
2025.02.18
「売上をスケールする」AIの使い道とは アルペンが挑む、kintone×生成AIの接客データ活用法
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小倉一葉氏(以下、小倉):では、いよいよ「アカデミックな議論手法をビジネスの議論でどう生かすか」というところです。先ほどからちょっとずつお話ししていただいてはいるんですが、このあたりは森脇さんもお話ししたいことがあるんじゃないかなと思いまして、まさにビジネスのその話をしましょうよ。
(一同笑)
森脇匡紀氏(以下、森脇):何なの、この人(笑)。何なの(笑)?
小倉:さっきちょっと話していたじゃないですか。
森脇:さっき話していたやつをやるの?
小倉:はい。
森脇:僕もアーギュメントを持っているなと思っていて、それをさっき阿部さんに聞いてもらったんですよ。このmeetALIVEでも2024年の2月に(登壇した)ももいろクローバーZを育てた、マネージャーの川上アキラさんという人を僕は尊敬していて。
それはなぜかというと、彼女たちってアイドルになろうともしていなかった子たちなんですよね。今はもう30歳とか20代後半になっているメンバーなんですが、アイドルじゃなくて売れない俳優、女優さんになろうとしていたような子たちを、10代の前半の頃につかまえてきた。
AKB(AKB48)やモーニング娘。とか、「なんかアイドルが流行っているみたいだから、あの子たちをアイドルにしてみたら?」みたいなところで(ももいろクローバーZを結成させた)。
当時、川上さんは暇していたんです。沢尻エリカさんのマネージャーをやっていたんですが、「別に」事件で沢尻エリカさんがクビになっちゃって暇をしていたので、そこから(ももいろクローバーZを)イチから育てた。
「紅白に行くぞ」みたいな高い目標を掲げたところから、インディーズからさかのぼって4年ぐらいで紅白に出場して、「国立競技場というでっかいステージに立つ」というのも実現させたんですよね。
僕の会社の仕事柄で言うとDXの支援もやっているんですが、DXってデジタルを入れてどうなるかという話でもまったくなくて。だいたい企業さんが対面している課題って、人とか組織、チームビルディング、もしくはカルチャー変革ができていないとか。
そういったところも片付けていかないとダメだろうなということで、「『これを解決するためにももクロを学びましょう』っていうのはアーギュメントになりませんか?」という話をさせてもらったんですよ。
阿部幸大氏(以下、阿部):それを、この他動詞モデルで表現するとどうなりますかね? 組織論ですかね?
森脇:リーダー論か組織論ですかね。
阿部:なるほど。「ももクロから組織論を学ぶべきだ」っていうのが、たぶんわりと弱めのアーギュメントになりますね。
森脇:そうなんですよ。だから「やはり、DXの壁をぶち破るにはももクロから学ぶべきである」みたいな。
阿部:なるほど。「川上さんがももクロで実践した組織論は、DXの壁を打ち破る」でいいんじゃないですか?
森脇:確かにきれいに収まりますね。できた。そういうことか。
小倉:(笑)。
阿部:実際にそう思っていらっしゃる?
森脇:そう思っています。
阿部:(笑)。
森脇:シンプル。みなさんあれですよ、前に来たら頭が真っ白になって緊張しますよ。
(一同笑)
阿部:ももクロ、あるいは川上さんという方は、何がそんなにすごいんですか?
森脇:川上さんは、でっかい目標やビジョンを掲げるところがあると思うんです。さっき阿部さんも「(自分は)努力家ですよ」と言われたとおりで、当然のことながらやっているんです。大人たちができっこもなさそうな高い目標を掲げて、でも主体性を持ってやらせるように持っていっているんですよね。
だから、上から「やれ」ではなくて、お客さんが来ない売れていない時代から「どうやったらお客さんが来るのか?」「楽しませるためにどうするべきなのか?」という、主体性を持たせるためのアプローチをずっと仕掛けているんですよね。
阿部:組織論というのは、つまりメンバーにやる気を出させるみたいなことですか?
森脇:そうですね。
阿部:なるほどね。この話を続けていいのかな? もうちょっと聞きたかったりするんですが、それとDXの壁を打ち破るということがどういう関係にあるのか。
森脇:DXって上の方々や現場の方々で腹落ちしていなかったりして、そこに共感が生まれていないのが1つの課題なのかなと思うんですよね。
小倉:そもそも新しい技術を導入しなければいけないということ自体、現場の方々も学ばなきゃいけなかったりするわけですよね。
森脇:それもありますし、「リスキリングだ」と言ってやらされているという話も多かったり、やりがいにつながっていない。アプローチの仕方が市場に流されているんだろうなと思っていて。
阿部:なるほど。じゃあ、けっこういいですね。
森脇:あっ、いいですか?
阿部:はい。「ももクロの組織論を会社に適用する」っていう新書を書いたらいいんじゃないですか?
(一同笑)
森脇:いけそうですか?
阿部:いけるんじゃないでしょうか。
森脇:本当ですか? そこはまたサポートいただいて、阿部さんの会社で月額課金を払いますので、そんな機会があれば。
阿部:わかりました、ありがとうございます(笑)。ビジネス書として、本当にけっこういいと思います。
森脇:ありがとうございます。褒められて終わったのは……ちょっと違う展開が待っていた(笑)。
小倉:(笑)。
小倉:このようなかたちで阿部さんとお話をしていくと、自分では当たり前に思っていること、主張したいことだけれども、議論の核となる部分が周りの人たちになかなか伝えられないことがあると思うんですね。みなさんも、会議の中やプレゼンテーションの場面とかであると思います。
そういったかたちで、「えっ、それって何なの?」って議論を呼び起こすことをわりと恐れがちなんじゃないのかなと思っていて。森脇さんみたく、ももクロと組織論を結びつけてDXを加速させていくことをやるって、なかなかめずらしいパターンだと思っているんですよね。
なので、たぶんみなさんも思っていることがあるけどなかなか主張できない。それを乗り越えるために、議論を持つためにどうしたらいいのかなというところもぜひ(解説をお願いします)。マインドセットみたいな話になるんですかね?
阿部:そうですね。最初にもちょっと言いましたが今は炎上の時代なので、みんなアーギュメンタティブな、アーギュメントっぽいことを言うことを恐れる世の中になっていて。
小倉:そうですね。
阿部:ただ、そうなるとどうなるかというと、初めからその界隈においては自明な意見のみが流通するクラスタに分かれて、共感の共同体ばっかりができて、その間ではずっと対立しているということになってしまいます。それ、けっこうまずくて。
実際は、意見が対立して「それってどういうことなの?」というリアクションが引き出されないと、そもそも我々の考えは進行していかない。ずっと同じ人たちで固まっていると、まったく話が進まないわけですよね。
なので、議論がそもそもかみ合わない、意見が対立していることが炎上に結びついているわけですが、これはめちゃくちゃ間違いです。意見は対立していて当たり前なんですよ。対立していないと話す意味がないので、「そうだよね、そうだよね」で終わるか、喧嘩するかのどっちかになっちゃっているわけですよ。
小倉:確かに。
阿部:なので、「マインドセットの話になりますかね?」と言っていましたが、たぶんそのとおりです。意見が対立することに対する心理的なバリアをみんなが下げて、つまりみんなで炎上すればいいっていうことですね。
(一同笑)
小倉:究極(笑)。
阿部:炎上を恐れない。
森脇:恐れない。
阿部:別に炎上しないっていうか、炎上させないというか。意見が違うやつがいるなとなったら、とりあえずそこで「つまり、どういうことなの?」という論証を要求する態度に出ればいいのであって、むしろそれこそが議論だと思うんですよ。なので、意見が対立するのは当たり前なんだという当たり前のことを今一度思い出して、みんなで議論する。
森脇:そうですね。多様性が重要だとか言われますが、本当の意味でのイノベーションって、全員が賛成するようなアイデアはイノベーションでも何でもないですもんね。
阿部:はい。みんながわかっているということは、価値ゼロなので。
森脇:ゼロですよね。そこを忘れちゃいけないというのは、すごく私は腹落ちしました。
小倉:めっちゃ怖いですけどね。徐々に自分自身も慣れてきていますが、みなさんはどうですか? いいもの、大きい問い、アーギュメントを作りたいと思っても、そこへ行くのに階段が飛んでしまうと、それこそ議論を巻き起こしているわけですが、そこの近くに批判もあったりしてね。
阿部:批判されるのは当たり前なので、批判を恐れないことがとても大事ですね。
阿部:特に学問はそうで、引用されることによって批判されるのはむしろ名誉なことです。引用されないということは無視されているということで、論文において引用するということは「この人の議論が今は最先端で、それを超えることによって私は価値を生み出します」というジェスチャーなわけですよ。
小倉:なるほど、確かに。
阿部:なので、それは批判なわけですが名誉なことなんですよ。俺の本の帯も戸田山和久先生という非常に有名な先生に書いてもらったんですが、その先生は『論文の教室』という本を書いていて、たぶん日本で一番有名なアカデミック・ライティングの本を書いている先生なんです。
この本(『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』)の中では、その先生の本(『論文の教室』)を名指しで批判しているんですが、にもかかわらずその先生に帯の推薦文を依頼して。最初は先生は「ふてぇ野郎だ」と思ったらしいですが。
(一同笑)
阿部:「読んで批判するのはいいことなんだ」とこの本(『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』)に書いてあるので、なるほどと思っていただいたらしくて。さらに批判しておいて依頼するって、なんか関係が悪くなりそうな雰囲気もありますが。
先生は、この本で俺が言っていること、つまり批判はいいことなんだということを理解して、こんなことで機嫌を損ねるような人間じゃないと俺が思ったということなので、それがうれしかったので(帯を)書いていただいたらしいんです。
(一同笑)
森脇:深い。
阿部:なので、まさにそういうことが大事なんですよね。
小倉:しかも、そこで関係を構築しているわけです。
森脇:やはり楽しい世界が待っているんだよ。
小倉:すごいですね。
森脇:そこから一潜り、二潜りすると。
小倉:そうですよね。それは適切に議論ができているからだし、主張を持っているので、その主張に対して先生は、先生の主張というかエンドースメントもしてくれているわけですね。
阿部:なので、いきなり喧嘩を売るとあれなので、まずは自分の周りからそういう関係を構築していく。
森脇:そりゃそうだ。X(旧Twitter)とかでいきなり喧嘩を売ったりすると、そんな関係になりづらいですよね。
阿部:そうですね。
阿部:論文というのは、そもそも信頼の共同体がある空間なのでけっこうやりやすいんですが、日常生活においては人間関係の話になってきちゃうので、まずは信頼できる範囲で、信頼とのバランスを考えながらやらなきゃいけないかなと思います。
小倉:なるほど。
森脇:そういうことですよね。
小倉:ありがとうございます。その関係構築のところに近いかもしれないんですが、ビジネスの空間において、学問的な議論の方法がチーム内コミュニケーションに与える影響とかってありますかね?
阿部:むしろ(学問的な議論は)チームでやらないので、ビジネスパーソンはそのことをどう思うかを逆に聞いてみたいなと思ったりしますが、どうですか?
小倉:そうか、1人でやらない。なるほど。でも、適切に議論ができる関係を作ること自体が、そもそもすごく必要なことというか。トップダウンで全部イエスを言ってもらうために事業をやっているわけではないじゃないですか。
阿部:そうですよね。
小倉:メンバーのみなさんやチームのみなさんだって、そういう発言ができる場でありたいわけですよね。でも、それって関係構築以外にやり方はあるのかなとか、アーギュメントを持つことが大事だよというコンテキストをチームで持つことが大事なのかなとか、いろいろとどうしたらいいんだろう?
阿部:経営者側から見ると(自分は)偉い立場なので、自分を批判する行為がいかに自然にできるような場を作るかということが、相当重要になってくると思いますね。
小倉:そうですね。
森脇:だからやはり、会社のビジョンやミッションといった存在が重要なんじゃないですかね。
阿部:逆にそれを学びたいと思っていて。大学の先生ってけっこう偉いので、学生に批判してもらうのはかなり難しいんですよね。
森脇:確かにそうですよね。
小倉:先生ですもんね。
森脇:個人批判になっちゃうんですよね。
阿部:そうですね。なので、例えば授業でもアーギュメントを立てるわけですが、「これは俺のアーギュメントなんだ」ということをけっこう強調するようにしていて。これをフォローするだけではダメで、これをリピートするのと、これに反論して自分のアーギュメントを立てるんだったら、後者のほうがぜんぜん偉いんだというようなことを言うようにしています。
小倉:言うんですね?
阿部:難しいんですけどね。
小倉:なるほど。
阿部:やるのは難しいんですが、「アーギュメントの次元において我々は対立しているんだ」ということが伝わらないと。
小倉:正しい。なるほど。ありがとうございます。
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