「マーケティングの力1つで、経済を動かす」をVISIONに掲げる株式会社koujitsu。今回は同社代表の柴田雄平氏が「爆速で新規事業を立ち上げる方法」を語ったセミナーの模様をお届けします。今回は、サービスの具体化とMVPの作成や、最小リソースで運用を安定させるポイントについて語られました。
サービスの具体化とMVPの作成
柴田雄平氏:ここからSTEP3に進みます。「サービスの具体化からMVPの作成」というフェーズでは、体制案と実現性の判断、営業資料とLPの制作を通じて、MVPを回していくことが重要になります。

特にミニマムの運用フローの設計は、新規事業の開発において慎重に考えるべきポイントです。新規事業の立ち上げでは、予算を適切に使わないと、なかなか目に見えるアウトカムやアウトプットが生まれにくくなります。僕らは「アウトプットのイメージは常に設けたほうがいい」と考えていて、それを意識することで開発の方向性がブレにくくなります。
「体制案と実現性の判断」に関しては、まずサービス提供をどのようなチーム体制で実行できるかを明確にする必要があります。

また、そのチームを実際に動かした際に、利益が確保できるかどうかを試算し、シミュレーションを複数のパターンで組んでいくことが大事です。
具体的には、まず想定する新規事業のサービスに対して提供体制を整理し、体制図を作成します。今回のケースでは、営業、管理者、ディレクター、サブディレクター、テロップ担当、演出、素材挿入といった役割を設定し、それぞれがどのように連携するかを整理しました。
この体制図をもとに、自分たちのメンバーが何人いれば、どの程度の本数を回せるのかを試算します。また、社内メンバーだけで行うのか、業務委託メンバーを活用するのかによって、具体的な体制図にバイネームを当て、リソースの投下量を見極めます。
次に、このチーム体制で事業を運営する際に起こり得るクレームやリスクを事前に洗い出し、対応策を検討しておきます。また、ミニマムな事業計画を立て、人員配置をどう最適化するかも重要なポイントになります。
事業計画のイメージとしては、例えばショート動画の単価を1万5,000円、もしくは1万2,000円に設定した場合の売上高、制作コスト、手数料、原価率を試算し、代理店の紹介フィーや事業部・マーケ・本部費用を考慮して、最終的にどれくらいの営業利益を確保できるのかを計算します。
サービスの価格設定は、この段階ではまだ確定しにくい部分ではありますが、現在の市場状況を踏まえて、例えば1本1万2,000円~2万円の範囲であれば、相場感と合っているかどうかを判断します。他社の競合調査の結果も踏まえながら、適正な価格帯を見極めていくことが重要です。
営業資料に盛り込むべき項目
8つ目は営業資料とLPの作成です。実はMVPの段階では、この営業資料とLPだけでも十分にテストを回すことができます。ここで大事なのは、サービスの概要がある程度固まったら、すぐに営業資料として落とし込むことです。
さらに、作成できる体制が整っているなら、LPも並行して作るべきです。今はノーコードツールを使えば、LPは10万〜15万円程度で比較的簡単に作れるので、まずは1つだけでもいいので試してみることが重要です。

営業資料では、「この商品がどのように売れるのか」を検証する必要があります。そのため、営業資料は簡単に作り変えられるようにして、優先度を高く設定し、まずは何人かのターゲットに当ててみることが大切です。アンケートを取ったり、N1インタビューを通じてクライアントの反応を直接聞くことで、より具体的なフィードバックが得られます。
また、LPを作るメリットとして、URLをシェアするだけで多くの人に見てもらえる点があります。特に決裁権を持つ人たちは、スマートフォンで資料を確認することが多いため、LPを立ち上げておくと、いつでもどこでも簡単に見てもらえる環境を作れます。
「営業資料をどのように作ればいいか?」という質問をよくもらいますが、基本的には以下のような流れで作成するのが理想です。まず、会社の概要を紹介し、企業としての実績を示します。その次に、自社の強みやポートフォリオを提示し、続いてサービスの説明を行います。
さらに、よくあるユーザーや企業の課題を整理し、それに対するサービスの強みを3〜4つにまとめます。その後、他社との比較、金額のパッケージ、契約の形態や修正内容、契約の流れ、そしてよくある質問という構成でまとめていきます。この流れで作成すると、だいたい20ページ程度の資料になります。
このフォーマットをひな形として持っておけば、新規事業の提案資料は比較的スムーズに作成できるようになります。
最小リソースで運用を安定させるポイント
その後に重要になってくるのは、ミニマムでの運用フローの設計です。

つまり、受注した後にどう動くのか、最低限の流れを決めておくことで、スムーズな運営が可能になります。この流れが見えると、チーム全体での業務の進め方が明確になり、効率的にサービスを回せるようになります。
次に、余裕があれば、サービス提供や価格見積もりのために必要なヒアリング項目を整理しておくことも重要です。僕もよくヒアリングシートを作るのですが、これを事前に作成しておくことで、運用の再現性を高めることができます。
例えば、誰が営業を担当しても、誰がヒアリングをしても、共通のフォーマットに沿って進めることができれば、サービスの質を一定に保つことができます。この再現性を確保し、運用のばらつきを抑えるためには、オペレーションをシステム化する意識を持つことが重要です。
ヒアリングシートの具体的なイメージとしては、以下のような項目が挙げられます。例えばWeb制作の場合、まず「制作の目的」や「制作を決断した背景・理由」を整理します。次に、「サイトのテーマやコンセプト」、「サイトに期待する効果」、「ターゲットの属性(年齢・性別・職業・BtoB or BtoC)」を確認します。
さらに、ターゲットの背景として「生活習慣」「関わる人」「考えていること」「持っている悩みや望み」「趣味や嗜好」などを深掘りすることで、より具体的なニーズが見えてきます。加えて、「想定しているページ数」、「既存機能の確認」などの情報も整理しておくと、具体的な提案がしやすくなります。
動画制作の場合であれば、「クライアントがどのようなイメージを持っているか」を事前に把握することで、制作の方向性を明確にすることができます。
受注後の業務フロー
受注後のフローについて考えると、大まかに以下のような流れになるかなと思っています。まず最初に営業のプロセスがあり、訪問なのか、テレアポなのか、メールなのか、インサイドセールスを活用するのかといった手法を決めます。次に契約フェーズに進み、契約書やNDA、見積書の作成・締結が行われ、初回のディレクターへの口頭での伝達が行われます。
その後、受注が確定したら、具体的なヒアリングを行い、納期の設定や本数の決定、チームの編成を進めます。実際に制作が始まると、タスクを管理表に落とし込み、制作・修正・納品といったプロセスへと移行します。
ここで重要になるのは、各ステークホルダーの役割を整理することです。一部は営業が担当し、クライアントが持つべきタスクもある一方で、外注に出している営業担当者がやるべきこともあるため、それらを明確にしておくことで、業務の分担がスムーズになります。
また、納品時にどのような成果物が求められるのかという結果点を事前に定義しておくことで、デリバリーの精度を高めるとともに、契約時の運用フローのイメージがつきやすくなります。
サービスの具体化まで進んだ段階では、必ずヒアリングから初回商談、契約締結、その後のキックオフミーティングへと流れる運用フローを設計し、定期的なレポート作成やクライアントとのミーティングを設定することで、継続的な成果の追跡がしやすくなります。
こうした一連の流れを整備しておくことで、運用がスムーズになり、クライアントとの信頼関係も築きやすくなるので、しっかりと設定しておくことをおすすめします。
新規事業の「撤退ライン」7項目
STEP4とSTEP5に関しては、どちらもテストマーケティングを通じた検証が主軸になります。「ローンチの初期営業」「撤退ラインの設定」「リスクの評価」をどう進めるか。

撤退ラインとリスクの評価については、事業の撤退ラインをどう決めるかが重要です。この決定方法にはさまざまなアプローチがありますが、考慮すべきリスクには、事業運営リスク、品質リスク、顧客関連リスク、技術リスク、法務・コンプライアンスリスク、財務リスクなどが挙げられます。

自分たちはどこに重点を置いてリスクを見ていくべきなのかを明確にする必要があります。例えば、プロセスに関連するリスク、人材に関するリスク、システムの安定性、コンテンツのクオリティ、顧客との関係性、技術革新、情報管理、収益性など、多岐にわたる観点で整理します。
特に重要なのは、「いつまでに何が達成できれば継続するのか」という明確な基準を設けることです。僕らの場合は初動の売上達成を撤退ラインの判断材料とすることが多く、例えば「3ヶ月以内に◯万円の売上」「6ヶ月以内に◯万円の売上」など、具体的な目標を設定します。
さらに、洗い出したリスクに対して、事前に対応策をしっかりと考えておくことも大切です。僕らはこれをカテゴリーごとに整理しています。例えば、「顧客ポートフォリオの健全性と契約状況の評価」においては、新規顧客の獲得に3ヶ月以上かかる場合や、契約更新率が50パーセント未満の場合、サービスとして成立しない可能性があるため撤退を検討します。
「業務効率とクオリティ管理の評価」では、SLA(サービス品質保証)の達成率が2ヶ月連続で90パーセント未満になった場合や、コンプライアンスチェックの遅延が20パーセントを超えた場合など、業務の継続性に問題があると判断する基準を設けます。
「人材維持と組織の評価」では、ローンチ3ヶ月以内に特定のリソースが1人月以上を超える場合は、運用の負担が大きくなりすぎるため撤退を検討する、という基準を持つこともあります。
また、「制作物の品質管理」に関しては、企業ブランドのガイドライン修正が3回以上発生する、法務の修正対応が40パーセント以上に達する、といった状況が続くと、事業としての安定性が損なわれるため、事前に撤退基準を定めておきます。
こうした欠損ポイントが見えてくると、事業継続の判断がしやすくなります。自分たちがどこに注目してリスクを評価すべきかを明確にすることで、冷静な意思決定が可能になります。そのため、撤退ラインだけは必ず決めておくことが、事業運営の上で非常に重要だと考えています。
主催:
株式会社koujitsu