伝えたい「イメージ」をわかりやすく伝える工夫

大坪拓摩氏(以下、大坪):今度は横長のバナーを3セットお見せしようと思います。悪くはないけどシンプルすぎるっていう感じですよね(笑)。これはアフターではこんな感じになりました。載せている情報は全部一緒です。でも下のほうが楽しそうな感じが伝わるのがわかります?

これは何をやっているかと言ったら、ただ単に「リズムを出した」だけなんですよね。「ひんやりかき氷フェア」っていう文字をがたがた動かしていますけど、一個一個の文字が基本的に読みやすいので、これぐらい遊んでも許されるっていう範囲です。その分、下の「全国各地の限定かき氷が池袋に集結」はシンプルで読みやすくなっているんで、これはオッケーという感じです。

そもそもフェアなので、楽しそうなイメージが伝わるのが大事なんですね。だから例えばこれは、かき氷の画像が同じだからちょっともったいないところではあるんです。ただ角度を変えて並べただけですよ。こういう工夫をすると印象が一気に変わるという話です。

「造語」は他の言葉と一緒に並べるとわかりづらい

これもちょいちょい見たりするレベルだと思うんですけど。悪くはないんです。でも、だいぶ変わりますよね。

これは何を変えているかって言うと、みなさんもたぶんお仕事とかで自分たちの商品・サービスのチラシとかを作る時に、商品名が造語だったり、名前だけで何のサービスか判断できないものがよくあると思うんです。

スターバックスだってそうですよね。スタバを知らない人は「スタバ」って言われても、コーヒー屋とか絶対連想できないじゃないですか。だから、そういう造語だったりするものとかは一緒に並べちゃうとわかりにくくなっちゃうんですよね。

だから頭に「フォトスク」って付くと、わかりにくい。文字を短縮するのが好きな若者だったら「フォトスクールかな」とかわかったりすると思うんですけど、「フォトスクラッチ」とかなんかだと思っちゃう人もいたりするわけですよ。

でも、その後ろの「幸せな写真講座入門編」だったら誰だってわかるじゃないですか。ハッピーな写真を撮ること、「未経験の人が習うのにいいよね」っていう感じのものが伝わりますよね。

そうしたらわかりにくいものはちゃんと分けてあげて、下の場合は「フォトスク」を切り分けて「『写真が好き』を仕事にしよう! 幸せな写真講座入門編」っていう感じにしていますね。

資料作りは「伝えたいもの、わからせたいものがすぐわかるようにする」

あともう1個工夫があるんですけど、上のほうだと女性が持っているカメラがちょっと小さいんですよ。今は大きくしているからみなさんもわかるかなと思うんですけど、バナーってさすがにこんな画面で見ないじゃないですか。パソコンでパッと見るくらいですね。

その時に、小さいとカメラだと認識できないんですよ。一瞬で見なきゃいけないから。サイズ的に言うと、1.25倍か1.3倍ぐらいのサイズにしかなってないんですけれど、下のほうだとカメラだとパッと認識できますよね。

「伝えたいもの、わからせたいものがすぐわかるようにする」というのも、みなさんがチラシとか資料を作る時にはすごく重要ということです。全体をうまく入れようとするよりも、目立たせたいものがちゃんと目立っているかどうかということです。

「ストロベリー・スイーツビュッフェ 旬のいちごを使ったスイーツ食べ放題」、デザインをあまり勉強したことがないと、WordとかPowerPointでこんな感じによくなりますよね。これはどうしたらおしゃれになるか。

そもそもスイーツビュッフェと書いてあるのに、スイーツがない。「ストロベリーフェアじゃん」となっちゃう。下では何をしているかというと、単純に写真を3つ並べただけです。手前に白い枠を置いて文字を並べただけ。本当にこれだけの違いでいいんですよ。

ビフォーアフターを見比べるだけでも「デザインセンス」は身に付く

みなさんが例えば本当に忙しくて、自分の時間で作んなきゃいけないとかだったら、この四角い枠とかは、たぶんWordとかPowerPointとかのテンプレにあると思うので使ってください。その手前、旬のいちごはリボンにしていますけど、別にきれいに横3列になっていたって、上のやつよりはわかりやすいんですよ。

大事なのは何かと言ったら、コントラストというやつですね。上は文字が滲んで見えにくいんですけれど、下は白バックに赤い線の文字なので読みやすいんですよ。やっぱり読みやすい、わかりやすいというのがすごく大事だよという話です。

一通り振り返っても、今なら違いがわかりますよね。目立たせるものを目立たせる。色を減らす。楽しそうな雰囲気が伝わるものを増やす。情報を盛り込み過ぎない。読みやすくする。楽しそうにしたければ、何か画像を繰り返しでもいいからリズムを持たせる。

わかりにくい言葉とわかりやすい言葉を切り離すとか、わかってほしい画像をわかるサイズにするとか。これで言ったら、ちゃんとスイーツビュッフェだったら、スイーツの写真を入れましょうとか、そういう話です。

ここまでで、みなさんのデザインリテラシーが上がったのがわかりますか? これが「センス」の正体です。こういうのを学ばないと、センスってなんか抽象的で、もともと「○○ちゃんのおうち、おしゃれだもんね」「そういう人じゃないとセンスってないんだよね」と勘違いしがちなんですけど、まったくそんなことないんです。

センスというのは基本的に知識を見ないでもできるぐらいまで、繰り返して体に身に付いた感覚のことを言います。こんなふうにビフォーアフターとかで見比べたりしていくだけで、みなさんにもセンスは身に付きます。

別の業種と組み合わせることで得をするのがデザインセンス

センスが身に付くと、さっき伝えたように今のお仕事でも副業するにも、フリーの人にも起業するにも、何か別の業種と組み合わせるのでも、得をするというのがデザインセンスです。本当にこんな簡単なことからでもいいので、ぜひデザインセンスを身に付けてもらえたら、すごくいいんじゃないかなと思っています。これなら簡単ですよね。

じゃあ、作るのはどうしたらいいの? というのは、自分で作れるようになりたければ、作る練習したらいいと思うんです。それをこの本で教えようと思うとボリュームが足りなくなるのと、さっき言ったとおり、デザイナー向けの本になり過ぎるので、デザインに興味ない人は学べなくなっちゃうんです。

今日の内容をもっといろんなパターンでわかるように、この本の中には一通りまとめてあります。パラパラとめくるくらいで理解できるように、文字量はもとの12万文字に比べて10万文字くらい削っているんで(笑)。

その削られた原稿は、ちゃんとブラッシュアップした上で、どこかでKindleか何かで出したいなと思ったりしていますが、みなさんは今日以降何かデザインを発注したり関わったりする時に、これぐらいのことを覚えるだけで、結果が変わるということです。

作るのにかかるコストはそんなに変わらない。手間も変わらない。時間も変わらない。なのに得られる結果が変わるというのは、ぜんぜん違いますね。もし本当にデザインとか勉強、自分でもっともっとしてみたいなとかいうことであれば、本の巻末のほうに無料の特典が見れるページを作っているので、そこから登録してもらえればと思います。

デザインで損している人が多すぎる

うちはYouTubeをやっていて、YouTube登録もデザインのチャンネルのわりには3万登録ぐらいあるんですけれど、その中で特に人気だったノウハウを、再度まとめ直したやつを無料で見れるようにしています。

もっともっとこの本をより先に進んで、デザインを試しに自分で作ってみたいとかであれば、試しに自分で作れるレッスンとかも無料で出しています。デザインに興味持ってくれる人が増えたらうれしいなと思います。

自分からしたら、単純に知らない人がもったいないなとしか思わないんですよね。デザインをやってほしいというよりは、デザインで損している人が多すぎるなと思っているので、ぜひ損しているのを取り戻してもらえたら、本当にそれだけでいいんじゃないかなと基本的には思っています。

そこから先、デザインのプロとかに頼める機会があれば、やっぱりプロにはプロで技術と知識があるので、もっともっと高い結果が得られるようになるんじゃないかなと。

うちのデザインスクールは、自分が表立ってあまり出ていなくて、社長ではなく会社を創業した時から一緒にやっている女性が、デザインスクールの校長、看板として活躍してくれています。

今日来ているので、ちょっとした紹介だけぜひさせていただければと思います。創業から一緒にやっている、久保なつ美です。簡単な自己紹介と、どんなものが受けられるかぐらいを、ぜひみなさんにシェアをお願いします。

デザインの“コツ”を学んだことによる人生の変化

久保なつ美氏(以下、久保):みなさんはじめまして。日本デザインスクールの校長をやっております、久保なつ美と申します。私は昔は本当にヘタレでして、バイトもそんなに続かなくて、コンビニのバイトも1日で辞めてしまうぐらい、あまり能力もない人間だったんですけど。

そこから大坪さんに出会ってデザインを学びました。デザインと言っても最初はぜんぜんできなかったんですね。泣きながらバイト先でデザインを作っていたような時もあったんですけど、そこから大坪さんに「デザインにはコツがあるから、あなたはセンスがないんだから自分でがんばるな」みたいに怒られて。

そこからビシバシしごかれました。今日はすごく丁寧で優しい解説だったんで、そんなに丁寧に教えてもらったことないなと、すごいびっくりしたんですけど、びっくりするほどすごくデザインできるようになりました。

大坪さんに習う前は2年ぐらいデザインができなくて、本当に諦めていた時代があったんですけど、そこからノウハウを教えてもらって、すごく変わったんですね。ランディングページとかサムネイルとか、ある時からすごく飛躍的にデザイン力が伸びてびっくりしました。

でもそのおかげで、その前には経験できなかったようなお仕事だったりとか、人との出会いをいただいて、人生が変わってよかったなと思っています。

私、もともとは工作がすごく好きな子どもで、わくわくさんがすごく好きでした。わくわくさんとゴロリの『つくってあそぼ』を見て、わくわく自分でやっていたんですけど、大人になってから「仕事を何をしようかな」という時に何も見つからず、すごく右往左往していた時代があるんです。

その時に小さい頃に好きだったデザインだったり、作るということが向いているんじゃないかなと思ったんです。ちょっと違うんですけど、(大坪さんが)わくわくさんだったら、私がゴロリです。

メガネをかけているのでそういうところも一緒だなと思うんですけど、私がうまくできないところを「こうやったらいいんだよね」って、大坪さんがわくわくさんみたいに教えてくれて、作れるようになるという喜びを仕事にすることができました。

45日でデザインができるようになる

私は大坪さんにかなり鍛えられて、すごく厳しく育てられたんですけど、そのノウハウに楽しさやワクワクの要素を加えてレッスンにしているというスクールをやっています。今日も受講生が来ています。ありがとうございます。

本当に下は大学生から、上は80〜90歳みたいな方々が、45日でデザインができるようになっています。それは大坪さんのノウハウを私がまとめ直したというか、楽しさをプラスして作ったんですね。

今日みなさんがどういうきっかけでお越しいただいたのかはわからないですけど、デザインに興味があるとか、また自分の人生を贅沢にしたいというか、仕事を楽しみたいという方がいらっしゃいましたら、ぜひぜひYouTubeとか本を見て、デザインをやっていただけたらうれしいなと思います。

レッスンの中には、Photoshopの一番始め、インストールのところから色の使い方だったり、実際にバナーを作っていくみたいなレッスンも入っていて、レッスンだけじゃなくて例えば働き方ですね。フリーランスになって稼ぐにはどうしたらいいかとか、いろんな選択肢があるということをお伝えしているので、何かあったら登録されてみてください。

私も今日大坪さんの添削を久しぶりに見たので、すごくびっくりしました。すごく丁寧な本ですけど、もともと私は「あなたはセンスがないから、自分で考えるな」というのを基本でビシバシやられてきたので(笑)、とっても優しい本だなと思ってます。ありがとうございます。

大坪:そんな感じですね。今だからいろいろと自分の中でまとまってきて、本当にいろんな人にデザインの価値を伝えたいとか、美大時代に「デザイナーの地位向上したいな」と思っていたなというのを思い出して、この本を書く機会をいただいて。

デザインは「知らないで損している」カテゴリー

はじめは本当にデザイナーが全員唸るくらいの本にしてやろうと思って、すごい項目も作っていたんですけど、考えてみたらそんなに本気でデザインやりたい奴って、世の中にどれだけいるんだと思って。あまり役に立たない本になるよねと思いまして。

仲良くさせていただいている本田健さん。彼が出版したい人、作家さんになりたい人とか教える合宿とかがあって行った時に......あれも8年前くらいなのか。

当時の自分は、マーケティングコンサルやデザイナーでけっこう結果が出て、マーケティングで先生と呼ばれて調子に乗っていた時代だったので、「マーケティングコンサルタントが唸るぐらいの本を書きたい」と、当時は思っていたんですよ。

「マーケティングのバイブル作ってやろう」ぐらいの気持ちでやってたんですけど、今思うと、本当に尖っていたんですね。その時に「そんな本、読みたい人いないよ」みたいなことを、はっきりと言われたんですよ。「そんなんじゃ絶対売れないから」と言われました。

(この本をつくるときに)その18年前のことも思い出して。

デザインって本当に今日お伝えした内容だけでも、みなさんが次、仕事でそういうシーンに出会ったら、「これを伝えたいんだったらこの写真違くない?」とか、「この文字読みにくくない?」と言えるじゃないですか。

こんな簡単な違いを知っているか知らないかだけで、結果が地味に変わる。売上が低い時って、色変えただけで上がるということを知らないんですよ。知らないで損しているというのが、デザインというカテゴリなんですよね。

デザインは数字で語る

世の中を見ていると、知らない間にとんでもない量を損しています。というのも自分、マーケティングも覚えているデザイナーの中ではレアなんですけど、「デザインは数字で語る」というのをすごくやっています。

広告とか出す時とかも、さっきバナーとかあるじゃないですか。ああいうのもちゃんとデザインしたバナーを何種類か用意して同時に走らせて、どのバナーが本当に成約率高いのか。売上が一番高いのかみたいなのをやるんですよ。

例えばスクールも自分たちで運営していますけど、ランディングページという縦長の広告のページがあって、それも複数用意していて、そこに来る広告のバナーとかも複数用意しているんですよ。どの組み合わせ、どの画像、どの色、どの文章が一番売上高くなるかみたいなのを、ひたすらやっているタイプなんですよね。

デザインは数字で語れる。こっちのほうが結果出るよというのをけっこうやっているほうなので、デザインがうまくいっていない時、うまくいっている時の売上の差を顕著に知っているんですよね。デザインをミスるだけでこんなに売上で損しているって、恐怖だなと思うわけですよ。

そういうのがもっともっとみなさんの中で一般的になって、損する人がもっと減って、みんなが得できるようになったらいいんじゃないかなと思ってますし、それを通じてデザインってすごい価値が高いんだと世の中が認識してくだされば、デザイナーの地位向上も図れるし、こんなにいいことないなと思っているですよね。そういう背景があって、こんな感じの本になりました。

デザイナーになりたいという人にとっての入門書としてはぴったりですよね。この本だけで別にデザイナーになれるわけじゃないですが、本当にビジネスで活きるデザインというのを、基本的にいかにわかりやすく、いかに簡単に理解できるようにとまとめた感じです。