亀が長生きする理由

マイケル・アランダ氏:亀は非常に長生きです。最年長の亀は、ジョナサンという名前のセーシェルゾウガメで、現在186歳で、今でも元気です!

ガラパゴスカメは80歳の誕生日に、健康な子どもを産んだことがあります。

小さい種類の亀でも、食べられたり轢かれたりしないなら、半世紀も生きることができるのです。科学者たちは彼らがどうしてこんなに長生きなのか、100パーセント解明できていませんが、どうやら体の劣化を防ぐことと大きな関係がありそうなのです。

人間を含むほとんどの動物は、年をとるにつれて死ぬ確率が高くなります。なぜなら私たちの体は時間がたつほど劣化していくからです。どんな機械でも部品が劣化していき、ついには致命的な故障に繋がることと同じです。

しかし亀の場合はそうではありません。亀の中には、年をとるほど元気になるものすらいるのです。しかも年を取っても健康な子孫を残すことができるのです。長生きして、年老いても健康的な子どもをもうけることができる能力を、「無視できるほどの老化」と呼びます。

いくつかの詳細についてはまだ明らかにされていませんが、亀には驚異的な酸化ストレスに対する耐久性があるために、この能力があると思われます。

酸化ストレスはROSともいう活性酸素に反応することにより生じる、細胞に有害なものです。活性酸素とは、酸素を含む化合物の種類で、他の分子と非常に深く関係があります。これによるダメージが蓄積すると、とくにニューロンと免疫細胞にとって、加齢が進められてしまうと考えられています。しかし活性酸素反応そのものが有害であるというわけでもありません。

それは食べ物が燃料電池に変わる時、つまりカロリーが消費される時などにはいつも生産されています。ですからROSを排除するということが鍵となるのではありません。それをコントロールする必要があるのです。

亀がROSをコントロールする方法は、活性酸素を少なくするということです。亀の代謝は非常にゆっくりなので、同じくらいのサイズの他の動物と比べてカロリーが少なくてすみます。そのほかにも、亀は変温動物だという点も鍵となります。

亀の体はさまざまな気温の中で問題なく機能します。ですから亀は我々人間のように、暑かったり寒かったりすることによりストレスを感じることがないのです。つまり、ストレスが少ないということは、ROSが少ないということです。

それに亀は産出するROSをコントロールすることができるのです。ROSの化合物はテロメアにダメージを与えます。テロメアとは、細胞が分裂するたびに短くなるDNAを保護する蓋を指します。亀はたくさんの酵素テロメアを作り出すことができるので、短くなるのを防ぐことができるのです。

それにより細胞をより健康に、より長く保つことができ、癌や他の病気になる確率を下げることになるのです。そのほかにも、亀は多くの抗酸化物質や、細胞のダメージと戦う他のタンパク質を作り出すことができるのです。

これらの特徴は長寿で健康な生活をするための完璧な適応のように見えますが、生物学者たちはそのほかにも亀が長生きできる理由があると考えています。それは、「酸素がなくても生きられる」というものです。ペットショップでも売られている、可愛いミシシッピ赤ガメを含む多くの亀は、空気を吸わなくても何週間も生きることができるのです。

ミシシッピガメにとっては冬の間中、凍った池に住まなければならないのでその能力は役に立つはずです。彼らには、その期間も重要な組織を保つことのできる特別な方法を持っていて、例えば、酸素が多く必要な神経回路をシャットダウンすることができるのです。

しかし、ついに上がってきて空気に触れ、酸素レベルが急激に上がった時など、ROSの爆発的産出が起こることがありますが、そんな時も、抗酸化物質と細胞を修復するタンパク質が役にたちます。

ですから彼らの長寿は嬉しい副作用であるだけなのかもしれません。科学者の中には、彼らの能力を使って人間が長生き、もしかしたら不老不死を手にいれることができるかもしれないと考えています。

しかし人間が亀の手法を全て真似ることなど不可能です。変温動物になることはできません。ですから人間は亀の研究をしている間に将来に向けて健康を保ち、もし不老不死への鍵を持っているとしても、息を止めて待っている必要はありませんよ。