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着想から2か月でローンチ!爆速で新規事業を立ち上げる方法(全4記事)

新規事業が失敗する人ほど最初に「知り合い」に売る? 一時的な成功ではなく、本当のPMFを達成するために必要なこと

「マーケティングの力1つで、経済を動かす」をVISIONに掲げる株式会社koujitsu。今回は同社代表の柴田雄平氏が「爆速で新規事業を立ち上げる方法」を語ったセミナーの模様をお届けします。今回は、ローンチまでのスピードを最大化する3つのポイントや、PMF達成に必要な具体的ステップについて語られました。

新規事業のメンバー選びは「脱落歓迎方式」が有効

柴田雄平氏:新規事業の5ステップを行った後)次に重要になるのが、「リソースの調達とチーム構築のポイント」です。僕が考えるポイントは2つあります。1つ目は、自社のメンバーを活用する場合に、参加者をやる気とコミットメントで選ぶこと。2つ目は、外部リソースをうまく活用することです。

まず、参加者をやる気とコミットメントで選ぶという点についてです。

新規事業では、スキルよりもマインドとコミットメントが重要です。やはり、一歩踏ん張れるメンバーでないと、最後までやり遂げるのは難しいです。そのため、スキルの有無よりも、自分のタスクに責任を持ち、時間を割きながらやり遂げられるかどうかが大切になります。

社内の公募で希望者を募る場合は、最初は多めにメンバーを集めてもいいですが、途中で離脱する人が出てくるのは避けられません。そのため、「脱落歓迎方式」を採用することが有効です。「途中で辞めてもかまわない」という環境を整えておくことで、メンバーに過度なプレッシャーをかけず、参加しやすくなります。

特に中小企業の場合、リソースが限られているため、社内メンバーが既存業務と新規事業を兼任するケースが多いです。新規事業専任の担当者を置ける大企業とは異なり、リソースの確保が難しい中でメンバーを選ぶ際には、経営陣がしっかりと判断基準を持つことが重要です。

外部リソースを活用する際のポイント

次に、外部リソースの活用についてです。

内部メンバーが既存業務を兼任している場合、新規事業へのコミットメントが低下しやすい傾向があります。こうした状況では、外部リソースを活用するほうが早く進むことが多いです。僕らの経験でも、大手企業と比較すると、自社のリソースだけでは難しく、外部リソースに頼るケースが多々あります。

外部リソースを活用する際には、プロジェクトのマネジメント体制やコミットメントラインを明確にし、特に営業活動などの部分を外部に任せることで効率化が図れます。これにより、プロジェクトの進行がスムーズになります。

もし自社に潤沢なリソースがあれば、それを活用すればいいですが、そうでない場合や既存の売上が低迷している場合、新規事業への投資を判断する意思決定が必要です。「自分たちはどこにお金を使うべきなのか」を明確にし、外部の信頼できるパートナーに依頼するのも有効な選択肢です。

内部リソースが限られている場合でも、外部リソースを上手に組み合わせることで、新規事業を成功に導く可能性が大きく広がります。この点を念頭に置き、適切なリソース調達の方法を検討していただければと思います。

ローンチまでのスピードを最大化する3つのポイント

続いて、ローンチまでのスピードを最大化することについてです。ざっくり言えば、一刻も早く事業を収益化し、メンバーに還元したいというのが本音です。また、新規事業が会社全体の売上構成比の中でどの程度の割合を占めるかをしっかり把握しておくことも重要になります。

「スピードを最大化する」という観点でポイントを絞ると、大きく3つあります。1つ目は、市場調査やデータ収集をAIなどのツールを活用して効率化し、時間を短縮すること。2つ目は、すべてのタスクに担当者の名前を明記し、必ず期日を設定すること。3つ目は、同期・非同期のコミュニケーションを適切に組み合わせ、業務の流れを最適化することです。

まず、市場調査や外部調査の効率化についてですが、現在さまざまなツールが出ています。

僕の周りでも、GensparkやMapifyを使っている人が多い印象です。ただ、他にも良いツールがあれば積極的に取り入れてほしいと思っています。市場調査やリサーチにかけるリソースは最小限にしつつ、視覚化されたデータを用意することで、社内共有のスピードを上げることが重要です。

次に、タスク管理についてですが、Slackと連携したタスク管理シートを活用するのも効果的です。

すべてのタスクに担当者の名前と期日を明記し、さらに複数の企業が関わるプロジェクトでは、会社名と担当者名も記載しておくことで、責任の所在を明確にします。

管理ツールはスプレッドシートでも構いませんし、Slackのタスク管理機能を使ってもOKですが、「全員が非同期で共有できる仕組みを決めておくこと」が何よりも大切です。

具体的なフォーマットとしては、タスク名、完了状況、期限、メインの担当者、サブメンバーを明記し、全員が共通認識を持てる状態を作ることが理想です。こうした管理方法を徹底することで、プロジェクトの進行スピードを最大化できるので、ぜひ実践してほしいと思っています。

同期と非同期のコミュニケーションのバランス

3つ目は、同期と非同期のコミュニケーションを適切に組み合わせることです。

非同期型のコミュニケーションとしては、定例会以外にもクイックなミーティングや電話を活用し、スピーディに意思決定を進めることが重要になります。

関係者が増えてくると、全員が参加する全体定例の頻度を上げすぎると、かえって業務の進行が遅くなることがあります。そのため、全体定例は隔週ベースくらいに抑え、各部門の担当者ごとに同期型の定例会議を適宜行うほうが効率的です。全体の定例会議を減らし、各分科会で具体的な課題を進めていくスタイルを取ることで、意思決定のスピードを上げることができます。

こうした進め方をすることで、自社のサービスの方向性がより早く見つけられ、そこからクイックウィン(短期間で成果を出す施策)を積み重ねて数字を作っていくという流れができると、事業をスムーズに進めやすくなります。

そのため、新規事業の担当者や、これから事業を立ち上げていく人たちは、このような進め方を意識すると、社内での議論がよりスムーズになり、事業の解像度も高まってくるのではないかと思います。

PMF達成に必要な具体的ステップ

僕からのお話は以上になりますが、何かご質問があればぜひお願いします。

「サービスのPMFを目指すために気をつけていることがあれば教えてください」という質問をいただきました。PMF(プロダクトマーケットフィット)は、どの段階で取り組むかによってアプローチが変わってくると思います。

僕自身がPMFの達成に向けて意識しているポイントの1つに、「虚栄に騙されない」ということがあります。例えば、見かけ上の数値や一時的な成果に惑わされず、本当に市場に受け入れられているのかを見極めることが重要です。

僕が作っているチェックリストがあるので、それを簡単にお見せすると、「PMFの達成に必要なステップ」として、ターゲット市場の定義、顧客解像度の深掘り、仮説立案と検証、プロトタイプの生成、MVP(Minimum Viable Product)の開発など、この中の10までのステップを見ていくのがいいかなと思います。

PMFを判断する際に、特に評価指標として見るべきポイントは、市場の理解度と顧客ニーズの優先度のマッピングです。ここをしっかりと整理することで、自分たちが狙うべき市場の輪郭が明確になります。その上で、仮説検証の回数がどの程度実施され、MVPの完成度がどこまで高められたかも重要な指標になります。

また、サービスをPMFに近づけるためには、自社が狙うマーケットでの目標となる売上金額・契約件数・LTV(ライフタイムバリュー)を明確に設定することが大前提になります。その上で、仮説検証のプロセスを進めた結果、予定していた期間よりも早く目標を達成できた場合、PMFが進んでいると判断できます。

もう1つの目安として、知り合いや既存のクライアントを経由せず、完全な新規顧客からの契約獲得スピードが従来よりも早くなった場合も、PMFが成功している兆候の1つと考えられます。

このように、PMFを評価する際は、単なる数値や一時的な成果ではなく、市場の反応や実際の顧客の動きに着目することが重要です。資料の中にも活用できる部分があると思うので、ぜひ参考にしてみてください。

新規事業で実績がない場合に行うこと

続いての質問、ありがとうございます。「サービス立ち上げ時に、事例や実績がない場合、どのように動かれていますか?」という質問ですね。そうですね、新規事業では事例や実績がない状態からスタートすることも多いと思います。そのような場合、僕らはまずペルソナの分解を徹底的に行います。

具体的には、まずサービスの骨組みをある程度作ります。その後、仮説段階のペルソナを3〜4パターン作成します。このペルソナごとにカスタマージャーニーを描きます。

カスタマージャーニーには2つの観点があります。1つ目は顧客が認知から購買まで至る動きです。比較検討の段階を含めたペルソナの動きを詳細に分析します。2つ目は、顧客が購入後にどのように行動するかという視点です。この2段階のジャーニーを描き、それぞれのプロセスで顧客との接点(タッチポイント)を洗い出します。

例えば、A〜Dのペルソナを作り、それぞれのカスタマージャーニー上で10回の接点があると仮定します。この場合、A〜Dの4ペルソナ×10接点で40回のタッチポイントがあることになります。この40のポイントを検証することで、初期段階のサービス設計を固めることができます。もしこの仮説が当たらなかった場合には、新たにEやFのペルソナを追加で作成して再検討します。

新規事業を成功させたいなら「知り合い」への販売は避ける

次に重要なのは、ペルソナを基に市場相場を考慮しながら、実際の価格を正規の価格で提示することです。例えば、1,000円の価値がある商品を900円で提供した場合、顧客はその商品を900円の価値で評価してしまいます。適正価格で価値を伝えることが重要で、割引や値引きは顧客の認識を歪める可能性があるのです。

また、知り合いに販売することについてですが、僕の考えでは知り合いは最初に「買うよ」と言ってくれることが多いですが、リピーターにはなりにくい傾向があります。つまり、知り合いはセグメントされた顧客ではないため、最初から適正なターゲット層に対してアプローチすることが重要です。

そのため、僕は知り合いに頼るのではなく、最初から適正価格でターゲット層に向けて打ち出すことを重視しています。適正価格を正しく設定し、正規の顧客からの反応を見ながらサービスを改善していくことが、新規事業の成功につながると考えています。

このようにペルソナ分解や価格戦略を丁寧に進めることで、事例や実績がない状態でも事業を軌道に乗せることができるのではないかと思います。

モニタリングを行う際、本当にお金を払いたいかどうかは、実際に支払ってもらわないとわからないですよね。そのため、マーケットの考え方として「最初は安価にやる」とか「知り合いにお願いする」といった方法は、避けたほうがいいと考えています。これをやってしまうと、意味のないPMF(プロダクトマーケットフィット)が形成されてしまう可能性があるからです。

僕が「虚栄」と言っているのはこの部分で、知り合いに頼ると、本来の市場とは異なるバイアスがかかるため、僕自身は最初から知り合いには頼まないと決めています。そのため、最初の段階から実際のセールスを行い、自分の知り合いではなく、少し距離のある顧客層にアプローチすることを重視しています。

実際にミニマムの価格でもいいのでお金を支払ってもらいながら、サービスの評価を見ていくことが、より正確な市場検証につながります。

無料モニターよりも、お金を払った人のフィードバックが重要

僕は基本的に、無料のモニターは一切やりません。無料で提供しても、データやアンケートは取れますが、お金を払っていない人の意見には価値がないと思っています。本当に重要なのは、お金を払った人のフィードバックを得ることです。

逆に言うと、お金を払ってもらえなかった場合、失注の原因を正しく分析(失注分解)することができるんですよね。「なぜお金を払わなかったのか?」という問いではなく、「どこに価値を感じなかったのか?」を明確にし、それを基にもう一度サービスをブラッシュアップできるのが重要なポイントです。

この過程で、競合との差別化ポイントを見直したり、競合の営業を実際に受けてみて学ぶこともできるので、より精度の高い事業戦略を練ることができます。

そのため、無料モニタリングは基本的におすすめしません。無料モニタリングを行う企業も多く、やり方として完全に否定するわけではありませんが、僕自身はこの方法を取らないという方針です。無料モニタリングを実施すると、市場の反応を見るまでに時間がかかるため、新規事業のスピードが遅くなる可能性もあります。

だからこそ、僕は最初から適正な価格で販売し、実際にお金を支払ってもらうことで市場の反応を測ることを重視しています。もしその価格で売れなかった場合は、「なぜ売れないのか?」をしっかり分析し、サービスの価値を見直していく。この考え方が、僕のPMFの進め方の軸になっています。

では、お時間になりましたので本日のセミナーは終了させていただきます。ありがとうございました。

主催:株式会社koujitsu

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