
2025.02.19
アルペンの“店舗の現場”までデータドリブンを浸透させる試み 生成AI×kintone活用の3つのポイント
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杉本崇氏(以下、杉本):先ほどの(高倉町珈琲の)働き方の話について、「従業員さんがずっと働き続けられる」というところでも気になったのが、大井町店の話にはなってしまうんですけれども、けっこう年配の男性の方が働いていらっしゃるなと思いました。それで、第一線でサーブしてくれるわけですよね。
これはほかのチェーンではなかなか見ないなと思って、あれは何かこだわり、もしくは工夫などがあるんですか?
横川竟氏(以下、横川):こだわりはないんですが、商売って定年がないんです。だから商売のできない人は20歳でも定年だし、できる人は70歳でも80歳でもできる。なんで僕が今(商売を)やっているかというのは、僕は商売ができるのでやっているだけのことであって、経営も経営ができるうちはやればいいので年齢は関係ないよ。
社員は店長で65歳ぐらいになった時に、もし店長を辞めたければ辞めて、今度は好きな店で契約社員でやればいい。店長をやっていた人間がフロアサービスをやると、もっとレベルが楽なところに落ちてきますから、意外と元気に生き生きとやっているからじゃないでしょうかね(笑)。
杉本:なるほどですね。確かに、私にコーヒーを出してくれた人も生き生きとされていました(笑)。
横川:無責任な部分もあるので気楽なんです(笑)。会社からも言われるし、お客さんの声もあるし、店長って大変じゃないですか。でも、イチサービスマンだとそこだけに集中すれば大丈夫なので、そういう意味では逆に気楽にできるのでうまくいくんじゃないですか。
杉本:確かに。なるほどですね。店長さんも、もともと会社に入ったきっかけとしては「お客さんに良いサービスを届けたい」という思いの方々がいらっしゃるでしょうから、それを第一線でできるのは、自分のライフキャリアを考えた時にも良い効果があるかもしれませんね。
横川:外食(産業)っていろんな人たちが入られていて、行く所がないから来た人もいるし、それから求めた所に落ちちゃった人も来る。
それから接客が好きだということで、良い学校を出て良い会社に入ったのに、「どうもおもしろくない。接客のほうがおもしろいから」といって入ってきた子もいるし、いろんな人が入ってくるんですね。入ってきたいろんな人たちをサービス業の人間に育てていかなきゃいけないという問題が、やはり一番テーマとしては大きいんじゃないでしょうかね。
杉本:なるほど。その話を続けて、人材育成や、どういうふうにみなさんのリーダーシップをとっていくのかというところについて、お話をうかがっていこうと思います。
今、横川さんの横川竟流経営についていろいろとお話をうかがいました。横川さんのやりたい外食の姿があると思うんですが、ただトップだけが夢や目標を掲げていても、スタッフも同じ方向を向かないと会社として前に進めないじゃないですか。
高倉町珈琲を同じコンセプトで進めていく、みんなで同じ方向に向かっていこうというところで、どんなことを心がけていらっしゃいますか?
横川:フードサービス業で、誇りを持って働ける環境や企業ってあんまりないんですね。個人店ではあるんですが、チェーンストアというか店をたくさん作ろうとすると、短期間に育てて「やるべきことをやればいい」みたいなかたちの、アメリカ式のシステムでできている。
なので、そこを削ってもっと自由に表現できるようなかたちにしていく。そういう意味で言うと、トップがどういう企業にしたいのか、どういうお客さんとの関係を持ちたいのか、あるいは働く人とどういうふうに経営者が向き合って、付き合っていくのか。
そういうことを含めてきっちりした思想を持っていて、それを(口に出して)言って行動に落とさないといけない。言うだけではダメなので、言いながらどうやって行動に起こしてくかということを繰り返していくことによって、思想が固まるんですね。
横川:だいたい外食……なんて言っちゃ怒られちゃうでしょうけど、あまり思想を持って働いていない人が多いんですよ。でも、その人たちが「将来おもしろいよ」「楽しいよ」「やれば結果が出るよ」ということを実感できると、意外とほかの環境では実感を得られないので、逆に言うとその人たちが思いきってやることによって店が良くなる。
だから、うちの会社の人たちは育てた人が3分の1で、途中入社が3分の1で、スカウトが3分の1なんですね。スカウトというのは不満があるから移ってきてくれるので、意外とやりやすいんですよ。
中途採用の人は「今の所がダメで、ただ職を変えたい」という人たちも含めて、カリキュラムやどう育てるかを個別に考えて指導することができないと、思想教育はできないのかなと。
社会貢献がきちんとできていることで、「俺もなんか役に立ってるな」ということを実感できるようにならないといけない。ただ売って儲けるだけだったら、たぶんそうはなっていかないよね。
杉本:そうですね。ありがとうございます。ただ、具体的な育て方について、横川さんの言葉を従業員一人ひとりに伝えるのはそんなに簡単ではないと僕は思ったんです。店の第一線でお客さんと向き合っていただくスタッフの方まで、どういうふうに自分の思いを浸透させるんですか?
横川:僕は24歳で会社を作って何万人と会ってきているんですが、その頃と今とで言っていることは変わらないんですよね。「情熱」とか、時代が変わっても商売というかたちの中でやらなきゃいけないところだけ決まると、それは言い続けられる。途中で飽きてやめちゃうと、会社はどんどんダメになります。
横川:どんどん人が入ってきて、今はパートだけで2,000人ぐらいいるんですが、その人たちにどういうふうに伝えていくかで言うと、店長を僕の代理人にしなきゃいけない。だから、店長と僕の思いが一緒にならないといけない。その中に50人ぐらいの働く人たちがいるので、そこへどうやって伝えていくか。
何を言っているかというと、商売の基本と経営の基本を常に言っている。会社のことを考える前に、「お客さんにはどうするの?」「働く人にはどうするの?」と、お客さんにどうしてあげるのか、働く人たちにどうしてあげるのかを考えるのが店長の仕事だよって言っているんですが、全部はそうできないのが今の悩みで、店ごとにデコボコになるんですね。
僕が店回りをして、店長と会って5分か10分ですが話をすることによって、少しずつ少しずつ引っ込むんです。入らないで引っ張り込むマネジメントをしないと、人はいなくなっちゃうんですね。
杉本:今って40店舗ぐらいありますか?
横川:40店ですね。
杉本:けっこう(店舗を)回ってらっしゃるんですか?
横川:ええ、行きますよ。逆に言うと、本部でいろんなルールを決めます。誰でも決めるし、それぞれの部長も受けて店長にいくんですが、決めたとおりに店がなっているかだけなんですね。そのギャップを直すのが経営です。
杉本:なるほど。
横川:みんな一人前のことを言うし、良いことを言うんです。でも、人は3段階いくと伝わっていないんですよ。言っているとおりになっていないと、店長に「俺、言ったよね」と。
「こう言うってことは、これじゃないよね」ということをその場で言ってやって気がつくんですね。だから現場で教育しない限り、集合教育と現場教育と2つをやらないと、なかなかついてきてくれないんじゃないですかね。
それからもう1つは、会社が将来何をやってくれるのか、社会にどれだけ良いことをやっているのか、その中に俺は参加してできているのかということに気がつくと、たぶん黙っていてもアクセルを踏むんじゃないですかね。
杉本:なるほど、ありがとうございます。
杉本:(高倉町珈琲の)大井町店に行ってもう1つ気づいたのは、私も良いお客さんではなかったんですが、本を読みながら3時間ぐらいくつろげる(笑)。ずっとのんびりしているので、お客さんがなかなか回転されないんですね。
やはり飲食って、回転率とそれぞれの飲食の単価の掛け算で、ある程度の業績が見えてくると思うんです。あまりにも居心地が良すぎて回転しないのかな? と思って、そこはどういうふうな経営をされているのかなというのが気になりました。
コロナ禍以降、外食産業のいろんなところに聞くと、ラーメン屋さんもそうですがなかなか厳しい経営環境に置かれていますよね。原材料費、人件費、いずれも高騰してしまっているので、相当みなさん頭を悩ませてらっしゃるなというのは、ふだんの取材の中でも聞いております。
小規模なお店ほど、やはり倒産・廃業も増えています。こうした中、さっき言ったように外食産業って、笑顔をみなさんに持ってもらうために絶対に必要な産業じゃないですか。となると、外食産業が再び元気を取り戻すために、横川さんだったら何が必要だというふうに今は思われますか?
横川:そんな難しい質問をされても(笑)。
杉本:(笑)。
横川:できればやってますが(笑)。例えば、コロナの時代に各外食産業がコロナ用にいろんな業体をやったんです。21ブランドができたんですが、全滅ですよ。1個も成功してないですね。だから商売というのは、その場、その場の思いきりでもってやることではなくて、例えば安全、衛生、おいしいとか、もっと長期的に見て、最後に価格があるんです。
横川:価格を無視しちゃいけないんですが、価格を低くしてよそがやっていることを全部取り入れたとすると、儲からなくなるんですよ。それをどうやって儲けるかということが、これからのチェーン店作り、店作りのテーマになってくるんです。
だから、仕入れて加工して売るという点では、仕入れと加工が外で起きているので利益がそっちに落ちちゃっているんですね。それにまた乗っけると高くなるので、これからは「自分で作って自分で売る」ということをやらないと。仕入れて加工して売る時代ではなくなるんですね。
杉本:なるほどですね。
横川:これは、これから商売をやる方にはヒントになると思いますよ。
杉本:原材料を仕入れて、お店の中で加工までしてしまうというお考えのことですか?
横川:外食だけに限って言うと、産地に行って、安全で言うと消毒回数をどう減らすのか、それから肥料はどういうふうに変えるのか。土壌変更、品種改良、収穫、保管、輸送から含めて、これがずっとメーカーがやっていることなんですね。
それを自分たちで管理してムダをなくすことによって、コストを落としていかないと、実は好きに作ってきたものを買うと、バラバラでどうしても値段が高くなっちゃう。
そういう意味では仕入れて加工じゃなくて、自分で産地に行って根っこのところからモノを持ってきて、自分たちの管理のもとに自分たちのセントラルキッチンで加工して、店で最終加工をして売ると、安くておいしいものができるんですね。
杉本:なるほどですね。
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