「デカイ主語」で悩むと、選択肢の幅が狭まる

司会者:次は、ちょっと違った種類の質問をいただきました。次のテーマはキャリア選択についてのご質問です。

「『営業は嫌だから事務』というように、職種を取捨選択で選んでしまいます。ただ、事務になったらなったで数字の管理が苦手なことがわかり、何を選んだらいいのかわからず落ち込みます。『私に教える人は大変。こんなに自分以上にできない人はいないだろうな』と思ってしまいます」という質問ですね。

キャリア選択に関する相談は他にもいただいていますので読み上げます。ちょっと時間の関係で一部省略をしてお話しをします。

「私は34歳の男性で現在就職活動中です。私は人の話を瞬間的に理解するのが苦手で、大学を卒業後、主に人間関係が原因で仕事が長続きせず、職を転々としてきました。今は独りで働くことを考え、せどりやアフィリエイトなどのSNSを始めて半年ほど経ちますが、せどりの大変さを実感したり、文章力もないのでなかなかブログを継続できず、日々不安を感じています」。

「やっぱり企業で人とあまり接しない仕事に就くか、あるいはこのまま継続してSNSを使いフリーランスで働くか迷っています。どういった働き方をしていけばよいでしょうか?」という質問です。

F太氏(以下、F太):なるほど。これはついさっきお話しした内容がまさにあてはまります。「でかい主語で悩まない」ことがお勧めかなと思います。

司会者:本当ですね。

F太:やっぱり「営業が自分には向いてないから事務。でも事務は数字が苦手なので選べない」となると、もうあっという間に選択肢がなくなってしまうんですよね。その時にやっぱり「ちょっと主語がでかすぎるかな」ということに、まず気づいていただいて。

営業にもインバウンドとアウトバウンドの2種類がある

F太:営業の中でも具体的に自分は何ができないのか、どんな苦手意識があるんだろうか、何がいちばんやりたくないんだろうかって、もう少し細かく分析してみてほしいんです。

例えば営業にもいろんなやり方があると思うんですね。一番イメージしやすいのは、とにかく声をかけまくって数撃ちゃ当たるじゃないんですけど、断られても断られても何度も話をしていくやり方。僕にはこれが無理なんですね。絶望的に無理。

コールセンターの業界にも、インバウンドとアウトバウンドという大きく2種類の仕事があります。アウトバウンドは、最近はあまり好まれないですけど、電話帳などリストの上から順番にこちらから電話をかけていく方法です。

10年以上前の話ですけど、どんどん電話をかけていって「何々いかがですか」と声をかけて、興味のある人に当たるまでやっていく。だから九割九分九厘断られるんですよね。アウトバウンドは、当たりを引くまで「断られる」ことに耐えられるかどうかなんです。僕は無理だったんですよね。

司会者:確かに。

F太:ティッシュ配りですら無理でした。人から拒絶されるのが本当にダメなんです(笑)。人から拒絶されることが苦痛すぎて、「僕は営業に向いてないのかもしれない」って思ったんですけど。

それで僕はコールセンターで、アウトバウンドではなくインバウンドの仕事を始めました。「インターネット回線がつながりません」と困っている人がかけてきてくれた電話に対応するのは、僕が向こうから求められているわけだから心理的な抵抗なく対応できたんですよ。

司会者:なるほど。

自分の苦手・得意は「細分化」するとわかるようになる

F太:さらにその対応が終わった後に、「そういえば最近こういうサービスを弊社で始めたんですけど、ご興味ありませんか?」っていう売り込みの仕方があるんですね。これだったらできたんですよ!。

いったん何らかの関係性を築いた相手に対してだったら僕でも売り込める。ほんのちょっとした違いじゃないですか。売り込んでいることに変わりはないんだけれども、でも僕の中ではぜんぜん違う。

結果として僕は「やり方次第で営業もできるんだな」っていう成功体験が得られたので、営業をまったくできないわけじゃないことに気づけたんですよね。

司会者:なるほど。「デカ主語」じゃなくて、何をするのが苦手かとか、何をするのが得意なのか細分化してフォーカスすると良さそうなのかなと思いました。

F太:そうですね。営業についてはもう少しお伝えしたいことがあるんですけど、いいですか?(笑)。

司会者:はい、もちろんです。

いろいろな営業パターンから、自分自身の強みを考える

F太:営業には会話をしてその場で契約を獲得するといったやり方以外にも、ある程度の期間をかけて関係性を築いて、広く薄く関係性を維持しながら(契約をとるやり方もあります)。

例えば季節のあいさつのメールを送ったり、年賀状とか暑中見舞いとかを欠かさず送ったりして関係性を維持しながら、たまたま相手が「今ちょうど保険が必要になってね」って声をかけてくるのを待つ、というやり方もあるんですよね。

司会者:なるほど。

F太:その人は絶対自分から強くは売り込まないんですけど、相手が欲しいタイミングで、ふっと頭に思い浮かべられるような関係性をつくってきたんですよ。僕にはそれはできないです。こまごまと連絡をするとか苦手でできない。でも、そういうのがすごく得意な人もいるんですよ。そういう営業の仕方ももちろんあるじゃないですか。

あとはもっとシステマティックに、どこの地域が一番売れるのかってちゃんと調べて、その一帯にダイレクトメッセージを送る。そのダイレクトメッセージの文章も、いろいろとABテストとか試行錯誤して「鉄板の文章」を作り上げた上で送る。そういう感じで、効率的にシステマティックに量をこなしていくやり方を構築するのが得意な人もいますよね。

営業って言っても、実はその人の性格によっていろんなパターンのやり方があって。「営業が苦手」って切ってしまうと、そういった自分自身のやり方が全部見えなくなってしまうので、そこは自分自身の強みを考えることに一回立ち戻ってほしい。これが一番お伝えしたいことかなって思いますね。

企業風土が合わなかったら「縁がなかった」と切り分けていい

司会者:確かに。ある会社で求められていた営業スキルが飛び込み営業で、そこで苦手だったとしても、今F太さんがおっしゃっていた分析して営業をかけていくのは得意かもしれないから、「営業」っていうデカ主語で苦手をくくらないのが大事なんだなって思いました。

F太:そうですね。もちろん企業風土として、オラオラな営業しか認めないところもあるとは思いますけれども、そこはもう正直、縁がなかったと思って、自分のいるべき場所ではなかったな、という切り分けでいいと思います。

司会者:ありがとうございます。

F太:コメントでも私とは逆に「アウトバウンドのほうがやりやすい」っていう方もいらっしゃいますからね。

司会者:インバウンド、アウトバウンドだけでも得手不得手は絶対ありますものね。

F太:うわ、おもしろいな(笑)。「『(インバウンドのように)対応できて当たり前』よりも『(アウトバウンドのように)断られて当たり前』のほうがハードルが低いと感じる」というコメントもあります。ぜんぜん違うじゃないですか。僕はそういう方、本当に尊敬します。

アドリブが苦手な人への処方箋

司会者:さっき質問の中で、「人の話を瞬間的に理解するのが苦手で」っていう話もあったんですけど。ちょうどリアルタイムでいただいていた質問の中にも、「アドリブが苦手です」という質問もあって。

この方は、「面接など準備したものであればすらすらと話せるけども、突発的に質問されたら頭が真っ白になって、しどろもどろになってしまう」という相談で、似ているような話かなって思いました。

瞬間的に理解する、もしくは突発的に反応するのが苦手という方に対して。F太さんは変化球な質問が来た時、答えるまでどういったことを考えているのか。つまり「思考のプロセスを詳しく知りたいです」ということでした。

F太:なるほどですね。......今のがたぶん、1つの僕の中の手段です。「なるほどですね」って言いながら考えるとか。

司会者:なるほど(笑)。

F太:「今考えていますよ」っていうリアクションがあれば、向こうも「考えているんだな」ってわかってもらえるので、そこで時間が生まれるじゃないですか。その中で考えるとか、わりとこまごまと時間を稼ぐための手数があるんです。

でもこれは僕が基本的にアドリブのほうが楽なタイプなので、たぶん今ご質問いただいたようなタイプの方だと、このやり方は参考にならない気がするんですね。

司会者:なるほど、なるほど。

「緊張してる」と言ったほうが、好感度は上がる

F太:ただやっぱり準備をある程度しておくと答えやすくなるのは間違いない。

例えば「この質問にはこう答えよう」「『質問は何かありますか?』って言われたらこれを聞こう」という問答集を一言一句間違わないように用意するんではなくて、何となく箇条書きくらいのざっくりさで用意しておくんですよね。

僕はインタビュアーの仕事をすることもあるんですけど、そういう時は事前に相手の本やSNSを見て、「こういう質問をしよう」って事前にいくつか考えておきます。準備したもののどれが必要になるかはその場にならないとわからないですが、事前に用意したものがある、ということでまずはひと安心できるのかなと思います。

司会者:そうですね。

F太:それでも頭が真っ白になってしまった時お勧めなのは「すいません、ちょっと緊張してしまって」って言ってしまう。それだけでもだいぶ違うと思います。緊張しているのを見せちゃいけないという感覚がより緊張させるという、緊張スパイラルがあると思うんです。でも「緊張してる」って言っちゃったほうがたぶん好感度は上がるんですよ。

司会者:わかります(笑)。

F太:「それだけ真剣にこの面接に臨んでくれているんだな」って伝わると思うんですね。なので、「すごく楽しみで、色々準備してきたんですけども、ちょっと頭が真っ白になってしまいました。すみません」って言いながら、「すいません、ご質問は何でしたっけ?」とかってもう一回聞くとか。

そんな感じで「真摯に答えようとしているんだよ。でも緊張しちゃってるんだよ」って、相手を信じてさらけ出しちゃうことができるだけで、だいぶ余裕が生まれますし、たぶんその一息があると、ちゃんと聞きたいこととか次の一言が出てくるかなって思います。

心の中で、「緊張」を「興奮」に言い換えてみる

司会者:初めに話していた「なんで自分はできないんだろう」っていう暗示や自己嫌悪で止めるのではなくって、今回も「自分は突発的に話すのが苦手なんだ」っていう一種自分の心の捉え方というか。

「自分が突発的に質問されて答えられないのがいけないんだ」っていう、その考え方をちょっとでも緩められたらいいですよね。

F太:そうですね。就活といえば面接、というイメージがちょっと強すぎるんだろうなって思うんですけど。ああいうコミュニケーションってめちゃくちゃレアですからね。

司会者:そうですね(笑)。

F太:品定めされるようなコミュニケーションなんてほとんどないので。あれが苦手だからといってなんのことはないと思います。

司会者:ありがとうございます。

F太:あと、緊張してきた時に「緊張した!」じゃなくて「興奮してきた!」って自分の中で言い直すとけっこう違いますよ。これもお勧めです(笑)。

司会者:確かに。それはちょっと初めて聞きました(笑)。

F太:大事な場面で興奮しているんですよ。

司会者:考え方1つで今の自分の環境が、それこそ八方塞がりモードなのか、捉え方も変わってきますよね。

F太:はい。興奮している状態は相手にももちろん伝わるし、「それだけ本気なんだな」って思ってもらえるので、実は何にも気にする必要はないんですよね。

今の時代は「フリーランスか、企業で働くか」という二択ではない

F太:あともし可能でしたら、「フリーランスか、企業で働くか」という二択で悩んでいるというご相談があったと思うんですけど、そこにも少しちょっとお答えしてもいいですか?

司会者:お願いします。

F太:僕自身はまさにSNSを使って仕事をしてきたんですよね。もうたぶん10年以上はやってきて、周りの人たちや時代の流れとかもけっこう見てきていると思うんですけれども、今後はこの二択ではなくなっていくはずです。

このお悩みに関しては、僕の中ではわりと答えはシンプルで、働きながらフリーランス的な仕事も同時に進めていくのがお勧めですかね。

フク業も、これからはサブの「副業」ではなくて複数の「複業」なんですよね。メインの仕事だけじゃなくて、いろんな仕事をたくさんしている状態がデフォルトになっていくんじゃないかなって思うんですよ。企業もそういう働き方を推奨する流れに今なってきています。

なので、「(収入のためにきつくて苦手な職場を選んだりせず)普通に自分が働きやすい職場ってどこなんだろう?」っていう気持ちで選んでいただいて、そこで安定したまとまったお金を稼ぎつつ、複業としてアフィリエイトやSNSなどのいろんなことを試してみるのがいいと思います。

自分に合った仕事は、いろいろ試さないと見つからない

F太:いろんなものを試さないと自分に合った仕事は見つからないので、とにかくいろいろ試してみるのがよろしいかと思います。SNS1つ取っても、Twitterが向いている人とTikTokが向いている人と、YouTubeなのかインスタなのかでぜんぜん違うので、自分に合うSNSを見つけるだけでもいろいろ試さないといけないと思うんですね。

「試してみたけど結果が出ませんでした。続きませんでした」っていうのはけっこう普通のことなので。続かなかったら、自分のやる気とかモチベーションとか熱量が足りないからだって思わないでほしいんですよね。

たまたま選んだプラットフォームが向いてなかっただけかもしれないので、続けられるものを探してみていただくといいのかな。当然これってある程度ガチャなので、当たりが出るまでに資金が底をつくことも当然あると思います。だからこそ、企業で働くことも同時進行的に、いろいろな場所を試してみるのがいいと思います。

司会者:ありがとうございます。今リアルタイムでいただいている質問で、F太さん自身の働き方について気になっている方も多いのかなって思うんですけど。

F太:ありがたいです。

司会者:その質問が「F太さんはTwitterでのライティングのスキルなど、何かで学ばれたのでしょうか? それとも続けることで自然に身に付いたのでしょうか?」。

F太:別に習ったことはないんですけれども。昔から、コピー用紙に悩みを書き殴ることで自分のメンタルを安定させてきたという歴史があります。これはたぶん小学生の頃からやってたかなと思います。

あとはインターネットの掲示板に書き込みをしたりとか、そこでネットリテラシーをケガしながら学んだりとかですね。あと、自分でホームページを作ったりもしてきたので、結果としてそういった経験が活きてるんだろうなとは思いますね。

自分が何に興味を持ってきたかとか、悩んだり苦しかった時にどうやって生き延びてきたのかっていうところで、向き不向きって変わってくると思うんですよね。

司会者:なるほど。ありがとうございます。今いただいた質問でも、だいぶいろんなカテゴリーの質問に答えられたのかなって思います。