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着想から2か月でローンチ!爆速で新規事業を立ち上げる方法(全4記事)

新規事業で競合が見落とす“市場の隙間”を見つけるコツ 後発でも勝てる優位性の作り方

「マーケティングの力1つで、経済を動かす」をVISIONに掲げる株式会社koujitsu。今回は同社代表の柴田雄平氏が「爆速で新規事業を立ち上げる方法」を語ったセミナーの模様をお届けします。今回は、自社の強みや弱みを見極める3つのポイントや、競争市場で優位性を築くための戦略について語られました。

自社の強みや弱みを見極める3つのポイント

柴田雄平氏:ここからは、さらに具体的な話に入っていきます。「アイデアの着想はどのように生まれるのか?」というところですが、僕たちがどのようにアイデアを着想し、内部環境と外部環境を分析していったのかをお見せしたいと思います。

例えば、アイデアの着想は、「こんな需要があるのではないか」という仮説を立てながら、ホワイトボードにアイデアを書き出していく、という進め方をしています。ユーザーが実際にこのサービスを購入する動機は何かを考え、それを整理することが初めのステップです。

次に、内部環境の分析。ここでは、自社の強みや弱みを明確にし、自社が持つアセットの棚卸しをします。これにより、自社のリソースがどのように事業に活用できるかを把握することができます。さらに、外部環境を分解し、市場や競合の動向を詳細に理解していく流れです。特に星印が付いている箇所は重要なポイントなので、少し詳しくお話ししたいと思います。

内部環境の分析では、自社の強みや弱みを整理し、それが事業にどう活用できるかを見極めることが重要です。

ポイントは3つあります。1つ目は、幹部メンバーや自社の理解が深いメンバーをアサインし、強み・弱みをマインドマップで可視化することです。この作業により、自社の内部環境を体系的に把握できます。

2つ目は、toCサービスの場合、顧客からのアンケート情報を活用することです。自分たちが見えている部分と見えていない部分、またクライアントが見えている部分と見えていない部分を整理します。

この分析の中で、自分たちが見えていなかったけれどクライアントには見えている強みを発見することがあります。これにより、新規事業だけでなく既存事業にも活かせるインサイトが得られることがあります。そのため、これらの情報をきちんと収集することが大切です。

3つ目は、新規事業のサービス提供に向け、自社が活用できるリソースを整理することです。具体的には、人員、資金、その他の資産、取引先や協業先などを挙げ、これらをどのように分配するかを決めていきます。

弱みはフル無視して、強みだけを活かすも1つの選択肢

このプロセスで、僕たちはまず自分たちの強みをマインドマップで整理します。例えば「クオリティの確保が得意」「パートナー企業とのネットワークが広い」「実践的な教育体系を持っている」といった要素を挙げて、一方で「この部分はまだ弱いよね」といった弱点も洗い出します。そして、その弱点を補える体制をどのように構築するかを考えます。

ただし、会社によっては「内部環境の分解が進んでいない」「自社の強み・弱みを整理しきれていない」という場合もあると思います。その場合は、マインドマップを活用して、自社の強みや弱みを具体的に可視化することをおすすめします。

既存事業を強化する場合、進め方として2つの選択肢があります。1つは強みを活かして事業を作る方法、もう1つは弱みを補いながら、全体の競争力を高める方法です。ちなみに僕たちの場合、弱みに関しては基本的にフル無視します。つまり、「強みだけを活かしていく組織体系」を構築することをルールとしています。

市場規模の裏付けを取ることの重要性

もう1つのポイントは、外部環境の調査です。

特に市場規模の裏付けを取ることが非常に重要です。ここでは、リサーチを徹底的に行うことを重視しています。具体的には、取り組もうとしている事業に対して、今後数年間の市場予測を立て、どれくらいの市場規模を見込めるかを正確に把握します。

次に、調査結果を基に、どれくらいの売上規模を目指すのかを検討します。市場サイズを確認した上で、「自分たちがこの市場のどれくらいを獲得したいのか」という具体的な目標を設定します。

この時に重要なのは、市場をどのように切り取るかです。切り取り方次第では、実際の規模よりも少なく見積もってしまうことがあります。また、市場調査を外部のレポート会社に依頼すると非常にコストがかかる場合があります。そのため、自社でAIを活用したり、これまで収集してきたデータを活用して調査を進めることをおすすめしています。

例えば、TAM(Total Addressable Market:総潜在市場)が1兆円、SAM(Serviceable Addressable Market:実際に対応可能な市場)が24億円、そしてSOM(Serviceable Obtainable Market:自社が実際に獲得可能な市場)が1~16億円程度見込めるとします。

このように市場規模を具体的に算出し、例えば「2027年までにこれくらいの売上を目指そう」「2028年、2029年にはさらにこれくらい拡大しよう」という目標をアウトプットとして設定します。

動画制作サービスでの外部環境分析の事例

例えば「日本の動画制作市場でサービスを作る」といったケースを考えてみます。ここではPEST分析を用いて外部環境を分解していきます。

まず、政治的要因(P:Political)についてです。動画制作市場では、著作権の法律や個人情報保護に関する規制が重要なポイントになります。また、政府の支援策やコンプライアンス要件も考慮が必要です。

例えば、近年ではディープフェイクに関する法規制が導入されるなど、法的環境が変化しています。さらに、広告やSNSに関する動画広告では審査が厳格化しており、これがビジネスに影響を与えています。Facebookの訴訟事例なども含め、法規制が厳しい領域である点を意識する必要があります。

次に、経済的要因(E:Economic)です。デジタル広告市場の成長は動画プラットフォームの普及によってさらに加速しています。一方で、フリーランスの増加により、個人クリエイターが多様な動画を制作できる環境が整いました。

しかし、フリーランスの急増による供給過多が競争を激化させています。例えば、以前は1つの需要に対して3人しかいなかったところが、現在では10人が参入するような状況です。これにより、競争率が上がり、価格が下落する傾向が見られます。

このような価格競争に巻き込まれるリスクを考えると、自社の市場シェアをどのように確保し、競争から抜け出すかが重要になります。価格構造の観点からも、競争における優位性をどう築くかを検討することが必要です。

最後に、コスト構造の観点では、価格競争を避けつつ、いかに自社のシェアを高められるかを戦略的に考える必要があります。競争が激化する中で、他社との差別化やサービスの付加価値を高める方法を検討することが、事業の成功につながると考えます。

競争市場で優位性を築くための戦略を考える

先ほど触れたように、TAM(総潜在市場)が1兆円の動画市場がある中で、BtoBビジネスの総計でSAM(実際に対応可能な市場)が24億円程度と。この中で、自社が実際に獲得可能なSOM(実行可能市場)をどう設定していくか。

例えば、年度ごとの売上目標を設定し、2028年や2029年にはどれくらいの市場シェアを獲得するのかを具体的に見える化することで、目標達成に向けた道筋が明確になります。TAM全体を把握する必要はありませんが、少なくともSAMを特定し、それに基づいて戦略を立てることが重要です。

この部分は、STEP1の着想からどれくらいヒントを得られるかですね。例えば、ビデオ市場の全体像、ビデオ広告の動向、制作市場の将来予測など、市場の成長に関するデータをまとめておくことで、理解が深まり、戦略を立てやすくなります。

ここまでのポイントをおさらいすると、アイデアの着想から内部環境と外部環境の分解を行うことでイメージを具現化できます。この段階をしっかりと行うことで、次のステップに進む基盤が整います。

新規事業で競合が見落とす市場の隙間を見つけるコツ

STEP2は、STP分析とアイデアのブラッシュアップです。

このステップでは、特に競合分析が重要になります。競合サービスを4P(Product、Price、Place、Promotion)の観点で分析し、さらにSTP(Segmentation、Targeting、Positioning)の観点で競合との差別化を検討します。具体的には、狙うべきターゲット層や自社のポジショニングについて仮説を立てることが重要です。

最後に、競合分析やSTP分析から得られた情報を基に、自社サービスの具体的な内容や価格設定、目指すべき利益率を検討します。これにより、サービスが市場でどれだけの反応を得られるかをより高い確度で判断できるようになります。

競合分析にはさまざまなやり方があります。今回、僕らは動画市場向けのサービスを作ることを進めていますが、実際には類似サービスがすでに存在しています。後発的なサービスの場合、価格で勝負を仕掛けたり、大量の資本を投下して認知度を一気に高める方法を取ることが多いですが、それだけでは競争優位を確保するのは難しいです。

そこで、競合が見落としているポイントや隙間を見つけ出すことが、競合分析の本質だと思っています。

競合分析を進める上で、特にチェックしたいのは、競合のランディングページのファーストビジュアルやキャッチコピー、打ち出したい強みや顧客のニーズ。また、SEOの観点でどのキーワードを競合が狙っているかという部分も重要です。

さらに、営業資料やサービスの内容、価格などについても、資料をダウンロードしたり、実際にサービス説明を受けてみることで詳細を把握することができます。僕らの場合では、ラクスルさんやむびるさんを調査対象にして、それぞれがどんな強みを持ち、どういった戦略で動いているかを確認しました。

競争力のあるサービスを作るための4象限分析の活用法

次に、STP分析についてですが、競合調査を踏まえて同じ市場にいるセグメントをしっかりと分析し、取るべきポジショニングの仮説を立てることが大事です。セグメンテーションの切り口については企業ごとに異なりますが、自分たちが何を大事にしているかを軸に考えることが重要です。

例えば、顧客層を年齢や職業で分けるのか、利用シーンで分けるのか、それとも価格帯で分けるのかなど、切り口を明確にすることで、自分たちが狙うべきターゲットが見えてくると思います。

今回僕らが選んだ切り口は「価格帯」と「機能性」です。具体的には、高価格帯と低価格帯でどう差別化できるか、また「機能×コンサルティングサービス」という視点でどのようにポジショニングするかを検討しました。基本的には、このように対立する軸を見つけ出し、それを基にポジショニングを考えていきます。

次に、ポジショニングを4象限で整理し、そこに空いている隙間を埋めていくように進めます。これを行うことで、自分たちが勝てる要素と負ける要素が見えてきます。負ける要素があるところには、やはり手を出さないほうが良いと僕は考えています。

もし、この段階で負ける要素が見つかっているなら、セグメントの切り口を変えるか、場合によってはサービス自体を見直す必要があります。勝てる市場にフォーカスするためには、この柔軟な対応が欠かせません。

例えば、今回のサービス設計では、「認知の目的」と「コンバージョンの目的」をしっかりと設定し、その上で価格を「低価格」と「高価格」に分ける戦略を取りました。

「このポジショニングで勝つためには何が必要か?」を考えた時、以下の4つのポイントが出てきました。「ターゲット拡大による新規顧客開拓」「フルカスタマイズの柔軟なサービスパッケージ」「SNSプラットフォームとの連携による分析力の強化」、そして「スピードと品質の両立」です。この4つを軸に、競争力のあるサービスを目指しました。

ちなみに、今回完成したサービスは「スパムビ」という名前で展開しています。スパムビは、動画を最短1日で納品することを特徴としています。例えば、縦型のショート動画であれば、元素材が揃っていれば、クリエイターが社外で半自動的に作業を進め、例えば今日の16時半に発注して「こういう動画を作ってほしい」と依頼すれば、翌日の12時には完成しているというスピード感です。

主催:株式会社koujitsu

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