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今、ニッポンを変えるのは何か? 働き方改革から、"働きがい改革"へ(全2記事)

組織のビジョンに共感できないネガティブ社員への対処法 後ろ向きなメンバーを巻き込むための策

労働者不足の日本において、従業員の「働きがい」が重視されています。本セッションでは、「今、ニッポンを変えるのは何か? 働き方改革から、"働きがい改革"へ」と題して、株式会社働きがいのある会社研究所代表の荒川陽子氏が登壇。「ヘルシーに働く」ための具体的な策や、組織のビジョンに共感できないメンバーとの向き合い方を語ります。

「働きがい」を高めることは当然の権利である

河北隆子(以下、河北):みなさんは今の話を聞いて「ここが聞きたい」「ここはわからない」「ここはなぜなんだろう?」と、いろいろな探究心が芽生えている状況かと思いますので、どんどんチャットに質問してください。直接荒川さんに聞く時間を取っていきたいと思っております。

私は荒川さんとしゃべったら、1日中しゃべることができるんじゃないかというくらい、いろいろな思いが錯綜しておりますが……。最後の職場を作るための3原則ではトップが宣言する。「それをやりたい、やるぞ」と掲げていかないとなにも始まらないというお話でしたが、本当にそう思います。

2つ目の全員が向き合っていく。「それが役割だ」とちゃんと認識を持つ。3つ目がちょっと気づきがありますよね。この権利という言葉は、組織や自分、いろいろな意味で捉えられると思うんですが、この言葉を使った意味合いをちょっと教えてもらってもいいですか?

荒川陽子氏(以下、荒川):ありがとうございます。働きがいとは待っていたら上がるものではなく、「自分自身のものなんだ」ということに気づいていただくためにも、「一人ひとりの権利である」という言葉を使っています。

働きがいを高める、追求することは、一人ひとりに与えられている当然の権利だと思っていて。それが阻害されたり侵害されていたりしているにもかかわらず、そのことに無関心になってはいけないと思うんですね。だから「権利」という言葉を使っています。

組織も人も、お互いに無関心であってはいけない

河北:ありがとうございます。組織も人も選び選ばれる関係性なので、お互いにそれを握っていく、無関心であってはいけない。また今、私が感じたことは働くことに対する思いです。

働くことは崇高というか、すごいじゃないですか。働くことについて、いろいろなものが紐づいているんだなと思いました。シンプルにわかりやすくお伝えいただき、ありがとうございます。ちょっと別のくだらないことを聞いてもいいですか(笑)。

両立という意味では、今、小田原に住んでいらっしゃるんですよね。この間ちょっとSNSにワンちゃんが出ていて。小田原にお住まいになっていろいろなことが変わったと思います。

もともとお子さんがいらっしゃるわけですが、最初はタワマンにいたと。だけど小田原に住んでお子さんの教育、コミュニケーションとか、お子さん自身の変化についてもちょっとだけ聞かせていただけますか? 

荒川:私自身、東京生まれ東京育ちなんですね。働く場所もずっと東京でした。直近はオフィスから歩いて5分のところで、「もういつでも(会社に)行けるぞ」「BCP(緊急事態における事業継続計画)も完璧だぞ」という(笑)、タワーマンションに住んでいました。

でもコロナ禍になりまして「伸び伸びとした環境で子育てもしたいね」と。夫は大型犬を飼う夢があり、私は家を建てたいという夢がありまして(笑)。それを統合して小田原へ。小田原は新幹線で通勤ができるので、「在宅中心でたまに新幹線で通勤するならいいよね」と決めました。

子どもも最近小さいカエル6匹ぐらいを捕まえてきて「見て」と言ったり、思ったとおり自然に触れて楽しそうに生活しています。本当にこの選択をしてよかったなと思っています。

「ヘルシーに働く」ための具体的な策

河北:ありがとうございます。いろいろな選択によって影響するものが変わってきますよね。たくさんの質問が来ておりますが、まず「『ヘルシーに働く』の具体例を教えてください」という質問です。お願いします。

荒川:ありがとうございます。テレワークに突入したコロナ禍で私は社長就任し、そこでメッセージを発信したんですね。若手を中心にいくらでも働いてしまうところがどうしてもあって。(テレワークだと)上司の目がないので、途切れなく切れ目なくいくらでも残業しちゃうところがあって、(私は)「それはだめだよ」と伝えました。

働く時間は比較的自由で、朝の5時から夜の10時までの間だったら働いていい。ただその中でメリハリをつけてほしいんですね。午後3時に仕事を上がってもいいし夜8時までやってもいいけれど「だらだらやるな」という。自分で決めて「働くテンポやスタイルをちゃんと作ってくれ」「長時間労働はだめだ」ということです。

そういった意味で「ヘルシーに働く」……主に労働時間や働きやすさでのメッセージを発信しました。

河北:ありがとうございます。次は「やりがいを測定する方法はアンケートが主でしょうか?」と。「何か定量的に測定する手法はありますか? 日常的に測定を継続したいです」と書いてあります。これはいかがでしょうか?

荒川:ありがとうございます。基本的にはアンケートです。われわれは60問のアンケートを持っていますが、プラスして定期的にパルスサーベイとして5問や10問(アンケートを)採ることも可能です。

ただ私たちの認定やランキングの特徴は「会社がどんな施策を取って働きがいを高めているか」をレポートでいただくんですね。これは定性情報なんですが、これを評価し格づけした上でランキングしスコアリングする方法論を持っています。このあたりもユニークかなと思います。

だから各社の「こういう状況の時にはこういう施策をやると効くよ」という知見をどんどん世の中に発信していけば、より働きがいの高い企業が増えるんじゃないかなと思っています。

荒川氏が社長を志したきっかけ

河北:ありがとうございます。「社長になりたいと判断されたきっかけは、あったのでしょうか?」という質問です。

荒川:ありがとうございます。これは話すと長いので(笑)。かいつまむと大きく2つあります。

もともと私の両親は世田谷の下北沢で小さな飲食店を経営していました。うちの両親はサラリーマンをやったことがなくて、言ってみれば経営者だったわけですね。そこに憧れも少しありましたし。

そして自分の今後のキャリアを考えた時に、バリューチェーンの中の1つの営業という組織だけしか知らないよりは、全体像を見て経営をしていくことのほうが、視野、視座が広がるし、絶対におもしろいと思える。今後のキャリアにとって有効だろうという2つの観点から「社長をやりたい」と手を挙げまして。

河北:このストーリーはちょっと検索すると出てきます。とてもドラマチックですし、みなさんのためになると思いますのでご覧いただければと思います。

組織のビジョンや価値観に後ろ向きなメンバーを巻き込むには

河北:続きまして「価値観に共感してもらって働きがいを高めていくことには納得できます。でも価値観に共感できないメンバーもいると思います。そのような方へのアプローチで工夫された点などがあったらご教示ください」というご質問です。

荒川:なるほど。これはベストカンパニーにランクインしている企業の会社さんと話すと、「もうとにかく採用だ」「共感できない人を入れるな」とおっしゃるんですね。「それでは元も子もないじゃないですか」という話をよくするんですが(笑)。

入り口はすごく大事にされたほうがいいと思いますが、とはいえ、今、いらっしゃる方を「どう変えていくんだ」というお話でいくと、そういった方も巻き込みながら大事にしたい価値観を作っていく。つまりプロセスに巻き込んじゃう。

全員を巻き込めるわけではないんですが、特にネガティブで背中を向けちゃう人は、意図的に事前に声を拾っていき、みんなで価値観を作っていくと少しずつ巻き込める範囲が広がっていきます。

河北:本当にそう思いますね。人なのでちゃんと通じるし、これまで自分の中にないものには、ちょっと違和感を持つ方もいらっしゃいますけど、やったら変わりますよね。

「お客さまからどういう感謝の言葉をもらいたいのか」が鍵になる

河北:時間がないのですが、もう1つ「やりがいに関わる因子は多数あると思いますが、職場の構成メンバーと環境によるところは大きいと思います。比較的共通する点はありますか?」というご質問でございます。

荒川:やはりお客さまからどういう感謝の言葉をもらいたいのか。ここにやりがいの共通の要素があると思うんですね。同じ会社に集っている仲間なので、自分たちのサービスがどのようにお客さまに受け入れてもらい、どういう声をもらいたいのか。これをひもとくのが一番王道でパワーがあると思います。

河北:なるほど、確かに。王道だし、みなさんで共有できますよね。「やらないことを決めるのは難しいこと。先ほどいろいろとおっしゃっていましたが、荒川さん自身はどのような基準で決めているのか。ここらへんをうかがいたい」という質問でございます。

荒川:ありがとうございます。とにかく無駄を探すことが一番だと思います。私が着任した当時は無駄な2次チェックや3次チェックがありました。これは過去にあったトラブルやクレームでどんどん増えていくんですね。

2次チェックや3次チェックはどの会社もあると思うんですが、「本当に要る?」というね。基本的にはデジタルの活用や自動化を志向して無駄を削減して、やらないことを決めるスタイルを取っています。

リモートでもチームワークを高めるポイント

河北:ありがとうございます。最後に1クエスチョンです。「テレワークでお互いが離れた環境であってもチームワークは感じられるというお話がありました。ここらへんもみなさん、困ったり工夫もされたりしていると思いますが、どんな工夫をされましたでしょうか?」と。

荒川:そうですね。当時はコロナ禍で物理的に会うことが禁止されていたので、オンラインでのランチ会をけっこう頻繁にやっていました。

それから毎週のグループ会、チーム会がある時には、言いたくないことは言わなくていいんですが、プライベートの話を話すことで、今、どんなことをおもしろいと思っているのかを共有したり。必ずそういう時間をセットするようにしていました。

現在は比較的自由に会うことができますので、月に1回はみんなで集まろうとかですね。そんなかたちでやっています。

河北:いいですね。オンラインとオフラインを上手に切り分けられるようになってきましたよね。もう時間はないんですが、2025年は新たなランキングができるというお知らせがありました。新たなステージに行くと思いますが、最後にそれについて発信いただければと思います。

荒川:はい、ありがとうございます。毎年2月にランキングを発表しておりまして、今回も2025年2月に新しいベスト100が発表されます。顔ぶれもだいぶ塗り替わるかなという感じです。ランクインした企業のみなさんに「そこを目指したいな」と思っていただけるような表彰式ができるといいなと思っています。

そして私たちの活動に共感いただける会社さんが増えるといいなと思っています。それはすなわち日本企業の働きがいが高まって、日本企業の競争力が高まる。本当にそういうことだと思っているので、それが1日でも早く実現できるようやっていきたいなと思っています。

河北:採用にもとても効果があると思うし、人材の流出もなくなってくるだろうし、人手不足の折にも大変重要なことだと思います。この本もまだ全部読んでいないんですが、シンプルでとてもわかりやすいので、みなさんもぜひお読みになってください。荒川陽子さんでした。みなさん、大きな拍手をお願いいたします。ありがとうございました。

関連サイト:
アイデンティティー・パートナーズ株式会社
オーセンティックリーダーズ・アカデミア

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