり向きをそろえて置きます。また、棚に物をしまう時も、適当に物を置かれたら困るので、センサーを使いながら優しく物が立つように置く。そういったことも可能になっています。

次に出てくるのは開発途中の動画です。開発途中はまだまだ学習データも足りず、認識精度を高くすることができませんでした。つかむ場所を正確に認識することもできず、つかめそうでつかめないという状況が日々続いておりました。

最終的には深層学習と大量のデータを学習させることによって、高い認識精度を実現することができ、しっかりと物体をつかむということを実現することが可能になりました。こういった高い認識精度を出せるようになったのは、深層学習の力によるところが非常に大きいと言えると思います。

深層学習の特長は、高い汎化性能

では次の事例に移りたいと思います。物流の現場や、スーパーマーケットなどで物を箱に詰めるような状況を想定して作られた技術になります。こういった物流の現場などにロボットを導入していく上では、いかに導入・運用コストを下げるのかが重要になります。

そこで私たちは、深層学習で大量のデータを事前に学習させることによって、初めて見る物体でもロバストにつかめるようにするといった技術を実現しました。動画をご覧いただきたいと思います。

(動画流れる)

スーパーマーケットで買ってきたようなものを箱の中に詰めています。実際に学習する時には、この中に入っている物体は使っていないんです。しかもこれは生鮮食品なので、買ってくるたびに形などは変わってしまいます。

そのような初めて見る物体であっても、深層学習の持つ高い汎化能力、一般化性能を用いることによって、このように対応することができます。そのような高い汎化性能を持っているということが、深層学習を実世界に応用していく上で重要な特長になってきます。

(動画を指して)このようにきれいにすべての物体をつかむことができます。

少ない量のデータでも学習可能な画像検査

次は画像検査の事例です。

製造業を効率化していく上で、最後に検査をして出荷するという工程が必要になります。その検査には、いまはまだまだ人手が多くかかっているのが事実です。ですので、その検査を自動化することによって、生産効率を大幅に上げていこうということで、昨今ではこういった画像検査の技術に非常に大きな注目が集まっています。

私たちもその分野に取り組んでおります。まずは、実際にどう動いているのかをご覧いただきたいと思います。

(スライドを指して)こちらは、これから金属の部品をリアルタイムでチェックしている事例になります。正常品を乗せると「Good」と出てきます。これは「正常ですよ」ということですね。

一方で、次に乗せる部品は、左側に微妙に傷がついているんです。それを乗せると、瞬時にこれは不良品であるということを判断して、なおかつ傷がどこにあるのかというのをハイライトで示すこともできます。

もちろんこういった部品だけではなくて、さまざまな部品に対応することが可能になっています。

次はカーペットです。カーペットに汚れがあるかどうかというのを判別します。こちらは汚れがないので「Good」と出てきました。次も汚れがない物を乗せています。そうすると、このまま良品だと判断するわけですね。

次に乗せるカーペットは、黒い染みがついています。そうすると、これは汚れがありますよ、不良品ですよと示すとともに、その場所をハイライトすることができます。

この技術の大きな特長としましては、非常に少ない量のデータでも学習が可能になっているんです。あらかじめさまざまな種類の大量のデータを学習しています。それによって、実際に個々のタスクに最適化していく上では、数十個の不良品データと100個程度の良品データを集めるだけで、非常に高い性能を出すことができます。それによって導入のハードルを大きく下げることができるんですね。

こういった高い性能を出せるようになったのも、深層学習の持つ高い汎化性能によるところが大きいと考えております。